◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

今日の秀句/9月1日-10日

2014-09-10 05:49:41 | Weblog
[9月10日/2句]
★色鳥や心楽しむこと多し/小口泰與
大気が澄み、よい季節になった。いろんな小鳥の鳴き声や羽の色、仕草ひとつひとつがかわいらしく、楽しませてくれる。この気持ちのありように、心楽しいことが他にもいろいろある。(高橋正子)

★赤とんぼ見ていて闇の迫りけり/桑本栄太郎
夕方を飛び交う赤とんぼ。見ているうちにも宵闇がせまる。秋の日暮れはたちまちに夜を迎える。(高橋正子)

[9月9日/2句]
★草の穂の靡く先へとペダル踏む/黒谷光子
草の穂をそよそよと風が吹き、その道をさっそうとペダルを踏んでゆく快いひと時。草の穂と自転車の取り合わせがやさしい。(高橋正子)

★月昇る一直線の丘の道/小西 宏
一直線の丘の道は、月へまっすぐ向かっている道だ。明るくて大きな月が、すっきりと私の前に昇る。(高橋正子)

[9月8日/2句]
★鬼やんま街の景色を軽やかに/内山富佐子
鬼やんまが一匹飛ぶことで、街の景色が明るく軽やかになる。 一匹の鬼やんまを街の景色に描きこんだようなイメージだ。こんな画を飾りたい。(高橋正子)

★芋名月子ら皆元気西東/河野啓一
啓一さんのお子さんたちは、日本の西や東にお住まいで、名月がそのお子さんたち家族を統べるように輝いて、その月を見れば、みんな元気で暮らしていることに安心する。これこそが良い月である。(高橋正子)

[9月7日/4句]
★街路樹の立ち尽くしたり霧の朝/福田ひろし
「立ち尽したり」は、的確な描写。街路樹を立ち尽させることで、霧の動きや深さがありありと読める。(高橋正子)

★鈴虫の声を聞きつつ写経する/迫田和代
写経すれば心が落ち着いてくるということもあるが、この句はそうではなく、静かな心で写経していると、鈴虫の声が一層親しく思われ、そのきれいな声に心洗われるという心境だ。(高橋正子)

★秋祭り園児の出番太鼓打ち/祝恵子
秋祭りには、それぞれに役目があるが、園児たちの出番は太鼓打ち。園児たちは喜び勇んで、太鼓を思い切り打つ。その様子が微笑ましく、みんな揃っての秋祭りが明るい。(高橋正子)

 広島土砂災害跡
★山積の瓦礫離れぬ鬼やんま/佃 康水
広島の土砂災害の瓦礫の山は痛ましいかぎりだが、災害を知るよしもない鬼やんまがそこを離れない。自由にすいすい空を飛ばない鬼やんまは、異変を感じているのかもしれない。(高橋正子)

[9月6日/2句]
★零余子採るコロコロ笊を撥ね零れ/古田敬二
零余子の素朴さには、笊が似合う。笊に零余子を採れば、よく実の勢いで笊を撥ね零れる。その勢いがまた嬉しいものだ。(高橋正子)

★降りてきてまた昇りゆく秋の蝶/高橋秀之
蝶が降りてきて、また昇ってゆくことに、蝶の本質、また蝶の幻想的な世界が見える。(高橋正子)

[9月5日/2句]
★秋風を身体一杯橋の上/迫田和代
橋の上に出れば、秋風が身体を包んで吹く。橋の上は四方八方から風がもっとも通うところ。その風が身体を包んでくれる。秋風を心おきなく身体に受ける爽やかさがいい。(高橋正子)

★地は低く千草の花を煌めかす/佃 康水
「煌めかす」の主語は、「地」なので、その主語をはっきりさせるために、つまり、句意をはっきりさせるために、「地の」を「地は」とした。
千草の花のやさしいさ、美しさを詠んでいるが、それに終わらず、「地は低く」に作者の深い思いを感じさせている。(高橋正子)

[9月4日]
★秋の野に薄く煙の上がりけり/多田有花
夏のほてりが抜けた秋の野は、夏には旺盛だった作物や草などが勢いを失ってくる。それらを抜き取り、燃やしたりする。 そいう煙りだろうが、うすうすと上がっている。秋の野の落ち着いたたたずまいだ。(高橋正子)

