心のこもった制服
上の娘が中学校へ入る頃、我が家の暮らし向きは最も苦しい時でした。暮らしが傾けるだけ傾いたせいで、どんなに節約しても困窮した暮らしから抜け出すことが出来ませんでした。
「あぁ、、、。」
通帳は底をついてからしばらくたつのに、中学校に入る娘の制服をどうやって準備したらいいのか、心配事が山のようでした。それでも、ありがたいことは、娘の態度でした。母の懐具合を思ったのか、娘は古い制服でもいいという風でした。ちょうど生活情報紙に古い制服をくれるというおばさんの文章を見たと、私の心配をやわらげてくれることまでしてくれました。私は少しの希望を持って、気持ちの優しいおばさんと電話で短い話をしました。
「制服をくれるという文章を見て連絡したのですが、、、。」
「あ、はい。娘さんの背はどれぐらいですか。」
「背の高さは普通で、少しやせています。」
「娘さんの体格に合わせて直してあげようと思うので、洗濯屋に預けておきますね。」
「ただ頂くのも申し訳ないので、何かお返しをしたいので住所を教えて下さい。」
「あ、私、今、ちょっと忙しくて。」
少しでもお返しをしたかったのですが、おばさんは忙しいという言葉で電話を切りました。数日後、私は娘と一緒に修繕が終わった制服を取りに洗濯屋に行きました。
「いくらですか。」
「もう、支払いは終わっていますが、、、。」
おばさんが費用を前もって支払ったということでした。制服も制服でしたが、白いブラウスは3年も着たとは思えないぐらい新しいものでした。
「どうして、ブラウスが、、、ほとんど新品じゃないの、、。」
感謝を述べようとおばさんに電話をして私はブラウスについて聞きました。少しして、驚く答えが返ってきました。
「ほほほ、実は私、人様の家で家政婦をしているんですよ。その家で、その学校の制服を捨てようと出したんですよ、、、。どこも痛んでいないのにもったいなくて、必要な学生がいたらあげようと情報紙に広告を出したのですが。古い服だけをあげるとしたら胸に引っかかって、ブラウスだけ新しく買ったのです。一度洗っておいたからすぐに着れますよ、、、。」
おばさんもがんばって働いて苦労して稼いだお金なのに、、、、。赤の他人の子供に、どうしてここまで気を使うことができるのか、大したものだという思いがしました。
「本当に、ありがとうございます。」
おばさんを知るまでは、奉仕とか分け合うということは、多くの物を持っている人だけができることだと思っていました。たとえ満ち足りていなくても、誰でも分け合うことを実践することができるということを見せてくれたおばさん、、、。その愛がまぶしい純白の光のように、私の干からびた心を明るく照らしてくれました。