
皆が優れている
昔々、役人になるための試験を主席で合格したチャンウォンの行列が村の真ん中を通った時のことでした。盛大な見ものを逃すまいと人々がぞろぞろ通りに集まってきて、村全部がざわめきました。その時、人々の中にいたきこり一人が、大したことはないなと言いました。
「役人の試験に合格したからって何がすごいというのか、、、。」
馬に乗って前を過ぎて行くチャンウォンはきこりの言葉に心が傾き聞きました。
「役人の試験に主席で合格したことが大したことでないとは、、、、。ならば、あなたは他の人と違って何か特別な才能でもあるというのですか。」
「私は、どんな木でも正確に半分に割ることが出来る。」
きこりの大言壮語を確認するために、チャンウォンは、太い木の丸太の真ん中にまっすぐに線を引きました。その上できこりが斧を力いっぱい振り下ろすと、木がぱっくりと2つに割れました。
線にそって割れた木を見ながら感嘆した人々の中には油売りもいました。
「俺も、自慢できるものがある。」
彼は割って入って言いました。
「俺は、秤を使わなくても油1斗を正確に測ることができる。」
油売りは、ひさごの口に穴の開いた銭を1枚載せました。そして、大きな油桶を傾け、銭の穴に油を流し始めました。ひさごの中の油を計ってみると正確に1斗でした。
「あ、本当に正確ですね、、、。」
「わぁ、本当に大したものだ。」
「驚いたね。驚いた、、、。」
油売りをほめる見物人達の中から、今度は女が声を上げました。
「ならば、私の才能も見せよう。」
彼女は、ふるいにかける技術を披露しました。ボールの中に混ざっていた粟と米を少しの間に正確に2つに分けました。チャンウォンは豪快に笑って言いました。
「ははは、どこにでも優れた人はいまずね。皆が優れた才能を持っていても黙々と仕事をしているのに、私一人が舞い上がって騒いでいたのは、恥ずかしいことこの上ありません。」
村の通りで大きな悟りを得たチャンウォンは、その後、民を徳で治め、善政を施す役人になりました。目と耳が遠くなる慢心とおごりを恐れる姿勢、、、。民を敬う心で自分を低める謙遜の姿勢が村に平和をもたらしたのです。