◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

今日の秀句/8月1日-10日

2014-08-10 09:57:57 | Weblog
[8月10日]
★高架路をカーブしかなかなの森へ/川名ますみ
高架の路をカーブすると、かなかなの鳴く森へ入った。「高架」「カーブ」が案内する別世界は、かなかなの声が響き渡る、森の童話を思わせるようなところ。(高橋正子)

[8月9日]
★亡き父の好物だった新豆腐/迫田和代
新豆腐は、今年できた大豆で作られる。残暑きびしい中で食べる新豆腐は、夏ばてした体を元気にしてくれるようだ。新豆腐に亡き父の笑顔が思い浮かんでくる。(高橋正子)

[8月8日/2句]
★川底の魚のしるきや秋近し/小口泰與
秋が近づくと水も澄んでくる。川底の魚もはっきりと見える。自然界は、こんなところから秋になっていく。(高橋正子)

★鱸釣り大物提げし男かな/河野啓一
鱸(すずき)の旬は6月から8月で夏の代表的魚。すらりとした精悍な顔つきの鱸は、出世魚でもあり、その大物を提げた男の姿は実に逞しい。(高橋正子)

[8月7日/2句]
★女子高生連れ立ち帰る青田道/多田有花
女子高校生は、青田のような時代。若く溌剌としている。その青田道を連れ立って帰るのは、農村地帯の純朴そうな女子高生。その女子高生と青田道の取り合わせがいい。(高橋正子)

★大空は淡き水色今朝の秋/高橋秀之
「今朝の秋」が実感をもって詠まれて、それがさわやかだ。「大空」もいい。広々とした空が淡い朝の水色で詩情がある。(高橋正子)

[8月6日]
 広島平和記念式典参列
★黙祷や雨の青芝踏みしめて/佃 康水
広島平和記念式典は、8月6日の原爆投下の日に行われる。原爆投下の日は、暑い日であったことを思えば、青芝に雨が降る式典は戦後69年経った歳月の経過を思わせる。式典に参列したケネディ大使がレインコートを着る新聞を見て、広島がこの日雨だったことを知った。(高橋正子)

[8月5日]
★ベランダにピザとワインの遠花火/小西 宏
ベランダで涼みながらピザとワインを楽しもうとしていると、遠くに花火の音が聞こえ、見えるのだろう。花火でワインとピザを楽しむ生活が今風で洒落ている。(高橋正子)

[8月4日/2句]
★夏富士の風乾くとき影の濃し/小西 宏
「風乾く」は、風が肌にさらりと感じられる日だろう。そういった日遠く眺められる富士山の影が濃い。あきらかである。(高橋正子)

★大皿に白く四角い冷奴/高橋秀之
大人数に用意された冷奴。大皿の白く四角な冷奴が、「白」「四角」のイメージで如何にも冷たく涼やかだ。(高橋正子)

[8月3日/2句]
★どこまでも波打つ稲穂のうすみどり/黒谷光子
どこまでも波打つ稲田のあるのどかな村。稲の穂のうすみどりが新鮮だ 。(高橋正子)

★バッグ背にバスに乗り来る日焼の子/桑本栄太郎
夏休みのちょうど真ん中。すっかり日焼けた子がバッグを背負って勇んでバスに乗ってきた。
夏休みを楽しんでいる子、それに温かいまなざしを注ぐ作者がいる。(高橋正子)

[8月2日]
★故郷の青い鬼灯水の音/迫田和代
故郷の夏の思い出は青い鬼灯と水の音である。鬼灯にはお盆と重ねて、暑い戦争の夏を思い出させるものがある。(高橋正子)

[8月1日]
★草むしり清められたる慰霊碑前/佃 康水
旧盆近くなると、墓の草取りや屋敷周りの草取りをして、きれいさっぱりとしてお盆を迎える。慰霊碑の周囲もきれいに除草されて、御霊を迎える。ただ草を取るのではなく「清める」のである。(高橋正子)
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8月1日-10日

