メイとニッキが王をともない、洞窟から出
てくると、地球防衛軍の宇宙船の乗組員たち
が緊張した表情で彼らを待ち受けていた。
ろくな武器がなかったのか、手に手にかな
づちやペンチを持っている。
「ニッキ隊長、おけがはありませんか」
宇宙船の副艇長がニッキに近づいた。
「ああ、この通り。まさか、この洞窟に王
がひそんでいるとは思わなかった」
「ほんとです、それはわたしも同感。こん
なに惑星エックスが荒れ果ててしまっている
とは、しかも、ほんの短期間に……、言葉も
ありません」
「まったくな。おごる平家は久しからずだ
な。我々も肝に銘じなけりゃ、な」
「ええ、艇長。しかしそんな古い言葉をよ
くご存じで」
「平家物語の一節。学生のころだったかな、
春の夜の夢のごとし」
ふん、と王は、一度、鼻を鳴らし、
「おい、お前たち、そこをどかんか。偉そ
うにしていると、今に泣きを見るからな。お
前たちだってそのうち勝った勝ったって、大
欲に走るときがくるぞ」
メイに対する殊勝な態度とは、ずいぶんと
ちがう。
「宇宙船に先ずは、入っていただこう、終
戦処理はそれからだ」
レジスタンスの連中のひとりが、こわだか
に王に命令した。
「さあ、先をいそぐぞ。やるべきことが山
積みだ」
王は太りすぎが災いしてか、とても歩きづ
らそうだ。
「あまり、せかすな。わかっている」
王は威厳をもって、応えようとする。
「うるさい、だまれ」
大柄の男に背中を突き飛ばされ、王は砂浜
に転がった。口に砂利が入ったのか、さかん
にぺっぺっと唾を吐いた。
メイがかけより王を起こそうとした。
だが、彼はあまりに重い。
「ちょっとやめてください。たった今、彼
は何もできないのですから。敗者にも思いや
りがいります」
「とんでもないですぜ。この人殺しやろう、
こうしてくれる」
いつの間に集まったのだろう。
惑星エックスの群衆の中から、ふいに小石
が飛んできて、王の眉間や左肩に当たった。
しゅっとあがった血しぶきが青空を染めた。
「もう、やめて、お願いですから」
メイが泣きくずれた。
「やめろ。相手は無防備だぞ。虐げるんじゃ
ない」
ニッキが叫ぶと、その場は穏やかになった。
乗ってきた宇宙船の修理が、なんとか終え
たらしい。浜から少し離れたところにいかり
を下ろし、湖の波に翻弄されていた。
「おい、あれはなんだ。湖が盛り上がって
いるように見えるぞ」
甲板の上であたりを監視している地球防衛
軍の兵のひとりが大声で言った。
ほどなく、巨大な黒い円盤が湖水をはねの
けるようにして姿をあらわした。
数メートル浮上し、いったん静止。まもな
く円盤の下部から最初の光線が円盤から放た
れた。
湖を真っ二つに引き裂き、ニッキたちのい
る浜辺に向かっていく。
「あぶないぞ。すぐに宇宙船に引き上げて
応戦だ。
ニッキが檄を飛ばした。
「王はどうします?」
「こちらにいてもらおう。王がいれば、や
つらとてむりはできまい」
「わかりました」
「よし出発だ。全員乗ったか」
「はい」
先ずは火星に向かう。地球が戦いの場にな
るのはまずいからな。それにしてもよほど頭
のいい大将が乗っているに違いない。あれだ
けの攻撃にたえてきたのだ」
「誰でしょうね」
「わからない。ポリドン将軍ならご存じだ
ろう」
宇宙船のエンジンが火を噴いた。
しゅるしゅると舞い上がり、青天井のなか
に一点になったと思うと、すうっと見えなく
なってしまった。
てくると、地球防衛軍の宇宙船の乗組員たち
が緊張した表情で彼らを待ち受けていた。
ろくな武器がなかったのか、手に手にかな
づちやペンチを持っている。
「ニッキ隊長、おけがはありませんか」
宇宙船の副艇長がニッキに近づいた。
「ああ、この通り。まさか、この洞窟に王
がひそんでいるとは思わなかった」
「ほんとです、それはわたしも同感。こん
なに惑星エックスが荒れ果ててしまっている
とは、しかも、ほんの短期間に……、言葉も
ありません」
「まったくな。おごる平家は久しからずだ
な。我々も肝に銘じなけりゃ、な」
「ええ、艇長。しかしそんな古い言葉をよ
くご存じで」
「平家物語の一節。学生のころだったかな、
春の夜の夢のごとし」
ふん、と王は、一度、鼻を鳴らし、
「おい、お前たち、そこをどかんか。偉そ
うにしていると、今に泣きを見るからな。お
前たちだってそのうち勝った勝ったって、大
欲に走るときがくるぞ」
メイに対する殊勝な態度とは、ずいぶんと
ちがう。
「宇宙船に先ずは、入っていただこう、終
戦処理はそれからだ」
レジスタンスの連中のひとりが、こわだか
に王に命令した。
「さあ、先をいそぐぞ。やるべきことが山
積みだ」
王は太りすぎが災いしてか、とても歩きづ
らそうだ。
「あまり、せかすな。わかっている」
王は威厳をもって、応えようとする。
「うるさい、だまれ」
大柄の男に背中を突き飛ばされ、王は砂浜
に転がった。口に砂利が入ったのか、さかん
にぺっぺっと唾を吐いた。
メイがかけより王を起こそうとした。
だが、彼はあまりに重い。
「ちょっとやめてください。たった今、彼
は何もできないのですから。敗者にも思いや
りがいります」
「とんでもないですぜ。この人殺しやろう、
こうしてくれる」
いつの間に集まったのだろう。
惑星エックスの群衆の中から、ふいに小石
が飛んできて、王の眉間や左肩に当たった。
しゅっとあがった血しぶきが青空を染めた。
「もう、やめて、お願いですから」
メイが泣きくずれた。
「やめろ。相手は無防備だぞ。虐げるんじゃ
ない」
ニッキが叫ぶと、その場は穏やかになった。
乗ってきた宇宙船の修理が、なんとか終え
たらしい。浜から少し離れたところにいかり
を下ろし、湖の波に翻弄されていた。
「おい、あれはなんだ。湖が盛り上がって
いるように見えるぞ」
甲板の上であたりを監視している地球防衛
軍の兵のひとりが大声で言った。
ほどなく、巨大な黒い円盤が湖水をはねの
けるようにして姿をあらわした。
数メートル浮上し、いったん静止。まもな
く円盤の下部から最初の光線が円盤から放た
れた。
湖を真っ二つに引き裂き、ニッキたちのい
る浜辺に向かっていく。
「あぶないぞ。すぐに宇宙船に引き上げて
応戦だ。
ニッキが檄を飛ばした。
「王はどうします?」
「こちらにいてもらおう。王がいれば、や
つらとてむりはできまい」
「わかりました」
「よし出発だ。全員乗ったか」
「はい」
先ずは火星に向かう。地球が戦いの場にな
るのはまずいからな。それにしてもよほど頭
のいい大将が乗っているに違いない。あれだ
けの攻撃にたえてきたのだ」
「誰でしょうね」
「わからない。ポリドン将軍ならご存じだ
ろう」
宇宙船のエンジンが火を噴いた。
しゅるしゅると舞い上がり、青天井のなか
に一点になったと思うと、すうっと見えなく
なってしまった。
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