
雪だるまになった練炭の灰
ぼたん雪が降った。人々は新年を祝う序説が降りたと言って皆喜びながら道に出た。
アパートの角にいっぱいに積まていた練炭の灰たちもうれしい気持ちは人と同じだった。練炭の焚口に入って行って白くみすぼらしくなった彼らに、ぼたん雪が白い服を着せてくれることはこの上ないありがたいことだった。
子供たちは雪がやむと皆外に出てきて雪だるまを作った。はじめは雪の塊を作って雪合戦をして、その後には誰が一番早く、一番大きな雪だるまを作ることができるかと言う試合をした。
雪は降ったばかりで湿気がなくて上手く固まらなかった。ところが、ある一人の子供がアパートの裏庭に積まれた練炭の灰を持ってきた。生まれてはじめて雪を見て、ただ不思議に思っていた練炭の灰は、訳もわからず急に子供に引きずり出された。
子供は練炭の灰を雪の上に置いて転がし始めた。その子供の雪の塊がすぐに他の子供たちの雪の塊よりも大きくなった。その子供はうれしくなった。誰よりも自分のが大きいのがうれしかった。
練炭の灰は動揺しないではいられなかった。練炭として生まれて結局はここで死ぬのだという絶望感に涙が出た。
しかし、気を取り直してみると、そうではなかった。たとえ雪の塊の中に閉じ込められ窮屈だとしても、それがそんなに嫌ではなかった。練炭の灰の身の上で雪だるまの身の上に上がったと言う事実は、むしろいいことだという思いがした。今こそ変ってしまった運命に自ら順応する時だと言う思いがした。
練炭の灰はあちこち転がされる度に全身にあざがついたが少しも嫌だと言う声を出さなかった。雪の塊が大きくなればなる程に、重圧感に耐えられず続けざまに苦しいうなり声が口の外に漏れてきたが苦しいと言う一言だけは出さなかった。身の上が上がるためにはこのぐらいの苦しさは我慢しなければならないと思った。
結局雪だるまを一番早く、一番大きく作ったの子供は練炭の灰を転がして雪だるまを作った子供だった。その子はうれしくてたまらなかった。いつの間にか子供の父親がカメラを持って出て来て記念写真まで撮った。
練炭の灰はこれで自分が練炭の灰ではなくて雪だるまだと思った。このまま永遠に純潔な雪だるまとして生かしてくれた子供に感謝した。そして以前の自分のようにアパートの壁にべったりとみすぼらしい姿で積まれている練炭の灰たちを哀れだと思った。
次の日、雪がやんで日差しがまぶしかった。また、その次の日も日差しは降り注いだ。自然と日差しに雪だるまが融け出した。練炭の灰は以前よりの見苦しい格好になった自分の姿をもう一度現した。日差しに雪だるまが融けると言う事実を知らなかった練炭の灰はただ、恥ずかしくてどうしようもなかった。