2014-08-10 05:28:33 | Weblog
8月10日

●小口泰與
黄昏の城址に立つや秋の声★★★
大屋根の葺き終わりけり秋の風★★★
ご祝儀はおおかた奇数秋うらら★★★★

●川名ますみ
高架路をカーブしかなかなの森へ★★★★
高架の路をカーブすると、かなかなの鳴く森へ入った。「高架」「カーブ」が案内する別世界は、かなかなの声が響き渡る、森の童話を思わせるようなところ。(高橋正子)

かなかなの声が一時車窓から★★★
首都高にかなかなの森聴き過ぎぬ★★★

●小西 宏
公園の棚田の荒れて沢桔梗★★★★
夜の更けてまで二つ三つ秋の蝉★★★
降りて止みまた吹きなぐり秋の雨★★★

●桑本栄太郎
雨音の硬き音立て颱風来る★★★★
咆哮の木々の雄叫び颱風圏★★★
刻々と警報メールや颱風圏★★★

●古田敬二
草はらへ前進前進かぼちゃ蔓★★★
畑の外へ自由に伸びてかぼちゃ蔓★★★★
街に出るウイーン生まれのパナマ帽★★★

●多田有花
台風はいま我が頭上通過中★★★
台風下宅配便の届きおり★★★
濁流の上の青空台風過★★★★
台風が過ぎ去り、青空となったが、川は逆巻き濁りながら流れている。この対比に、台風のすざましさがある。(高橋正子)

8月9日

●小口泰與
谷川岳(たにがわ)の薙の修羅場や秋の晴★★★
ゆったりと田川流れし秋日和★★★
雲放つ赤城の嶺や虫の声★★★★

●黒谷光子
初秋の川音よりも雨の音★★★
桃の箱ゆるりと蓋を持ち上げる★★★
仏前のほのかに匂う桃三つ★★★★

●迫田和代
亡き父の好物だった新豆腐★★★★
新豆腐は、今年できた大豆で作られる。残暑きびしい中で食べる新豆腐は、夏ばてした体を元気にしてくれるようだ。新豆腐に亡き父の笑顔が思い浮かんでくる。(高橋正子)

台風が幸いそれて雨走る★★★
流星や遠い空の旅無事に終え★★★

●多田有花
ゆっくりと台風南方海上に★★★★
八月の嵐大気のひんやりと★★★
接近する嵐を待ちぬ長崎忌★★★

●桑本栄太郎
なだれ込む蝉のしぐれや自動ドア★★★★
自動ドアが開くとドア一枚で遮られていた内と外。外の蝉音がまさに「なだれ込む」。「なだれ込む」が身体的実感である。(高橋正子)

青空の雲の疾く行き野分めく★★★
新涼の窓より来たる夜半の風★★★

●河野啓一
海近き大川染めて秋入り日★★★★
秋の森を描きし額を壁に架け★★★
渦巻ける巨き雨雲秋台風★★★

●小西 宏
初秋の空の白むを蝉に知る★★★★
台風の未だ来ぬ空に雲巻ける★★★
露草の葉の群れたるに花も群れ★★★

●高橋秀之
台風に備えて船が出港す★★★★
台風が来ると、小舟は港に入るけれど、大型船は港の外へ出て碇を下ろす。来つつある台風に備えて、何隻もの船があわただしく出港する。台風前の港の活写。(高橋正子)

台風の近づくニュース夜は更けて★★★
束の間の晴れ間の後に台風が★★★

8月8日

●祝恵子
手に余るものはポッケにミニトマト★★★★
朝一番水たっぷりと夏野菜★★★
寝そべりし犬の鼻先白粉花★★★

●古田敬二
睡蓮や薄紅色の縁どりに★★★
打ち水や工事現場の守衛さん★★★★
夏草やサッカーボールの忘れ物★★★

●小口泰與
川底の魚のしるきや秋近し★★★★
秋が近づくと水も澄んでくる。川底の魚もはっきりと見える。自然界は、こんなところから秋になっていく。(高橋正子)

あけぼのや利根本流の波さやか★★★
北軽の草の波打つ秋気かな★★★

●河野啓一
鱸釣り大物提げし男かな★★★★
鱸(すずき)の旬は6月から8月で夏の代表的魚。すらりとした精悍な顔つきの鱸は、出世魚でもあり、その大物を提げた男の姿は実に逞しい。(高橋正子)

