3月20日(4名)
小口泰與
密やかに一人静や丘の辺に★★★
芽柳や紙飛行機の風に乗り★★★★
芽柳がやわらかにそよぐほどの風がある。紙飛行機が軽く風にのって飛ぶ。春風の姿がよく詠まれている。(高橋正子)
春セーターおちこち青き庭の芝★★★
多田有花
辛夷咲く蒼天のほか何もなし★★★★
連翹の黄色輝くカーブの先★★★
春分やリコーダーを吹きならす★★★
廣田洋一
観音像の裳裾に揺れる枝垂桜★★★
五分咲きの桜の枝の活気かな★★★★
桜が五分ほど咲いた。十分花を楽しめる咲き具合。これから満開へとぐっと力を溜めている。いきいきとした桜の様子に励まされる思いだ。(高橋正子)
お彼岸のお萩を供へ母の味★★★
桑本栄太郎
藁立てる支柱のぼりぬ花ゑんどう★★★
敷き詰もる紅の地獄や落つばき★★★
白れんの傷み散りたる道の辺に★★★
3月19日(5名)
小口泰與
春風やゲートボールの婆の声★★★
亀鳴くや十三仏を暗誦す★★★
如月や飴に五家宝に塩せんべい★★★
廣田洋一
啓蟄の雀遊べる潦★★★
啓蟄の庭に忘れしスコップかな★★★
桜の芽緑色濃くふふみけり★★★★
桜の芽が膨らんできている。今、芽は生気に満ちた緑色。日々刻々に変化して開花に向かう桜を楽しみにしている心。(高橋正子)
多田有花
咲き初めし陽光桜に日の光★★★
せせらぎの音を背後に山桜★★★
来し方を振り返りつつ花仰ぐ★★★★
「さまざまな事思ひ出す桜かな 芭蕉」の句を思い出すが、桜は一年の区切りを印象付けてくれる花。多くの人が持つ心境。(高橋正子)
桑本栄太郎
校門のつぼみ紅立つ桜の芽★★★
堰水の白く煌めき新芽立つ★★★
白れんの並木通りや商店街★★★
古田敬二
残り鴨まだ泳いでいる山の池★★★
散る前の木蓮揺れる川向う★★★
鶯の姿を見せて鳴くを見る★★★
3月18日(5名)
廣田洋一
今朝もまた主見送る風信子★★★
紫は立子の色や風信子★★★★
早咲きの桜真白や並木道★★★
小口泰與
奥利根の峡の棚田の菫かな★★★
釣竿の穂先くぐりて虻唸る★★★
道はたと絶える端山の牧開き(原句)
道はたと途絶え端山の牧開き★★★★(正子添削)
端山への道を辿ると、はたと途絶えるところ。そこに牧場が開かれ、思わぬ景色にであう。いよいよ放牧の季節となった明るさが感じられる。(高橋正子)
多田有花
いま朝日とどき初めにし山桜★★★
いそひよどり囀りのいと軽やかに★★★★
桜咲く列島のうえ飛機がゆく★★★★
桑本栄太郎
コンクリの風の割目やすみれ咲く★★★★
無垢と云う白れん早も萎れけり★★★
でこぽんのおでこ膨らむ春うらら★★★
古田敬二
馬酔木咲くレンズ一杯溢れる程★★★
残雪の御岳見える三角点★★★
三角点鶯の啼く姿見ゆ(原句)
鴬の啼く姿見ゆ三角点★★★★(正子添削)
三角点は山の頂上あたりに設置されている。そこで、鴬が啼く姿を目の当たりにした。普段は声を聞くのみの鴬だけに、感激である。「三角点」を詠み込んだのが新しい。(高橋正子)
3月17日(5名)
小口泰與
庭いまやひたすらに萌え木の芽時★★★
また二人蓬を摘みに来たりける★★★★
忽然と鋭声の雉や藪の中★★★
廣田洋一
あたたかや使ひ古しの木の定規★★★★
最近は木の定規が珍しくなったが、使い馴染じみ古した木の手触りがあたたかい。暖かな日が差すところにある木の定規。昭和のなつかしさが湧く(高橋正子)
日の射せる庭に出てみて暖かし★★★
篩いたる土を干したり暖かし★★★
多田有花
遠山をすべて隠せる春霞★★★★
暖かやわが肋骨を伸ばしおり★★★
朝を呼び幾度も雉の鳴き続く★★★★
春山に雉の声が鋭く響く。いく度もなく鋭声に記事は朝を呼んでいるようでもある。春の朝が雉に呼ばれてやって来る。(高橋正子)
桑本栄太郎
空おおう園の桜や咲き初むる★★★★
目覚むれど未だ明るき遅日かな★★★
嶺の上のうすきピンクや春の宵★★★
古田敬二
御嶽の遠くにかすんで桜咲く(原句)
御嶽の遠くかすんで桜咲く★★★★(正子添削)
御嶽と桜がある景色。霞がかかり御嶽は遠くかすんでいる。桜の雲がやわらかに前景にある。(高橋正子)
さらさらと音させ春の種を蒔く
「種蒔き」「種を蒔く」は春の季語なので、「春の」は不要と思います。「さらさらと音させ」は大変いいと思います。
こんなにも高く欅芽吹きけり(原句)
こんなにも高く欅の芽吹きけり★★★★(正子添削)
3月16日(5名)
小口泰與
