
【~八犬伝序の幕外伝~唐獅子牡丹】(湯浅みき/幻冬社コミックス)
八房が「犬」ではなくて「人間」だったら? というお話。
全身に八つの牡丹の刺青を彫られた最下層身分の少年と
父親に向けられた呪いを被ってしまったお姫様の出会い
玉梓の呪いに運命を翻弄される少年少女。
八房が人間として感情を表現できていたらこんな感じなのかも。
ただただ自分が守るべき大切な高貴なる存在である伏姫。
自分は周囲より一段低い卑しい存在ではあるけれど、
貴女の傍にいられるだけで幸せ。
「安西景連の首を獲って来い!さすれば姫を与えよう!」
苦境の中での魔の言葉。
この一言で八房を縛っていた全ての枷が無くなった。
獣としての本能を発揮し、見事首を獲って戻った八房に
非のつけようは無い。伏姫とも両想い。けれど周囲は・・・
どうも、この大輔の伏姫への感情が判らない。
伏姫の婿予定という立場にしがみついてる只の意気地なしという
感じもする。自分の全てを失っても伏姫の為だけに生きる八房と
この大輔どちらかだったら、伏姫は八房を選ぶと思うんだけどな。
そして、この展開だと「八犬士」は生まれてこなさそう・・・
しかたしん版「里見八犬伝」のように八房=大輔だったら、
八房の存在がもっとハッキリしていたかも。
半獣人が身近で高貴な人間に向ける愛憎の念
という視点から見れば、八犬士の一人・犬村大角とその義弟
である牙次郎の関係と重ね合わせて見ることもできるかも。
あれは大角の登場エピソード自体、伏姫自害前後のリトライでも
あるのだけれど。牙次郎って多分、大角のこと好きだったと思う。
半分獣で獣の部分の方が強かったのと、周囲の環境が伏姫側の
ような反対派多数で兄弟として仲良く接することができなかった
んじゃないかと。だから、本当にもしももしもの世界だけど、
大角が雛衣さんを偽赤岩に差し出して、現八がもう少し来るのが
遅れていたら、大角は獣の部分に負けた牙次郎に殺されていたんだろうな。