ガロで1969年の9月号の「少年」が入選作品でデビューした漫画家に「淀川さんぽ」がいます。
当時は,ガロの強烈な個性の作家達の中の一人と思っていました。その後,美術手帳の劇画特集の付録の「復活」を読んだ時は,絵柄が変化していて,その作品に,ゾクッとしました。
そこに登場する「ビチビチうんちのたれ吉君」のキャラクターは,それから十数年経っても,印象に強く残ってました。
淀川さんぽの活躍時には,彼の作品集は出版されることはありませんでした。20年程前に,ガロも美術手帳も数冊を除いて,ほとんどを処分してしまいました。もう読み返すことはできない,と諦めていました。
最近気まぐれに検索してみたら,なんと,淀川さんぽの作品集が出ていました!
ただ,残念なことにすでに絶版! 古本ではどうか? と探すと,「淀川さんぽベスト作品集」の在庫があり,すぐ注文しました。2100+300(送料)円。
その本が届くと,あった,あった。あの「復活」が。記憶とちがってあのキャラクター名は「ビチビチうんこのたれ吉君」だった。ガシガシと描かれたペンのタッチが心地よく,記憶のままに素晴らしい。のらくろや冒険だん吉なども登場し,漫画のキャラクターたちは不死身である,のメッセージが込められています。と,そのように単純に受け取っていいかどうか分からないけど……。
この「淀川さんぽベスト作品集」の出版社は「原っぱ社」といって,彼自身が少部数の本を発行するために作った会社であることも,そのホームページで知りました。1999年発行,限定500部で,A5版,見返しに銀色のペンで著者のサインが入っていた。奥付に「ありがとう」の文字。なんだかとてもうれしい。
ただ,この「淀川さんぽベスト作品集」の「復活」は,印刷物をスキャンして復元したようで,線や網点や文字が若干粗くなっていました。またこの本はインクの色も黒ですが,記憶では違う色だったような……。
「元のままの作品を見たいなー」と,「淀川さんぽ+復活+美術手帳」で検索すると,これも古本でありました。1500+180(送料)円。
それが届くと,発行から長時間が経過して紙は少し茶色にやけてましたが,青いインクの鮮明な画面です。38年前に目にした通りの画面です。
ガロはある時期から興味をなくして購入するのを止めてしまいました。「淀川さんぽベスト作品集」には,その購入を止めた後で発表した「墓ない男の物語」という,初めて目にする作品が最後に納められていました。この本の後書きの解説で,淀川さんぽがマックを使って24年振りにガロに発表したものであることを知りました。ソフトは何でしょうか? ペインターかなぁー?
この「墓ない男の物語」がいい。ソ連に抑留されて,その異国で亡くなった日本兵が主人公である。小さな石ころの下で,土に還っていく日本兵の亡霊の話しである。主人公は「日本に帰りたい」という思いを抱き続けているが,仲間たちは次第にその意欲も薄れていく……。この作品に関連する情報がネット上に少ないのは,読んだ人が少ないためでしょう。
これも,「もしかして,ガロに発表の画面は,画像の劣化もなく,より繊細かもしれない」と,今度はその作品のあるガロが欲しくなってきました。
調べると,「ガロ,1996年2月号,通巻372号」であることが分かり,検索。これも「キララ文庫」という古書店にありました。600+(送料)160円。
これも届いて,大きな画面で,淀川さんぽの手描きとマックの処理による,重厚で繊細な画面を隅々まで満喫できました。上の「墓ない男の物語」の画像は,このガロの画面をスキャンしたものです。でもデジタルデータがあるため,「淀川さんぽベスト作品集」はガロの画面と比較して劣化はなく,画面の大小の違いだけでした。31ページの「墓ない男の物語」を,発行部数の多いコミック誌が再現してくれて,もっと多くに人に読まれるといいなぁーと願います。
それと,彼の2000年頃の作品を,音楽入りで,読むこともでることが分かりました。これも魅力的な世界です。また新しいブログもありましたよ。
