退屈しないように シニアの暮らし

ブログ巡り、パン作り、テニス、犬と遊ぶ、リコーダー、韓国、温泉、俳句、麻雀、木工、家庭菜園、散歩
さて何をしようか

幸福な世界

2015-02-08 07:19:31 | 韓で遊ぶ


幸せな医者

小さな島の村に医者がいました。
島のすべての子供たちは、彼の手を通してこの世に生まれたといっても良いほど、彼は長い歳月、この島に留まり住民の健康を見守って来ました。
古びた商店の角にある彼の診療所では、1年365日、一日も欠けることなく明け方まで明かりがついていました。
その明かりには「寝ていないから、誰でも辛かったら、いつでも門をたたきなさい」と言う意味が込められていました。
彼には休みはありませんでした。
どんなにひどい暴風であっても隣の島まで往診に行ったりもしました。
「あれまあ、先生、こんな夜中にすいません、、、」
「そうだ、こんな年寄りの医者に面倒をかけないように、どうか早く良くなってくれ。」
「はい、わかっていますよ。」
患者たちは、彼に会っただけでも病気が半分はよくなると言ったりもしました。
「先生、、、」
村の人たちにとっては、彼は医者以上の意味がありました。
ですが、彼は島に来た時から一人でした。妻も子供もない独身。
結婚はしたが、妻が病気でなくなって都会を離れたのでした。
それから数十年経ち、頭は白くなり、家族もなく、人のために一生を生きてきた彼が70歳の誕生日を迎える日、村の人たちが秘かに誕生日のパーティを準備しました。
「先生、早く、早く。」
急患だと言うことであたふたと往診かばんを持ってついて行くと、村の会館で彼を待っていたのは患者ではありませんでした。
すべての村の人々が皆集まった誕生日パーティ、、、。
目頭を赤くして幸福に思っている彼に誰かが言いました。
「あ、こんな日に、息子や娘がいたら良いのに。」
その言葉が終わるか終わらないうちに、一人の青年が立ち上がり叫んで言いました。
「私が先生の息子です。」
そうすると、また一人が立ち上がりました。
「私が先生の娘です。」
「私もよ。」
「私もよ。おじいさん。へへ、、」
最後には、会館に集まったすべての子供が、老いた医者の息子、娘を自負し立ち上がりました。
「いや、この人たちは、、、」
彼は世の中の誰よりも幸福な医者でした。
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幸福な世界

2015-02-07 04:26:13 | 韓で遊ぶ


誠実と言う武器

ある軍事訓練所であったことです。
そこは教官が厳しく過酷な訓練で知られた訓練所でした。
「1、2、1、2、、、1、2、1、2」
訓練は朝早くから夜遅くまで、一つの間違いもなく規則通り日課表にしたがって進められました。ですが、長距離走をするといつも隊列から外れて寂しく走るビリの兵士がいました。
その日もそうでした。
「はぁ、、、はぁ、、」
みんなが一心不乱に動いているのに、その兵士だけは一人遅れてよろよろしていました。
「は、、、はぁ、、、」
だからと言って座り込んで落伍者になることはできません。彼は歯を食いしばって走りました。
「で、、、できるぞ、、はぁ、、、」
そうやってどのぐらい来たでしょうか。目の前に分かれ道が現れました。
どちらか一つを選ばなければならない分かれ道です。
それぞれの道の前には標識が立っていました。
右側の道には兵士が走る道、左側の道は将校が走る道となっていました。
彼はしばし立ち止まって分かれ道を交互に見ました。
「いずれにしても、将校の走る道のほうが短くて楽なんだろうなぁ。」
見ている人もいなし、楽な道を走ろうかと、しばらくためらった彼は、結局、兵士の走る道に入って行きました。軍人としての良心を捨てることができないための決定でした。
ところが意外にも、彼は30分も経たないうちに決勝点に到着し、驚くことに9等を記録しました。
9等はおろか50等以内にも入ったことのない彼は、何かの間違いだと思いました。まさにその時、訓練教官が水を差し出して言いました。
「よくやった。飲みなさい。」
どういうことなのか訳もわからないで面食らっている時に、一人二人と気力が尽きた軍人たちが決勝点に入って来ました。
みんな、将校が走る道を選んだ軍人たちでした。
「やっとわかったか。分かれ道で自分をだまさなかった誠実感が、まさにお前の武器だった。」
誰も見ていないところで、良心を守った彼は、もはや軟弱なビリではなかったのでした。
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幸福な世界

