◆自由な投句箱/花冠発行所◆

主宰:高橋正子・管理:高橋句美子・西村友宏

9月11日-9月20日

2014-09-20 06:39:36 | Weblog
9月20日

●小口泰與
菩提寺の堂の柱へ鬼やんま★★★
朝顔の葉末そよぐや黙の中★★★
洋館にはだかる蔦の初紅葉★★★★

●迫田和代
朝の部屋まっすぐ飛び込む秋の風★★★
秋袷化粧落ちした女あり★★★★
秋涼の季節に相応しい織や柄の秋袷も着こなしにより雰囲気はいろいろ。隙なく装うより、少し化粧落ちしたところに、秋のさびしさもあって、個性を感じさせる。(高橋正子)

丸い月ガラクタ照らしつ去って行く★★★

●黒谷光子
松茸の先ずは香りを頂けり★★★
到来の松茸酢橘も添えられて★★★
佛にと届く大束紫苑かな★★★★
紫苑は丈高く伸びて、ひと茎に咲薄紫の花もたくさんだ。その花を抱えるほどの大束にして、佛にとくれた。紫苑の優しい色があふれる。(高橋正子)

●小西 宏
秋の花満ちたる原は子らの畑★★★★
犬枇杷ちょう秋の実犬と分け食べる★★★
ひょろひょろと風に揺れてる秋のバラ★★★

●多田有花
秋曇り英作文の練習中★★★★
真夜中にひいやりとして毛布出す★★★
萩咲くや朝の散歩の彩りに★★★

●桑本栄太郎
おはぐろの椎の実ほぐれ丘の上★★★
一山となりし残土や草の花★★★
母の名は智恵子と云いし秋彼岸★★★★

9月19日

●小口泰與
塊りて影のみだれぬ稲雀★★★★
明け五つ日は激しくもきりぎりす★★★
半月や博徒忠治の墓の石★★★

●河野啓一
カラコロと外湯めぐりや秋深し★★★
裏通り行けば湯けむり湯の香して★★★

マンション群抜けて秋野を送迎車★★★★
送迎車は、自宅から多少離れたところへ送り迎えをしてくれ、途中の景色も楽しみなもの。マンション群が途切れたところに急に秋の風情ある野原が現れる。都市近郊の開発中のところなどで見られる景色だが、芒や千々の草を眼にすれば、嬉しいものだ。(高橋正子)

●小川和子  
 津軽平野
陽に映える稲田貫く車窓かな★★★
四方より雲湧き上がる稲の秋★★★★
林檎樹に紅きりんごの撓わなる★★★

●小西 宏
子規の忌や心にカメラ持ち歩く★★★
波広きススキが原を雲のゆく★★★★
桃の香や遅れて来たるかぶと虫★★★

9月18日

●小川和子
岩風呂の湯の湧く音や秋灯★★★
山荘の夜は花野に更けにけり★★★
朝霧の晴れて岩木の山蒼し★★★★

●内山富佐子
秋風と競い下校の男の子★★★
校庭に子らの飼う馬秋の風★★★★
校庭で馬を飼うのは、人と馬の生活が親密な北国らしいことであると思うが、「天高く馬肥ゆる秋」の季節を迎えた。子供たちが嬉しそうに馬に餌を与えている様子を思う。(高橋正子)

噴水に小さき虹や秋日和★★★

●小口泰與
あけぼのの稲田滂沱の雫かな★★★★
榛名湖の忽と消えけり霧巻きぬ★★★
稲妻やはげしき妙義山(みょうぎ)闇の中★★★

●多田有花
カンナ咲く角を曲がれば海に出る★★★★
生活に海がある瀬戸内海。海の色とカンナの強い色が対比され、明快な瀬戸内らしい風景だ。(高橋正子)

瀬戸渡る秋夕焼けの消えゆく中★★★
頂に残る燕の飛び交いぬ★★★

●黒谷光子
破れ蓮の池に一輪遅れ咲く★★★
白萩の一株紅萩続く路★★★★
秋風に乗り籾殻を燃す煙★★★

9月17日

●小口泰與
懸命に鮎下りけり静寂のみ★★★★
湖の端を襲う木立や鬼やんま★★★
皺の手を見くらぶ顔や残る蝿★★★

●河野啓一
どんぐりを求め並木を散策す★★★★
つくつくし季節を惜しみ枝の先★★★
ゆうパック供物届くや秋彼岸★★★

●小川和子
水差しの秋水旨し岩木山(やま)の宿★★★
岩木山からの秋水喉にしみ透る★★★

名月や北へ来て居る旅の夜半★★★★
名月の北の夜は、季節も一層進んで、月の光も冴えわたっていることだろう。北の夜半の旅愁の名月。(高橋正子)

