伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

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ジャコシカ193

2021-04-27 17:02:43 | ジャコシカ・・・小説

 

 

 「釣れた」

 

 短く言って真剣な表情だ。手応は充分のようだ。水面下に魚影を見て叫ぶ。

 

 「また変なものだ!」

 

ごそっと上がってきて、ぶるぶると動く固まりを見て、千恵が情けない声を出す。

 

 「カジカだ」

 

 あやは言ってケラケラと笑った。

 

 「千恵ちゃんはトゲトゲが大好きなんだ」

 

 高志がからかうと「相性がいいみたい」とめずらしく清子まで乗る。

 

 船底でドタドタと弾ねるカジカを見て「お前は味噌汁にしてやる」と千恵は腹立たし気に申しわ

 

たした。

 

 その後もアタリは良好で、完全に五目釣りの様相を呈して続いた。

 

 もう誰かの上げるのを、じっくりと眺めていられる状況ではなくなった。

 

 いつの間にやら高志は、自分の仕掛けはそっちのけで、呑みこまれてしまった獲物の鉤外しやら、

 

もつれたテグスの解きに追われていた。

 

 船上の賑わいは小一時間も続いたが、その後パタリとアタリが止まってしまった。

 

 「潮目が変わったな」

 

 高志はアンカーを上げてエンジンをかけ、港方向の沖に移動した。

 

 「ここからはもっぱらカレイ狙いだ。ヒラメもくるかも知れない。ゆっくり東の港方向に流され

 

るから都合がいい」

 

 全員が仕掛けを入れ終わったが、アタリはこない。少こし待った後、先刻の入れ喰い状態の緊張

 

が解け、皆の気持ちがほっと緩んだ。

 

コメント
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