初秋の月淡くして中天に★★★
初秋や午後の紅茶とカステーラ★★★

●桑本栄太郎
土砂降りと云うほかはなし蝉時雨★★★
夏果ての蔓の葉黄ばむ支柱かな★★★
陸橋を走り驟雨のバスに乗る★★★★

●小西 宏
登り来て一杯の水お花畑★★★★
刺青のごと二の腕の日焼跡★★★
里山を行きヒグラシの波の中★★★

●高橋秀之
初秋の朝の晴れ間が夕に雨★★★
秋初め雲が真っ直ぐ流れ行く★★★★
立ち止まる秋の暑さの淀屋橋★★★

8月7日

●古田敬二
穂先から実りの色へ猫じゃらし★★★★
穂先から実り輝く猫じゃらし★★★
触れ合いて実りの色を猫じゃらし★★★

●小口泰與
大旱の金輪際の犬の舌★★★
頭(ず)に肩に雨を伴うさるすべり★★★★
雷鳴に寝屋より落ちぬ小犬かな★★★

●河野啓一
青空の見え隠れして秋立ちぬ★★★★
ホクホクと煮えし南瓜を皿に盛る★★★
新小豆思うや丹波の農の人★★★

●多田有花
女子高生連れ立ち帰る青田道★★★★
女子高校生は、青田のような時代。若く溌剌としている。その青田道を連れ立って帰るのは、農村地帯の純朴そうな女子高生。その女子高生と青田道の取り合わせがいい。(高橋正子)

青田波跨ぎ螺旋のバイパス路★★★
ゆく夏を空の青さに送りけり★★★


●桑本栄太郎
青空に向けて喇叭やダチュラ咲く★★★★
せせらぎの川風生むや白木槿★★★
さやさやと窓より夜気の涼夜かな★★★

●佃 康水
小さき森成せる札所や蝉時雨★★★★
盆用意先ずは仏具を磨き終ゆ★★★
平和の鐘余韻波打つ晩夏かな★★★

●小西 宏
広島や行く川土手に緑濃し★★★
土手走り追いし花火の落下傘★★★★
鳥目覚め囁く声や今朝の秋★★★

●高橋秀之
大空は淡き水色今朝の秋★★★★
「今朝の秋」が実感をもって詠まれて、それがさわやかだ。「大空」もいい。広々とした空が淡い朝の水色で詩情がある。(高橋正子)

今朝の秋窓から吹き込む風涼し★★★
秋に入る遠くの生駒がくっきりと★★★

8月6日

●小口泰與
秋近し朝の赤城山(あかぎ)の迫りける★★★
土用芽のいきおい猛し風の中★★★★
雲の峰生垣伸びし伸びしまま★★★

●河野啓一
たましいの底の嘆きや原爆の日★★★★
人の世の平和を希う原爆忌★★★
百日紅散りくる花の淡きこと★★★

●桑本栄太郎
君逝きしより八年や原爆忌★★★
茜さす通夜の日暮れや芙蓉咲く★★★
殺生のなき世なれやと蝉放つ★★★★

●小西 宏
向日葵の夢のでっかし隠れんぼ★★★★
白砂の熱き底なる蟻地獄★★★
部屋全て吹き抜きにして処暑の風★★★

●佃 康水
 広島平和記念式典参列
黙祷や雨の青芝踏みしめて★★★★
広島平和記念式典は、8月6日の原爆投下の日に行われる。原爆投下の日は、暑い日であったことを思えば、青芝に雨が降る式典は戦後69年経った歳月の経過を思わせる。式典に参列したケネディ大使がレインコートを着る新聞を見て、広島がこの日雨だったことを知った。(高橋正子)
 
広島忌雨の激しくテント打つ★★★
夾竹桃雨に散り敷く祈りの日★★★      


●古田敬二
本棚の「はだしのゲン」へ黙祷す★★★★
八時十五分蝉も慟哭広島忌★★★
殷殷と止まぬ鐘の音広島忌★★★

●多田有花
空に雲高々と立ち原爆忌★★★★
原爆忌の空に雲が高々と湧きあがる。暑い日であるが、きのこ雲でなく白い峰雲であることに
今日の日を思う。私は6日、横浜の空にめったに見ないかなとこ雲を見た。(高橋正子)

