伊達だより 再会した2人が第二の故郷伊達に移住して 第二の人生を歩む

田舎暮らしの日々とガーデニング 時々ニャンコと

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ジャコシカ149

2020-07-02 13:00:37 | 小説

千恵は戸惑い躊躇した。

                             

 「私歩けるから」

 

 「片足でこの坂道は無理だ。それに早く治療が必要だ。緊急事態だから遠慮は無用、さ早く」

 

 「高級車という分けにはいかないと思うけれど、羆の背よりはましだと思うわ」

 

 あやは少こし苛立って千恵の背を押した。

 

 千恵は恨めし気にあやを睨んでから、観念したように両腕を高志の肩に廻して、体を預けた。

 

 千恵の体は華奢で思いの外軽かった。

 

 高志は内心ほっと安堵した。

 

 この重さなら途中あまり休まずとも、入江の家まで保ちそうだ。

 

 荒い工事現場や漁師仕事をこなしてきたことが、思いがけないところで役に立つ。

 

 いつの間にか立派な肉体労働者になっていたことに気付いた。

 

 急な坂の手前で二度休憩を取ったら、もう家は眼の前にあった。

 

 その時になってずっと黙りこくつていた千恵が小さく言った。

 

 「私今日でかけ際にひどいことを言ってごめんなさい」

 

 間を置いてから思い出したように、高志が言った。

 

 「何んのことかな」

 

 「羆の話しの時、馬鹿なことを言いました。もちろん冗談だけれど、でも後で考えたらひどい言

 

い方だし」

 

 「羆がどうしたって、さっぱり分からん」

 

 今度はすぐに応えが返ってきた。

 

 「憶えてない?」

 


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