波佐見の狆

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BCM Interview Part I

2007-02-10 20:20:13 | Harry Sever

オンラインのBoy Choir Magazine (http://boychoirmagazine.com/) 2006年November-December号に掲載されたHarryの インタビュー記事 'Harry Sever: Award Winning Boy Soloist' の和訳(大意)を2回に分けて掲載します。この下にアップするPart II と併せてご覧くださいね。

例のBBCインタビューからちょうど1週間後、つまり10月下旬に行われたもので、ロンドン郊外の自宅でハーフタームの休暇を過ごしているHarryに、BCMの編集長であるDennis Chamberland氏がアメリカから電話をかけて話を聞き、録音編集したものです。Archiveから完全な英語の原文が入手でき、音声も聴くことができます。

字数制限の都合上、冒頭および最後の挨拶部分を抜いて実質的な質問部分のみ訳文掲載しました。多忙な中で急いで訳したので、細かい部分はいろいろと稚拙な日本語もありますし、後日また余裕があれば補足などもしていきたいと思っています、万一大きな誤訳等ありましたらなんなりとコメントください。

This Japanese translation has been done and posted by Keiko and the photographs are used with the permissions of Mr. Dennis Chamberland of BCM and Mrs. Judy Sever. No part may be reproduced without the permission of Keiko.

<   >は、分かり易くするために補った部分ですが、ほとんど私が勝手に想像して書いた言葉です。

                                                  

BCM: これまで君はいくつも賞を受賞し、世界中でソリストとして活躍してきましたね。15歳にしてこの輝かしい経歴は、すべての引退した音楽家を誇らしい気持ちにさせるでしょう<それだけ音楽をやることが素晴らしいと思わせるでしょう>。ただ、今日はそういう過去のことではなく、15歳のHarry Sever君の今を語っていただきたいと思うのですが。いかがでしょうか。

HS: いいですよ!

正確に言えば、この時点ではまだ14歳でしたが、誕生日直前ということで、15歳として話を進めています。

BCM: 現在の君に焦点を当てるにあたって、まずイギリス国教会聖歌隊という伝統を讃えなければならないけど、君はWinchester College Quiristerの1人としてスタートしたのだから、まさに、国教会の申し子と言えるでしょう。ご自身の輝かしい経歴の基盤になったのは、国教会の聖歌隊の伝統だということを特に意識しますか?

HS: はい、もちろんです。聖歌隊では、声楽の基礎的な訓練を受け、そこからさら勉強してソリストとしての資質を磨くことができますから。まず総合的な歌唱テクニックを身につけて基礎を固めることが大切です。そういう意味で、聖歌隊は、絶対に将来歌手としてのキャリアを積むための礎となります。

BCM: 君はすでに少年聖歌隊員としての段階を越えて、変声と成熟という・・一般的には辛い時期だと考えられている長いプロセスに突入したわけですね。変声が始まるその日が来るのを恐れながら歌っている聖歌隊員が沢山いると思いますが、君もこの不可避な変化に対する不安にさいなまれていたのでしょうか。

HS: 僕の場合はそれほどでもありませんでしたね。変声前に学んだ歌唱テクニックの全てを変声後も同じように応用して、新しい声での歌唱を築けばいいのですから・・変声前にしっかりと訓練を受けていなければ、それが難しいわけですが、僕は変声前にちゃんとやっておいたので、不安はなかったです。

BCM:  それを聞いて安心する少年たちが沢山いるでしょう!ただ、変声期の声にどう対処したらいいかということについては、いろいろと意見が分かれていますね。君自身は、指導者の人たちからどんな助言をうけ、どのような準備をしていましたか?後輩たちに何かいいアドバイスをいただけますか?

HS:  一番大事なことは、新しい声を本格的に使うようになる前に、自分の声を落ち着かせなければならないということです。変声はとても複雑なものであり、通過するのにどれくらいの期間がかかるかも個人差があります。ですから、まずは声を落ち着かせた上で自分のものにしていかなければなりません。でもとにかく、歌うのをやめなで、自分の声がどのような局面にあるかを把握することです。そうすることによって、最終的にどのような声になるかわかってきます。歌い続けながらそのように努力すれば、自分の状態を理解することは難しくないのです。

BCM: その若さにしては結構な経験を積んでいる若者として、少年期を振り返ってみて、もっともっと勉強したかった <=音楽をやりたかった>と思いますか。それとも、本当はもっとゆっくりして遊びたかったという思いもありますか?

