黙黙三昧 田添明美

黙黙と座しているひとがいて
黙黙に没頭しているので
声がかけられず

その周囲を
しずかに　うろついていた

ついに　そのひとは立ち上がり
うれしくなって
そのひとが振り向きざま

（今　黙黙としていましたね）というと

（そうですか
　ぼんやりしていただけなんだがなあ）と
さらり　いなされ

黙黙とそのひとに集中していたのは
自分であったか　ときづく

が
けれども
たしかに
部屋中に　　しーんと
黙黙の　互いの気配は
　　　　残っているのだった

　　　　　　　　　　　　R4.11.19