4月20日(4名)
小口泰與
我が郷は赤城根っこしつばくらめ★★★
さえずりや浅間南面斑なり★★★
松籟に乗りてふわりと雀の子★★★★
「ふわりと」が子雀のかわいらしさをよく表現している。松籟との取り合わせも、すっきりとしていていい。
多田有花
<湖北・海津大崎三句>
お花見や湖北の駅に降り立ちぬ★★★
満開の桜湖岸を縁取りぬ★★★★
奥琵琶湖残雪の山遠望す(原句)
一読してイメージが纏まりにくいので、添削しました。
残雪の山遠望に奥琵琶湖★★★★(正子添削)
廣田洋一
厚化粧の熟女の如し八重桜★★★
斎場や塀際に散る八重桜★★★
桜並木どんじり締める八重桜★★★
桑本栄太郎
ぐずぐずの飛行機雲や春の空★★★
それぞれの花色選び蝶の昼★★★★
蝶が花から花へ飛ぶ真昼。見ておれば、それぞれの蝶は、それぞれの花色を選んでいるように、同じ色の花から花へ移る。蝶と私との楽しい昼。(高橋正子)
散りしきる傍へ咲き初む八重桜★★★
4月19日(4名)
小口泰與
うぐいすや棚田の水の満ちにける★★★★
棚田に水が満たされ、田植えの準備が次第に整う頃、田水を震わすようにうぐいすが美声を響かせる。山田ののどかな風景がこれからも続くことを祈りたい気持ちになる。(高橋正子)
菜の花や千曲流るる詩の里★★★
青空へ万朶の花や鳥の声★★★
多田有花
頂の小楢の芽吹き銀色に★★★★
芽吹きが「銀色に」というのが、いい。芽吹いたばかりは、緑ではなく、銀色。ういういしさに輝いている。(高橋正子)
囀りの山より見やる沖青し★★★★
坂下る桜吹雪を浴びながら★★★
廣田洋一
白藤や斎庭を香り満たしをり★★★
房の先未だ開かぬ藤の花★★★
小さき風ゆったり揺れる藤の房★★★★
桑本栄太郎
放課後のドッジボールや春嵐★★★★
若芝の足裏(あうら)ふかふか跳ねいたり★★★
入園のすでに過ぎたりすみれ咲く★★★
4月18日(4名)
多田有花
風のたび空へ花びら放ちおり(原句)
花びらからみれば、「放ちおり」ではなく、「放たれる」ではないでしょうか。
風のたび空へ花びら放たれり★★★★(正子添削)
咲き満ちた花も散り始める時期が来て、風が吹くたびに花が枝から放たれる。さびしさも微かに花が散る。(高橋正子)
花吹雪視線あげれば遠き島(原句)
「花吹雪」と「視線あげれば」の情景がよくわからないです。
花吹雪視線の先の遠き島★★★★(正子添削)
絶え間なく花びら降り注ぐ山路★★★
小口泰與
わたらせのトロッコ列車桃の花★★★
せめぎ合う激しき鋭声百千鳥★★★
うぐいすやボート漕ぎ行く山上湖★★★★
廣田洋一
ちょんちょんと何か啄む雀の子★★★
丸まりて辺り見回す雀の子★★★★
鳥かごには落ち着かざりし雀の子★★★
桑本栄太郎
さくら蘂降るや地道の川辺行く★★★
川に添い鳶の高舞い風光る★★★★
すかんぽの赤き穂が伸び夕暮るる★★★
4月17日(5名)
小口泰與
溶岩原の広漠とあり麦青む★★★★
溶岩原は、広漠として、麦が青んでいる。心が伸び伸びする景色だ。群馬県は国内でも最大の麦の産地と聞く。その産地もこんな景色から生まれるものであろう。(高橋正子)
噴煙の韋駄天走り花りんご★★★
たんぽぽや赤城七峰靄の中★★★
多田有花
青空に映えし桜と甍かな★★★★
