伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ188

2021-04-02 14:51:48 | ジャコシカ・・・小説

陽差しも薄曇りで強過ぎず、水面は山奥の湖のような静寂に包まれている。

 

 立ち上がり迫り出す山には、幽かに霧が棚引いている。

 

 やがてその霧の中から、赤と黄の鮮やかなヤッケを羽織った、若い姉妹が現われた。

 

 近付くにつれ、聞き覚えのある元気な千恵の声が、入江の静けさを破って伝わって

 

きた。

 

  

 朝一番の汽車でやってきた千恵と清子は、麦藁帽子にスカーフでしっかりと陽焼対策を整えてい

 

る。

 

 

 背中にはリックサック、足周りはゴム長と支度は申し分ない。

 

 陽焼対策は特に高志に念をおされていたので抜かりがない。

 

 二人を前にして高志は、頭から足元まで視線を走らせてから肯いた。

 

 一応肯いたが、その後でまだ気がかりな点に念を入れる。

 

 「サングラスは」

 

 千恵がヤッケのポケットから、ちよっと引き出して見せた。

 

 「必要ないと思うけれど、合羽とセーターは」

 

 「リックの中にある」

 

 やはり千恵が答える。

 

 「ライフジャケットはこちらで用意してある。朝めしは済んでいるね」

 

 「完了です」

 

 千恵が楽し気に直立不動の姿勢を取る。

 

 「それから、これはお父さんから」

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