10月10日(4名)
小口泰與
啄木鳥や榛名九嶺袖重ね★★★
雁が音やしおりを挟む方丈記★★★
木犀や星大粒に山飾り★★★★
廣田洋一
有難く受けし推薦薄紅葉★★★★
黄菊をば取り囲みたる供花かな★★★
生垣を越えて香りぬ黄菊かな★★★
多田有花
傷つきし翅もて飛びぬ秋の蝶★★★★
雨あがり雲間に細き朝の月★★★
鶏頭のうえに鎮座の蛙かな★★★
桑本栄太郎
無造作に藁のロールの刈田かな★★★★
刈田に稲藁がロールにされている。ロールからぼさぼさと藁が飛び出して、いかにも大ざっぱに作ったようだ。本業の米作りに比して、収穫後の藁は、自由に扱われているかもしれない。無造作なのもまたいい景色なのだ。(高橋正子)
コロナ禍やふるさと遠く秋愁う★★★
歩みゆく池の周りや真弓の実★★★
10月9日(5名)
小口泰與
秋ばらの散り広がりて赤白黄★★★
湖が暮れはや沈む日や虫の声★★★
椋鳥の群をすっぽり大樹かな★★★★
椋鳥が大群で行動するところを見かける。空のひとところが黒くなっていると椋鳥の群れだ。一群が大きな樹に止まり、大きな樹は、椋鳥の群れを懐に入れてしまったようにすっぽり隠してしまう。その様子。(高橋正子)
廣田洋一
断れぬ推薦状や秋深し★★★
鎌倉ややぐらの奥の秋の声★★★
貯水池の水満々と秋の声★★★★
水が満々と湛えられていると、水から声が聞こえてきそうな感じがする。物音が発せられなくても、心に響く声がある。それが秋の声。貯水池でのこと。(高橋正子)
多田有花
晩秋の嵐近づく風の音★★★
色変える柿が野鳥を呼び集め★★★
鵯の十分に食べ飛び去りぬ★★★★
桑本栄太郎
吾が歩む歩調に合わせ鉦叩★★★★
山茶花の垣根に添いぬ実の赤く★★★
見下ろせば紅葉し初めり庭の木々★★★
古田敬二
高きにも地にも満開萩の花★★★
塀を超え地まで満開萩の花★★★★
マスクばかりCOVID19秋の雨★★★
10月8日(5名)
小口泰與
見上げたる深き星河の耀える★★★★
「星河」は、「天の川」のこと。「深き」が、奥深い空の彼方へ見るものを誘う。星河は、ときに明滅するかのように輝いている。「耀える」なのだ。(高橋正子)
風渡る薄の似合う榛名富士★★★
白波の湖へ尾花のなだれ咲き★★★
廣田洋一
薄紅葉木の葉波打つ段葛★★★
恐懼して受けし沙汰あり薄紅葉★★★
川べりの小石拾ひて秋の声★★★
多田有花
秋の薔薇赤さいよいよ冴えにけり★★★
児童らの並び通学寒露の朝★★★★
雨やめばすぐ鳴き始め残る虫★★★
桑本栄太郎
京なれや高貴な色の実むらさき★★★
前触れの小雨となりぬ野分来る★★★
雨降れば夕にもみづる庭木かな★★★
古田敬二
秋雨や追悼文集編集す★★★
高層ビル静かに煙らす秋の雨★★★
雨に濡れ空心菜の白い花★★★
「※登録のない俳号やペンネームでの投句は、削除いたします。」の規定に副わない本日の投句は削除いたしました。
10月7日(4名)
小口泰與
大輪の菊やゆっくり歩を運び★★★★
入園の我にまつわる赤蜻蛉★★★
洞窟の奥深くにもちちろかな★★★
多田有花
更待やパソコンをシャットダウンする★★★
掌に風船葛の軽さかな★★★★
熟れてゆく柿のうしろは日本晴れ★★★★
桑本栄太郎
<京都市景観保全地区樫原山陰街道三題>
べんがらの格子戸褪せて秋日さす★★★★
