矢沢永一著 新潮選書
「霞が関幕府」
進駐軍が去って再び独立が達成されたあと
半世紀にわたって日本を支配したのは政党
政治ではない。立法府である衆議院を構成
した議員たちは法案を作成して通過させる能
力を持たなかった。30本を越す立法を自力で
考え出し実現したのは田中角栄ただひとりで
ある。他はすべて官僚の立案を形式的に審
議する仲買人の群れにすぎない。議会で質
問および答弁も官僚に与えられた草稿の棒
読みであった。行政府の中枢である閣議も
すべて官僚が事前に組み立てた筋書き通り
に進行している。大臣は精いっぱいに衣装を
まとった猿芝居の舞台で胸をそらしている無
邪気でお粗末な演技者にすぎない。立法府は
すでに本来の機能を失っている。政治家に陳
情するには官僚への橋渡しを期待する通過
儀礼としてである。政府は嘗(かつ)ての公卿
に類するひな壇の飾りであり、実権を握って
恣(ほしいまま)に国家を統治しているのは霞
が関幕府である。我が国の骨組みは絶対に
民主主義ではなく、骨組みの官主主義であると
銘記せねばならぬ。更に恐るべきは我が国の
運営方式が厳正な法治国家ではなく。法に
拠(よ)らない法に基づかない統治によって
締め付けられている実情である。官僚は通達
という絶対命令を各方面に自由に発する。これ
はもちろん法ではないから罰則を伴わない。
しかし万が一にも違反すれば省庁を挙げての
圧力を受けて悶死(もんし)せねばならぬ。また
官僚は行政指導なる強権を発動する。これまた
法ではないが従わなければ破滅である。そして
官僚は文書として明記を避けた談話形式を活用
し、暗示と仄(ほの)めかしと皮肉と恫喝(どうかつ)
とによって自由自在に誘導する。証拠を全く残さぬ
完全犯罪なのである。
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官僚とは霞が関幕府だったのとは、知りませんでした。
これでは政権が代わっても内容はちっとも変わらな
いのか?でも官僚のやってきたことはすでに周知の
とうりです。やはりここは黄門様に登場してもらわねば、
なりませんね。