[9月3日]
★秋色の四万十川に棹さして/河野啓一
清流で知られる四万十川。秋となれば、水はことに澄んで平らかになる。その水の一点に掉さし、四万十川と人との静かな関わりが生まれている。秋色は、辺りの景色をも含めた四万十川を表現している。(高橋正子)

[9月2日/2句]
★ほんのりと色つきだして式部の実/祝恵子
式部の実は、黄緑から白っぽい色となり、その色がほんのりと紫色になる。色づき始めの色が秋らしく新鮮だ。(高橋正子)

★赤とんぼ西向き行ける新学期/小西 宏
赤とんぼが西に飛んでいくことに必然はない。西は夕焼けの空もあるだろうし、西へ飛んでゆく飛行機もあるだろう。「西向き行ける」がこの句に味わいを出した。(高橋正子)

[9月1日]
★秋扇手に馴染みたる軽さかな/福田ひろし
夏の間使い続けた扇子だが、秋暑しの今日も扇子を使う。使い馴染んだ扇子が片手でひらけるほどなのだろう、軽く扱える。「手に馴染みたる軽さ」にこの句の妙味がある。(高橋正子)
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9月1日-9月10日

2014-09-10 05:47:10 | Weblog
9月10日

●小口泰與
色鳥や心楽しむこと多し★★★★
大気が澄み、よい季節になった。いろんな小鳥の鳴き声や羽の色、仕草ひとつひとつがかわいらしく、楽しませてくれる。この気持ちのありように、心楽しいことが他にもいろいろある。(高橋正子)

朝夕の鉄路の遠音初紅葉★★★
忘れ音や水琴窟へ秋の風★★★

●河野啓一
秋水の白く逆巻く吉野川★★★
生駒山狭霧の中に横たわり★★★★
秋の日の暖かき中に立ちつくす★★★

●多田有花
秋草に翅の破れし蝶の来る★★★
山際の雲を離れていざよう月★★★
雨多き今年は不作と梨農家★★★★

●桑本栄太郎
秋日さす嶺のうねりや送電塔★★★
翅ふるえ夕日に光り赤とんぼ★★★

赤とんぼ見ていて闇の迫りけり★★★★
夕方を飛び交う赤とんぼ。見ているうちにも宵闇がせまる。秋の日暮れはたちまちに夜を迎える。
(高橋正子)

●小西 宏
ほとばしる懸樋に交える塩蜻蛉★★★
漆黒の雲浮き立たせ稲光★★★
秋刀魚太り武骨の皿に安酒と★★★★
秋刀魚は、上品な皿に載せられるより、焼きたてを載せるには武骨な皿が似合う。酒も安酒がよい。きどらないところに野趣と寛ぎがあり、熱々の秋刀魚がうまい。(高橋正子)

9月9日

●小口泰與
鈍色の空や湖畔の花カンナ★★★★
抜きんでて天をかけるや葛の蔓★★★
山上湖にわかに色葉なりにけり★★★

●河野啓一
満月は生駒の山を越えて来る★★★★
杖突いて覗き見たるや月の影★★★
生駒山越え来るかな月今宵★★★

●多田有花
仲秋や午後の日差しが部屋に入る★★★
水色の空へ昇りぬ今日の月★★★★
澄む秋の朝日のなかを山へゆく★★★

●黒谷光子
秋茄子の色つややかに篭満たす★★★
一木を虜に天辺葛の花★★★
草の穂の靡く先へとペダル踏む★★★★
草の穂をそよそよと風が吹き、その道をさっそうとペダルを踏んでゆく快いひと時。草の穂と自転車の取り合わせがやさしい。(高橋正子)

●桑本栄太郎
角曲がり目玉と出遇う鬼やんま★★★★
釣り人の湾処をかこみ秋日傘★★★
八朔の松尾大社や泣き相撲★★★

●福田ひろし
秋の宵象の飼育舎固く閉じ★★★
左右から鼓膜くすぐる秋の蝉★★★
どの家も窓開けられし良夜かな★★★★
良夜の明るさに、家々の幸せが見える。どの家にも温かい灯がともり、窓から月の光が差しこんでいる。(高橋正子)