●桑本栄太郎
大橋を過ぎて祇園へ秋の色★★★
童子かと想う田中の案山子かな★★★
秋蝉のいつしか鳴かず日暮れけり★★★★

●多田有花
<西条市にて>
澄む水の湧き出すところ西条は★★★
<新居浜市にて二句>
澄む秋の沖に連なるしまなみの島★★★

太鼓台金糸銀糸を秋の陽に★★★★
新居浜の太鼓台は、勇壮できらびやかなことで名高い。太鼓台を飾る金糸、銀糸に秋陽があたるとまばゆい。太鼓台をまぶしくさせる「秋の陽」が、祭りに趣を添える。(高橋正子)

●小西 宏
杣道に紫やわき木通(あけび)の実★★★★
そよ風に桜もみじの一葉かな★★★
虫の音にビルの灯遠く瞬ける★★★

●福田ひろし
旅の朝水澄みわたる武家の町★★★
秋の水わが身冷たく癒しけり★★★

銀漢や海峡の町の路地深く★★★★
海峡のある町の路地の突き当たりは海であることも多いが、その路地の奥深くに天の川の無数の星が見える。海峡の生活の路地にぴったりと嵌った天の川だ。(高橋正子)


9月16日

●古田敬二
一歩ごと屈んで木の実拾いけり★★★★
先ず一輪朝陽を受けて彼岸花★★★
コスモスの蕾も花も揺れ優し★★★

●小口泰與
野路暮れて草の陰へと稲雀★★★
あけぼのの畦のおちこちきりぎりす★★★★
里山の雀被ける案山子かな★★★

●黒谷光子
なだらかな反り橋渡る蓮は実に★★★
女郎花切ればほろほろ黄の零れ★★★
澄む水を汲みて仏の花を挿す★★★★

●内山富佐子
影の濃く風の乾きて秋来たる★★★★
青空を掃き清めたる秋の風★★★
青空の模様替えかな秋の風★★★

●桑本栄太郎
<四条大橋~祇園界隈>
上流のはるか鞍馬や秋の雲★★★★
京都の北、はるか鞍馬山の方を眺めると秋の雲が浮かんでいる。鞍馬寺、鞍馬山などで知られる鞍馬だが、はるか遠い歴史を思いださせるような秋の雲だ。(高橋正子)

弁柄の一力茶屋に秋日かな★★★
外つ人の路地をカメラに秋日影★★★

●佃 康水
孫と手を繋ぐ絵届く敬老日★★★
柿たわゝ色の出始め子規忌来る★★★★
白塀に沿い彩れる葉鶏頭★★★

●小西 宏
冠のクヌギどんぐり王の顔★★★★
惜し惜しと森騒ぎあり秋うらら★★★
枝豆を唇に吸い夕の雲★★★

●多田有花
秋の雲流れる高架駅の上★★★★
石鎚に立ち遠望す秋の海★★★
雲の湧く頂に咲き岩桔梗★★★

9月15日

●小口泰與
きらきらと滴はく゜くむ稲田かな★★★★
木道の野末へ伸びし芒かな★★★
浅間山(あさま)へと日の退くや夕化粧★★★

●内山富佐子
九月晴れ夏のなごりの雲残し★★★
今日は北明日はひがしの秋出水★★★
子らの乗る土管の汽車や秋の風★★★★
秋の風が心地よく吹くようになると、子供たちはいろんなものを見つけて遊ぶようになる。土管を汽車に見立て、土管にまたがって遊んでいる。かわいらしい風景だ。(高橋正子)

●黒谷光子
築地塀少し崩れて実むらさき★★★★
石庭の紋様くっきり秋日差し★★★
古刹へは白壁の塀新松子★★★

●桑本栄太郎
天の地を地は天讃え秋気満つ★★★
柿の実のぬつと色づく日差しかな★★★
妻電話の赤子と話す敬老日★★★★

●小西 宏
澄む風に若きススキの硬く立つ★★★★
穂が出たばかりの若いススキが、澄んだ風にしっかりと立っている。「澄む風」「硬く立つ」の表現から、わかわかしい穂ススキの姿が読み取れる。(高橋正子)