郷倉(ごうそう)というは蔵なり秋の晴れ★★★
古びたるばったん床几や秋の暮れ★★★
注1「郷倉(ごうそう)・・奈良時代の穀物集積倉庫
注2「ばったん床几」・・・跳ね上げ式縁側
廣田洋一
堰落ちる水は変わらず崩れ簗★★★★
堰に仕掛けた簗が崩れてあわれな状況であるけれど、堰を落ちる水は、簗を仕掛け、盛んに鮎などが獲れたころと変わらない。変わるもの。変わらないもの。(高橋正子)
杭一つ石に止められ崩れ簗★★★
一本の竹烏の止まる崩れ簗★★★
10月6日(5名)
多田有花
寝待月昇るを見つつポストまで★★★
寝待月下を救急車が走る★★★
眠るかな臥待月の明るさに★★★★
名月を眺めたあと月の出を待つ日々。次第に月の出が遅くなって、臥して待つように。少し明るさの落ちた月あかりに、しっとりと、静かな眠りにつけるのは、優雅なこと。(高橋正子)
小口泰與
おちこちに声谺して茸狩★★★★
遠き日や雨の滴の金木犀★★★
コスモスの揺れいる辺り鳥鋭声★★★
廣田洋一
薄紅葉桜並木の段葛★★★
十和田湖へ期待の旅や薄紅葉★★★
瞑想の釈迦牟尼像や萩なびく★★★
桑本栄太郎
山畑の日を溜めてをり紫苑咲く★★★★
紫苑は、今昔物語にも出て来るので、古風な雰囲気の花のと思えて、花言葉も「追想」。山畑の隅に植えられ日を溜めている姿に、しみじみした思いになる。(高橋正子)
生垣に萎びふうせん蔓の実★★★
入日さす柿の色づく山の畑★★★
古田敬二
一反を真白に広げ蕎麦の花★★★★
秋温し八十路三人皆元気★★★
山に来て柿の紅葉散るに会う★★★
10月5日(6名)
小口泰與
銀杏を帽子で受けし社かな★★★
校舎より洩るる合唱木の実時★★★★
赤城嶺を真向いにして藁ぼっち★★★
廣田洋一
せせらぎの音に混じる香金木犀★★★★
薬屋の香り放てる金木犀★★★
神田川橋のたもとに金木犀★★★
多田有花
田にひとり落穂を拾う男あり★★★
コスモスや風に光に遊ばれて★★★★
コスモスが風にそよいでいる様子。風だけでなく、光にも遊ばれて、やさしい印象をあたりに広げている。(高橋正子)
どの田にもはやひつじ穂の出揃いぬ★★★
桑本栄太郎
鶏頭の緋色燃え立つ門扉かな★★★★
闇深き樹間にありぬ蘇芳の実★★★
噴き出しすは慙愧の色か彼岸花★★★
川名ますみ
硝子器に挿せし木犀玄関へ★★★★
木犀の香りを留めるために挿す器はなにが一番かになれば、硝子の器が一番ふさわしいと思える。木犀の香りこそ、透明なもので受け止めたい。(高橋正子)
木犀を挿してやさしい家になる★★★
木犀の薫りは花器の一枝から★★★
古田敬二
葡萄食む遺影の慈顔に見つめられ★★★
月下美人臥待月に照らされて★★★
木犀の香りの下を中学生★★★★
10月4日(6名)
小口泰與
ぽっけよりキャベツ太郎や小鳥來る★★★
もてなしの新酒と古酒の飲み比べ★★★★
外っ国の人もしたりと鵙の贄★★★
廣田洋一
底抜けの青空透かす柿すだれ★★★★
一枚の田毎に一つ稲架を組む★★★★
棚田などに見られる景色。一枚の田に一つ稲架を組んで足りる。それが田毎にいくつもある。写生が効いている。(高橋正子)
からからに乾きし稲穂稲架に垂る★★★
多田有花
曼珠沙華紅白並んで咲きにけり★★★
毬割れて栗つややかにのぞきおり★★★