鳥になり潜り込みたし花のなか★★★
すでに風心地よきかな花の下★★★
廣田洋一
奈良漬や吉野の山の別れ霜★★★★
𠮷野に遊んだ。終霜の時期は、京都で4月9日といわれるが、吉野の山の別れ霜も、おおよそその頃であろうか。桜が満開の季節と重なるかよくわからないが、下千本、中千本、奥千本と咲く桜の楽しみのなかに、奈良漬の添えられた食事は、渋くていい味わいかも。奈良の奈良漬は特別美味しい印象がある。(高橋正子)
霜の別れとつくに済ませ湘南は★★★
白々と別れ霜なり狭庭かな★★★
桑本栄太郎
花屑の祇園白川勇歌碑★★★
花屑の酔いたるようにうすき紅★★★
笹の葉の天より降りぬ竹の秋★★★★
竹は、春に葉を入れ替えて落とす。それを竹の秋というが、歩いていると、高いところからひらひらと竹の葉が舞い落ちる。軽い竹の葉は、天から降ってくるように思える。(高橋正子)
古田敬二
蒼天がこぼすネモフィラ紫に★★★
蒼天の色がこぼれてネモフィラに★★★★
ネモフィラはオオイヌノフグリを大きくしたような青い花。公園や丘陵などに一面に植えられ、今や親しい花となっている。蒼空の色とグラデーションをなして、見事でいる。「蒼天の色がこぼれ」たのだと思える。(高橋正子)
残る鴨二匹そろいて水脈を引く(原句)
残る鴨二羽がそろいて水脈を引く★★★★(正子添削)
4月16日(5名)
小口泰與
うぐいすや暁の厨の忙しかり★★★
夕映えの一朶の雲や花あんず★★★
洋洋と榛名湖蒼き春日傘(原句)
洋々と榛名湖蒼し春日傘★★★★(正子添削)
多田有花
花びらの先に伸び行く飛行機雲★★★
桜咲く絶えず小鳥をとまらせて★★★★
桜の密を吸いに小鳥がやってくる。満開の花には、入れ替わり小鳥がやってくる。「絶えず」やってくる。うららかな春の日が快い。(高橋正子)
こんな見事な桜をひとりで見る★★★
廣田洋一
白き紐ゆらゆら揺れる雪柳★★★
零れさうでこぼれぬ花や雪柳★★★★
せせらぎのたゆみなき音雪柳★★★
古田敬二
春水分け真鯉緋鯉が餌による★★★★
塗りたての畔真昼の日を返す★★★★
田を打ち終わりいつでも植えられるようになると、田の水が漏れたりしないように、田の泥土で塗り固める。塗ったばかりの畔は日をてらてらと日を返して、見事である。この見事さは、営々と続いて来たもの。(高橋正子)
走り去る車の風やすみれ咲く★★★
桑本栄太郎
花屑の酔いたるようにうすき紅★★★
せせらぎへ枝の残花や高瀬川★★★
花屑の風にたゆとうにわたずみ★★★★
4月15日(5名)
小口泰與
山風に白波立ちて蝌蚪の紐★★★
背景は真っ青な空嶺桜★★★★
いざ跳ばん草掴みたる初蛙★★★
多田有花
静かなる古刹は花にあふれおり★★★★
古刹の桜は大木であろう。訪れる人もなく、ただ花があふれる古刹。静かさがあふれ咲く桜を引き立てている。その花をひとりじめして楽しむ作者が見える。(高橋正子)
山桜その大きさを見上げおり★★★
花は咲く誰も訪ねぬ山中に★★★
廣田洋一
人気無き通りにかさと春落葉★★★
滑り台順番待ちの春落葉★★★
二三枚川に浮かびし春落葉★★★
古田敬二
青空へ揺れて楢の木芽吹きけり★★★
芽吹き盛ん相生山の膨れけり★★★★
