醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより  220号   聖海(白井一道)

2016-02-28 15:16:17 | 随筆・小説

  tppは日本の富をアメリカが奪う その(4)

呑助 私は痛風もちなんですよ。水を飲むと良いから目標は毎日2リットル飲もうかと思っているんですよ。
侘助 ノミちゃんと俺とは「風の友」なんだ。
呑助 先日、かかりつけの医者に薬はジェネリックにして下さいとお願いしたんですよ。
侘助 その方が安いものね。
呑助 そうですよ。医者が言うにはジェネリックを私は使用していない。ジェネリックの薬用に安心できないからね、と言われてしまい、今までと同じ薬を貰ってきたんですけどね。
侘助 そりゃ、残念だったね。少しでも薬代が安くなりゃ、ノミちゃんの小遣いが得られたのにね。
呑助 tppが発行したら、どうなるんですかね。
侘助 現在おおよそ新薬の特許期間が二〇年から二五年ぐらいらしい。その特許期間が過ぎるとジェネリック薬を製造販売してもいいようだがね、tppでは、新薬の特許期間を延長したいというのが、アメリカの巨大製薬会社の意向のようなんだ。だからなかなか効き目が良くて安いジェネリック薬は出て見ないようになるみたいだよ。
呑助 そりゃ困りますね。
侘助 特に発展途上国ではエイズの薬に対する需要が多いようなんだ。そういう国では一刻も早く安くて効き目の良い薬がほしいようなんだけれども、難しい状況が生まれてくる可能性が高そうだ。
呑助 不治の病だと言われたエイズにも良い薬が出ているそうですからね。
侘助 医療に金儲けを導入するとこういうことになるんですよ。
呑助 公共の分野で金儲けはいけませんね。医療は無料というのが理想の社会ですね。
侘助 教育も無料というのがいいね。
呑助 将来を心配して保険というのも、いやですね。
侘助 保険をかけなくとも心配のない将来というのがいいよね。
呑助 そうですね。
侘助 金を儲けることは良いことだという考えは通用しない社会になってきているように思うんだけれどね。
呑助 金を儲けることは良いことだと言われた時代があったんですか。
侘助 「時は金なり」という諺があるだろう。これは時間を金で売ったり、買ったりする社会のことを表現しているんだ。現代の社会は時給八〇〇円でコンビニで働く学生がいる。この学生は自分の労働力量を時間で売っている。コンビニ経営者は学生の労働力を時間で買っている。労働力商品は時間で売り買いされている。だから時間は厳格に守られなければならない。そうでなければ、得する人、損する人が出てきてしまう。このような社会は成り立たない。だから時間を守れと、いうのが資本主義社会の道徳なんだ。
呑助 確かに、農民はそれほど時間に厳格じゃないですね。雨が降れば、家でできる作業をする。それも明るい間なんていうのがありますね、
侘助 「時は金なり」という言葉が言われ始めた頃、金儲けはよいことだったんだ。安くて良いものを作るために厳しい競争をする。企業活動を自由に放任すると自由な競争が人々の生活を豊かにしていくというわけだよ。経済活動の自由放任と自由競争が人々の生活を向上させる。だから金儲けの自由放任と自由競争の企業活動はよいことだったんだ。
呑助 そうですね。
侘助 しかし、農業や林業、漁業などの場合、難しい問題があるんだ。農業や林業は公共性が強い業種だ。森を守ることは空気をきれいにする働きあるじゃない。また水を造ってもいるでしよう。綺麗な空気や水がなければ人間は生きていけない。農業は健康な人間の身体を作っているでしよう。漁業は豊かな森が無ければ成り立たないようだよ。森から流れ出る川によって魚の餌になるプランクトンが育まれている。大事な公共事業だよ。