鳥!連続写真!掲載中!

近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

日展招待状

2015年12月01日 00時00分01秒 | 提言

 後輩で、漆工芸を続けている繁昌孝二氏が今年も六本木の国立新美術館で12月6日まで開催予定の日展に出品している。本日時間が出来たので見に行くつもりである。特別入場券をいただいていたので、それを利用しようと思っている。日展は書道の部門で、数年前に問題が浮上し、その後組織を変えて今回は第2回となる。正式名称は日本美術展覧会である。同時に案内をいただいた日本新工芸関東地区会展は上野の森美術館で12月1日から12月7日まで展示される。

 

 多くの芸術家たちが、新しい作品制作に挑戦し、己の技巧を評価してもらう機会はそんなに多くない。簡単に出来るものではないし、制作期間を考慮して展示前には搬入を済ませておかなければならない。申し込みから出展まで1年間は必要と思われる。特に仕事を抱えていればなおさらのことで、作品に打ち込める時間も限られてくる。漆工芸は、製作工程が多くあり、漆の乾燥は湿度と温度管理が十分でなければ、塗膜が乾燥してくれない。生乾きでは次の工程に進むことが出来ず、あっせて作業を進めると失敗する。

 

 漆自体が高級素材であり、さらに加飾をすれば、材料によっては目が飛び出るほどの金額が必要となる。生業として立ち行かない理由の一つでもある、苦労する割合には高値で売れないことかも知れない。日展等の出展作品が展示後、高い評価を得ても行き場が明確になってはいない。一応全国の漆工芸をする工芸家の一覧はあるようで、市場評価格が明示されてはいるが、その世界は闇の中である。漆工芸のような伝統技法が廃れないためにも、基金なり、常設展示なり国家的な人材育成と保護の手がさしのべられると良いと願っているが、放置しておけば何とかなる世界でないことも事実である。

 

 伝統工芸が盛んだった時代には、大名や公家などのパトロンがいて、産業として奨励され、庇護を受けていたからに他ならない。そんな時代ではないことも承知しているが、式年遷宮が行われる伊勢神宮では20年に一度総ての社や建造物を新たなものにする。その理由の一つが、伝統技法の継承といわれている。神が住まわれる社の宗教的な意味はさておき、伝統に支えられる技法は、お蔵入りではあまりにも惜しい話である。未来に向けての取り組みは必要である一方、過去に蓄積された世界があって初めて新技術も生きるというものである。

 

 眠った遺賢が埋もれず、開花する機会は重要であり、引き続く意欲を存続するには、作品を展示することだけではなく、確固たる技量の蓄積と公開も大いに推し進めるべきであると考えている。