徒然刀剣日記

刀剣修復工房の作品・修復実績と刀剣文化活動のご紹介

長巻直しの研磨完了!

2011-06-02 20:08:15 | 刀身研摩
研ぎが完了しました。



当該御刀は、今回の研磨で全ての作業が終了です。いや~長いことかかりました。

長巻や薙刀などの薙刀樋のある刀身(あと槍も)は、砥石の消耗が激しいことが知られています。そのため、研磨依頼があっても敬遠する研師さんがいる程です。江戸時代などは薙刀専門の特殊な研師に依頼していたぐらいなので、研ぐには厄介な形状です。

この御刀は、ブログでも度々登場しておりますが、新々刀の長巻を後の時代に整形したもので、入手当時より鍛冶押しの状態でした。
ちなみに、この手の直し物は、横手筋の有無で「長巻直し」「薙刀直し」と見分ける傾向があります(横手があるからといって生まれが長巻だと断定するのは、腑に落ちませんが・・・)。

以前の拵え完成時の様子はこちらから。
http://blog.goo.ne.jp/kosiraeshi/e/26e985495c99c7af6c29003accbdbe7a

この研ぎの工作期間は、大地震の前後にあたったこともあり、実に時間がかかってしまいました。
武道用の研ぎになりますので、小さな傷などは取りきらずに次の工程へ進みます。
観賞用の研ぎとの違いは、下地研ぎの段階で無理な整形をしないことです。



写真は、反射を防ぐために油を塗って撮っています。切っ先のナルメは必要最低限に留め、刃取りも薄化粧です。



事前に窓明けしておいた箇所からは、直刃がのぞいており、ずっと直刃の刀身だと思っていました。ところが研磨を終えてびっくり!ゆったりとしたノタレを基調に、物打ちのあたりだけ焼刃が高くなっていました。
湘南の海から望む富士山を彷彿とさせます!実に魅力あふれる刀身です。
鎬筋が曲がって見えるのは、写真写りによるものです。



樋の中には、朱漆が塗ってあります。削ってしまっても良かったのですが、あえて漆を残しました。

ここ数年、拵工作の仕事ばかりで、刀剣研磨は久しぶりでした。
大阪での研ぎ修行時代には、暇さえあれば京都観光へ出かけていましたが、最近は拵え工作をしているとあっという間に夜になってしまいます。
外出の機会が少なくなっているので、お客様方へお伺いするのが貴重な外出タイミングです。

納品が楽しみです!

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