7月20日(4名)
小口泰與
夏嵐白波立つる雨後の河★★★
雨粒の重みに耐ふるねぢれ花★★★
二階より浴衣羽織りて下りて来し★★★
廣田洋一
久々に青空見えてかき氷★★★
海風に幟はためく氷水★★★★
「氷」の幟を立てて、氷水を案内しているが、その幟が海風にはためいている。その光景は夏そのもの。(高橋正子)
向き合ひて二人で崩すかき氷★★★
多田有花
<鎌倉御代川>
それぞれがテーブルにつく夏座敷★★★
<鎌倉大仏二句>
大仏もともに濡れつつ梅の雨★★★★
鎌倉の大仏は、露座仏。梅雨が降れば、梅雨に濡れる。大仏を拝する私も濡れるが、大仏も濡れておられる。「ともに濡れつつ」と仏の心をふと思った。(高橋正子)
夏木立の中に立ちおり晶子歌碑★★★
桑本栄太郎
茅舎忌の失念したり三日のち★★★
梅雨空に”最後の願い”選挙カー★★★
待合いの冷房過ぎて身を竦め★★★
7月19日(4名)
小口泰與
コップ酒ちびちび飲むや立葵★★★
夕顔やネイル広告抽斗へ★★★
早々に赤提灯や立葵★★★
廣田洋一
短夜のバルト海行く船の旅★★★★
北欧のバルト海は地中海で、その船旅を楽しまれた。船で行く旅はゆったりと沿岸の景色が楽しめる。短夜が効いて、つい、白夜を思ってしまった。(高橋正子)
短夜や朝一番の露店湯に★★★
短夜やまたも起きたるこむら返り★★★
桑本栄太郎
夏風邪の咳の頻りに目覚めけり★★★
梅雨冷のバスの車内に身を竦め★★★
梅雨空の境目無しに暮れゆけり★★★
多田有花
<鎌倉・鶴岡八幡宮三句>
さみだれを宿し富士山ナン★★★バープレート★★★
五月雨傘八幡宮の石段を
さみだれや静御前の舞いし跡★★★★
7月18日(4名)
小口泰與
青葉木寃山にちりばむ星の数★★★★
青葉木寃が鳴く山、そのうえには星がちりばめられている。豊かな思いになる夜である。(高橋正子)
滴りや時を隔てし岩の容★★★
傘寿にて高みを目指し夕端居★★★
多田有花
<鎌倉・建長寺三句>
山百合を映す池あり建長寺(原句)
山百合を映して池あり建長寺★★★★(正子添削)
山百合は山などに自生して、自生とは思えぬほどの大きな花を数花つけ、倒れそうな姿である。それがそのまま池に映り、静かさをたたえている。禅寺の池となれば、趣も格別だ。(高橋正子)
禅寺やことに艶やか百合の花★★★
緑濃き嵩山門を通る道★★★★
廣田洋一
電車の中香水の香にむせびけり★★★
香水や誘ひ心を忍ばせて★★★
香水の薔薇の香りとすれ違ふ★★★★
桑本栄太郎
祇園会の明けて朝より雨となる★★★★
祇園会が明けて、安堵の雨であろうか。静かに京を濡らしている。(高橋正子)
降りつづき蛙鳴かざるひと日かな★★★
梅雨冷や夜ともなれば窓を閉む★★★
7月17日(4名)
小口泰與
野良猫も涼風求め居りにける★★★
炎天や球に飛びつく下級生★★★
夕立の棚田の畦を越ゆる波(原句)
夕立や棚田の畦を越ゆる波★★★★(正子添削)
多田有花
<鎌倉・建長寺三句>
梅天の彼方より五爪の龍★★★
蓮開く細かな雨を宿しつつ★★★★
蓮が開くのは、梅雨のころから。雨の蓮、晴れた朝の蓮。それぞれに赴きがあるが、建長寺の蓮は細かな雨を宿して開いていた。禅寺の静かさとも言えようか。(高橋正子)
雨に濡れ山百合匂う参道に★★★
廣田洋一
船旅やジャグジー浴びる水着かな★★★
ヴィーナスが二カ所隠せる水着かな★★★
一人だけ黄色の水着競泳レッスン★★★
桑本栄太郎
白き筋ありて嬉しや甜瓜★★★
目じるしのような高さや曼荼羅華★★★
万緑や松尾大社の赤鳥居★★★
7月16日(4名)
小口泰與
網戸より犬の覗くや夕間暮れ★★★
色違う目高の目玉同じ白★★★
山肌の濃淡ありし夏の山(原句)
山肌に濃淡ありぬ夏の山★★★★(正子添削)
廣田洋一
床下に二本寝てをり梅酒かな★★★
漬け置きて琥珀色なる梅酒かな★★★
健康に良しと言ひつつ梅酒汲む★★★
桑本栄太郎
昼寝子の遠く近くに選挙カー★★★
花びらのうつむき来たり額の花★★★
黒蟻の戸惑いあゆむ日差しかな★★★
多田有花
人工島次々渡る梅雨最中★★★
<鎌倉・建長寺二句>
茅葺の鐘楼静か青梅雨に★★★
地蔵座す仏堂包み梅の雨★★★★
梅雨の長雨にすっぽりと包まれた法堂。幾年の歳月の静かさを思う。(高橋正子)
