7月20日(2句)
★海風に幟はためく氷水/廣田洋一
「氷」の幟を立てて、氷水を案内しているが、その幟が海風にはためいている。その光景は夏そのもの。(高橋正子)
★大仏もともに濡れつつ梅の雨/多田有花
鎌倉の大仏は、露座仏。梅雨が降れば、梅雨に濡れる。大仏を拝する私も濡れるが、大仏も濡れておられる。「ともに濡れつつ」と仏の心をふと思った。(高橋正子)
7月19日(1句)
★短夜のバルト海行く船の旅/廣田洋一
北欧のバルト海は地中海で、その船旅を楽しまれた。船で行く旅はゆったりと沿岸の景色が楽しめる。短夜が効いて、つい、白夜を思ってしまった。(高橋正子)
7月18日(3句)
★青葉木寃山にちりばむ星の数/小口泰與
青葉木寃が鳴く山、そのうえには星がちりばめられている。豊かな思いになる夜である。(高橋正子)
<鎌倉・建長寺>
★山百合を映して池あり建長寺/多田有花
山百合は山などに自生して、自生とは思えぬほどの大きな花を数花つけ、倒れそうな姿である。それがそのまま池に映り、静かさをたたえている。禅寺の池となれば、趣も格別だ。(高橋正子)
★祇園会の明けて朝より雨となる/桑本栄太郎
祇園会が明けて、安堵の雨であろうか。静かに京を濡らしている。(高橋正子)
7月17日(1句)
鎌倉・建長寺
★蓮開く細かな雨を宿しつつ/多田有花
蓮が開くのは、梅雨のころから。雨の蓮、晴れた朝の蓮。それぞれに赴きがあるが、建長寺の蓮は細かな雨を宿して開いていた。禅寺の静かさとも言えようか。(高橋正子)
7月16日(1句)
鎌倉・建長寺
★地蔵座す仏堂包み梅の雨/多田有花
梅雨の長雨にすっぽりと包まれた法堂。幾年の歳月の静かさを思う。(高橋正子)
7月15日(1句)
★雲の峰どのレジ台を選びても/小口泰與
スーパーのレジに並ぶ。どのレジ台を選んでも、そこからは雲の峰が見える。ひろびろとした地方の町の眺めのいいスーパー。日常のここにも詩心を湧かせる景色がある。(高椅正子)
7月14日(1句)
★夏燕ついと虚空に飛び出しぬ/多田有花
夏燕はどこから現れたかと思うほど、ついと空に飛び出してくる。夏空の深さを思う時だ。春の巣作りのころ、梅雨のころと燕はそれぞれの季節、自分の仕事に合わせたような飛び方をするが、夏燕は、飛び方がなんと面白い。(高橋正子)
7月13日(1句)
★嬬恋の山家の一夜寝茣蓙かな/小口泰與
冷房のないころ、夏の寝苦しさを避けるため、寝茣蓙を使った。イ草のふんぷんとした香りに匂いからも涼しさを感じたものだ。嬬恋の山家では、冷房を入れるほどでもないのだろう。寝茣蓙を敷いて寝た一夜が昔懐かしさを呼ぶ。(高橋正子)
7月12日(2句)
★時鳥山家の夕餉早早と/小口泰與
山家に泊まる。はやばやと夕餉をとれば、時鳥が鳴く。たっぷりと時間がある山家の夕ベ。(高橋正子)
<京都四条通り>
★曳初めの長刀鉾に出会いけり/桑本栄太郎
祇園祭の始まり。偶然にも曳き初めの長刀鉾に出会った。祇園祭の高揚感がここに始まり湧いたとき。(高橋正子)
7月11日(2句)
<沖縄平和祈念公園>
★慰霊の日の日の出に向けて歩きけり/多田有花
沖縄慰霊の日は6月23日。8月6日の広島原爆忌、8月9日の長崎原爆忌と合わせて、記憶すべき日とされるようになった。日の出に向けて歩くは、意味があるということだが、純真に命を捧げた人たちを思う。(高橋正子)
★旅人をもてなす宿の岩清水/廣田洋一
旅の渇きをいやしてくれるのは、冷たくおいしい水。岩からしみ出る清水は何よりうれしいもの。(高橋正子)