
心臓が二つある男
心臓が二つもあるKとJがソウルに住んでいた。彼らは他の人とは違って心臓が二つあると言う事実を表面に出して自慢したりはしなかったが、内心ではこっそり喜んでいた。
ある日KがJに言った。
「私たちが他の人たちと違って、心臓が二つあると言うことは何か特別な理由があるのだ。おそらく、いいことに使いなさいと、神から二ついただいたのだ。私たちは心臓病で苦しんでいる人々を探して心臓のひとつを上げるのはどうだろうか。」
Kの言葉にJはパッと飛ぶまねをした。
「何だって。何を言うんだ。冗談にもそんなことを言うな。ひとつをあげてしまったら他の人と同じじゃないか。私はそうはできない。私は長生きがしたい。これからもそんな話をするならば、お前とはもう二度と会わない。」
JはKに二度と会わなかった。会うたびにKがそんな取るに足らない話をするからだった。
これ以上Jに会うことのできなくなったKは、ある日新聞を見て心臓病を病んでいる一人のチェリストに自分の心臓をひとつやった。
チェリストはKの心臓を移植してもらって、立派なチェリストになることだけがKに対する恩返しになる道だと考えて、一生懸命努力して世界的なチェリストになった。
一方JはKとは違っていた。Jは心臓が二つあると言う事実だけを信じて放蕩な生活をしながら自分の健康を省みなかった。
「私は心臓が止まっても死なない。もうひとつの心臓があるじゃないか。」
彼は自分の心臓が二つだと言う事実をあまりにも過信したあまり、ある日道を歩いていて心臓麻痺で倒れて死んでしまった。
彼は、たとえ心臓が二つでも、一つの心臓が病気になってその機能を失ってしまうと、残った心臓も同時にその機能を失ってしまうと言う事実を知らなかったのだ。