6月20日(5名)
小口泰與
翡翠の川えび咥え来りけり★★★
明日祭り音のかそけき真夜の雨★★★★
翡翠の潜りし水の噴火せり★★★
多田有花
ステーキ重食べる涼しき卓につき★★★★
鹿よけに守られ青き紫陽花咲く★★★
あじさいを飾る神社の手水鉢★★★
桑本栄太郎
あじさいの紺の色濃く雨を待つ★★★★
木蔭ゆく朝の散歩の夏日かな★★★
ふんぷんと匂い立ち来る草刈り機★★★
廣田洋一
百合の花大きく開き蕊光る★★★★
お互いにそっぽ向きたる百合の花★★★
河骨や池のよどみに黄の澄みて★★★
弓削和人
つりがね草こぼれんばかりの袋提げ★★★
だんだんと緑の濃ゆる青嶺かな(原句)
「濃し」は形容詞で、動詞ではないので、「濃ゆる」は問題です。(髙橋正子)
だんだんと緑濃くなる青嶺かな(正子添削)
路の照りへ土より離れ蚯蚓出づ ★★★
6月19日(3名)
小口泰與
山女釣り徒歩渡りたる山の渓★★★
姦しき蝦蟇の鳴き声銅鑼のごと★★★
翡翠や一直線に水面へ★★★
多田有花
夏山に立てば淡路島はるか★★★
入道雲湧く城跡の山の上★★★
夏暖簾くぐり老舗の和菓子店★★★
桑本栄太郎
堰水の音に沿いゆく暑さかな★★★★
白花の風の木蔭に夾竹桃★★★
涼風の木蔭に入りてひと休み★★★
6月18日(5名)
小口泰與
翡翠や長き嘴より水垂らす★★★
水過行く此処かしこに鮎の群★★★
置き鈎に掛かりし鯰子の笑顔★★★
多田有花
夕刻にさっと仲夏の通り雨★★★
仰ぎたる青葉若葉の尊けれ★★★
睡蓮を見つつ太平記の山へ★★★
廣田洋一
白靴を際立たせたる長き脚★★★
砂利道の水溢れおり走り梅雨★★★★
亀の子や万年生きよと神の池★★★
桑本栄太郎
夜の更けて音に目覚むる夜立ちかな★★★
雨音の激しく聞こゆ梅雨入りまだ★★★
雨あがり楓若葉のきらめける★★★
弓削和人
故郷のひそり奥間の走馬灯★★★
尾の欠ける不動のとかげ陽に満ちて★★★
花菖蒲ひそか咲きいる清き湫★★★
6月17日(4名)
小口泰與
川蝉やかぎろう沼の面に魚★★★
青田風赤城のすそ野隠れなし★★★
隠れ沼や川蝉枝を動かざる★★★
多田有花
つばめ旋回夏陽沈みゆくなかを★★★★
扇風機羽根を付ければ生き返る★★★
水茄子を浅漬けにして食しけり★★★
廣田洋一
取り敢えず盥に入れし子亀かな★★★★
青芝にぽとりと落ちて安打かな★★★
また一匹茶碗に落ちる小蠅かな★★★
桑本栄太郎
曇りいて降らぬ朝や花南天★★★
帰り来て一気に汗の溽暑かな★★★
黒蟻の慌てふためく雨予報★★★★
6月16日(4名)
廣田洋一
裸足にて青芝駆ける子の笑顔★★★★
青芝やきらきら光る雨上がり★★★
亀の子や親の背中にまどみおり★★★
小口泰與
写真機の収む浅間や夏の風★★★★
風薫る垣穂に隠る野鳥かな★★★
牛蛙鳴き合い沼を狭くせり★★★
桑本栄太郎
じりじりと京の町家の炎暑かな★★★
もつこりと嶺に育てる雲の峰★★★
父の日や父はなけれど爺の我★★★
多田有花
蚊取線香点ければ始まる宵の時★★★★
かたわらに燕眠らせ夏の月★★★★
うるささに作る手製の蠅叩き★★★
6月15日(3名)
小口泰與
利根川の波の遊びて夏の月★★★
鮎掛かるさびき釣なり利根の風★★★
浅間嶺に夏雲遊び限りなし★★★
多田有花
鳴いてまた虚空へ飛び出す夏つばめ★★★
南北の窓開け六月の風通す★★★
紫を縁に揃えて花菖蒲★★★★
廣田洋一
城跡の小さき丘や杜鵑★★★