照鷽(てりうそ)や榛名湖へボート漕ぎ出づ★★★
小綬鶏や呼ばふ岸辺の船着き場★★★
つばくろや軒の広びろ菓子問屋★★★★
「つばくろ」は「つばめ」のこと。春になってつばめが南の国から帰って来てくれるのはうれしいことだ。代々続く菓子問屋の広い軒のつばめの巣。さそじゃ貫録のあるものであろう。(高橋正子)
多田有花
桜咲く真昼の風のやわらかし★★★★
講演を終えて眺める春の山★★★
桜咲く重たき髪を切りにけり
「重たき」が気持ちを重くさせます。髪を切ったあとの「軽さ」をいうのが桜と合っていいと思います。(高橋正子)
廣田洋一
雪柳夜目にも白く揺れてをり★★★
通学の子らの自転車雪柳★★★★
雨上がりいよよ真白き雪柳★★★
桑本栄太郎
<洛西の山里>
長屋門ありし旧家や春の里★★★
白壁の築地に添いぬ白木蓮★★★★
白壁の築地は、日にあたると白が眩しい。白木蓮の白も眩しい。白に白が重なる眩しさがいい。(高橋正子)
菜の花や目鼻分かたぬ辻地蔵★★★★
古田敬二
高山線上り列車に山桜★★★★
そこだけを明るく照らして山桜★★★★
青ぬたや母の味には追いつけず★★★
3月15日(4名)
小口泰與
渓流の逸る流れや木の芽時★★★
山峡の隣家は遠し巣立鳥★★★
春雷や玻璃戸を囃す山の風★★★★
廣田洋一
鷺の二羽春日を浴びて佇めり★★★
頬白来光あふれる公園に★★★★
頬白や声も出さずに飛び去りぬ★★★
桑本栄太郎
ほろほろと雨の滴や馬酔木咲く★★★
びょうびょうと耳朶過ぎぬ春田風★★★★
あおぞらに無垢の蒼ざめ白木蓮★★★
古田敬二
柔らかき色となりたる芽吹き山★★★
猫柳生家を川へ下る道★★★
山躑躅咲きそむ数え切れぬほど★★★★
3月14日(5名)
小口泰與
山峡の田水に走る蝌蚪の影★★★★
雁帰る秋田諸越届きける★★★
裏庭へひそかに招く沈丁花★★★
廣田洋一
春の野や夕を告げたる童歌★★★
春の野を渡る鐘の音杳々たり★★★
春の虹半円のまま留まりぬ★★★★
多田有花
雨あがり山の桜の咲きはじめ★★★★
春寒の東屋に鍵盤ハーモニカ★★★
鶯の囀り響く濃き朝霧に(原句)
鴬の囀り響く濃き朝霧★★★★(正子添削)
古田敬二
蓬餅思い起こせば母がおり★★★★
フクシマの涙かと思う春の雨★★★
初黄蝶風吹くままに流れ行く★★★
桑本栄太郎
白れんの少し蒼ざめ今日満開★★★
咲き満ちて摘んで見たる白木蓮★★★
みちのくの風の電話や春愁ふ★★★
川名ますみ
嵐やみわが家に架かる春の虹★★★
春の虹その大きなる眩しさよ★★★
すぐそこに大き二重の春の虹★★★★
3月13日(3名)
廣田洋一
春の野に草食む馬の散らばりて★★★
春の野や摘みたる花を押花に★★★★
ブラスバンドのマーチ流れる春野かな★★★
小口泰與
ひたすらにカメラ構える雉かな★★★
春の雲榛名を刷きて照り曇り★★★
駄菓子屋の婆は元気や紙風船★★★
桑本栄太郎
ほゆほつと咲き初め至る雪柳
吾が影の田道に長き日永かな★★★★
春雲の嶺を奔りて止まらず★★★
3月12日(5名)
小口泰與
青麦やひょこんと下りる禽一羽★★★
赤城より秀づる風や麦青む★★★
牡丹の芽毛筆の如ふふみける★★★
廣田洋一
並木の芽紅く染まりて時を待ち
「芽」だけでは、季語となりません。「芽吹く」などは、季語です。
枝毎に声をかけたり木の芽晴★★★★
ゆるやかな川の流れに木の芽張る★★★
桑本栄太郎
ものの芽や在校生のランニング★★★★
小雨降り嶺の連なる木の芽山★★★
しつとりと芽吹きを誘う小雨かな★★★
多田有花
サングラスして運転の日永かな★★★
春の昼ラジオ体操一二三★★★
のどけしや多機能トング使い初め★★★
古田敬二
飛騨川の瀬音届きぬ猫柳★★★★
薄闇の二人に香る沈丁花★★★
マスクして表情見えぬ人ばかり★★★
3月11日(5名)
廣田洋一
鶴引きて水面のしんと鎮まりぬ★★★
プランターの土と苗札新たにす★★★★
苗札を覗きて名前教りぬ★★★
小口泰與
足の爪切りたる先や揚雲雀★★★
轟ごうと谷は雪解や日闌ける★★★
我が浅間今ひたすらに雪解かな★★★★
多田有花
明けてくる朝の光に鶯鳴く★★★★
三月や集いて食べる混ぜご飯★★★
日が永くなったねと言いドアを入る★★★
桑本栄太郎
春光の甍きらめく山の里★★★
窓開ける市バスの中や春日燦々★★★★
十年の早やも東北震災忌★★★
古田敬二
猫柳活けて賑わう饅頭屋★★★
暖かき色の塊紅梅は★★★
友を訪う分葱一束携えて★★★★