再び原点回帰なり!

未熟なビジネスマンの心のつぶやき

FESCO十年の歩みを振返って(6)

2007-06-30 06:52:36 | 連載・FESCO十年

バーチャル・コーポレーション戦略は機能したか?

FESCO創業時の第二の基本戦略は、「バーチャル・コーポレーション戦略」と名づけたもの。

確かに創業から1年間ほどは、固定的な事務所を保有せず、ネット上に存在するまさに「バーチャルな会社形態(仮想企業体)」を採った。

その主たる理由は、ESCO事業に必要なノウハウを提供する企業群(FESCOの場合は出資会社)が、いかに効率的かつ効果的にあたかも一つの企業のように相乗効果を発揮できるか、という組織運営上の要請に答えるための実験的な試みであった。

ESCO事業はサービス業であり、その基本は人材にある。能力のある人材、もちろん創業時はそれに加えて、熱い情熱やビジョン、戦略を共有できる同志をいかに集めることができるか。これはサービス業のみならず、ベンチャー企業の創業を成功させるための最大のポイントである。

一方、この人材確保は、立上げ時の経済的な負担との闘いでもある。そのための苦肉の策として考案したのが、「二足のわらじ」方式であった。

通常は母体企業(FESCOの場合は、コンソーシアム時代からのメンバー企業)に所属しながら、FESCOの求める技能やノウハウに応じて、適宜自らの能力を提供できる人材をいかにマネジメントするか。

ネットの持つ可能性を最大限引き出すことができれば、会社は物理的に人材が集まるところという常識を打ち破ることができるのではないか。

これは私自身の仮説でもあり、新しい起業方式への挑戦でもあった。

結果はどうであったか?創業一年目は、この方式はそれなりに機能した。経費低減に役立ち、立上げ時の資金繰りの厳しさを克服する一助となった。

しかしながら、二年目あたりからは、徐々に「バーチャル」という表現は、意識的に避けるようにした。やはり、顧客に与える心理的な影響は大きく、「バーチャル(仮想)」という言葉が与える印象は、「責任所在の不明瞭さ」を示唆いることが判明したからである。

また、もう一つの大きな壁として、ネットインフラの未成熟さがあった。創業時の97、98年あたりは、インターネットの黎明期であり、今から思うと考えられないほど低レベルな状態であった。

接続はダイヤルアップ。時間と共に課金され、少し重いデータを添付するとPCが即フリーズした。動画や音声などをネット上で交換するなどは、夢のまた夢状態。

医療の世界で遠隔診療という試みがあるように、省エネ診断も遠隔診断ができるのではと挑戦してみた。つまり、各種分野の技術者が現地に直接赴くことなく、エネルギーデータに加えて写真や画像によって、遠隔地からより総合的な診断が可能ではないか。

この試みは、10年早かったと思うが、ブロードバンド時代でWeb.2.0時代の今となっては、再度挑戦したいテーマであり実現は難しくないのではないか。

バーチャル・カンパニーから、ネットワーク・カンパニーへの戦略進化は、必然的な時代の流れではないかと確信している。

インターネットの潜在力と結びついたエネルギーサービス。これがESCO事業の新しいビジョンになる日も近い。