水景図・待ち受ける世界 原 誠二 寸法:31✖️62(cm)
*個展案内葉書より転載
静かにひたひたを足元に押し寄せてくる波のリアルな動きに魅せられる。
波打ち際に立っているような仮想現実に陥いる。
入江の小さな赤い灯台が小粋なアクセント。
波間に隠れるような小さな船があるのに気が付くまで時間が掛かる。
遥か遠くに重なって見えるのは山並みか雲か。地と空の境が判然としない。
抽象と具象、静と動。
削りに削った平面の重なり。そこに奥行き感のある前景と背景が入り混じっている。
ありそうでありえない不思議な景色。
静寂感
あの世に渡る三途の海
◯原 誠二 個展
・場所:画廊 galley O-TWO 群馬県前橋市
・会期:8月21日 〜 31日
コロナ禍中、来場者は少なく、寂しかった。
◯原 誠二氏の個展の印象
静寂 静謐
絵なのだから音がしないのは当たり前?
音が聞こえてきそうな絵は意外に多い。動的な絵に多い。
原氏は日本画家。岩絵具を使用している。
今回の個展では大瀑布の大作が多く展示された。
日光華厳の滝はご存知だろうか。遠方からしか見ることが出来ませんが、水が叩き落ちる音が聞こえます。
尾瀬の三条の滝に行ったことはあるでしょうか。耳をつん裂くような爆音が聞こえてきます。
原氏の大瀑布の絵から音は聞こえて来ません。
サウンド・オブ・サイレンス
日本画(岩絵具)は「静」を表現するのに向いているのかもしれません。
原氏の絵は今年冬に行われたグループ展で初めて見ました。
以来、気になっていました。
作風は大きく二つに分類できます。
花(具象画)・動物(平面)シリーズ。
滝・氷山?(抽象と具象の融合)シリーズ。
製作年代が違うようです。
作風の変遷があったようです。
作品は額に入っていないものがほとんどです。
販売が決まった作品は特注のアクリル額に入れられ、購入者に渡されます。
見本品なのでしょう。アクリル額に入れられた小作品がありました。
アクリル額は入れられた作品は印象が変わる。
モダン、クール・ビューティ。
自分の家に飾るなら何処か。
壁一杯に個性豊かな絵をベタベタと飾るのはどうかと思います。作品が生きない。
部屋は生活空間。
絵は部屋に自然に溶け込まねばなりません。
原氏の絵は自分が持つ具象画とのマッチングは難しい。
飾る場所が思いつきませんでした。
アクリル額に入った小作品なら、棚や台にも置ける。飾る場所を見つけられるかもしれない。
個展会期中、原氏は毎日、午後、会場に詰めていました。
記念にと小作品を購入しようと考えていました。
「あれにしようか」、「これにしようか」
目星をつけていた小作品は真っ先に売れました。
「当然だよな〜」と思いました。
「惜しかった」と言うより、購入者の選択眼に敬服、落ち着くべきところに行くのは良かったと思いました。
予算をはるかにオーバーしているけれど、欲しいと思ったのは、
やはり、個展案内葉書で紹介されていた絵でした。
それなりに大きいので、飾る場所が思いつきません。
◯購入を決断した背景
折も折、個展最終日は右目手術の日と重なっていました。
両眼手術は無事終了。安堵感、開放感に浸っていました。
原氏の作品を目にする機会は暫くはないでしょう。
もう一度、眼に焼き付けようと、病院からの帰路に立ち寄りました。
あれだけ惹きつけられる作品なのだから、
購入を考えている人はいる。
誰かが決めていたのなら諦めが付く。
と考えながら、会場に向かいました。
「待ってくれていました」
これもひとつの『縁』
「一期一会」
・余談(瘋癲老人の強弁)
老先短いのに絵なんか買い集めてどうする。
無駄遣いそのもの。その分、子供に残した方が良い。
不必要なものは切り捨てて、身軽になる。静かにシンプルな生活を送った方が良い。
それは正論。
自分は生臭爺。
後顧の憂いのない歳になった今だからこそ
「終活」の一片です。
自宅では宝の持ち腐れ状態になるでしょう。
しばらくは、galley O-TWOに置いてもらうつもりです。
コロナ禍の中、個展に来れなかった人もいる。
是非、一度見て欲しい作品です。