2015-02-06 06:49:23 | 韓で遊ぶ


お母さんの靴

今日は、学校でお母さんの靴をはいてかけっこをする日です。
白い地に赤い縞模様の入ったおかあさんの運動靴。ソニョンは運動靴の紐をぎゅっと結びましたが、大きすぎて足がすぐ抜けそうでした。
「あぁ、大きすぎてちゃんと歩けないのに、、、。」
ですが、ソニョンはとてもウキウキしていました。
「私、一等になるわ。ちょっと見て、お母さん、私ちゃんと歩けるでしょ。」
楽しみにしていた体育の時間。子供たちは皆、持ってきたお母さんの靴を履いて運動場に集まり、がやがや話をしていました。
ジョギングシューズ、革靴、花柄の運動靴、、模様も大きさも、さまざまな運動靴。
ですが、その中にひときわ大きくて汚い靴が一つありました。
靴の持ち主はチニ。勉強も作文も一等で、いつもソニョンを落ち込ませる友達でした。
「あぁ、汚いなぁ。お前のお母さんは靴も磨かないのか。」
「それでも靴か。」
ですが、子供たちのひそひそつぶやく声は、だんだん小さくなりました。始まりを知らせる先生の声が聞こえたからです。
「さあ、今から8人ずつ走るぞ。準備しなさい。」
とうとう、ソニョンの走る番が来ました。チニも消石灰まみれになった靴を履いて出発ラインに立ちました。
ソニョンは、かけっこだけでもチニに負けたくないと全力をだして前を走りました。ですが、大きな靴を履いて後ろからふらふらしながら走って来たチニが、急にソニョンを追い抜きました。慌てたソニョンは、自分でも知らないうちにチニの方に足を伸ばして靴の後ろを踏みました。
その瞬間、チニはふらついて転び、知らない振りをして走っていったソニョンは、結局一等を手にしたのでした。
それがどんなに恥ずかしいことなのかを悟ったのは、チニがすりむいた膝でよろめきながら決勝線を通過した後でした。
ビリで入ってきたチニを見て意地悪な子供たちはからかいました。
「チニの母さん、靴がものすごくでっかいぞ。」
その時、一人の友達の声が聞こえました。
「チニは今日お父さんの靴を履いてきたんだ。チニにはお母さんがいないじゃないか。」
チニをからかっていた子供たちの声が、だんだん小さくなりました。そして、みんなが一等になったソニョンを見つめました。
ソニョンは、みんなの毒々しいまなざしを受けてチニに近づいて行きました。
「ごめんね、チニ。私が悪かったわ。」
「いや、家のお父さんの靴がとても大きくて転んだのよ。」
ソニョンは顔が熱くなって何も言えませんでした。
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幸福な世界

2015-02-05 07:16:39 | 韓で遊ぶ


一枚の写真

戦争中、ある部隊であったことです。
太陽が火のように燃え盛る真昼、兵士が短い休息を取っている時でした。
非常ベルが鳴って緊急出動命令が出されました。
戦闘機が飛んで砂嵐が吹く、その渦中で一人の軍人が戦闘服の上着を海風にさらわれて海の中に落としてしまいました。
軍人は海に飛び込もうとしましたが上官がその腕をつかみました。
「やあ、何をするんだ。今は戦闘中だ。」
しかし、彼は上官の命令を聞かずに海に飛び込みました。
爆弾が飛んで銃弾が降り注ぐ危機一髪の状況でした。軍服は波にさらわれてどんどん流れていきました。ですが、軍人はあきらめないでとうとうその軍服を引き上げました。
命がけの戦地で軍服一着がなぜそんなに重要なのか。
結局、彼は命令不服従の罪で軍事法廷に立たされました。
厳しく裁判官が罪を問いましたが彼は少しも悔いることなく軍服の上ポケットを注意深く触りながら言いました。
「私はこの服を捨てることができませでした。私の命よりも大事な母の一枚しかない写真がこの中に入っていたからです。」
瞬間、ざわめいていた法廷は息をする音さえも聞こえないくらい静まり返り、裁判官は予想を覆してその兵士に無罪を宣告しました。
母親の一枚の写真のために命をささげることができる息子ならば、祖国のために喜んで命をささげることができる軍人だと言うのがその理由でした。
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幸福な世界

