鴨着く島

大隅の風土と歴史を紹介していきます

鹿児島でも「分断」の現実

2021-02-03 13:37:56 | 専守防衛力を有する永世中立国
鹿児島の離島・種子島の中心都市である西之表市で行われた市長選と市議選の結果はまさに真っ二つに分断された。

当選したのは現職で2期目の八板氏(67歳)で、得票数は5103票。他方の新人福井市(71歳)は4959票。その差わずか144票。この選挙の投票率は実に80.17パーセントというから驚く。それだけ選挙戦が熱を帯びていたことになる。(※同じ1月31日に行われた全国の市長選では無投票の市長選を除いて、おおむね60パーセントレベルだった。)

八板氏は一貫して米軍のFCLP(空母艦載機陸上離着陸訓練)の基地化には反対していた。一方、新人の福井氏は基地化に賛成の立場。同時に行われた市議選(定数14名)の結果は反対派が7、賛成派が6、中立が1となり、これまでの市議会議員での賛否と比べると賛成派が倍に増えている。

総じて市長選でも市議選でも賛成票がかなり増加し、賛否が拮抗して来たことを示す今回の結果であった。

選挙前は現職の反対派の八板氏が俄然有利と見られていたのだが、賛成派が複数立候補する構えだったのを福井氏一本に絞ったためにこのようにほぼ互角の戦いになったようだ。

反対派の主張は「誰でも受け入れる種子島の風土と歴史・文化、そしてその住み易さを台無しにする馬毛島の基地化。周辺漁場の衰退につながる埋め立て等の馬毛島の改変はノー」というものであり、賛成派の主張は「すでに馬毛島は国有化された。基地化は国防のための既定路線だから、受け入れる。その代わりに支出される国からの交付金を活用して町を活性化させたい」である。

活性化には確かに金のかかる面もあり、賛成派が票を伸ばしたのは現実路線を選択した市民が多かったことになるが、これは言うならば鹿児島の沖縄化の始まりだろう。

沖縄では知事選でも那覇市長選でも浦添市長選でもことごとく米軍の辺野古移設に関しては反対派が勝利しているにもかかわらず、「民意を無視して」着々と工事が進められている。国からは結構な金額の交付金が出ており、それによって土木業者が潤い、公民館などの建物が立派になったりしているが、沖縄県民からすればそもそも米軍にはよい感情を持っていないので、痛しかゆしだろう。

同じようなことが種子島でも起こるだろう。八板市政がいかにFCLP(空母艦載機陸上離着陸訓練)に反対しても、国はアメリカ(米軍)の言い成りになっているわけだからどうしようもない。

アメリカとの間に安全保障条約があり、それを補完する日米地位協定があるため国民の頭ごなしに事が進められており、米軍と市民との間のトラブルでも治外法権的な壁がある。

日米安保はトランプ前大統領が言った通り「日本が攻撃されたらアメリカは助けなければならないのに、アメリカが攻撃されても日本は助けに来ないとは不平等」なのであり、しかしそれはアメリカが押し付けた「平和憲法」の第9条で国際紛争に武力で立ち向かってはならないという規定があるから致し方ないが、トランプはそのことを学んだのか、その後は矛先を変えて「仕方がない。助けてやるから駐留経費をもっと出せ」というトーンに変えたのは記憶に新しい。

トランプはまた尖閣諸島については何とも言わなかったが、おそらく「そんな島くらい自分で守ったらどうなんだ。わざわざアメリカが出ることもない」と思っていたのではないか。これは確かに一理ある。尖閣諸島は国有化されて晴れて日本の領土になったのだから、そこに灯台なんてちゃちなものではなく自衛隊の寄留施設を堂々と構築すべきだろう。

2月1日から中国の海上警察「海警」(日本の海上保安庁)に武器装備と使用を可とする法律が施行されたようだが、そのためにも尖閣諸島を日本の領土として絶対に守るという毅然とした態度が必要だ。

日米安保5条によりアメリカが助けてくれるなどと依存するようでは相手から舐められるだけだろう。アメリカもヒラリー・クリントンが国務長官の時に「安保5条の適用範囲だ」と言ったのを金科玉条にして尖閣に対して何もしない日本にはうんざりしているのが実情だろう。

安保の有る無しに関わらず固有の領土は自国で守り通すしかない。

日米安保が無い方が国民は目覚めるのかもしれない。自分の外交努力で何とかしよう、と。

沖縄県民の分断も、今度垣間見えた鹿児島県種子島の島民の分断も米軍がいなくなれば無くなるはずのものである。そこに米軍に代わって自衛隊が駐留してもかつてのような「自衛隊は違憲だ、帰れ」という非現実な対応をする人間はもういないはずだ。

日米安保を廃棄する前に日本は「永世中立国宣言」を世界に向かって出すべき、というのが私の考えである。

そのうえで日米安保という前時代の遺物たる二国間軍事同盟を廃棄し、日米は真に対等な関係に入る。また中国ともロシアとも是々非々の観点から外交関係を維持して行く。(※ロシアとは平和条約を締結するという仕事が待っており、北方領土問題をその視点によって解決を目指す。)

世界はそれを待っている。