●小西 宏
雨の音聴きつつ秋の中にいる★★★
日の照れば森また忙し法師蝉★★★

月昇る一直線の丘の道★★★★
一直線の丘の道は、月へまっすぐ向かっている道だ。明るくて大きな月が、すっきりと私の前に昇る。(高橋正子)

●古田敬二
句帳買う余白を秋の句で埋めん★★★
目的地決めたか真直ぐオニヤンマ★★★
つくつくし家路へ急ぐ時に鳴く★★★★

9月8日

●小口泰與
電線の稲雀にぞ囃されし★★★
糠雨に雀飛び交う稲穂波★★★★
朝顔や沛雨の中の蔓の丈★★★

●古田敬二
新芋はてんぷらにすべし柔らかし★★★★
野におれば残暑の汗に風涼し★★★
火照る背に涼しき雨の落ち来たる★★★

●内山富佐子
朝空に教会の鐘秋来たる★★★
窓少し閉じて読書の白露かな★★★

鬼やんま街の景色を軽やかに★★★★
鬼やんまが一匹飛ぶことで、街の景色が明るく軽やかになる。 一匹の鬼やんまを街の景色に描きこんだようなイメージだ。こんな画を飾りたい。(高橋正子)

●河野啓一
宵待や雲厚けれど便り待つ★★★
芋名月子ら皆元気西東★★★★
啓一さんのお子さんたちは、日本の西や東にお住まいで、名月がそのお子さんたち家族を統べるように輝いて、その月を見れば、みんな元気で暮らしていることに安心する。これこそが良い月である。(高橋正子)

月影のさやか漣すすき原★★★

●多田有花
秋高しチャペルの鐘が麓より★★★★
「秋高し」は、また「天高し」。澄み渡る空へ麓のチャペルの鐘の音が響いてくる。晴れやかで、清々しい日だ。(高橋正子)

野も山も色変わり初む白露なり★★★
南北に空を泳ぎしいわし雲★★★

●桑本栄太郎
天辺の庭木色づく白露かな★★★
坂道のそこのみいつも萩の風★★★★
高階の灯を凌駕せり今日の月★★★

9月7日

●古田敬二
緩き坂をゆっくり空にはいわしぐも★★★★
風向きが変われば蜩遠くから★★★
蔓引けば重しかぼちゃの転げ出る★★★

●福田ひろし
仕事場に葡萄ひと房輝けり★★★
鰯雲消したき記憶の多きこと★★★

街路樹の立ち尽くしたり霧の朝★★★★(信之添削)
「立ち尽したり」は、的確な描写。街路樹を立ち尽させることで、霧の動きや深さがありありと読める。(高橋正子)

●小口泰與
椋鳥や長き影なす城の松★★★★
秋雨のしるき音たて来たりけり★★★
稲妻の託ちながらも旅の空★★★

●河野啓一
地虫鳴く声を聞きつつ句作かな★★★
そよ風を桔梗と並び頬に受け★★★★
松虫草鉢植えしたるその姿★★★

●迫田和代
鈴虫の声を聞きつつ写経する★★★★
写経すれば心が落ち着いてくるということもあるが、この句はそうではなく、静かな心で写経していると、鈴虫の声が一層親しく思われ、そのきれいな声に心洗われるという心境だ。(高橋正子)

草むらのあちらこちらに秋の色★★★
老眼をかけて書を読む秋の夜★★★

●多田有花
曇天に秋蝉の声幽かなり★★★
秋驟雨そのまま夜になりにけり★★★★
朝の陽に桜紅葉の一葉落ち★★★

●祝恵子
秋祭り園児の出番太鼓打ち★★★★
秋祭りには、それぞれに役目があるが、園児たちの出番は太鼓打ち。園児たちは喜び勇んで、太鼓を思い切り打つ。その様子が微笑ましく、みんな揃っての秋祭りが明るい。(高橋正子)

