徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

文化遺産としての「日本刀」の価値

2015-01-05 05:46:35 | ブレイク
某ビジネス誌に取り上げていただきました。


ビジネスの箸休めに 日本の伝統文化を知る
文化遺産としての「日本刀」の価値

大塚寛信は日本刀に新風を吹き込む新しい力である

大塚は、幼少期から剣道を学んだ。その後、居合道、抜刀道を学び、日本刀の奥深さを知るにつれて刀剣を本格的に学びたいと思うに至る。柄前師のもとで外装修復の修行をする傍ら刀剣の鑑定学を学び、学術的な知識の習得に努めた。その後も、研ぎ師のもとで刀身修復と専門家としての専門知識を学習する。一連の修復作業が、職人の自覚と本分を強く意識させる原動力となり、この道に専念する決意を固めるきっかけとなった。
従来、刀剣職人は刀匠・研ぎ師・鞘師・柄前師といった各職方が分業制で刀剣の製作に携わっているが、一人で研ぎと柄巻の技術を持ち、英語を操り海外との交流がある大塚は全く新しいタイプの存在である。

研ぎ師の使命

日本刀を研ぐということは、ただ「刃を立てる」ということだけが目的ではない。日本刀を美術品として鑑賞するための特殊な研磨法を用いて、刀身が持つ本来の美しさを最大限に表現しなければならない。そのためには、個々の刀身に関する知識の習得と刀身の個性的な魅力を引き出す技術力が要求される。また、日本刀は刀匠の技量や時代の様式を反映しており、過去に生み出された作品と同じ物を作り出すことはできない。そのことが、日本刀一振り一振りに重みを生じさせ、安易に扱われずに今日に至っているのである。そのため、現存する日本刀を研磨によって研ぎ減らすことはあってはならない。必要最低限の研磨により、最大限の成果が得られるように修復を行い、次の世代へバトンタッチすることにこそ遣り甲斐と職責を感じると言う。

柄巻は日本刀の顔

柄前師が刀剣外装の製作・修復を手掛けることは、元来「神格化されたお刀の御召し替えを奉る神事」としての性格がある。そのため工作を行う際には、身体を清め心を鎮めて執り行うが、拵えの顔に値する柄前の製作はただ厳格に伝統技法を守るだけでは務まらない。柄前は日本刀を武器として用いる場合に使用者が触れる唯一の部分であり、刀身の性能を最大限に引き出すための装置として働くのである。強度や使用感といった細部の精密な設定を経て柄前は完成する。いうなれば最古の人間工学に基づいた製品と言える。大塚が柄前を製作する時には、常々上記の精神とサイエンスの融合をカタチにする心持ちで取り組んでいる。

日本刀におけるトータルバランスの調整

刀身の研磨と柄前製作を手がけることで、日本刀におけるトータルバランスの調整を心がけている。本来、刀身の調整と外装製作は別工程なので各職方が執り行うが、両方を行うことにより刀身のとって最も良い状態に仕立てることで、使用者の要望を忠実にカタチにすることができる。これは、大塚自身刀剣を用いる武道を嗜むうえで常に悩み深い部分でもあるだけに、愛刀家・武道家の問題解決のお手伝いができることが一番の魅力であると考えている。また、正しい知識を持った職人が修復を手がけられるような仕組みを構築する必要性を感じている。そのような環境の整備が大塚の夢である。

構成/SAMURAI.JP 撮影・文/田川清美

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