秋隣る頂に聞く風の音★★★
見上げれば六甲連山夏の雲★★★

8月5日

●小口泰與
D五一の罐の火あつし朝曇★★★
土用芽や顔くろぐろと夏季練習★★★★
ひまわりや半世紀過ぐ同窓会★★★

●小川和子
細き沢流れ避暑地の樹々深し★★★★
木立の間を細い沢が流れて、避暑地らしい風景だ。「樹々深し」に樹間を通る光をさまざま想像する。(高橋正子)

浅間岳晴れて眩き雲の峰★★★
木の十字架晩夏の空に仰ぎけり★★★

●河野啓一
初秋の木々の葉擦れに風を知る★★★
秋台風そろりりそろりと列島に★★★
青柿の顔を並べて空にあり★★★★

●多田有花
窓閉めて終日の雨秋近し★★★
青空と夏雲映しガラスのビル★★★★
桜葉の色づき初めし晩夏かな★★★

●桑本栄太郎
かしましき寺苑となりぬ蝉しぐれ★★★
菜園の葉の黄ばみ来る晩夏かな★★★
涼風の窓より来たる夜気の闇★★★★

●小西 宏
犬の舌曳き炎天の大通り★★★
とんぼ蚊を追いつつ鳥に食われけり★★★

ベランダにピザとワインの遠花火★★★★
ベランダで涼みながらピザとワインを楽しもうとしていると、遠くに花火の音が聞こえ、見えるのだろう。花火でワインとピザを楽しむ生活が今風で洒落ている。(高橋正子)

●高橋秀之
夏の風雲と雲とが交差する★★★
夏風と木々のざわめきリズムよく★★★
南から北へと夏風船は航く★★★★

8月4日

●小口泰與
地下足袋の屋根葺く人や油照★★★★
炎昼の職人屋根にたむろせり★★★
朝焼けや傘を携え旅に出づ★★★

●祝恵子
お昼には採りたて野菜とソーメンと★★★★
屋上の祭り提灯連なりぬ★★★
目標の土手の花合歓夕歩き★★★

●河野啓一
雨上がり銀杏並木は浅緑★★★★
透明な空の画布かな飛行機雲★★★
夕顔の太き蔓かな逞しき★★★

●桑本栄太郎
蝉しぐれ小雨の午後も鳴き止まず★★★
雲つどう雨の予報の晩夏かな★★★★
じりりりと蝉の寝言や真夜の闇★★★

●小西 宏
夏富士の風乾くとき影の濃し★★★★
「風乾く」は、風が肌にさらりと感じられる日だろう。そういった日遠く眺められる富士山の影が濃い。あきらかである。(高橋正子)

真夏日に花ゆらゆらと百日紅★★★
丘越えて音やわらかき宵花火★★★

●高橋秀之
大皿に白く四角い冷奴★★★★
大人数に用意された冷奴。大皿の白く四角な冷奴が、「白」「四角」のイメージで如何にも冷たく涼やかだ。(高橋正子)

雨上がりと同時に蝉の大合唱★★★
真っ青な南の空に雲の峰★★★


●古田敬二
睡蓮や目瞑り立てる観音像★★★
睡蓮や慈母観音像の真正面★★★★
睡蓮も観音像も真っ白に★★★

8月3日

●小口泰與
雨粒を揺らしておりぬ百合の蕊★★★
土用芽や再生の槌遅々として★★★
あけぼのの千曲の流れさやけしや★★★★
「千曲」に詩情が湧く。暮らしの周りは暑い時なのに、あけぼのの千曲の流れはさやかだ。(高橋正子)

●古田敬二
しなやかに実りて揺れる猫じゃらし★★★★
草の穂も実る季節になった。猫じゃらしも実り、「実りてしなやか」なのが猫じゃらしの特性。(高橋正子)