展示花画板に写す子秋始め★★★
お見舞いは小さなブーケ秋の窓★★★

●桑本栄太郎
土曜日の校門すいと鬼やんま★★★★
葉の色のうすき黄色や銀杏の実★★★
すいれんの葉裏うごめく秋の池★★★

●黒谷光子
きしませて篭にいっぱい秋茄子★★★★
秋の風窓全開に迎え入れ★★★
門前を通る人声月の夜★★★

●高橋秀之
秋雨の後の朝日に光る玉★★★
欄干に佇み居れば秋の風★★★
日曜の御堂を秋風吹き抜ける★★★★

●佃 康水  
 広島土砂災害跡
切も無く土砂を出す人泥の汗★★★
山崩れ顕わなるまま秋思かな★★★

山積の瓦礫離れぬ鬼やんま★★★★
広島の土砂災害の瓦礫の山は痛ましいかぎりだが、災害を知るよしもない鬼やんまがそこを離れない。自由にすいすい空を飛ばない鬼やんまは、異変を感じているのかもしれない。(高橋正子)

9月6日

●小口泰與
にぎわしく雀集うや威銃★★★
薄もやの稲田の面を野鳥かな★★★
顔中に綿菓子舞うや秋祭★★★★

●多田有花
通勤の車の列や秋の雷★★★
露草や朝の驟雨を宿しつつ★★★
頂の風に薄の立つ朝★★★★

●古田敬二
零余子採るコロコロ笊を撥ね零れ★★★★
零余子の素朴さには、笊が似合う。笊に零余子を採れば、よく実の勢いで笊を撥ね零れる。その勢いがまた嬉しいものだ。(高橋正子)

ころころと笊へ零余子こぼしけり★★★
正確な小節数よつくつくし★★★

●桑本栄太郎
高槻の晩稲田圃や稲の花★★★
乙訓の片方(かたえ)に垂るる稲穂かな★★★
たて笛を吹きつつ戻る新学期★★★★

●高橋秀之
降りてきてまた昇りゆく秋の蝶★★★★
蝶が降りてきて、また昇ってゆくことに、蝶の本質、また蝶の幻想的な世界が見える。(高橋正子)
はばたきもゆっくり空へ秋の蝶★★★
秋の蝶駅の待合に迷い来る★★★

9月5日

●小口泰與
似あわしや舞茸飯に熱きお茶★★★
秋ばらの赤き新芽のにぎわしき★★★
白露や高らかに鳴く野鳥どち★★★★

●河野啓一
杜鵑草野にあるままの背の高さ★★★★
蕎麦の花白く白くと咲き乱る★★★
衛星の映す列島秋の雲★★★

●迫田和代
秋風を身体一杯橋の上★★★★
橋の上に出れば、秋風が身体を包んで吹く。橋の上は四方八方から風がもっとも通うところ。その風が身体を包んでくれる。秋風を心おきなく身体に受ける爽やかさがいい。(高橋正子)

朝陽浴び大きな木陰の秋の風★★★
夕月夜明るく光る道を行く★★★

●桑本栄太郎
<四条大橋~祇園~建仁寺>
見下ろせば鯉の数多や水の秋★★★
べんがらの花見小路の秋意かな★★★
まだ青く高きところや花梨の実★★★★

●福田ひろし
霧の朝星占いは凶とある★★★
久々の月の明かりは霞みたり★★★★
霧の日はうつむきがちに襟立てて★★★

●佃 康水
秋高し被災地へゆく黄の列車★★★
凝らし見るほどに千草の花盛ん★★★

【原句】地の低く千草の花を煌めかす
【添削】地は低く千草の花を煌めかす★★★★
「煌めかす」の主語は、「地」なので、その主語をはっきりさせるために、つまり、句意をはっきりさせるために、「地の」を「地は」とした。
千草の花のやさしいさ、美しさを詠んでいるが、それに終わらず、「地は低く」に作者の深い思いを感じさせている。(高橋正子)

9月4日

●小口泰與
白露や畷にぎわす鳥の声★★★
にぎわしく波立つ湖や雁渡る★★★★
どんぐりの犬小屋に落つ音すなり★★★

●河野啓一
コスモスの花束抱え女子高生★★★★
コスモスと女子高生の取り合わせは、さわやかさ、素直さがあって、好感がもてる句だ。今の女子高生にもこんな姿が見られるのはうれしい。(高橋正子)

吾亦紅ひっそり地下の売店に★★★
秋夕焼け鴉の羽音空高く★★★

●多田有花
木漏れ日の森歩く新涼の朝★★★
コンビニにコーヒーの香り秋の朝★★★

秋の野に薄く煙の上がりけり★★★★
夏のほてりが抜けた秋の野は、夏には旺盛だった作物や草などが勢いを失ってくる。それらを抜き取り、燃やしたりする。 そいう煙りだろうが、うすうすと上がっている。秋の野の落ち着いたたたずまいだ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
秋澄むや雲の過ぎゆく峰の影★★★★
峰の間の白きチャペルや秋澄めり★★★
秋蝉の落ちて気高きむくろかな★★★

