渥美清の俳句を読む
215号 ブログ原稿
渥見清の俳句を読む
侘助 風天の寅さんが俳句を詠む人だったてぇこと知っていた。
呑助 もちろん知っていますよ。「お遍路が一列に行く虹の中」、知る人ぞ知る名句なんだそうですよ。
侘助 歳時記にも掲載されているそうだね。
呑助 そうらしいです。「お遍路が」の句でしょ。
侘助 なんか人の一生が表現されているような句だね。
呑助 苦しみの果て、虹の国に行くということでしょうかね。
侘助 晩年になってからの句のようだから、自分の人生をたとえているのかもしれないなぁー。
呑助 なにしろ、晩年は日本を代表する映画スターだったんですからね。
侘助 彼は最後待まで映画スターだったね。
呑助 日本映画最後の映画スターなのかもしれませんね。
侘助 映画は産業として日本では成り立っていないようだからね。
呑助 娯楽映画の最後の輝きが「男はつらいよ」だったのかもしれませんね。
侘助 日々ひたむきに毎日生きる庶民の生活の詩になっていたのかもしれないなぁー。
呑助 寅さんは詩人だったんですよ。
侘助 「そば食らう歯のない婆(ひと)や夜の駅」。この風天の句を読んだとき、ひたむきに生きる庶民の姿が詠まれているなぁーと身に沁みましたよ。
呑助 電気の点いていない家に帰る老婆ですかね。
侘助 渥美氏は庶民の生活をしっかり観察していたんですね。
呑助 老いてなお働かなければ生きていけない人に対する優しさのようなものを感じますね。
侘助 「赤とんぼじっとしたまま明日どうする」。秋も深まって来たよ。明日の仕事がない。どうしよう。今年は冬を越すことができるのかな。そんな経験を渥美氏は経験したんじゃないのかな。
呑助 そうかもしれませんよ。芸能界に生きる人たちはものすごい格差の中にいるようだから。ほとんどの人が暇なんじゃないですかね。
侘助 忙しい人は少数で大多数の人たちは仕事がなくて、四苦八苦しているみたいだからね。
呑助 そのようですよ。チャップリンの「ライムライト」は現在も繰り返されているんじゃないですかね。
侘助 「ライムライト」は名画だな。仕事を無くし、死にたくなったバレリーナに優しい言葉をかける喜劇俳優の発言には名言があるね。
呑助 「幸せはあるよ。ここに」ですか。
侘助 そう、自分の頭を指さし、諭す場面かな。
呑助 そうですよ。
侘助 チャップリンも渥美氏も下積みの人々への優しさがあるのかなぁー。
呑助 そうなんですよ。
侘助 「団扇にて軽く袖打つ仲となり」こんな句が渥美氏にあるね。
呑助 綺麗な女優さんと仲良くなったことがあるんでしようね。
侘助 マドンナ役は美貌の女優さんにとってできればやりたい役だったろうからね。
呑助 そうですよ。マドンナ役に抜擢されるためには、自ら売り込んだ女優さんもいたでしようからね。
侘助 渥美氏は案外、女性には、きれいな俳優さんだったんじゃないかな。
呑助 だらしない俳優の方が多い中で禁欲的な方だったみたいですよ。
侘助 渥美氏にとって心を許した女優さんは少なかったのかもしれないな。だからこんな句を詠んだのかもしれないね。
呑助 きっとそうですよ。
侘助 「うつり香の浴衣まるめてそのままに」。こんな句もあるよ。
呑助 白粉の匂いですかね。香水の香りでしようかね。
侘助 まぁー、両方だろうね。商売女だろう。
呑助 芸者さんかも、しれませんね。
侘助 一晩、添え寝をしたんだろうね。芸者さんたちの中には手をあげて添え寝を申し出た人もいたんじゃないかな。だからくじ引きで当てた芸者さんが添え寝したんじゃないかな。