HS: ウインチェスターのような聖歌隊学校の素晴らしいところは、音楽だけでなくスポーツもちゃんとやるというふうに、バランスよく時間が配分されているということなのです。均衡が保たれているのです。歌ばかりやらされているんだろうと思われているかもしれませんが、そうじゃありません。一般の学校の普通の少年たちのように、いろんなことをやりますし、遊ぶ時間と勉強の時間が実にうまく組み込まれているんです。

所謂、パブリックスクールの「全人教育」が彼にとって非常に効果的に作用していることを示すものです。日本だと、たとえば、オリンピック選手のように、生活の全てがスケートだ、マラソンだと、それだけに全身全霊をかけて努力することが一流の人間になる道だというようなストイックな考え方が浸透していますが、Harryのようなやり方からも学ぶべきところがありそうです。

BCM: レコーディングに取材にといつもハードスケジュールですが、音楽活動は所謂仕事と考えていますか?他のことがやりたいなあ、と思ったりしませんか?

「仕事と考えているのか」というのは、a job or a chore という言葉を使っているように、やらざるを得ないので(仕方なく)やっているのか、と聞いているのですが、主婦の家事じゃあるまいし、Harryがそんなふうに思っているわけがないのですが・・・・どのように彼が答えるのかを探りたかったのでしょうか。

HS: このような音楽活動は全て本当に素晴らしい経験になっていますが、多忙だからといって、音楽だけにそれほど時間を費やしているわけではないんですよ。<さっきも言ったように>スポーツやその他の活動をする時間もちゃんとあります。だから、仕事とは思っていません。本当に楽しんでいます。

BCM: Boys Air Choirなどウインチェスター以外の聖歌隊でも活躍されましたが、BACについては、今振り返ってどうでしたか?

HS: BACのようなグループに参加しない限り、学外のほかのコリスターたちと一緒に活動する機会はありませんからね。BACは国内の優れたいろいろなコリスターが集まっていましたから、その一員として歌えたことは素晴らしかったです。

BCM: ところで、読者からこういう質問が出ています。「Burrowes家、あるいは他のメンバーとも今でもコンタクトがあるのですか?」

HS: 実は、面白いことがあったんですよ・・・Connorがね、映画音楽<用の歌を>をレコーディングしないかって言ってきたんです。前にも彼に頼まれてちょっとやったので・・でも、僕はあいにく声変わりしちゃってだめだから、代わりに弟でどうかな?って言いました。弟は、僕に続いてウインチェスターの聖歌隊(Winchester College Quiristers)でトレブルを歌っていますし、いい声をしていますから、やってくれるだろうと思って。で、実は明日がそのレコーディングなんですよ。すごい!なんだかゾクゾクです。

Connor asked me to do a recording for film score. I've done a few for him before.というのですが・・・このConnor情報は驚きです!彼が今なんらかの形でfilm score (映画音楽)関係の仕事をしているのでしょうか?それとも、趣味でやっているということでしょうか。 ともかく、Connorをはじめとする元BACメンバーの現在の動向に関する情報は、Harryの口からは、あまり詳しいことは言えないという微妙なところがあるように感じました・・・・

BCM: それはすごい。弟さんのお名前とお年を教えてください。

HS: Hugoといって11歳です。来年、最終学年になるんですけどね・・明日が楽しみです。僕がちゃんとみてあげなきゃ。

BCM: そうなんですか。ところで、君は、クラシックの多くの名だたる歌手だけでなくSir Cliff Richard、Olivia、Newton-John、Katherine Jenkins、Aled Jonesといったポップミュージックの大物とも多数共演していますが、そのうち、最も印象が強かった歌手は?

 ん?Aledは今ポップミュージック歌手とみなされているのですかね?!

HS: 去年、モーツァルトの「魔笛」をやったんですけど、そのときのパパゲーノ役のバリトン歌手、Chris Maltmanが、とてもパワフルでよくコントロールされた声を持ち、しかも多才な音楽家だなという強い印象を受けました。

BCM: ご自身のトレブル時代の業績を振り返って、特にハイライトシーンを1つか2つ挙げるとすれば?

