通常の加齢によって認知力低下の生じる機序が、科学的に明らかにされた。医学誌「Annals of Neurology(神経学)」12月号に掲載された報告によると、正常な加齢現象の1つである血糖値の上昇が、海馬(学習および記憶に不可欠な脳部位)に影響を及ぼすことが判明したという。
「このことから、血糖値の管理を向上させるあらゆる手段が、加齢による記憶力低下を改善する方法となり得る」と、米コロンビア大学メディカルセンター(ニューヨーク)アルツハイマー病・加齢脳タウブTaub研究所准教授のScott Small博士は述べている。
今回の知見は、運動をしている人では年齢の割には認知力障害が少ないとされる理由を説明するものかもしれない。つまり、運動が血糖値を安定化させるという解釈である。「われわれは過去の研究で運動によって加齢に関連する脳部位が強くなることを示したが、当時は運動がこのような特定の利益をもたらす理由はわからなかった。今、その機序について1つの仮説を得た」とSmall氏はいう。
アルツハイマー病では海馬の損傷が顕著にみられることが知られており、一部の研究からは、正常な加齢によっても海馬が損傷されることが示されている。研究グループは、健康な高齢者(平均年齢約80歳)240人を対象に、MRIを用いて海馬の機能を記録した。被験者のうち60人が2型糖尿病であり、74人の脳に「梗塞」(脳組織の損傷)がみられた。糖尿病と梗塞はそれぞれ海馬の別の部位との関連がみられ、それぞれの疾患で異なる機序が働いていることが示された。この知見は、動物を用いた試験でも裏付けられた。
「血糖値の上昇は、加齢に加担して海馬の歯状回に特異的な影響を及ぼす。また、年齢とともに血糖値の管理は徐々に難しくなる」とSmall氏は説明している。米モンテフィオーレMontefioreメディカルセンター(ニューヨーク)のBryan Freilich氏はこの知見について、「興味深い仮説だが、同時に別の機序も働いているのではないか」と指摘する。また、米ロチェスター大学メディカルセンター(ニューヨーク州)准教授のMark Mapstone氏は「この研究が検証されれば、非常に重要な意味合いをもつ。特に、加齢に際して最適な血糖値を維持するという実現可能な方策が、認知機能の低下を減速あるいは予防できるという点で重要である。糖尿病の臨床症状がない人でも、認知機能の老化に対してできることがあるということを意味する」と述べている。
「このことから、血糖値の管理を向上させるあらゆる手段が、加齢による記憶力低下を改善する方法となり得る」と、米コロンビア大学メディカルセンター(ニューヨーク)アルツハイマー病・加齢脳タウブTaub研究所准教授のScott Small博士は述べている。
今回の知見は、運動をしている人では年齢の割には認知力障害が少ないとされる理由を説明するものかもしれない。つまり、運動が血糖値を安定化させるという解釈である。「われわれは過去の研究で運動によって加齢に関連する脳部位が強くなることを示したが、当時は運動がこのような特定の利益をもたらす理由はわからなかった。今、その機序について1つの仮説を得た」とSmall氏はいう。
アルツハイマー病では海馬の損傷が顕著にみられることが知られており、一部の研究からは、正常な加齢によっても海馬が損傷されることが示されている。研究グループは、健康な高齢者(平均年齢約80歳)240人を対象に、MRIを用いて海馬の機能を記録した。被験者のうち60人が2型糖尿病であり、74人の脳に「梗塞」(脳組織の損傷)がみられた。糖尿病と梗塞はそれぞれ海馬の別の部位との関連がみられ、それぞれの疾患で異なる機序が働いていることが示された。この知見は、動物を用いた試験でも裏付けられた。
「血糖値の上昇は、加齢に加担して海馬の歯状回に特異的な影響を及ぼす。また、年齢とともに血糖値の管理は徐々に難しくなる」とSmall氏は説明している。米モンテフィオーレMontefioreメディカルセンター(ニューヨーク)のBryan Freilich氏はこの知見について、「興味深い仮説だが、同時に別の機序も働いているのではないか」と指摘する。また、米ロチェスター大学メディカルセンター(ニューヨーク州)准教授のMark Mapstone氏は「この研究が検証されれば、非常に重要な意味合いをもつ。特に、加齢に際して最適な血糖値を維持するという実現可能な方策が、認知機能の低下を減速あるいは予防できるという点で重要である。糖尿病の臨床症状がない人でも、認知機能の老化に対してできることがあるということを意味する」と述べている。