子宮頸がんワクチン副反応報道
WHOも接種呼び掛け
各国で有効性・安全性は実証済み
今野良・自治医大医療センター教授に聞く
子宮頸がんワクチンを接種した東京・杉並区の女子中学生に、重い副反応が出たとの一部報道をきっかけに、同ワクチンの接種を不安視する声が上がっている。
そこで一連の「副反応報道」をめぐる疑問について、子宮頸がん征圧をめざす専門家会議実行委員長で、自治医科大学附属さいたま医療センターの今野良教授(産科婦人科)に答えてもらった。
Q子宮頸がんワクチンの安全性に不安の声がありますが。
A今野教授 発端となった杉並区の事例は、「複合性局所疼痛症候群」といわれるもので、手足や肩の痛み、しびれなどがみられます。国内での2種類のワクチン(サーバリックスとガーダシル)接種回数は、合計約830万回で、同症候群は3例(0.000036%)報告されています。
しかし、これらは通常の注射や採血による痛みなどでも起こり得ます。今回の件も子宮頸がんワクチンの成分によるものではありません。
ワクチン接種の有害事象には、副反応のほかに因果関係のない「紛れ込み事故(たまたまワクチン接種後に発生)」も相当数含まれます。各自治体、医療機関、ワクチン製造販売メーカーでは、因果関係に関係なく厚生労働省へ報告しています。
また、世界保健機関(WHO)をはじめ世界各国の規制当局も、有効性と安全性モニタリング(監視)を行っています。
死亡例については、因果関係が認められた事例は国内外で一つもありません。
Q「重篤」の定義は何ですか。
A今野 有害事象を報告した医師が重篤だと思えば「重篤」と報告されますが、国などによって認定されたものではありません。一般的には死亡したとか重い後遺症が残った状態をイメージしますが、必ずしもそうではありません。
副反応の報告事例として「失神」が多くみられますが、多感な女子中学生では、注射を打つことによる痛みに加え、敏感な子の場合は精神的な不安などから血管や神経が反応し、一時的に血圧が下がることがあります。
また、失神はどんなワクチンでも起こり得ることで、10万人に1人くらいの割合で発生しています。子宮頸がんワクチン特有の副反応ではないし、その成分が原因でもありません。
厚労省「安全に重大な懸念なし」
Q予防接種法改正で、子宮頸がんワクチンも定期接種化されましたが、時期尚早だという意見もあります。
A今野 先ほども述べた通り、日本では約830万回接種されています。また、欧米先進国では定期接種化されて約5年が経過し、世界的にも億を超える回数が接種されています。
ワクチンの承認や定期接種が取り消された国はなく、厚労省のコメントにもあるように、安全性に重大な懸念はありません。
また万が一にも健康被害が出た場合、定期接種化されたことで任意接種だった時に比べ被害救済が手厚くなっています。
Qワクチン接種の有効性について。
A今野 世界で初めて公費助成を導入したオーストラリアでは、ワクチンを接種して5年経過した若い女性の前がん状態の細胞は減少しており、有効性が証明されました。日本でも同じような結果が出るはずです。
子宮頸がんはワクチン接種により7割が予防可能です。そして検診と組み合わせる事でより100%に近づける事ができます。
風疹が流行し、先天性風疹症候群(新生児の障がい)が発生、予防のためのワクチン接種の重要性が叫ばれています。
どんなワクチンでもわずかなリスクで、多くの子どもや大人の病気を防いでくれます。正しい情報に基づいた冷静な対応が必要です。
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