HS: まず、ニューヨークで合唱団と共演した'Hear My Prayer'でしょうか。あれは本当に楽しかったです。それから、BACでのレコーディングと日本公演。あんなに優れたメンバーと一緒に仕事ができたのは本当にいい経験でした。

'Die Schone Mullerin’を挙げなかったのは意外。なお、ここで言っている「合唱団」というのは、この時のコンサートの主催者Youth Choir Foundation側でアレンジした地元のクアイアのことです。

BCM: ちょっと意地悪な質問かもしれないけど、米国と日本とを比べて、どちらが君にとってよりcoolでしょうか。

この coolという形容詞は下手に日本語にするとおかしなことになるので、このままにしておきます。英辞朗にも「素晴らしい、すごい、渋い、格好いい、いけてる、りりしい」などとありますが、どれもしっくりきません。ともかく、ここでインタビュアーはHarryにわざと「アメリカ人と日本人のどちらがいいと思うか」と聞くことによってHarryがどう反応するか試したわけで、私に言わせればあまり面白くないというか、もっと言えば下らない質問でしたが、以下でわかるように、Harryの頭の良さを再確認する答えになったと思います。

HS: それは比較するようなことじゃないでしょう。それぞれに事情が異なっていますからね。日本は、一般にボーイソプラノに対する愛好熱が定着していますが、アメリカは、コンサートに来るのはだいたい専門家で(自分も歌をやっている人で)、ちゃんと理解して聴いてくれてはいるのですが、ボーイソプラノをそれほど聴き慣れていない感じですね。ボーイソプラノファンの数はまだ少なくて、興味津々というところです。それに対して、日本の人たちは、ともかくボーイソプラノが大好き!すごいですよ。どちらがいいという問題ではありません。

この日本人に関するコメント、彼の英語原文は、they were just sort of over the moon. It was amazing. この部分、彼の笑顔が想像できるような嬉しそうなトーンで言ってくれていましたね。

OALDより
over the moon (informal, especially BrE): extremely happy and excited: They’re over the moon about their trip to Japan

BCM: 立派なお返事で、どちらの国のファンの心もしっかり掴みましたね。

HS: よかった(笑)

BCM: アメリカでは、ボーイソプラノというものをそれほどcoolなものとはみなさない文化的認識がありまして、聖歌隊に人が集まりにくいという事情があります。イギリスも同じような問題をかかえているという認識をお持ちですか。それとも、イギリスの聖歌隊が、コリスターの確保について直目している問題にはまた別の原因があるのでしょうか。

HS: イギリスでは、そのような見方はないと思うのですが・・・聖歌隊は国内至るところにあり、聖歌隊で歌うのは普通のことです。さっきも言ったように、スポーツとか、音楽以外の勉強とか、それに友人たちとわいわいやるとか、いろんなことを楽しむ時間もちゃんとありますから、本当にそういう考え方はないのです<聖歌隊員でいることがダサいから恥ずかしいとか>・・・イギリスの聖歌隊が一般的に直面している問題については、僕はよくわかりませんけれど、少なくともウインチェスターではそうで、僕の仲間は皆happyでしたから・・

この返事は、ちょっと意外です。イギリスでも聖歌隊は年々敬遠されつつあり、トレブルの人数の確保が困難になっているのは周知の事実です。そういう現状をHarryが知らないはずはありえないので、ここではなんらかの配慮をする意味でこのようなまさに「優等生の答え」をしたのかと思われるのですが・・・ 本当に自分の学校が好きなのですね。

Part IIへ続く


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7 コメント

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ご苦労様でした! (Satomi)
2007-02-12 21:46:40
こんなに多量の記事を丁寧に翻訳していただき、ありがとうございました。大変わかりやすく、興味深く読ませてもらいました。
まず、改めてHarryの頭の回転の良さ、しっかりとした考えをもっていることに感心しました。きっと彼は、これからも強い意志のもと、輝かしい未来を歩いていくことでしょう。
やっぱり私としては、日本やConnorの名前が出てきたのが嬉しいですね。それから、Hugoくんのことを気遣う微笑ましさも印象的です。
また、彼なりの「聖歌隊員」の在り方や将来の展望など、本当に興味深かったです。
翻訳&記事のアップ、本当にご苦労様でした!!
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ありがとうございます! (Keiko)
2007-02-12 22:13:08
いやあ・・翻訳なんてものじゃなくて、ほんと細かいところはテキトーにごまかしたりして、単なる大意なんですけどね。。じっくり読んでいただいて、嬉しいです!!Harryにとっても、この節目の時期の記念すべきインタビューだったと思うので、ぜひ日本語でも紹介したかったのです。