7月15日(4名)
小口泰與
雲の峰どのレジ台を選びても★★★★
スーパーのレジに並ぶ。どのレジ台を選んでも、そこからは雲の峰が見える。ひろびろとした地方の町の眺めのいいスーパー。日常のここにも詩心を湧かせる景色がある。(高椅正子)
山小屋の飯盒飯の円座かな★★★
網戸より赤城の風の遊びける★★★
廣田洋一
シャワー浴びさっと一振りオーデコロン★★★
お土産の香水買ひしシャンゼリゼ★★★
海の日や雨にたたられ人気なし★★★
桑本栄太郎
早朝の蝉の時雨に目覚めけり★★★
山畑の支柱に縋る胡瓜かな★★★
妻の行く四条通りや宵々山★★★★
多田有花
梅雨の富士頂のみをのぞかせて★★★★
梅雨寒の東京ドームを見下ろせる★★★
東京の夜景さみだれに煙る★★★
7月14日(4名)
小口泰與
昼寝覚め忽と泣き出す園児かな★★★
混浴の露天へかすか河鹿かな★★★
船頭は中学生よ蛍狩★★★★
廣田洋一
風鈴や短冊変へて音新た★★★
縁側の風鈴鳴らす座敷風★★★★
窓開けて風鈴鳴るを待ちにけり★★★
桑本栄太郎
ぽつぽつと夢想い居り明け早し★★★
雨雲の峰駆け昇る梅雨晴間★★★★
雨雲の天王山の青嶺かな★★★
多田有花
夏燕ついと虚空に飛び出しぬ★★★★
夏燕はどこから現れたかと思うほど、ついと空に飛び出してくる。夏空の深さを思う時だ。春の巣作りのころ、梅雨のころと燕はそれぞれの季節、自分の仕事に合わせたような飛び方をするが、夏燕は、飛び方がなんと面白い。(高橋正子)
梅雨曇降られることなく山下りる★★★
錦鯉袋に入り売られおり★★★
7月13日(4名)
多田有花
<おきなわワールド三句>
緑陰をつくり咲きおり鳳凰木★★★★
三段花咲くや紅芋ソフト食ぶ★★★
石亀が見上げる青き夏の花★★★
廣田洋一
梅雨寒や草の葉の伸び止まりぬ★★★
梅雨寒や朝の長湯を楽しめり★★★★
梅雨冷や長袖シャツに着替えたる★★★
小口泰與
にこやかに妻の造りしどぜう鍋★★★
迫りくる赤城の襞や夏座敷★★★★
嬬恋の山家の一夜寝茣蓙かな★★★★
冷房のないころ、夏の寝苦しさを避けるため、寝茣蓙を使った。イ草のふんぷんとした香りに匂いからも涼しさを感じたものだ。嬬恋の山家では、冷房を入れるほどでもないのだろう。寝茣蓙を敷いて寝た一夜が昔懐かしさを呼ぶ。(高橋正子)
桑本栄太郎
梅雨空を見上げ散歩の思案かな★★★
花びらのうつむき裏に額の花★★★
昼寝子の目覚め想うは夢のこと★★★
7月12日(4名)
廣田洋一
日の盛り鳥の鳴き声絶えにけり★★★★
日盛や道路工事は一休み★★★
日盛に動き溌剌球児たち★★★
小口泰與
時鳥山家の夕餉早早と★★★★
山家に泊まる。はやばやと夕餉をとれば、時鳥が鳴く。たっぷりと時間がある山家の夕ベ。(高橋正子)
名にし負う浅間の里の洗鯉★★★
二十年納戸の奥の梅酒かな★★★
桑本栄太郎
晴れ渡る嶺の奥なり雲の峰★★★
見渡せばバスの席より青田波★★★
<京都四条通り>
曳初めの長刀鉾に出会いけり★★★★
祇園祭の始まり。偶然にも曳き初めの長刀鉾に出会った。祇園祭の高揚感がここに始まり湧いたとき。(高橋正子)
多田有花
<沖縄平和祈念公園>
あの夏も海はあくまで美しく★★★
<おきなわワールド二句>
エイサーの踊り手飛び散る玉の汗★★★★
三線を習う人あり夏座敷★★★
7月11日(4名)
(多田有花)
<沖縄平和祈念公園三句>
花束を供える沖縄忌近し★★★
名を刻む石の屏風が立つ夏野★★★
慰霊の日の日の出に向けて歩きけり★★★★
沖縄慰霊の日は6月23日。8月6日の広島原爆忌、8月9日の長崎原爆忌と合わせて、記憶すべき日とされるようになった。日の出に向けて歩くは、特に意味はないだろうが、純真に命を捧げた人たちを思う。(高橋正子)
小口泰與
冷酒や糖質好きの我が髪膚★★★
緑濃き水面や親子ラムネ抜く★★★★
油照裁判所より美魔女かな★★★
廣田洋一
旅人をもてなす宿の岩清水★★★★
旅の渇きをいやしてくれるのは、冷たくおいしい水。岩からしみ出る清水は何よりうれしいもの。(高橋正子)
富士よりの清水掬ひて山道へ★★★
岩場より湧き出る清水手に受けし★★★★
桑本栄太郎
荒梅雨やフロントガラスの玉飛沫★★★
梅雨雲の峰ふところに留まりぬ★★★★
恐ろしき青き灯点る誘蛾灯★★★