サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

トゥ・オン・ワン

2013年06月14日 | 電動車椅子サッカー

電動車椅子サッカーを題材にした小説「トゥ・オン・ワン」(幻冬舎ルネッサンス刊)が出版されました。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4779009499/renaissancebo-22/ref=nosym/

早速購入し読みました。
著者は、電動車椅子サッカーの審判を長くやっていたという鈴木和音さん。

簡単に言えば、福祉系の学部に在籍する大学生(玉城あすか)が電動車椅子サッカーのクラブチームでボランティアを始め、審判の卵となっていくといった流れで、彼女の視点から電動車椅子サッカーが語られていきます。
あすか自身が電動車椅子サッカーを全く知らないところからスタートしているということもあり、電動車椅子サッカーを知らない人にとっての入門的な本にもなっています。

小説としてどうか?という点には突っ込みませんが、選手やご家族の方及び関係者の方々は、登場人物に自己やまわりの人々をかなり投影できるのではないでしょうか。
この人物はあの人をモデルにしているのかなあ、なんてこともかなりありましたし。

トゥ・オン・ワンとは、電動車椅子サッカー特有の反則の一つ。
3m以内にボールを保持した競技者と相手チームの競技者2名がいて、その2名が何らかのプレーに関与している時に守備側のファールになるということで、平たく言えば1人の競技者に2人がプレスをかけに行ってはいけないといってもいいかな。そのルールが出来たことで、競技者間の距離が離れパスもまわるようになったわけです。
いいタイトルだと思います。


競技の変遷があまり描き込まれていない点は少々残念でした。6kmと10kmが、現状とは違う形で描かれていた狙いは、よくわかりませんでした。
そうなってほしいということなのか、そうなるべきだという思いなのか?

あ、電動車椅子サッカーがわからない方には、何のことやらわかりませんよね。
電動車椅子の日本での法定速度は6km。その6kmの制限速度内というルールで行われるのが6kmでの試合。10kmの制限速度でおこなわれるのが10kmでの試合。当然10kmの方がスピード感はあります。日本代表、地区選抜は10kmでプレー、クラブチームも10kmでプレーする全国大会もあります。但し、小説が題材にしているクラブチームの全国大会は10kmとなっていますが、実際は6kmです。もちろんチームによって、練習でも10kmでやることはあります。

冒頭の電動車椅子サッカーの描写は、まるで10kmのような描写だけど、設定的には6kmのようだし、でも説明はないし、とかなり読み進んだ後に10kmということがわかりました。

日本代表や選抜チームで活躍している選手たちは、6kmと10kmの両方でプレーしなくてはならないわけで、強化という面からみると、ブレーキになっている側面もあります。しかし普及という側面からすると、6kmも当然必要なわけで、なかなかむずかしい問題ではあります。
ガチでやるのか、楽しみでやるのかというテーマは小説のなかでも語られていました。


電動車椅子サッカーを扱った本には、横浜クラッカーズの監督である平野誠樹さんが書いた「110cmの視野」という本があります。
小説ではなく自伝なんですが、「ウソ!」と思わず声が出てしまいそうになるくらいファンキーな内容です。


ところで、1週間前になりますが、カナダで行われたクラブチームの大会に、日本からRed Eagles兵庫,FINEの2チームが参加、見事にRed Eagles兵庫が優勝を飾りました。そして有田選手が得点王!
おめでとうございました。