ということで,ここしばらくは,淀川さんぽの世界をさんぽしているような日々でした。また新作を読める機会を,気長に楽しみに待つことにします。
今、四方田犬彦さんの「漫画のすごい思想」を読んでいます。そこで、はじめて淀川さんの作品を知り、たまたま「淀川さんぽベスト作品集」を入手できました。
(ほとんど流通していないので、ラッキーでした。)
どの作品も素晴らしく、最近も伊藤重夫の作品をみて感じましたが、こういう作品もぜひ復刊して欲しいですね。
たまたま、こちらを見つけまして、紹介されているガロ、美術手帖も購入しました。楽しみです。
(なお、このコメントは非公開ですよね? 初心者な者で)
淀川さんぽ関連の書籍を買われたのですか。
おそらく数少ないと思われるので,ラッキーでしたね。
伊藤重夫作品は知りませんでした。今度探してみます。
ガロでもう1人,作品集のない作家がいて,それが
企画されないかなぁ〜と願っています。
秋山(or 夏草)しげのぶ。グロテスクで,グチャグチャで,
登場人物の体臭がするような世界です。
なお,コメントは公開です。もし消去をご希望の場合は,
こちらにその旨の書き込みをお願いします。すぐに
対応いたします。
色々と古書を検索しているうちに,“藤重夫復刻プロジェクト”の
あるサイトを発見しました! ついでにその応援に登録しました。
ヤフオクだとかなり高価で,手が出せませんが,これなら
2400円でコレクターになれます。秀甫さんのコメントに
感謝です。
https://motion-gallery.net/projects/dancing-mr
淀川さんぽさんは、いいですね。
四方田さんに感謝です。
伊藤重夫さん、私も登録しています。
楽しみです。
秋山さんも、探してみたいです。
コメントは公開でしたね。
本名ではないので、まあ、大丈夫かな?
ガロにあるようですが、
まずは、どれをおすすめでしょう?
秋山しげのぶのガロの切り抜きは,1973〜74年の4作品を保存しています。
ので,彼の作品の全部は読んでいません。当時はそのすごさがよく分かりません
でした。が,何故か気になって,切り抜き保存をしていました。
その数少ない中から,勧めるとしたら,やはりデビュー作になります。
最初から画風が仕上がっています。
1973年1月号 No.113。以下のサイトでも確認できます。
http://blog.goo.ne.jp/poyota280/c/14022de6db9127b9e9faf941fcb32dea/2
ただ,秋山しげのぶの作品は,知っている4作は総て仕上げの度合いは
同じで,手抜きはないように思います。
でも,伊藤重夫作品の雰囲気とは真逆なので, MotionGallery で応援が,
あんなに沢山集まるとは思えません。それが残念です。
秋山しげのぶさんのデビュー作、
注文しました。
楽しみです。
四方田さんの本によると、淀川さんは亡くなられたとのこと。
「ベスト作品集」の最後にある「ありがとう」の文字が、以前からこういうことを考えて、書かれていたような気がしました。
ついこの間のひな祭りの日に旅だったのですね。
私も秀甫さんのコメントで,銀色のサイン入りの
「淀川さんぽベスト作品集」を棚の奥から出してきました。
奥付の「ありがとう」の文字が,一瞬キラリとしたような
感じです。
秋山しげのぶさんのデビュー作,ご期待に添うことを
願っています。
それにしても、楠さんや、安部慎一、鈴木翁二、等々、当時のガロは豪華メンバーですね。これから読むのが楽しみです。
いろいろ、ありがとうございました。
1973年1月号のガロがお手元に届いたのですね。
秋山さんと相性があまりよくなかったのなら,すみませんでした。
しかし,背景でビートルズの曲が流れている,阿部慎一さんの
“ピストル” があります♪ その頃の時代の雰囲気をたっぷり
味わえることを願っています。