Connorのことは、もう少し聞きたかったですけどねーほんと、Harryとしてもこれくらいしか言えなかったのでしょうね。
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Unknown (Miliz)
2007-02-12 22:28:25
お久しぶりです。

全文読んでいなかったので、ありがとうございました。演劇とか色々語っていたのですね。
のところにちょいレスします。

やっぱり日本とアメリカとの比較って少しいじわる入っているんだろうな~意地悪だって自分で言っているなら比較じゃなくて、日本はどうでしたか?とかにすればよかったのにね。アメリカ人はアメリカ人が1番っていってもらわないと気がすまないのかしら?!Harryはいいほうに日本人解釈していてくれて嬉しいわ(笑)

聖歌隊がCoolではないってこと・・・以前女の子みたいでバカにされるとか答えていたような気がしましたが・・・。上流階級のおぼっちゃまぞろいの学校での純粋培養ですもの、ダサいなんていっている別のカテゴリーの少年達とは接さないのかも。そんなやつらは気にしないでしょう!

Harryはreadをお使いになったのね(苦笑)そういえば小学生(聖歌隊員)だった元ボーイソプラノたちは今はもう大学生か・・・ともかく成人なんですよね。そう思うと月日の流れを感じます・・・。
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そうそう~ (Keiko)
2007-02-12 23:05:32
Milizさん!ありがとうございます。おかげさまでこれもやっとアップできました~ (Singerと、順序が逆になってしまったけど、、まっ、いいかと思って。Singerまでアップしちゃうと、いよいよネタなくなっちゃうからという思いもあって出し惜しみ?!てます。
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あららリターン押しちゃった (Keiko)
2007-02-12 23:17:04
アメリカ人にインタビューされてるってことで、何かと気を遣っているようにも思いました(ハイライトシーンは?と聞かれてまっさきにNYでのコンサートを挙げるとか、、、)その一方で、日本人読者のこともかなり意識してくれてたんだなと・・

そうそう聖歌隊がダサいと思われてる問題、Singerではしっかりやっていましたよねえ・・・まあそれも所詮はよその話で、純粋培養ボーイズには関係ないと思っているんでしょうかね。。

ええ、read とのたまわれた時点で、すでにオックスブリッジへの進学が明確になったようなものですね 大学生活を謳歌して、楽しい恋もして?それからさらにまた音楽大学?に入り直したいとは・・・さすがリッチというかセレブというか・・・
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自分を客観視できることに驚き (吉岡 淳)
2007-02-14 22:48:15
 Keikoさん、
 私のHPの掲示板にはたくさん書き込んで頂いたのに、私の方は初めてでしたね、
 私は、Harryの頭の回転の速さよりは、自分を客観的に見つめることができることに驚きました。15歳になるかならないかの年齢でこのようなものの見方ができると言うことそのものが驚きです。少しいじわるな質問さえ、両方立てて応えることができるのも、社会的な知恵も身につけている証拠です。
 だから、「美しき水車小屋の娘」のような記念碑を遺すことができたのでしょう。
 
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おっしゃるとおりですねー (Keiko)
2007-02-15 09:59:51
吉岡淳さま、お忙しい中、ご訪問ありがとうございます!(皆さん、吉岡さんとは、「ボーイソプラノの館」の館長さまですよーー

おっしゃるとおりで、客観視し、しっかり分析して、そつなく答える・・全てにおいて、ほんとにこれで中学生?!と思われますよねー

あと、Milizさんへのレス中でも触れていますが、Singerというイギリスの音楽雑誌に13歳で寄稿した声楽論がありまして、これがまた衝撃の持論を展開しているのです。とっくに日本語訳はできていますが、
ずっとアップできずにいます。おっかなくて・・(苦笑) 近いうちに、登場しますので、そちらもご覧いただければ嬉しいです。
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