醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  202号   聖海(白井一道)

2016-02-06 15:24:05 | 随筆・小説

  憲法改正について(3)

呑助 先日、政治の話が好きなお客さんが見えましてね、話し始めたんですよ。床屋談義でしようね。そのお客さんがおっしゃるには、原発反対とか、戦争法反対とデモをしていても、飽きっぽいのが日本人なんじゃないんかとおっしゃってましたね。
侘助 「安倍政治は許さない」というプラカードで国会前をいっぱいにしても安倍政権の支持率は回復してきているみたいだね。
呑助 そうらしいですね。アベノミスクで恩恵を受けた人がいるんじゃないですか。
侘助 そうかもしれないな。しかし今回は違ってきてもらはないと大変だよ。
呑助 緊急事態条項ですか。
侘助 そうなんだ。「緊急事態の宣言」をされてしまうと、言論・報道の自由が奪われ、徴兵令だって敷かれてしまうかもしれないしね。
呑助 自民党は本気になって憲法改正しようとしているんでしようかね。
侘助 もちろん、そうだと思うよ。
呑助 自民党は民主主義の政党だと自認し、安倍総理も私は独裁者じゃないと言っていますよね。
侘助 今はね。去年の夏、戦争法反対のデモ隊が連日、国会を取り巻いて安倍政権打倒を叫び続けていた。これが効いているじゃないかと思うんだ。
呑助 このようにうるさいのは嫌だということですか。静かに粛々と法案を通したいということですか。
侘助 そうだと思う。それには独裁政権を成立させるのが一番だということなんじゃないかな。
呑助 その政治好きのお客さんが言うには、民主的な手続きでヒトラーは「全権委任法」を成立させ、独裁権を確立したというような話をしていましたよ。
侘助 そうなんだ。前回も話した通り、1933年2月27日に国会議事堂に放火、翌28日に「緊急事態宣言」。共産党が放火したと言うデマを流して共産党の国会議員や党員、支持者ら約5.000人を逮捕する。恐怖を煽って3月23日に全権委任法が成立するんだ。独裁政治の始まりは「緊急事態の宣言」からなんだ。「緊急事態の宣言」が無かったらヒトラーは全権委任法を成立させることができなかったんだ。
呑助 そうなんですか。
侘助 当時、世界で最も民主的な国だと言われたドイツの国の中からナチス党独裁政権が出現したんだ。
呑助 恐ろしい事ですね。
侘助 現在の民主的な憲法を持つ日本国の中からもこのような恐ろしい独裁政権が出現してくる可能性があるのじゃないかと升永弁護士さんは危惧されているんだ。
呑助 今の安倍政権にそのような意図があるんでしょうかね。
侘助 升永弁護士さんはそのようなことは言っていない。自民党の憲法草案第98条には「内乱等による社会秩序の混乱」とあるんだ。恐ろしいのは「内乱等」とあるからね。最近フランスでもあったが、日本国内でテロでもあったら、「緊急事態の宣言」がされてしまうかもしれないよ。
呑助 フランスでは「緊急事態の宣言」が実際にされましたものね。
侘助 ただ「緊急事態」条項が規定されることは恐ろしいことのようだ。