街角に白き幕垂れ山法師★★★
白靴やボール蹴り合う父と子等★★★
6月14日(5名)
小口泰與
おおよその赤城のすそ野麦青む★★★
参考までに「麦青む」は春の季語です。(髙橋正子)
夏霧や尾瀬の木道眼間に★★★
塩鮎をがぶりと食し面映ゆし★★★
多田有花
しもつけに細かき雨の続きおり★★★
猫がいておだやかに暮れ夏の夕★★★
青鷺の大きな影が頭上ゆく★★★★
参考までに。「鷺」だけでは季語にならないのに、「白鷺」「青鷺」となれは夏の季語になる
ので気をつけないといけない季語です。(髙橋正子)
桑本栄太郎
お使いの行きも帰りも片かげり★★★
花合歓のうすき紅さし佳人かな★★★
ドローンの夜空に虹の京の夜★★★
廣田洋一
地の果ての岬遠くに雲の峰★★★
草原の果なき空や天の川★★★★
杜鵑産土の森鳴き渡り★★★
弓削和人
滴りの岩間の端も滴れる★★★★
夏の月生きたるものの囃子かな★★★
羅の掛けたるままにゆるぎなく★★★
6月13日(5名)
小口泰與
川蝉や川面めがけて翔けにける★★★
おおらかに利根の流れや通し鴨★★★
けたたましく翡翠鳴きて沼の面へ★★★
廣田洋一
百合の香や人を引き付け夕間暮れ★★★
都会では水不足なり天の川★★★
プールにてバレーゲームや賑やかに★★★
多田有花
ほととぎす血潮の如き朝焼けに★★★
家庭菜園とうきびの花出そろいぬ★★★★
高架橋の上の夏空ひこうき雲★★★
桑本栄太郎
せせらぎの坂を下りぬ木下闇★★★
手弱女と云うは西施や合歓の花★★★
堪らずに扇風機出す暑さかな★★★
弓削和人
夏めくやカーテン越しの淡き風★★★
雨を乞うように角上ぐカタツムリ★★★
夏木立一葉一枝の寝息かな★★★
6月12日(5名)
小口泰與
翡翠や静寂の中の鯉の鰭★★★
万緑や牧の子牛のおっとりと★★★★
利根川の岸辺おおむね夏景色★★★
廣田洋一
明易き庭に飛び来る鳥の声★★★★
門前に人を迎える黄花百合★★★
竹林の奥より聞こゆ杜鵑★★★
多田有花
赤子抱く父とあいさつ夏の朝★★★
腸内を覗きこまれている入梅★★★
水田はすでに梅雨入り待つばかり★★★
桑本栄太郎
夏あかね舗道に影の数多かな(原句)
夏あかね鋪道に影の数多飛び(正子添削)
あじさいの毬をひと枝剪り活ける★★★★
緑蔭の風をひと時憩いけり★★★
弓削和人
枇杷の実のごろごろごつと薄紙へ★★★
一房のあじさい小虫の城と見ゆ★★★
玉苗の美(は)しきは雲と並びけり★★★★
景色はいいと思います。「玉苗」は「早苗」の美称でそれ自体美しいイメージを持っているので、「玉苗の美しきは」の表現がリアリティを欠く結果になっていると思います。ここを工夫されるといいと思います。★印4つですが、秀句にあげなかった理由です。(髙橋正子)
6月11日(4名)
小口泰與
隠れ沼や川蝉枝を動かざる★★★
白鷺の羽音激しき山の沼★★★
虹指して子等騒ぎけり下校時★★★
「騒ぐ」が気になります。(髙橋正子)
多田有花
羽音して蚊取線香を点火★★★
銭葵日差し日ごとに強くなり★★★
集まりて花壇植え替え夏の朝★★★
桑本栄太郎
青鷺の途方に暮れるように佇つ★★★
緑蔭にしばし憩うや朝歩き★★★
信号を待つ間も入りぬ片かげり★★★
廣田洋一
羽ばたきの練習開始燕の子★★★
この句で、「開始」は詩の言葉としてどうでしょうか。「始め(はじめ)」でいいのではと思います。(髙橋正子)
短夜や開きしままの文庫本★★★★
川風を受け流したる青芒★★★