その色も木の葉に合わせ秋の蝶★★★
ガラス窓擦(さす)るごとくに虫の声★★★

●福田ひろし
父母を連れ海峡渡る秋高し★★★★
空は高く晴れ渡り、海峡を流れる潮は明るく輝き、父母を連れての旅がよい旅で、親孝行をされた。海峡の素晴らしい景色を読み手も眺めているようだ。(高橋正子)

秋の水柄杓ことりと戻しけり★★★
海峡をまたぎて赤きうろこ雲★★★

9月14日

●小口泰與
榛名富士ねたまし霧の妙義山★★★
おしろいや羽音はげしき群雀★★★★
蔦かずら逃るる如き早き雲★★★

●桑本栄太郎
野分めく風に雄叫ぶ庭の木々★★★
山里は人住まぬかに秋の園★★★
青き網掛けて無花果熟れにけり★★★★

●黒谷光子
飛ぶことをためらっており草の絮★★★
水引草古刹の庭の片隅に★★★

群れ咲きて水引草の赤の濃し★★★★
水引草は、一すじの茎を伸ばし、それに米粒ほどの小さい花を茎に沿ってつける。まばらに茎が伸びていると、花の存在も空気にまぎれてしまうほど。しかし、群れ咲くとその紅色が鮮やかで、水引草の印象も強まる。(高橋正子)

9月13日

●古田敬二
森を行く秋の入日のほうへ行く★★★★
秋入日あれは伊吹の山の形★★★
栗実る夕陽の輝く毬の中★★★

●小口泰與
初紅葉湖は朝日を独り占め★★★
コスモスの風をまとうや川清し★★★★
つんつんと雨を刺したる濃竜胆★★★

●桑本栄太郎
数珠玉の川風に添い水に沿う★★★★
川沿いの数珠玉を吹く風に馴染み、そこを過ぎれば、川の水の流れに沿って歩く。風に沿い、水に沿う逍遥は、数珠玉があってどこかさびしくなる。(高橋正子)

高黍や風吹きすさぶ乙訓に★★★
川べりの木を覆いけり葛の花★★★

9月12日

●小口泰與
草の実や羽音きびしき群雀★★★★
草の実を食べる雀たちは、人が近づいたり物音がすると、一斉に飛び立つ。この時の、音が厳しく空気を切る。草の実を糧に日々命をつなぐ雀たちの厳しさを見た。(高橋正子)

里山の名も無き川や草の花★★★
川岸の桜紅葉のげに散りぬ★★★

●福田ひろし
明月や夜空も蒼きことを知る★★★
群青の夜空にかかる月今宵★★★★
霧の町汽笛のあとは瀬音のみ★★★

●河野啓一
新御堂青葉の陰に銀杏が★★★
笛太鼓聞きつつ歩く秋遍路★★★
鳥渡る野越え丘越え水の辺に★★★★

●桑本栄太郎
轟音の真夜に響けり秋の雷★★★
秋澄むや山河色濃くなりにけり★★★★
蘆原のオ-べーションや池の風★★★

●小西 宏
白雲の木々に眩しき九月晴★★★
柿少し色づき深き葉に重し★★★

群れ飛んで夕日眩しき塩蜻蛉★★★★
この句では赤とんぼではなく、塩から蜻蛉が詠まれて、少し珍しい光景だ。夕日を翅に反射させる蜻蛉が眩しいのだが、夕日を取り立てて「夕日眩しき」としたのがよい。蜻蛉と夕日が一体化した。(高橋正子)

●古田敬二
名月や一句浮かぶまで歩く★★★★
名月や三十八万キロ先にある丸さ★★★
名月やラジオから平家物語★★★

9月11日

●小口泰與
間引菜やあかあかと朝日出づ★★★★
朝の露を踏んで菜を間引くと、朝日があかあかと昇る。素晴らしい秋晴れの朝だ。間引菜の稚いみずみずしさと朝日は生まれ出た喜び。(高橋正子)

水滴に逆光みつる稲田かな★★★
コスモスや紫紺に暮れし赤城山★★★

●桑本栄太郎
朝冷えやコーヒーカップを掌に★★★
新駅の高架通過や稲穂波★★★★
山里はすでに燈灯り秋入日★★★

●高橋信之
秋の野を妻と二人のバスの旅★★★
白芙蓉を咲かせバス終点の村★★★
バス降りてここより歩く秋高し★★★★
バスの窓から見える景色もよいが、バスを降りて、バスの通らない道を歩くものよい。空は頭上に、青く高くあり、歩くには格好の天気だ。(高橋正子)

