【国益】と言う言葉があります。日本で誰かが「国益」と言う場合は、ほとんど自分の主張を強化する材料として使います。
「国益を守るために◎◎が必要だ!」
分かりますね❓防衛力と国益をすり替えて胡麻化します。
国益とは、そのような軍事のみを指す言葉ではありません。
その国の未来を考え、自国に有利な(最適な)利害関係を考慮して国の大きな政策を決定する指針としての基準として使います。軍事は、その中に含まれる1つの項目にすぎません。1つの項目を国益と胡麻化す輩が多すぎます。国益に関してきちんと考えないから、「インチキ国益」がはびこる結果になります。
※ハンガリーとウクライナを見ると、国益が分かります。
ハンガリーは、国益を考えて外交政策を決定しているのが分かります。
ウクライナは、その正反対で感情と主義主張で利害は無視して外交政策を決定しています。
(1)ハンガリー
ハンガリーは、ロシアと距離の近い東欧の小国です。鉄のカーテンの時代は東側に囲い込まれました。
ウイキペデイア【ハンガリー動乱】1956年
旧ソ連との間に不幸な過去があります。
しかし、旧ソ連崩壊後独立しましたがロシアとの良い関係を重視しています。
ハンガリーは、NATOとEUに加盟していますが、「それとロシア外交は別だ」と言う立場を貫いています。
ハンガリーはロシアの天然ガスを買い、エネルギーでは原発推進をしていますが、ロシアの原発を採用しています。
ロシアとの関係を断絶するのは、ハンガリーの利益に反することだから親ロシアの立場を変えません。
同じようにEU諸国から猛烈に批判を浴びながら中国とも友好関係を維持しています。中国からの投資を呼び込めばハンガリー経済にとって利益があるからです。
安全保障や主義主張と国の利害を比較検討したうえで、外交政策を決めているのが分かります。
NATO(EU)の猛批判など「カエルのツラにションベン」
これくらい「ツラの皮」が厚くないと外交などできません。
このように出来るのはオルバン首相が強い国内政治基盤を持っているからです。だからオルバン首相が考えた外交政策を取ることが出来ます。一方で、オルバン首相は「信念の人」です。
ミハイル・ゴルバチョフ氏が2022年8月30日死去しました。旧ソ連、最後の大統領です。
ゴルバチョフ氏のロシア国内での評価は低いです。ソ連を崩壊させた大統領として評価されるからです。
だから葬儀は国葬ではなくウクライナ紛争中でもあり外国の要人の参列もありませんでした。プーチン氏も葬儀には参列していません。
オルバン首相は、政府首脳としてはただ1人葬儀に参列しました。
BBC 2022年9月4日
『ゴルバチョフ氏の葬儀に多くのモスクワ市民が参列 プーチン氏は欠席』
オルバン首相は、何故たった一人葬儀に参加したのか❓
ロシアとの間に不幸な過去は、ありましたがゴルバチョフ氏の様々な改革が東欧に民主化をもたらし、東西冷戦の時代が終わりました。それを「恩」と感じているからでしょうね❓
主要国の首脳は全員欠席する中、ただ一人参列しました。
今の戦争は今の戦争、過去の恩は過去の恩。
ハンガリーの矜持を世界に示しました。
そのようなオルバン首相からするとロシアとの関係を断絶することなどありえず、近隣の戦争は早期に集結させなければなりません。だから最初から停戦を主張していますし、避難民の受け入れや人道支援はしますが、武器供与は拒否しています。
理由は、戦争が無いことが最大の「ハンガリーの国益」だからです。
(2)ウクライナ
ロシアとの軍事対立は、前大統領のペトロ・ポロシェンコの時代は絶対に避けていました。あくまで東部独立派との内戦にとどめていました。ロシアの軍事介入を招くことは戦争につながり、ウクライナには大きな損失をもたらすのは分かり切ったことだからです。ポロシェンコもアメリカの傀儡と言え、親NATO派の大統領です。
何故ロシアと戦争してはならないかと言うと、ウウクライナの重要な工業地帯がドンバス地方に集まっているからです。ドンバス戦争ですら悪影響があるのに、この上ロシアの軍事介入を招けばドンバスの工業地帯全部が戦場になるからです。こうなればウクライナは、工業生産の多くを失います。
一方で、ゼレンスキーは内戦を止めようとしないポロシェンコが否定されて選ばれた大統領です。支持層は東部と南部に固まっています。ロシア支持者が多い地域です。公約に内戦終結と平和が盛り込まれていました。ゼレンスキーは、内戦終結を期待されて主にロシア支持者が選んだ大統領なのです。
ところが、政治のド素人であるゼレンスキーの政策は、まるで上手くいかず支持率は急降下して止める前の岸田元総理みたいになりました。そこで誰かがゼレンスキーに囁いたのだろうと思います。
「ロシアに強い態度を示せば、支持率回復するよ・・・ロシアなんか怖くないって・・・」
こうして、ミンスク2合意を破棄して2021年10月26日、ウクライナ軍はドネツク州の独立派に対してトルコ製ドローンで攻撃をしました。
これは、ミンスク2合意の違反であり欧米諸国の多くも批判しました。
★それに先立ち2021年10月3日、ゼレンスキー、その妻、テレビドラマ時代の仲間の「租税回避地に隠し資産」があることが暴露されています。ただでさえ低い支持率はさらに低下したと思います。
この攻撃に関しては、ゼレンスキーの次の大統領選を考えた「保身」の要素が強いと思います。
大体、これをやればロシアのレッドラインを超えるのは分かっていたと思います。
その後の経過は、過去日記を読んでください。
前任のポロシェンコが絶対に回避していたロシアの軍事侵攻を招き寄せました。
その結果が、今のウクライナの悲惨な現状です。
ゼレンスキーは、「国益」など一切考えていないでしょう。もっとも重要だったのは、自分の大統領の地位であったと思います。
アフガン撤退作戦の大失敗で内外から大きな批判を浴びたバイデン大統領も支持回復のためのイベントが必要でした。それからバイデンさんは、ロシアへの圧力を強めて挑発します。
どっちも選挙対策の要素が、非常に強いと言えます。
ゼレンスキーは、ウクライナの国益【安全保障+利害】は、完全に無視しました。仮に保身でないとしたら、そこにあるのは「ロシア憎し」の感情だけです。国益は無視して、自己保身+感情で戦争を選択したと言えます。
(3)オルバン首相とゼレンスキーを比較すれば、【国益】とは何なのか❓
一目瞭然で分かると思います。
ハンガリーの国益を守るオルバン首相。
ウクライナの国益を捨て去り破壊したゼレンスキー。
結果は、「大差」です。
日本政府が、どちらを見習うべきかは考える必要もないと思いますが❓
※関連記事目次
「中立の視点で見るウクライナ紛争」の目次⑦
https://blog.goo.ne.jp/kitanoyamajirou/e/e2c67e9b59ec09731a1b86a632f91b27