サッカー狂映画監督 中村和彦のブログ

電動車椅子サッカーのドキュメンタリー映画「蹴る」が6年半の撮影期間を経て完成。現在、全国で公開中。

相模原障害者殺傷(やまゆり園)事件関連本

2020年07月25日 | 障害一般

やまゆり園で19人の障がい者を殺害、職員を含む26人に怪我を負わせた植松聖は今年3月に死刑が確定。
事件から明日26日で4年となるこの時期に関連本が立て続けに発売、ほぼ全て読みました。
同様の事件が起きぬように、事件を風化させぬように、本を読み事件を振りかえるのも有意義だと思い、簡単に紹介しておきます。5冊です。

『パンドラの箱は閉じられたのか』創出版
植松ともっとも数多く接見を続けてきた月刊『創』編集長篠田さん編著ということもあり、事件に関心を持つ全ての人のファーストチョイス。
公判以外の独自取材、やまゆり園検証委員会に関する記事もある。
『開けられたパンドラの箱』未読のかたはそちらも併せて。

『相模原障害者殺傷事件』朝日文庫
朝日新聞取材班による文庫本。
公判も順に振り返り、巻末資料として被告人質問の一問一答も掲載してあるなど、資料的価値が高い。どういう事件だったのか、どういう裁判だったのか、概観するにはとても便利。文庫の大きさも重宝。

『やまゆり園事件』幻冬舎
地元神奈川新聞取材班によるもの。
匿名だった被害者が、障害名や人柄など出来るだけ可視化されており貴重。事件のリアルな描写も対になっている。
また事件とは直接の関係はなくとも、共に生きる場である(べき)、施設、学校、家族等々をとことん取材。福祉に関心がある方にお薦め。

『相模原事件裁判傍聴記』太田出版
雨宮処凛さん独自目線の傍聴記。植松の反応、声や表情に言及されているのは貴重。他の本から漏れていた植松の言葉もあったりする。また公判前の彼女なりの植松像がゆらぎ、語られていくのは、植松とは何者か?を考えるのに参考になる。
渡辺一史さんとの対談もとても興味深い。

『私たちは津久井やまゆり園事件の「何」を裁くべきか』社会評論社
公判中の3月に発売されたものだが、「津久井やまゆり園事件を考え続ける会」主催の講演やシンポジウムの採録を中心としたもので、様々な立場の方の生の声が読めるという意味ではとても貴重。

朝日新聞と神奈川新聞による本は、新聞社故の限界か、植松が犯行に至った経緯の考察や、やまゆり園自体への言及があまり無く、そこは物足りないところではあった。


ALS女性嘱託殺人事件 自らの人生を生きたいと思えるように

2020年07月25日 | 障害一般

亡くなられた京都のALS女性は人工呼吸器を付けない選択をし、自ら命を絶つことを切望されたようだ。

一方、死にたいと2年間思い続けた国会議員船後さんは自らの経験が他の患者の役に立つことを知り、人工呼吸器をつけ生きることを選んだ。
故・三浦春馬さんはALS患者を演じたドラマ『僕のいた時間』で、「死にたいわけじゃない。生きるのがこわいんだ」と涙を流し、多部未華子さん演じる恋人に抱きしめてもらう。そしてそれまで支えてくれた周囲の人々との「それまで生きた時間、僕のいた時間」を支えに“生きる覚悟”を決める。

京都の女性は、2人のようには思えなかったのかもしれない。自己イメージが高く、落差しか感じられなかったのかもしれない。

ALSのことも詳しいわけではなく部外者が軽々しく言えることではないかもしれないが、この事件でまず考えるべきは、船後さんもいうように「自らの人生を生きたいと思える社会」をどう作るか、ということではないのか!

安楽死(あるいは自殺権?)の議論をするとすれば、その次だと思う。

亡くなった三浦春馬さんを引き合いに出すのもどうかとも思ったが、ALSと聞き、即座に顔が浮かんだ。
(ドラマのなかで電動車椅子サッカーをプレーする場面があり、当時、ドキュメンタリーの撮影で通っていたチームが撮影の協力、そんなこともあって、現場で見学していた。)
ひょっとしたらこの事件の報道が生前であったら、三浦さんは自殺を思いとどまったのだろうか。いやそんな仮定の話は失礼だろう。

お二人のご冥福をお祈りします