調べると、相生山は名古屋市にある標高60mほどの低山とある。市民の緑地として整備され自然もゆたか。オオタカの巣も見られると言う。生活の中に楽しめる相生山の木々が芽吹き山が膨らむ。これからいい季節が待っている。(高橋正子)
豆の花豆にならんと咲きにけり★★★
桑本栄太郎
建仁寺土塀の中に花かりん★★★
花屑の舞いて立ち居りつむじ風★★★
花虻や幼き日々の母想う★★★★
4月14日(5名)
小口泰與
欅大衆の山風を鷲づかみ
「欅大衆」は「欅大樹」の間違いでしょうか。
夜桜や二人乗りたる観覧車★★★★
傘寿にて趣味は二つよ亀の鳴く★★★
廣田洋一
行き付けの書店閉じられ春惜しむ★★★
春惜しむ丹沢の山煙りをり★★★★
道端に咲く花々に春惜しむ★★★
多田有花
廃線の枕木のそばすみれ咲く★★★★
すみれ咲くアスファルトに咲く花として★★★
青空に花見の歌の聞こえ来る★★★
桑本栄太郎
山並の京へとつづく花の雲★★★
土手草の青む車窓や阪急線★★★★
からし菜の中州占めたり桂川★★★
古田敬二
初燕池の賑わい始まれる★★★
初燕鏡のような水面に(原句)
初燕鏡のような水面を★★★★(正子添削)
今年また無人駅舎につばくらめ★★★
4月13日(5名)
古田敬二
飛花落花飛騨川の峪崖深し(原句)
飛騨川の峪崖深し飛花落花★★★★(正子添削)
友見舞う窓辺に飛び交う初燕★★★★
満開を見上げる空の飛行体★★★
多田有花
山頂まで三葉躑躅の道をゆく★★★
ものの芽の彼方に山の連なりが(原句)
「が」で止めたところは、落ち着きが悪いです。
ものの芽の彼方や山の連なれり★★★★(正子添削)
山ひとつ登って下りる谷朧★★★★
小口泰與
遠山はまだ銀嶺や桜狩★★★★
花筵ギター片手に乾杯す★★★
うとうとと辞書に顔伏し亀鳴けり★★★
廣田洋一
仔馬跳ね草露跳ねる牧の朝★★★★
大流星しっかり継ぎし仔馬かな★★★
馬の仔の額の白は母親似★★★
桑本栄太郎
平成の御代を惜しめり花吹雪★★★
散り敷きてなほ蘂酔ふや花あはれ★★★
休日の園の花壇にチューリップ★★★★
4月12日(5名)
古田敬二
陽光の入り陽に続く春の海★★★
にぎやかに満開近きシデコブシ★★★★
白々と街路両側シデコブシ★★★
多田有花
のどけしや残る枕木踏みつゆく★★★
トンネルを出れば鉄橋風光る★★★★
遠目にも大きく見えて江戸彼岸★★★
廣田洋一
覚ましを止めて遠ざけ朝寝かな★★★
大朝寝時計は鳴らず烏も鳴かず★★★
朝寝など許されぬ旅吉野山★★★★
小口泰與
上り簗越後魚沼魚野川★★★★
水荒き春の魚野川(うおの)の簗場かな★★★
春なると決まって出づる恙かな★★★
桑本栄太郎
校門の花や早くも花吹雪★★★★
花屑の舞いて立ち居りつむじ風★★★
赤白黄斑もありぬチューリップ★★★
4月11日(4名)
多田有花
うららかや廃線跡をハイキング★★★
渓流と桜を愛でしハイキング★★★
トンネルの闇の向こうに春の昼★★★★
小口泰與
砂びの穴の五六個牡丹百合★★★
咲き満ちて烈風にあう杏かな★★★
利根川の煌煌とせる桃の花★★★★
廣田洋一
うつすらと白き流れや春の雲★★★
ビルの窓白く光れる春の雲★★★★
逆上がりやつと出来たり春の雲★★★
桑本栄太郎
坂道をたゆとう歩む花の屑★★★★
花びらの舞いて散り初む花あはれ★★★
風吹かば誰れぞ留めん花吹雪★★★