●高橋正子
咲き垂るる葛の花ある谷の村★★★★
少年の無口に答う葛の花★★★
秋の野に遊びて夜の薬風呂★★★
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●デイリー句会投句箱/9月1日~10日●

2014-09-11 05:54:47 | Weblog
※好きな句の選とコメントを<コメント欄>にお書き込みください。
※お礼などの伝言も<コメント欄>にお書きください。

◆俳句日記/高橋正子◆は、下記のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/kakan02
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今日の秀句/9月1日-10日

2014-09-10 05:49:41 | Weblog
[9月10日/2句]
★色鳥や心楽しむこと多し/小口泰與
大気が澄み、よい季節になった。いろんな小鳥の鳴き声や羽の色、仕草ひとつひとつがかわいらしく、楽しませてくれる。この気持ちのありように、心楽しいことが他にもいろいろある。(高橋正子)

★赤とんぼ見ていて闇の迫りけり/桑本栄太郎
夕方を飛び交う赤とんぼ。見ているうちにも宵闇がせまる。秋の日暮れはたちまちに夜を迎える。(高橋正子)

[9月9日/2句]
★草の穂の靡く先へとペダル踏む/黒谷光子
草の穂をそよそよと風が吹き、その道をさっそうとペダルを踏んでゆく快いひと時。草の穂と自転車の取り合わせがやさしい。(高橋正子)

★月昇る一直線の丘の道/小西 宏
一直線の丘の道は、月へまっすぐ向かっている道だ。明るくて大きな月が、すっきりと私の前に昇る。(高橋正子)

[9月8日/2句]
★鬼やんま街の景色を軽やかに/内山富佐子
鬼やんまが一匹飛ぶことで、街の景色が明るく軽やかになる。 一匹の鬼やんまを街の景色に描きこんだようなイメージだ。こんな画を飾りたい。(高橋正子)

★芋名月子ら皆元気西東/河野啓一
啓一さんのお子さんたちは、日本の西や東にお住まいで、名月がそのお子さんたち家族を統べるように輝いて、その月を見れば、みんな元気で暮らしていることに安心する。これこそが良い月である。(高橋正子)

[9月7日/4句]
★街路樹の立ち尽くしたり霧の朝/福田ひろし
「立ち尽したり」は、的確な描写。街路樹を立ち尽させることで、霧の動きや深さがありありと読める。(高橋正子)

★鈴虫の声を聞きつつ写経する/迫田和代
写経すれば心が落ち着いてくるということもあるが、この句はそうではなく、静かな心で写経していると、鈴虫の声が一層親しく思われ、そのきれいな声に心洗われるという心境だ。(高橋正子)

★秋祭り園児の出番太鼓打ち/祝恵子
秋祭りには、それぞれに役目があるが、園児たちの出番は太鼓打ち。園児たちは喜び勇んで、太鼓を思い切り打つ。その様子が微笑ましく、みんな揃っての秋祭りが明るい。(高橋正子)

 広島土砂災害跡
★山積の瓦礫離れぬ鬼やんま/佃 康水
広島の土砂災害の瓦礫の山は痛ましいかぎりだが、災害を知るよしもない鬼やんまがそこを離れない。自由にすいすい空を飛ばない鬼やんまは、異変を感じているのかもしれない。(高橋正子)

[9月6日/2句]
★零余子採るコロコロ笊を撥ね零れ/古田敬二
零余子の素朴さには、笊が似合う。笊に零余子を採れば、よく実の勢いで笊を撥ね零れる。その勢いがまた嬉しいものだ。(高橋正子)

★降りてきてまた昇りゆく秋の蝶/高橋秀之
蝶が降りてきて、また昇ってゆくことに、蝶の本質、また蝶の幻想的な世界が見える。(高橋正子)

[9月5日/2句]
★秋風を身体一杯橋の上/迫田和代
橋の上に出れば、秋風が身体を包んで吹く。橋の上は四方八方から風がもっとも通うところ。その風が身体を包んでくれる。秋風を心おきなく身体に受ける爽やかさがいい。(高橋正子)

