退屈しないように シニアの暮らし

ブログ巡り、パン作り、テニス、犬と遊ぶ、リコーダー、韓国、温泉、俳句、麻雀、木工、家庭菜園、散歩
さて何をしようか

울지 말고 꽃을 보라

2014-10-24 05:55:31 | 韓で遊ぶ

北の母
彼は43年ぶりに故郷である北朝鮮を訪ねた。在米朝鮮人としての公式日程をすべて終えて、すぐに故郷の村を訪ねた。道も昔とは変っていて村の名前も昔のままではなく、幼い頃の記憶を手探りしてとうとう一軒の家を見つけた。
草葺きの屋根がスレートの屋根に変っているだけで、母屋や書斎があった場所とトイレと物置があった場所まで以前と同じだった。その上、裏に杏の木が1本立っているのまでそのままだった。
彼はドキドキする胸を落ち着かせて、そっと門の中に入って行った。土間にみすぼらしいおばあさんが一人座って居眠りをしていた。
「おばあさん、もしや43年前にこの家に住んでいた人を知っていますか。」
彼は黙って老婆に近づいて聞いた。
老婆は夢でも見ているのか、目も開かずにしばらく言葉もなかったが、独り言のようにつぶやいた。
「私は50年前からここに暮らしているが、、、」
「え、50年前からですか。」
驚いた彼は、しわだらけの老婆の顔をゆっくりと見た。一度も見たことのない見慣れない顔だった。老婆は歯が全部抜けていて、白い髪の毛が固まってもつれていて、目さえただれて目やにで覆われていた。
しかし、彼はもしやと思ってもう一度聞いた。
「ならば、おばあさん、6.25の前にこの家に住んでいたキヨンを知っていますか。」
「キヨン。」
老婆の顔にうれしそうな気色がよぎったと思ったら涙が浮かんだ。
「私の息子は死んだ。」
「ならば、私のお母さんですか。お母さん私がキヨンです。」
「何だと。」
老婆は耳が遠くなって聞き間違えたかのようにゆっくりと頭を振った。
「南へ行ったけど、死んだ。一度でも会えればどんなにいいか。」
「お母さん、私が南に行ったキヨンです。頭をあげてみてください。」
そしてやっと老婆が頭をあげて彼を穴のあくように見た。そうしていたら目に火花を散らしてぱっと立ち上がって、いきなり彼の背広を脱がした。どこからそんな力が出たのか若いものにも負けないぐらいの力で、ワイシャツまで脱がした。そして「ああ、キヨン。」と彼の背中に顔をつけて泣き始めた。
「ああ、これは夢なのか、現実なのか。お前が本当にキヨンだね。背中の三台星があるのを見ると間違いなくキヨンだ。ああ、私の息子。私がお前を生んだ時この三台星を見て我が家に大物が出たとお前の父親がとても喜んだのに、、、」
老婆は彼の背中を撫でながら泣き続けた。やっと彼も「お母さん」と老婆を抱きしめて泣き出した。
夢に描いていた若い母の姿ではないが、彼は母を見つめた。見分けることができないくらいに変ってしまった母の姿に、涙がまた流れた。
「休線ラインが塞がると、父親はお前を思って火病(怒りを抑えすぎてなる病気)になって亡くなった。そしてお前の姉さんと弟は6.25の時に死んだ。私も大分前から体が悪くて、お前に一度でも会って死なせてくれと毎日神霊に祈っていた。だけど、これはいったい。本当に会えるなんて、、、昨日は久しぶりにお前の夢を見た。目が覚めてみるとお前の顔が全然浮かんでこなくて、さっきから土間に座って、お前の顔をもう一度思い浮かべようと思っていたところだった。家が変ってしまうとお前が永遠に訪ねてくることができないと思って、いろいろ大変なことがあったけれど壊したり治したりもしないでそのまま置いておいたのが、本当に本当によかった。」
老婆はずっと夢みたいだと言いながら、何回も自分の手の甲をつねりながら話を続けた。
だが、彼はいろいろな事情があって一晩も母親と過ごすことができず、そこを離れなければならなかった。すがり付いてなく母親に何ヶ月か後にまた来ると約束を残してそこを離れた。
その後、彼が他の国へ立ち寄ってアメリカに帰ってくると母親が死んだと言う知らせが来ていた。じっと日付を見てみると自分が訪ねて行ったその次の日が、母が亡くなった日だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする