ゴヤ「着衣のマハ」 プリハード 世界の名画 目安サイズ8号 額縁G | |
クリエーター情報なし | |
世界の名画 |
美の巨人たち:着衣のマハ 光と影のゴヤ
美術の教科書で必ず出で来る名前の一人、
スパインが生んだ天才画家、本日はその
人の絵画がテーマです。
それは、ゴヤ。
宮廷画家を務めたゴヤの作品は数多くありますが、
本日はその中でも珍しい対なる絵画がテーマです。
『着衣のマハ』と『裸のマハ』!
まず、番組構成からはずれて背景から見ましょう。
当時は、スペインの黄金期から衰退期にかけて、
乱れた王宮と政治社会の中で、宮廷画家にのぼり
つめた一人の画家を想像してください。
その男、ゴヤは、スパインの石ころだらけの地域
で生まれました。
スペイン北東部アルゴンのつましいメッキ職人の
家が生家です。
宮廷画家の妹と結婚し、画家としての登竜門に
発ちます。
しかし、道のり半ばにして、病に侵され、聴覚を
失います。
聴覚を失った男は、病を乗り越えて、眼と感覚
初め聴覚以外の五感を馳駆し、人間の内面を
描き出します。
本日の二つのマハもこうして描き出されたもので
しょう。
全身の感覚を研ぎ澄まして。
{マハ}とは、「小粋な女」を意味します。
若かりし頃より描き続けた小粋な女=マハ
さて、一方で、社会は、現代とは比べ物にならない
くらい閉鎖的で、宗教的です。
ご他聞にもれず、女性の裸を描くことは、たとえ
美術・芸術であっても表立っては描かない時代です。
この絵画が公開されたとき、ゴヤも宗教裁判にかけら
れくらいです。
では、そんな危険な次代に、なぜ、だれがこの絵画を
描かせたのでしょうか。
ゴヤが自発的に描いたのでしょうか。
現在まで謎が多い絵画です。
2つの着衣と裸の狭間で、思考が乱れています。
『着衣のマハ』は『裸のマハ』とどういう関係がある
のであろうか。
単なる表紙でしょうか。
番組では、ニ枚の絵画を表裏に組み合わせて、
昼は『着衣のマハ』を、夜は『裸のマハ』を飾ったと
いわれました。
しかし、本当にそれだけの目的でしょうか。
この絵画を所有していた当時の首相、マヌエル・ゴドイ
は、権勢を思うようにした人物です。
当時の王妃と二人三脚で政治と金と権力を自由にし、
後述のアルル女公爵の暗殺を企てた張本人とも
言われます。
二枚の絵画を比べると、
どうにも『着衣のマヤ』のほうが、人間らしく、
生き生きとしており、光り輝いているように見えます。
ゴヤの評価の全てを持っています。
光と影の魔術師
光り輝き、
その息遣いさえも聞こえるような
観る側もときめき、
絵画からも見られているような気持ちにもなります。
まさに、生きているような絵画
では、このマハのモデルはだれか。
一説には、アルバ女公爵(ゴヤの恋人)とも、
ゴドイの当時の恋人であるペピータとも
いわれています。
川越芋太郎には、少なくとも、『着衣のマハ』はゴヤの
恋人であるアルバ女公爵であると思います。
なぜなら、この顔と体から醸し出す、生き生きとした
オーラ。
そして、顔の眼差しや頬の赤みすべてが、ゴヤへの
愛情を感じます。
一方、『裸のマハ』は似ているものの、別人のようにも
思えます。
顔は似ているがまるで表情が別人です。
首を撮ってつけたかのような感じの『裸のマハ』
こちらは、ペピータ説に同意します。
どうやら、依頼主とゴヤの間で、秘密の約束でもあった
のではないでしょうか。
それが、証拠に、クーデター後、ゴドイが失脚し、
宗教裁判になっても、何も語らなかったゴヤ。
無論、ゴドイもです。
二人の間の密やかな「遊び」と硬い約束。
かわいくも、男を感じますね。
いつの世も男は未練とかわいさを持ち合わせた存在
でありますから。
さて、本日のマハことゴヤの作品『着衣のマハ』が
日本で公開されています。
絵画史上最高の裸体画と呼ばれる『裸のマハ』と
対をなす作品です。
(芋太郎は『着衣のマハ』に軍配を上げますが。)
縦95cm、横190cmの画面に描かれているのは、
長椅子に身を横たえた『マハ』の姿。
『マハ』が両手を頭の後ろに回し、挑発的な視線を
こちらに投げかけながら全身を晒しています。
ボレロ風の上着の下に光沢のある白いスリップ。
ピッタリとしたフォルムが、衣装の下で息づく豊かな
肉体を強調しています。
その魅力は『裸』よりも『着衣』のほうが強烈だ
という人もいます。
ゴヤの人生の分岐点で、一人の女性と出会います。
スペインきっての名家アルバ家の当主・アルバ女公爵
です。
アルバ家は、スペイン帝国建国の際に数々の戦争
で武勲をあげた一族で、絶大な影響力を保持して
いました。
さらに、特にアルバ女公爵はスペイン一の美貌と富と
名誉を兼ね備え、時の王妃が憎むほどの社交界の花形
だったといわれます。
ゴヤがアルバ女公爵の別荘で描き上げたと
いう彼女の肖像画には、2人の親密さをうかがわせる
ような痕跡が幾つも残されているのです。
黒衣のアルバ女公爵もその一つです。
時めくセレブと宮廷主任画家との組み合わせ。
恋があっても不思議はありません。
著名セレブと芸術家ですからね。
いまでもありえますよね。
注目は描かれた年度ですね。
1797年『裸のハマ』
『着衣のマハ』はアルバ女公爵死亡後です。
『裸のマハ』を対なる絵画を描くように、
依頼主からいわれたゴヤ
そして、二人がともに知る女をそこに描き出した。
それは、なくなった女への追悼と恋の感情を込めて。
違うでしょうか。
錯綜した愛情があったのではないでしょうか。
『着衣のマハ』は依頼主とゴヤの共通の恋人であった
アルバ女公爵でしょうか。
それは、現物をみて確かめてください。
あなたの心で感じてくださいね。
美の巨人たちホームページ
平成23年11月23日 川越芋太郎