天辺へ咲き切り膨れる百日紅★★★
しなやかな曲線揺れる猫じゃらし★★★

●河野啓一
岐阜提灯組み立て今年も盆用意★★★★
先祖の霊を迎えるお盆にふさわしく、岐阜提灯は薄紙が張られ繊細な草草が描かれ、灯を入れれば、静かに透ける。今年もお盆の用意の一つに岐阜提灯の組み立てがある。(高橋正子)

夏空へ朝の飛翔や鳥の群れ★★★
ビーチバレー浜辺に水着ジャンプして★★★

●黒谷光子
どこまでも波打つ稲穂のうすみどり★★★★
どこまでも波打つ稲田のあるのどかな村。稲の穂のうすみどりが新鮮だ 。(高橋正子)

朝の畑いろ鮮やかに茄子胡瓜★★★
初生りは先ず仏前に真桑瓜★★★

●桑本栄太郎
バッグ背にバスに乗り来る日焼の子★★★★
夏休みのちょうど真ん中。すっかり日焼けた子がバッグを背負って勇んでバスに乗ってきた。
夏休みを楽しんでいる子、それに温かいまなざしを注ぐ作者がいる。(高橋正子)

故郷のブランドミルクやかき氷★★★
街灯のあかりを惜しみ蝉しぐれ★★★

●小西 宏
海あおあお丸き地球に夏の雲★★★
息詰めて潜るメガネに熱帯魚★★★★
小さき砂に波音の揺れ北斗星★★★

●佃 康水 
 夏休みの子供達へ 寺祭り
素麺を茹で上げ小さく纏めおく★★★
境内に竹樋の素麺流しかな★★★★
読み聞かせ子らの集える夏休み★★★

8月2日

●小口泰與
山霧のとよむ鍋割山(なべわり)眼間に★★★★
学生の合宿長し百日草★★★
玉虫や妹の買いたる宝くじ★★★

●迫田和代
故郷の青い鬼灯水の音★★★★
故郷の夏の思い出は青い鬼灯と水の音である。鬼灯にはお盆と重ねて、暑い戦争の夏を思い出させるものがある。(高橋正子)

何もない風だけ通る夏座敷★★★
口だけで笑ってくれるサングラス★★★

●桑本栄太郎
夏草や廃車埋もる赤き色★★★★
旅ごころ想い果てなく秋近し★★★
涼風の窓に哀しき夕べかな★★★

●河野啓一
木から木へ渡りてすだく蝉の恋★★★
青空の四方に耀く雲の峰★★★★
雲光りいざ本番とアロハシャツ★★★

●小西 宏
まだ明けぬ森動き初む一つ蝉★★★★
太陽に汗かき叫べ油蝉★★★
夕日陰る向かいの丘に涼しい風★★★

●多田有花
夜の秋静かに雨の降りだしぬ★★★★
夜はいくぶん涼しくなってきた。遠いところにいる台風の雨かもしれないが、「静かに」降りだした。その静かさは秋だ。(高橋正子)

すれ違う暑いですねと言い交わし★★★
寄ればふわり飛び立つ紋黄揚羽★★★

●古田敬二
高台へ角を曲がれば来る涼風★★★★
高台は耳に鳴るほど吹く涼風★★★
一粒ずつ色付き実るぶどう棚★★★

8月1日

●小口泰與
向日葵や胸板厚き高校生★★★★
松籟や雨を含みし百日紅★★★
遠き日や吹かれて来る落し文★★★

●桑本栄太郎
忽然とみんみん蝉や昼さがり★★★
突然の風吹き雨の晩夏かな★★★
嶺の端の茜真紅や大西日★★★★

●佃 康水
草むしり清められたる慰霊碑前★★★★
旧盆近くなると、墓の草取りや屋敷周りの草取りをして、きれいさっぱりとしてお盆を迎える。慰霊碑の周囲もきれいに除草されて、御霊を迎える。ただ草を取るのではなく「清める」のである。(高橋正子) 

山水の桶に押し合うとまとかな★★★
網張られごろごろ太る大西瓜★★★

●小西 宏
西風の草そよがせて夏の暮★★★
雷鳴を聞き雨となる地の香り★★★
出汁(だし)に漬け彩りを添え夏野菜★★★★
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