素十忌やもっとも過ごしやすき頃★★★★
素十は「純客観写生」と言われる方法で近景を単純化して俳句に詠み、虚子からは高い評価を得た。「もっとも過ごしやすい頃」は、すっきりと健やかな季節で、素十の句の世界に通じると思える。(高橋正子)
桑本栄太郎
小鳥来る朝の団地や豆まわし★★★★
青き実の団栗見上ぐ葉陰かな★★★
素十忌のなんきん赤く末枯るる★★★
古田敬二
薄暗き山道抜ければ曼珠沙華★★★
ごんぎつねの森へ続けり曼殊沙華★★★★
山装おう前の渇きの山道を行く★★★
川名ますみ
散歩終え木犀を手に訪ね来る★★★
チャイム鳴り伐りしばかりの金木犀★★★
木犀を手に来し人を迎えたる★★★★
10月3日(4名)
小口泰與
宿下駄を響かせもどる今年酒(原句)
宿下駄を響かせもどり今年酒★★★(正子添削)
オカリナを奏でる丘や小鳥来る★★★
稲雀黒雲の如翔ちにけり★★★★
多田有花
夕食を終え十六夜の月を待つ★★★
軽快に自転車通学秋の朝★★★★
珍しや住宅街に残る稲架★★★
桑本栄太郎
天辺のうすき紅葉の楓かな★★★
石垣を迫り出し咲きぬこぼれ萩★★★
藤の実のからぶる風の白さかな★★★
古田敬二
(アフガニスタンに倒れた中村医師へ)
かの国の川辺に咲けよ彼岸花★★★
ごんぎつねの撃たれし森の曼珠沙華★★★
畝作る高きに百舌の初鳴きす★★★★
畝を高く作って、大根など地中に深く伸びる作物を育てるのだろう。高高と畝でき、百舌が高音で鳴く。深まる秋がここにある。(高橋正子)
10月2日(5名)
小口泰與
千年の巨樹へ月光差しにけり★★★★
仰ぎたる浅間快晴信濃柿★★★
酒好きの酒を尊び苦うるか★★★
廣田洋一
穭田に群なし遊ぶ雀かな★★★★
稲を刈ったあと、穭が伸びて田が蘇ったようになると、零れた籾を啄みに雀が群れてやって来る。もう、追われる心配もないので、喜々としている。こんな雀の姿は見てたのしい。(高橋正子)
(木々そよぐ代々木公園秋の声★★★)
月の道遮る雲の消え去りぬ★★★
星一つ脇に置きたる月皓皓★★★★
桑本栄太郎
秋空のずんずん進む飛機の雲★★★
穭田の植えたるようにみどりかな★★★★
石垣の枝の枝垂れや柿灯る★★★
多田有花
照らさるる稜線の木々今日の月★★★★
名月や凹凸までもくっきりと★★★
名月の去りにし後を眺めやる★★★
古田敬二
曼殊沙華何を受けんと天に開く★★★
どこまでも伸びる南吉の曼殊沙華★★★
満開になれば揺れるよ曼殊沙華★★★★
10月1日(5名)
小口泰與
秋ばらの散るをうながす雨しづく★★★
団栗の跳ね返りたる渓の岩★★★
曼珠沙華蕊の先まで雨の粒★★★★
廣田洋一
真昼中穭田青く光をり★★★★
吹き来たる風の冷やか散歩道★★★
秋冷の雨に濡れたる車窓かな★★★
多田有花
待宵や雲隙間なく空埋めて★★★
雲晴れてくっきり深夜の小望月★★★
青空へ蕊を掲げて曼珠沙華★★★★
曼珠沙華がりんりんと蕊を広げ、青空にまっすぐ立っている景色が鮮やかに目に浮かぶ。(高橋正子)
桑本栄太郎
銀杏の葉陰に艶の朝かな★★★
ひくひくと翅を開閉秋の蝶★★★
くつきりと稜線黒く秋の宵★★★★
古田敬二
風の来る縺れず揺れる猫じゃらし(原句)
風の来て縺れず揺れる猫じゃらし★★★(正子添削)
時鳥草穂先に蕾母思う★★★★
忘れいし月見団子を賄えり★★★