2015-02-04 06:19:07 | 韓で遊ぶ


母の約束

仁川のある遊園地で恐竜展示会が開かれていました。
券売所の前で、一人の子供が恐竜のポスターを見ながらうろうろしていました。入場料は6000ウォン。ですが、少年にはそんなお金はありませんでした。
少年の母親は魚を売る行商していました。しばらく前に夫と死別して、一人で子供を育てている苦しい暮らし。一人息子が恐竜展示場に行かせてくれと何日もせがんでも、さっとお金を出せるような暮らし向きではありませんでした。
子供は机の前に大きな恐竜の絵を張っておきました。そして暇さえあると「友達はみんな、行った。」と言ってしくしく泣きました。そうやってすっかり落ち込んでいる息子を見るたびに母の胸も痛みました。
そんなある日、これ以上は待てないという少年が、断食闘争を始めた夕方のことでした。
「さあ、夕飯を食べて寝ないと、早く、、」
「ご飯なんか食べるもんか、恐竜を見せてくれと言っているじゃないか。」
子供は母の心情も理解できないまま、駄々をこねてばかりいました。
ためらっていた母親は、何も言わずに子どもの手を引いて恐竜展示場に行きました。ですが、展示場はすでに閉まっていました。
恐竜たちは暗闇の中に隠れてしまった後でした。
がっかりした少年と母親が、どうしても帰ることができないまま金網の前にしゃがみこんでいる時でした。二人を見つけた展示場の警備員が静かに四方を見回した後、懐中電灯で合図を送り、閉まった門を開けてくれたのでした。門が開けられると二人は驚いた目で警備員を見つめました。子供が一言、希望のこもった声で口を開きました。
「おじさん、、、」
頭をあげた母親が静かに言いました。
「子供が恐竜を見たいと言って。」
警備員は、それ以上何も聞かないで、展示場の方に懐中電灯を照らしてあげました。その光の中で、恐竜が大きな姿を現し始めました。少年はあちこち見まわしました。
恐竜の身体が現れるたびに、少年は手をさっと上げて喚声を上げました。
「うお、ティラノだ、、うわ、、おじさんティラノでしょ。そうでしょ。」
そうやって展示場をひとまわり回った後、母親はポケットを探ってお金を差し出しました。しわくちゃになった1000ウォン札3枚。
母親は恥ずかしさを暗闇で隠したまま、お金を出しました。ですが警備員は軽く頭を振って言いました。
「半分も見ていないのに、、いつか昼にまた見に来てください。」
「ありがとうございます。では、、、」
母親は腰を深く曲げて挨拶をして、心の中で誓いました。もし、暗くてちゃんと見ることができなかったとしても、それは明るい真昼に見たものよりもすっと価値のある、忘れることのできない恩だと、昼にまた来ることは、その恩に反することだということです。
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幸福な世界

2015-02-03 07:10:21 | 韓で遊ぶ


郵便受けの鳥

江原道の山間の寂しい村の入り口に、赤い郵便受けがひとつ立っていました。
郵便受けは、配達のおじさんが毎日来て、人里はなれた山の中に暮らす人たちが、郵便物を出したり受け取ったりするための窓口であり通路でした。
「さあ、手紙が一通、はがきが一枚。」
村長さんは郵便受けを開けて、村の人たちに大事な便りを伝えてあげるのでした。
ところが、何日か前からその赤い郵便受けにおかしなことが起こりました。
村長さんが郵便受けを開ける度に、木の枝や乾いた木の葉が入っているのでした。
「あいつら、また、こんないたずらをして、チィッチィッ。」
村長さんは、当然、村の中のいたずらっ子がやったことだと思って、わらくずを片付けました。
ですが、ある日、郵便受けを開けた村長さんは目を丸くしました。
犯人はいたずらっ子ではなかったのでした。小さなヤマガラの夫婦が、郵便受けを巣にして、かわいい卵を産んで抱いていたのでした。
「待てよ、これは、どうしようか、、、そうだ。」
村長さんは、郵便受けの上にメモ紙を張っておきました。
「この郵便受けには鳥が巣を作っていますので、郵便物は箱の横に挿しておいてください。」
赤い郵便受けを当分の間、ヤマガラの夫婦に貸してあげたのです。
それは、もしかして事情を知らない配達員が、郵便物を入れないようにするための細心の配慮でした。子供たちが不思議に思って、むやみに開けてみるのを防ぐために、しっかりした鍵をつけました。いくらか後に、その赤い郵便受けからは幼い鳥たちの鳴く声が休みなく流れてきました。
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幸福な世界