★地は低く千草の花を煌めかす/佃 康水
「煌めかす」の主語は、「地」なので、その主語をはっきりさせるために、つまり、句意をはっきりさせるために、「地の」を「地は」とした。
千草の花のやさしいさ、美しさを詠んでいるが、それに終わらず、「地は低く」に作者の深い思いを感じさせている。(高橋正子)

[9月4日]
★秋の野に薄く煙の上がりけり/多田有花
夏のほてりが抜けた秋の野は、夏には旺盛だった作物や草などが勢いを失ってくる。それらを抜き取り、燃やしたりする。 そいう煙りだろうが、うすうすと上がっている。秋の野の落ち着いたたたずまいだ。(高橋正子)

[9月3日]
★秋色の四万十川に棹さして/河野啓一
清流で知られる四万十川。秋となれば、水はことに澄んで平らかになる。その水の一点に掉さし、四万十川と人との静かな関わりが生まれている。秋色は、辺りの景色をも含めた四万十川を表現している。(高橋正子)

[9月2日/2句]
★ほんのりと色つきだして式部の実/祝恵子
式部の実は、黄緑から白っぽい色となり、その色がほんのりと紫色になる。色づき始めの色が秋らしく新鮮だ。(高橋正子)

★赤とんぼ西向き行ける新学期/小西 宏
赤とんぼが西に飛んでいくことに必然はない。西は夕焼けの空もあるだろうし、西へ飛んでゆく飛行機もあるだろう。「西向き行ける」がこの句に味わいを出した。(高橋正子)

[9月1日]
★秋扇手に馴染みたる軽さかな/福田ひろし
夏の間使い続けた扇子だが、秋暑しの今日も扇子を使う。使い馴染んだ扇子が片手でひらけるほどなのだろう、軽く扱える。「手に馴染みたる軽さ」にこの句の妙味がある。(高橋正子)
コメント (16)
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9月1日-9月10日

2014-09-10 05:47:10 | Weblog
9月10日

●小口泰與
色鳥や心楽しむこと多し★★★★
大気が澄み、よい季節になった。いろんな小鳥の鳴き声や羽の色、仕草ひとつひとつがかわいらしく、楽しませてくれる。この気持ちのありように、心楽しいことが他にもいろいろある。(高橋正子)

朝夕の鉄路の遠音初紅葉★★★
忘れ音や水琴窟へ秋の風★★★

●河野啓一
秋水の白く逆巻く吉野川★★★
生駒山狭霧の中に横たわり★★★★
秋の日の暖かき中に立ちつくす★★★

●多田有花
秋草に翅の破れし蝶の来る★★★
山際の雲を離れていざよう月★★★
雨多き今年は不作と梨農家★★★★

●桑本栄太郎
秋日さす嶺のうねりや送電塔★★★
翅ふるえ夕日に光り赤とんぼ★★★

赤とんぼ見ていて闇の迫りけり★★★★
夕方を飛び交う赤とんぼ。見ているうちにも宵闇がせまる。秋の日暮れはたちまちに夜を迎える。
(高橋正子)

●小西 宏
ほとばしる懸樋に交える塩蜻蛉★★★
漆黒の雲浮き立たせ稲光★★★
秋刀魚太り武骨の皿に安酒と★★★★
秋刀魚は、上品な皿に載せられるより、焼きたてを載せるには武骨な皿が似合う。酒も安酒がよい。きどらないところに野趣と寛ぎがあり、熱々の秋刀魚がうまい。(高橋正子)

9月9日

●小口泰與
鈍色の空や湖畔の花カンナ★★★★
抜きんでて天をかけるや葛の蔓★★★
山上湖にわかに色葉なりにけり★★★

●河野啓一
満月は生駒の山を越えて来る★★★★
杖突いて覗き見たるや月の影★★★
生駒山越え来るかな月今宵★★★

●多田有花
仲秋や午後の日差しが部屋に入る★★★
水色の空へ昇りぬ今日の月★★★★
澄む秋の朝日のなかを山へゆく★★★

●黒谷光子
秋茄子の色つややかに篭満たす★★★
一木を虜に天辺葛の花★★★
草の穂の靡く先へとペダル踏む★★★★
草の穂をそよそよと風が吹き、その道をさっそうとペダルを踏んでゆく快いひと時。草の穂と自転車の取り合わせがやさしい。(高橋正子)

