[12月13日]
★柊の堅き緑に花香る/小西 宏
柊の堅く濃い緑の葉に比べると、白い小さな花は品のある香りがして、葉の棘に傷つくのではないかと思うほど繊細。そこに目をつけて詠んだ。(高橋正子)
★雪もよいオレンジ色のコート着る/内山富佐子
どんより曇った雪もよいの日、オレンジ色の明るいコートを羽織って出かける。雪国の暗くなりがちな生活をオレンジ色のコートを羽織れば、気持ちが明るくなる。(高橋正子)
[12月12日]
★届きたる荷の早や香る冬りんご/佃 康水
林檎の荷が送られてきた。開けるとすぐさま林檎の匂いが広がる。新鮮な林檎の圧倒的存在感が詠まれている。(高橋正子)
[12月11日]
★リズム出て寡黙な夜に柿を剥く/古田敬二
干し柿にする柿を剥いている。何個か剥くと剥く所作に調子が出ては、面白いようにはかどってくる。干し柿作りの寡黙な夜が柿の色に染まってあたたかい。(高橋正子)
★新しき赤きザックや冬最中/多田有花
身の回りのものを新しくすると嬉しいものだ。冬の最中、赤いザックを買った。暗くなりがちな冬、背中に背負うザックが「赤」であるので、なおさら嬉しく元気が出るというもの。(高橋正子)
[12月10日]
★外套に利根の川風しみにけり/小口泰與
外套を着ていても利根の川風の冷たさは、身に沁みこむ。「外套」の役割で句に渋さが出た。(高橋正子)
★ 寒い朝庭に雀の来てくれる小西 宏
「雀の来てくれる」という喜びがいい。寒い朝にまん丸い雀が庭に来て元気に餌を啄む。遊びに来てくれた雀の可愛さ。(高橋正子)
[12月9日]
★県境は全山黄葉峪深し/古田敬二
山国の県境は峪深く、全山の黄葉も激しいといっていいほどだ。奥深い県境の自然に強い力がある。(高橋正子)
★マスクして自転車こげば歌の出る/祝恵子
風邪の予防にかけているマスクだろう。寒さの中を自転車で走るとき、マスクがあれば温かい。冷たい風にさっそうとペダルを踏んで、歌が口をついて出る。(高橋正子)
[12月8日]
★隣家の屋根耀ける初霜に/河野啓一
朝窓を開け、隣家の屋根が初霜に輝いているのを見つけた。厳しい寒さの中にも、元気が湧いてくる明るさがある。(高橋正子)
★足跡もなく真っ白に雪の朝/高橋秀之
誰もまだ踏んでいない朝の雪。思いがけずも積もった白くほっこりと、清らかな雪を目に楽しむ作者。(高橋正子)
[12月7日]
★冬紅葉まだ庭隅に在る明るさ小西 宏
師走を迎え、紅葉も散り終わろうとするころになったが、まだ庭隅には冬紅葉が明るく残っている。見るにつけ、気持ちに明るさが加わる。(高橋正子)
★満月が師走の町の上に出る/多田有花
師走の夜空は群青紺を深めている。そこに満月がくっきりと昇って、清らかな、懐かしいような夜となっている。(高橋正子)