伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

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ジャコシカ175

2021-01-23 19:29:35 | ジャコシカ・・・小説

 季節は春も酣(たけなわ)に入り、切り立った山々の緑も色を濃くしていたが、負けじと海の色も明るさを

 

増し、勢い着く大地の塊を呑みこむように写し取っていた。

 

 入江の家は鉄さんも高志も出かけて、ガランとしていた。

 

 わずかばかりの荷を片付け、着替えを済ませると、急にあの日のことが思い出された。

 

 

 鉄さんと高志が陽の落ちた畑から戻った次の日、あやは高志と二人で強引に鉄五郎を病院に連れ

 

て行った。

 

 結果はさし迫った病状の悪化はなかったが、引き続きの服薬と定期的な通院の必要があることは

 

念を押された。

 

 病状の方はひとまず胸をなで下ろしたが、もう一つの気がかりは消えなかった。

 

 明らかにあの日以来、鉄さんの様子にはどこかおかしいところがあった。

 

 仕事はいつもと変わらずに坦坦とこなしているのだが、時々心はどこかあらぬ方を、さ迷ってい

 

るのが分かるのだ。

 

 茫としているかと思うと、突然苦し気な渋面になったりしている。

 

 一人で船着場に網を拡げて繕っている時、偶然そんな様子を見てしまってからは、一層不安は増

 

した。

 

 気が付けば高志はそれとなく、彼の様子に視線を走らせている。

 

 「ねえ、近頃鉄さん変じゃない」

 

 あやは高志に尋ねた。

 

 「うん」

 

 仕掛け作りの手を止めた高志は眼を閉じ、少こしの間あごを上げていたが、やがて「何かあった

 

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