●桑本栄太郎
角曲がり目玉と出遇う鬼やんま★★★★
釣り人の湾処をかこみ秋日傘★★★
八朔の松尾大社や泣き相撲★★★

●福田ひろし
秋の宵象の飼育舎固く閉じ★★★
左右から鼓膜くすぐる秋の蝉★★★
どの家も窓開けられし良夜かな★★★★
良夜の明るさに、家々の幸せが見える。どの家にも温かい灯がともり、窓から月の光が差しこんでいる。(高橋正子)

●小西 宏
雨の音聴きつつ秋の中にいる★★★
日の照れば森また忙し法師蝉★★★

月昇る一直線の丘の道★★★★
一直線の丘の道は、月へまっすぐ向かっている道だ。明るくて大きな月が、すっきりと私の前に昇る。(高橋正子)

●古田敬二
句帳買う余白を秋の句で埋めん★★★
目的地決めたか真直ぐオニヤンマ★★★
つくつくし家路へ急ぐ時に鳴く★★★★

9月8日

●小口泰與
電線の稲雀にぞ囃されし★★★
糠雨に雀飛び交う稲穂波★★★★
朝顔や沛雨の中の蔓の丈★★★

●古田敬二
新芋はてんぷらにすべし柔らかし★★★★
野におれば残暑の汗に風涼し★★★
火照る背に涼しき雨の落ち来たる★★★

●内山富佐子
朝空に教会の鐘秋来たる★★★
窓少し閉じて読書の白露かな★★★

鬼やんま街の景色を軽やかに★★★★
鬼やんまが一匹飛ぶことで、街の景色が明るく軽やかになる。 一匹の鬼やんまを街の景色に描きこんだようなイメージだ。こんな画を飾りたい。(高橋正子)

●河野啓一
宵待や雲厚けれど便り待つ★★★
芋名月子ら皆元気西東★★★★
啓一さんのお子さんたちは、日本の西や東にお住まいで、名月がそのお子さんたち家族を統べるように輝いて、その月を見れば、みんな元気で暮らしていることに安心する。これこそが良い月である。(高橋正子)

月影のさやか漣すすき原★★★

●多田有花
秋高しチャペルの鐘が麓より★★★★
「秋高し」は、また「天高し」。澄み渡る空へ麓のチャペルの鐘の音が響いてくる。晴れやかで、清々しい日だ。(高橋正子)

野も山も色変わり初む白露なり★★★
南北に空を泳ぎしいわし雲★★★

●桑本栄太郎
天辺の庭木色づく白露かな★★★
坂道のそこのみいつも萩の風★★★★
高階の灯を凌駕せり今日の月★★★

9月7日

●古田敬二
緩き坂をゆっくり空にはいわしぐも★★★★
風向きが変われば蜩遠くから★★★
蔓引けば重しかぼちゃの転げ出る★★★

●福田ひろし
仕事場に葡萄ひと房輝けり★★★
鰯雲消したき記憶の多きこと★★★

街路樹の立ち尽くしたり霧の朝★★★★(信之添削)
「立ち尽したり」は、的確な描写。街路樹を立ち尽させることで、霧の動きや深さがありありと読める。(高橋正子)

●小口泰與
椋鳥や長き影なす城の松★★★★
秋雨のしるき音たて来たりけり★★★
稲妻の託ちながらも旅の空★★★

●河野啓一
地虫鳴く声を聞きつつ句作かな★★★
そよ風を桔梗と並び頬に受け★★★★
松虫草鉢植えしたるその姿★★★

●迫田和代
鈴虫の声を聞きつつ写経する★★★★
写経すれば心が落ち着いてくるということもあるが、この句はそうではなく、静かな心で写経していると、鈴虫の声が一層親しく思われ、そのきれいな声に心洗われるという心境だ。(高橋正子)

草むらのあちらこちらに秋の色★★★
老眼をかけて書を読む秋の夜★★★

●多田有花
曇天に秋蝉の声幽かなり★★★
秋驟雨そのまま夜になりにけり★★★★
朝の陽に桜紅葉の一葉落ち★★★

●祝恵子
秋祭り園児の出番太鼓打ち★★★★
秋祭りには、それぞれに役目があるが、園児たちの出番は太鼓打ち。園児たちは喜び勇んで、太鼓を思い切り打つ。その様子が微笑ましく、みんな揃っての秋祭りが明るい。(高橋正子)