●黒谷光子
早朝のホームを渡る秋の風★★★
稲の秋田ごとに実りの色違え★★★
車窓より近江平野の稲の秋★★★★

●小西 宏
オムレツの湯気に秋聞く朝の鳩★★★★
苦瓜の紅割れ甘き香の垂るる★★★
唇に枝豆の毛のやわき触れ★★★

9月3日

●小口泰與
上州の稲妻なれや風の中★★★
秋の野や群し野鳥の高き声★★★
チャンプルのほろりと苦し秋旱★★★★

●河野啓一
ひたひたと河口寄せ来て秋の水★★★
秋色の四万十川に棹さして★★★★
清流で知られる四万十川。秋となれば、水はことに澄んで平らかになる。その水の一点に掉さし、四万十川と人との静かな関わりが生まれている。秋色は、辺りの景色をも含めた四万十川を表現している。(高橋正子)

吉野川秋光のなかカヌー隊★★★

●桑本栄太郎
彼岸花汝れも憤怒のあふるるや★★★★
秋風の池にせり出す木蔭かな★★★
どこまでも番いはなれず赤とんぼ★★★

9月2日

●小口泰與
秋ばらの枝の触れ合う音すなり★★★★
隠沼へ小川の瀬音芦の花★★★
草庵のそばをすするや酔芙蓉★★★

●河野啓一
若枝の伸びし勢い秋のバラ★★★★
つかの間の秋の日差しや朝の空★★★
柚子ありて武骨な柚と円い柚★★★

●祝恵子
石段を登りつめれば秋の空★★★
島よりの便りと写真秋の海★★★
ほんのりと色つきだして式部の実★★★★
式部の実は、黄緑から白っぽい色となり、その色がほんのりと紫色になる。色づき始めの色が秋らしく新鮮だ。(高橋正子)

●多田有花
納豆にモロヘイヤ混ぜ夕月夜★★★
蝉の声里に途絶えし九月に入る★★★

芙蓉描く窓辺に二度の通り雨★★★★
芙蓉の咲く季節、通り雨によく出会う。芙蓉を描いていると、一度ならず二度、窓辺を通り雨がすぎっていった。画に描かれた芙蓉にかかる雨のようである。(高橋正子)
●桑本栄太郎
さるすべり看板古び琴三絃★★★
秋すだれ今日の日陰の黒きこと★★★★
虫の音の宿る垣根や夕餉の灯★★★

●高橋秀之
軒下に雀の鳴き声秋の朝★★★
休暇明け朝の列車の賑やかさ★★★
秋の風潮の香りを運び来る★★★★

●小西 宏
赤とんぼ西向き行ける新学期★★★★
赤とんぼが西に飛んでいくことに必然はない。西は夕焼けの空もあるだろうし、西へ飛んでゆく飛行機もあるだろう。「西向き行ける」がこの句に味わいを出した。(高橋正子)

蜩の空かるがると森澄める★★★
蝉残り夜は松虫の鳴く静夜★★★

9月1日

●小口泰與
石段の芙蓉は空をなまめかす★★★
秋の山長き裾野はならびなく★★★★
本流のなまじ色ある秋日かな★★★

●河野啓一
街を出て翁も出合う赤トンボ★★★★
七草の名を数えつつ九月かな★★★
朝顔のつぼみの色や朝の夢★★★

●福田ひろし
秋扇手に馴染みたる軽さかな★★★★
夏の間使い続けた扇子だが、秋暑しの今日も扇子を使う。使い馴染んだ扇子が片手でひらけるほどなのだろう、軽く扱える。「手に馴染みたる軽さ」にこの句の妙味がある。(高橋正子)

窓わずか開けて虫の音寝間に入れ★★★
威筒夕闇貫く寂しさよ★★★

●桑本栄太郎
山よりの風に倒さる稲穂かな★★★
秋蝶の黒きひとひら樹の闇へ★★★
吾が立てば応え波打つ蘆の風★★★★
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