伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ189

2021-04-06 01:14:04 | ジャコシカ・・・小説

 清子がちよっと妹を睨んでから、手に下げていた風呂敷包みを差し出した。

 

 「ジャガイモと玉葱です」

 

 千恵が先刻の姿勢を崩さず言う。

 

 「ありがとう、重たいのにありがとう」

 

 高志は急いで土間から御用篭を持ってきて包の中身を開けた。

 

 鉄さんは船の上で、エンジンの調子を見ていた。

 

 船上で二人を迎えた彼の顔は、笑顔ながらやはり漁師の厳しさの漂う顔になっている。

 

 姉妹の顔にも、ほんの少こし、緊張感が走る。

 

 

 「あやはまだか」

 

 鉄さんはちよっと不満そうに高志を見た。

 

 その声が聞こえたかのように、玄関から片手を上げて振りながら、あやが現われた。

 

 「おはよう、今行く」

 

 こちらの声も千恵に負けずに良く透り、入江の渚を渡ってきた。

 

 千恵が両手を上げて、ピョンピョン跳ねて応える。

 

 入江が俄かに華やかに活気付く。

 

 高志は思わず顔を上げて、入江を包む緑の壁を見廻した。

 

 急峻な崖と山肌に隠された入江が、急に海に向かって押し開かれたように思えた。

 

 「高さん、今日は大漁だよね」

 

 千恵が浮き浮きと声をかける。

 

 「お嬢様の腕次第だね」

 

コメント
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