展示花画板に写す子秋始め★★★
お見舞いは小さなブーケ秋の窓★★★

●桑本栄太郎
土曜日の校門すいと鬼やんま★★★★
葉の色のうすき黄色や銀杏の実★★★
すいれんの葉裏うごめく秋の池★★★

●黒谷光子
きしませて篭にいっぱい秋茄子★★★★
秋の風窓全開に迎え入れ★★★
門前を通る人声月の夜★★★

●高橋秀之
秋雨の後の朝日に光る玉★★★
欄干に佇み居れば秋の風★★★
日曜の御堂を秋風吹き抜ける★★★★

●佃 康水  
 広島土砂災害跡
切も無く土砂を出す人泥の汗★★★
山崩れ顕わなるまま秋思かな★★★

山積の瓦礫離れぬ鬼やんま★★★★
広島の土砂災害の瓦礫の山は痛ましいかぎりだが、災害を知るよしもない鬼やんまがそこを離れない。自由にすいすい空を飛ばない鬼やんまは、異変を感じているのかもしれない。(高橋正子)

9月6日

●小口泰與
にぎわしく雀集うや威銃★★★
薄もやの稲田の面を野鳥かな★★★
顔中に綿菓子舞うや秋祭★★★★

●多田有花
通勤の車の列や秋の雷★★★
露草や朝の驟雨を宿しつつ★★★
頂の風に薄の立つ朝★★★★

●古田敬二
零余子採るコロコロ笊を撥ね零れ★★★★
零余子の素朴さには、笊が似合う。笊に零余子を採れば、よく実の勢いで笊を撥ね零れる。その勢いがまた嬉しいものだ。(高橋正子)

ころころと笊へ零余子こぼしけり★★★
正確な小節数よつくつくし★★★

●桑本栄太郎
高槻の晩稲田圃や稲の花★★★
乙訓の片方(かたえ)に垂るる稲穂かな★★★
たて笛を吹きつつ戻る新学期★★★★

●高橋秀之
降りてきてまた昇りゆく秋の蝶★★★★
蝶が降りてきて、また昇ってゆくことに、蝶の本質、また蝶の幻想的な世界が見える。(高橋正子)
はばたきもゆっくり空へ秋の蝶★★★
秋の蝶駅の待合に迷い来る★★★

9月5日

●小口泰與
似あわしや舞茸飯に熱きお茶★★★
秋ばらの赤き新芽のにぎわしき★★★
白露や高らかに鳴く野鳥どち★★★★

●河野啓一
杜鵑草野にあるままの背の高さ★★★★
蕎麦の花白く白くと咲き乱る★★★
衛星の映す列島秋の雲★★★

●迫田和代
秋風を身体一杯橋の上★★★★
橋の上に出れば、秋風が身体を包んで吹く。橋の上は四方八方から風がもっとも通うところ。その風が身体を包んでくれる。秋風を心おきなく身体に受ける爽やかさがいい。(高橋正子)

朝陽浴び大きな木陰の秋の風★★★
夕月夜明るく光る道を行く★★★

●桑本栄太郎
<四条大橋~祇園~建仁寺>
見下ろせば鯉の数多や水の秋★★★
べんがらの花見小路の秋意かな★★★
まだ青く高きところや花梨の実★★★★

●福田ひろし
霧の朝星占いは凶とある★★★
久々の月の明かりは霞みたり★★★★
霧の日はうつむきがちに襟立てて★★★

●佃 康水
秋高し被災地へゆく黄の列車★★★
凝らし見るほどに千草の花盛ん★★★

【原句】地の低く千草の花を煌めかす
【添削】地は低く千草の花を煌めかす★★★★
「煌めかす」の主語は、「地」なので、その主語をはっきりさせるために、つまり、句意をはっきりさせるために、「地の」を「地は」とした。
千草の花のやさしいさ、美しさを詠んでいるが、それに終わらず、「地は低く」に作者の深い思いを感じさせている。(高橋正子)

9月4日

●小口泰與
白露や畷にぎわす鳥の声★★★
にぎわしく波立つ湖や雁渡る★★★★
どんぐりの犬小屋に落つ音すなり★★★

●河野啓一
コスモスの花束抱え女子高生★★★★
コスモスと女子高生の取り合わせは、さわやかさ、素直さがあって、好感がもてる句だ。今の女子高生にもこんな姿が見られるのはうれしい。(高橋正子)

吾亦紅ひっそり地下の売店に★★★
秋夕焼け鴉の羽音空高く★★★

●多田有花
木漏れ日の森歩く新涼の朝★★★
コンビニにコーヒーの香り秋の朝★★★

秋の野に薄く煙の上がりけり★★★★
夏のほてりが抜けた秋の野は、夏には旺盛だった作物や草などが勢いを失ってくる。それらを抜き取り、燃やしたりする。 そいう煙りだろうが、うすうすと上がっている。秋の野の落ち着いたたたずまいだ。(高橋正子)