2015-02-02 06:49:57 | 韓で遊ぶ


郵便配達員のお昼時間

夏の真昼、郵便配達員のカンさんが汗を流しながら配達をしていました。彼の担当の区域は人が多く、人情豊かで、貧しい人たちの多いところでした。ある日、古びた家の前に紙切れが一枚落ちているのを見つけ、無意識にオートバイを止めてその紙を詳しく見ました。水道の使用量の検針用紙でした。
彼はその家の門の隙間にその紙を挟もうとしましたが、何か変な感じがしてもう一度その紙を見てみました。
先月の水道使用量よりも、なんと5倍も多い数字が書かれていました。心根が優しく、マメだとうわさされるほどの彼は、ただ通り過ぎることができず、その家の呼び鈴を押しました。
「どなた。」
「あ、おばあさん、水道の検診用紙を見たんですが、水道管が漏れているようですよ。ちょっと確認したらどうかと、、、」
「あ、そうなることもあってね。先月から家族が増えたのよ。」
子供たちがみんな家を出た後、寂しく暮らしていたおばあさんが、身体の不自由で頼るところのない何人かの老人の世話をしながら暮らすことにしたということでした。だから、大小便の始末で洗濯をして水道料金が多くなったと言うことでしょう。
次の日の正午ごろ、その古びた家の門の前に郵便配達のオートバイが一台、止まりました。カンさんでした。彼はあれこれ言葉を交わす間もなく、腕まくりをして山積みになった洗濯を手伝いました。
「あ、ちょっと休みながらやって、若い人が殊勝だね。」
「はい、おばあさん、明日また昼の時間に来ます。」
それから一ヶ月が過ぎたある日、いつものように昼の時間を利用してその古びた家に到着したカンさんはびっくり驚きました。
門の前に郵便配達のオートバイが3台も止まっていたからです。
彼が中に入っていくと見慣れた同僚たちが彼を喜んで迎えました。
「やあ、カンさん、いらっしゃい。君が昼の時間になると失踪するとうわさになっていて、後をつけてみたのさ。こんなことをこっそりしていたとは、、、仕事が終わったら女子職員も来るって。」
郵便配達員カンさんの小さな愛がいつの間にか同僚たちまで伝染していたのでした。
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幸福な世界

2015-02-01 08:35:31 | 韓で遊ぶ


花を植える郵便配達員

小さな地方都市に中年の郵便配達員がいました。
彼はちょうど二十歳の時から往復50里の道を毎日行ったり来たりして、しょっぱかったり、苦かったり、甘かったり、辛かったりする手紙を配達して来ました。
そうやって20年の歳月が流れ、本当に多くのものが変わりましたが、郵便局から村に至る道には、昔も今も木一本、草一株なく砂と埃だけが白っぽくぼやけて立ち起こっているのでした。
「一体いつまでこの荒れた道を行ったり来たりしなければならないのだろうか。」
こんな埃まみれの道を自転車で行ったり来たりしている間に人生がそのまま終わってしまうかも知れないという思いで、彼はいつも胸苦しく感じていました。
そんなある日、彼が配達を終えて憂いに沈んで帰ってくる途中、花屋の前を通り過ぎました。
「そうだ、これだ。」
彼は膝をぽんと叩いて花屋に入って行き、野花の種を一握り買いました。
そして次の日から、その種を持って行き、その道に蒔きました。
1日、2日、一ヶ月、二ヶ月、、花の種を蒔くことを続けました。
いくらか経って、彼が20年間行ったり来たりした荒れた道に黄色や赤い花が先を競うように咲き出しました。
夏には夏の花が、秋には秋の花が、、休みなく咲きました。
花の種と花の香りは、村の人々に彼が生涯の中で配達したどの手紙よりもうれしい贈り物であり、砂と埃に代わってに花びらが舞う道で、口笛を吹きながらペダルを踏む彼は、もはや悲しい郵便配達員でも不幸な郵便配達員でもなかったのでした。
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