ちわきの俳句の部屋

メカ音痴おばさんの一念発起のブログです。
人生の後半を俳句にどっぷりと浸かって、…今がある。

兼題は〝冬めく〟

2019年12月03日 | 俳句

 今日はやけに寒い! そういえば昨日の主人との会話。テレビの画面に最低気温が-5度と…〝ヘエッ、突然零下になるの?〟というと、主人も〝こりゃあタイヘンだ。今夜は凍るぞ!〟と…。

 ちょっと風邪気味で喉が痛い…日曜日、温泉に行ったあとの湯冷めのせいみたいです。これはヤバイと昨夜は早々に寝たのですが、今日の俳句教室の資料作成がまだ出来ておらず、気になって早くに目が覚めました。やっぱり寒いわ!とすぐに暖房を入れて頑張りましたよ。

 夕方帰って来て、今夜もきっとマイナスなら寒いわよね~と主人に言うと、〝あれは間違い!昨日の気温に比べてマイナス5度だったんだよ〟と。〝なあ~んだ。零下にしちゃあちょっとおかしいとは思ったんだけどね~〟

 まあ、こんな会話をくりかえしているトボけた2人なんです。先日もテレビを観ながら、どんな場面か忘れましたが、私がつい〝あの人……目鼻が利くわよね~〟と言ってしまい、主人が〝今のもう一度言ってみい…〟と。すぐに〝目先が利くわよ〟と言い換えましたが、自分ながら笑っていまいました。考えるより先にぽんと口から飛び出して、あれっと気づくことが最近よくあるんです。ボケの始まりかしら。ちなみに〝目鼻が〟は〝付く〟で意味も全く違いますからね。

 ところで、今日の兼題は〝冬めく〟でした。この季語は完全に冬になったものを詠むのではなく、いかにも冬らしくなったなあと、実感するときに使う季語です。

  口に袖あてゝゆく人冬めける        高浜虚子

 さすがは…と思います。一瞬にして擦れ違う人の姿格好が見えてきますもの。でもこれは明治大正の、和服が普段着だった頃でないとピンとこないかも。若い人にも分かりますかしら?

 教室では面白い句がありました。〈あらはなる庭のポプラの冬めきぬ〉です。結構点が入っていましたので、採った人に聞きました。〝あらはなるというのはどういう意味?〟〝それはポプラが葉を全部落として裸になっている様子ですよ…〟〝だったらそれは裸木でしょ。もう完全に冬では…〟??? たまらずに作者が名乗り出て〝ポプラは一瞬のうちに葉を落としますので、これが冬めいたんだと思って詠んだんですよ。〟と。でも、葉を落としてしまってはやはり冬そのもの。上五を変えて、例えば〈大いなる庭のポプラの冬めきぬ〉とでもすればよくなりますが…。

 要するに「めく」というのは接尾語で、他に「春めく」「夏めく」「秋めく」もあります。概ね季節の移ろいを敏感に感じ取る主観的な心の動きに用いる季語なんです。目の前にはっきりと冬を告げるものが見えていれば、それは疑いようもなく冬そのもの。そういう時に「めく」を使うのはおかしいでしょう、と説明するとやっと納得してくれました。

 さて、さて、先日の私の句の答え…待ってる方もおられたようで、遅くなってゴメンナサイ!

 〈……日を嚙みこぼす鬼瓦〉ですが、では一緒に考えてみましょうか。「鬼瓦」はもう皆さんご存じですね。屋根の棟の両端にある鬼の面をかたどった瓦のこと。牙を剝きだし大きな口を開けている鬼瓦が日差しを受けて、まるで嚙みきれないで口からこぼしているようだという情景です。当然太陽は燦々と降りそそいで、とてもよい天気。こう考えれば、普通秋の季語の「秋日差す」とか「秋の日や」などを考えますが、それは「日」が重複して邪魔。ならば、「秋うらら」や「爽やかや」でも天気の良さは見えてきます。しかし、それでは余りにも穏やかすぎて、〈噛みこぼす〉の表現が生きてこないでしょう?ここは鬼が嚙んでいるんです、それも食いきれないでこぼしている…あの鬼の顔を想像すれば、何だかクヤシイ!という感じがしてきませんか?とってもいい天気、でも時は晩秋。ほら…もう分かりましたか?

 はい、答えは〈行く秋〉でした。しかし、これを〈行く秋や〉とせずに、〈行く秋へ日を噛みこぼす鬼瓦〉としたのがミソ。〈行く秋や〉としてしまうと、過ぎ去っていく秋を惜しんでいるのは作者となります。違うんですよ。鬼瓦が秋の終りを残念がり、この秋日を思いっきり味わっておこうと…でも今日の秋日は食っても食っても食い切れないぞ…と

 つまりこれは寒い冬が来る前の鬼瓦の秋への思いであると同時に、作者の秋を惜しむ気持ちでもあるのです。どう、いかがでしょう?ちなみに、この句は先日の馬醉木鍛錬会の永保寺での鬼瓦です。

 写真は、我が家の花〝冬菊〟と〝石蕗の花〟です。今まで健気に咲いてくれましたが、これがもう最後でしょう。いよいよ何も花のない寂しい冬になりますね。ガンバロウ!

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