●桑本栄太郎
秋澄むや雲の過ぎゆく峰の影★★★★
峰の間の白きチャペルや秋澄めり★★★
秋蝉の落ちて気高きむくろかな★★★

●黒谷光子
早朝のホームを渡る秋の風★★★
稲の秋田ごとに実りの色違え★★★
車窓より近江平野の稲の秋★★★★

●小西 宏
オムレツの湯気に秋聞く朝の鳩★★★★
苦瓜の紅割れ甘き香の垂るる★★★
唇に枝豆の毛のやわき触れ★★★

9月3日

●小口泰與
上州の稲妻なれや風の中★★★
秋の野や群し野鳥の高き声★★★
チャンプルのほろりと苦し秋旱★★★★

●河野啓一
ひたひたと河口寄せ来て秋の水★★★
秋色の四万十川に棹さして★★★★
清流で知られる四万十川。秋となれば、水はことに澄んで平らかになる。その水の一点に掉さし、四万十川と人との静かな関わりが生まれている。秋色は、辺りの景色をも含めた四万十川を表現している。(高橋正子)

吉野川秋光のなかカヌー隊★★★

●桑本栄太郎
彼岸花汝れも憤怒のあふるるや★★★★
秋風の池にせり出す木蔭かな★★★
どこまでも番いはなれず赤とんぼ★★★

9月2日

●小口泰與
秋ばらの枝の触れ合う音すなり★★★★
隠沼へ小川の瀬音芦の花★★★
草庵のそばをすするや酔芙蓉★★★

●河野啓一
若枝の伸びし勢い秋のバラ★★★★
つかの間の秋の日差しや朝の空★★★
柚子ありて武骨な柚と円い柚★★★

●祝恵子
石段を登りつめれば秋の空★★★
島よりの便りと写真秋の海★★★
ほんのりと色つきだして式部の実★★★★
式部の実は、黄緑から白っぽい色となり、その色がほんのりと紫色になる。色づき始めの色が秋らしく新鮮だ。(高橋正子)

●多田有花
納豆にモロヘイヤ混ぜ夕月夜★★★
蝉の声里に途絶えし九月に入る★★★

芙蓉描く窓辺に二度の通り雨★★★★
芙蓉の咲く季節、通り雨によく出会う。芙蓉を描いていると、一度ならず二度、窓辺を通り雨がすぎっていった。画に描かれた芙蓉にかかる雨のようである。(高橋正子)
●桑本栄太郎
さるすべり看板古び琴三絃★★★
秋すだれ今日の日陰の黒きこと★★★★
虫の音の宿る垣根や夕餉の灯★★★

●高橋秀之
軒下に雀の鳴き声秋の朝★★★
休暇明け朝の列車の賑やかさ★★★
秋の風潮の香りを運び来る★★★★

●小西 宏
赤とんぼ西向き行ける新学期★★★★
赤とんぼが西に飛んでいくことに必然はない。西は夕焼けの空もあるだろうし、西へ飛んでゆく飛行機もあるだろう。「西向き行ける」がこの句に味わいを出した。(高橋正子)

蜩の空かるがると森澄める★★★
蝉残り夜は松虫の鳴く静夜★★★

9月1日

●小口泰與
石段の芙蓉は空をなまめかす★★★
秋の山長き裾野はならびなく★★★★
本流のなまじ色ある秋日かな★★★

●河野啓一
街を出て翁も出合う赤トンボ★★★★
七草の名を数えつつ九月かな★★★
朝顔のつぼみの色や朝の夢★★★

●福田ひろし
秋扇手に馴染みたる軽さかな★★★★
夏の間使い続けた扇子だが、秋暑しの今日も扇子を使う。使い馴染んだ扇子が片手でひらけるほどなのだろう、軽く扱える。「手に馴染みたる軽さ」にこの句の妙味がある。(高橋正子)

窓わずか開けて虫の音寝間に入れ★★★
威筒夕闇貫く寂しさよ★★★

●桑本栄太郎
山よりの風に倒さる稲穂かな★★★
秋蝶の黒きひとひら樹の闇へ★★★
吾が立てば応え波打つ蘆の風★★★★
コメント (18)
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