油屋種吉の独り言

日記や随筆をのせます。

会津・鬼怒川街道をゆく。  プロローグ

2020-06-03 19:38:05 | 旅行
 都会から南会津に移住する人がけっこうお
られる。
 この街道はとにかく春がすばらしい。
 むかし、冬、この辺りは氷点下二十度にも
なった。
 雪ふかく、人の行き来もままならない厳し
い土地がらだった。
 だからこそ、まぶしいくらいの日の光りが
照りはじめ、溶けはじめた根雪のあいだから
わらびやこごみ、ぜんまいなどのスプリング
が顔を出すのがうれしい。
 温暖化の昨今、むかしのようではなかろう
が、春が遅いのは間違いない。
 およそ一か月のひらきがある。
 「二度も、さくら花を見られるとは」
 と、思わずわたしはしゃいでしまった。
 すると、家族がそろいもそろって、めずら
しいもので見るようなまなざしで、わたしを
見て、
 「お父さんは何にでも驚くんだから」
 と声をそろえた。
 ともかく百聞は一見に如かず。
 読者諸氏も行ってみられるといい。
 もっとも、こんなにうかれるのは、わたし
ひとりだけかもしれない。
 途中、大内宿がある。
 その宿場のたたずまいは今なお健在で、江
戸の名残りを色濃く残す。
 街道のずっと先には鶴ヶ城があり、観光コ
ースとしてあまりに有名である。
 新型コロナウイルスが蔓延する今日。
 旅の香りを一抹だけでも、この記事を読ま
れることで味わってもらえたら、うれしい 
 初めて訪ねる土地は、わたしたちに新鮮さ
をもたらしてくれる。
 観光ははもちろんだが、旅先での人との出
逢い。
 それがたまらない。
 他国の人だからと、相手が、会話に気づかっ
てくれる。生まれ故郷の言葉が彼、あるいは
彼女の標準語にまじる。
 塔のへつり、をご存じだろうか。
 へつりの意味は?
 道は、鬼怒川から川治を経て、会津田島へ
ぬける。
 深い谷間を大川沿いに縫うようにつづく。
 むろん、今は、街道沿いを電車が走る。
 会津若松まで、車で三時間あまり。
 ところどころで、休みながら行けば、どこ
に行くにも徒歩(かち)しかなかったいにしえ
人の想いを味わうことも可能だ。
 歴史的にもその街道の名は知られる。
 幕末、錦の御旗を押し立てた官軍が最後ま
で抵抗する人々を追い、会津鶴ヶ城まで進撃
した。
 途中、今市で戦闘があった。
 今も鉄砲玉の穴があいた大杉が、いく本も
ある。
 さいわいなことに、日光東照宮は戦場にな
らなかった。敵味方の大将どうしで、話し合っ
た結果だ。
 神橋付近、金谷ホテルの上がり口に、ひと
りの武士がたたずんでいる。
 官軍に挑んだ将である。
 浅学のせいで、その名を知らない。聞いて
いたとしても、もの忘れがはげしい。はてさ
てどなただったろう。
 向かいには、トイレわきに修行するために
男体山にのぼったとたたえられている偉い法
師がどっしりと立っていらっしゃる。
 さて、大谷川を渡ろう。
 鬼怒川までけっこうなドライブが楽しめる。
 すいぶん行ったところで、道が大きく二手
に分かれる。
 追分である。
 左に行くと、有料道路に通じる。
 そこを右に行くことにする。
 鬼怒川沿いに旅館やホテルが軒を連ねる。 
 湯煙ただよう温泉街をあとにし、急な山道
をのぼる。
 つづら折りの道がどこまでも続く。
 行きついた先は、川治であった。
 ここはダム湖として有名な五十湖である。
 大きなバスに似た水陸両用の車が、湖から
突然上がってきたのには驚かされた。
 直売所に立ち寄り、山菜や地元でとれる高
原大根にみとれる。
 手軽に入れる温泉があり、旅の疲れをいや
してくれる。
 ところどころ、道路わきに赤い目印の入っ
たポールが立てられている。
 はて、なんのためなのか。
 慣れないわたしは、実に不思議であった。
 
 
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2 コメント

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Unknown (つばめ)
2020-06-04 00:01:23
会津鶴ヶ城といえば、やはり白虎隊の悲劇が浮かびますね。主人はよく旅行に出るのですが、私は、まだ鬼怒川の辺りへは行ったことがないのです。憧れるものの。いつか息子が連れ出してくれるそうなので、気長に待ちたいと思います^^

種吉さん、少し質問をしてもいいでしょうか? 私事なのですが・・・。
小説のことですが、三年前は一日に多くて8千字書けていました。なにより書かずにはいられなくて・・。ところが主人に見つかってしまって(特に隠してもいません)、『ネット小説をやめなさい』と言われてしまい、そこから暫く書かなくなると、久し振りの為かどうかは分かりませんが、書けないのです。どうしたら、リハビリになるのでしょう?
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むずかしい質問ですね。 (種吉)
2020-06-04 04:07:40
こんばんは。つばめさん。
ご主人はきっといろんなことに知識をお持ちなんでしょう。そう思います。ネットのこと。どんな感想を言われるかしれません。わたしが小説らしきものを書き始めたのは中年になってから。高校時代の思い出話のひとつをもとに原稿用紙に書きました。ワープロで活字にしました。まるで自分の作品が本になったようでうれしかった。鉛筆で書く。消しゴムを使う。その都度、登場人物が何を感じているかを考える。pcは描くというより作業。お金もかかるし、ひとつ間違えば原稿が消え去ってしまう。バックアップが要ります。過去にはウイルスに冒され、泣いたこともありました。わたしが今、パソコンを使い、ネットに公開するのは、できるだけたくさんの人に見てもらいたいから。たまに心ある批評をいただけることがあります。さいわいにも読者のひとりはある作家の原稿を校正していた方でした。手書きの最初の作品は地方紙の文学賞に応募したが落選。歌とおなじで、ステージでみなに笑われながら、芸が上達できればいいなと思います。ものを書くのがお好きなら以上のことに注意してネット小説に挑戦されたらいかがでしょう。ひとりでもまじめに読んでくださる方がいるのはすばらしいことです。みながみな、プロにはなれません。いろんな場で力を発揮すればいいと思っています。歌とおんなじ。ステージでみなに笑われながら芸をみがく。もしあれば、同人誌に加わることもいいですね。
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