黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

不機嫌な太陽―気候変動のもう一つのシナリオ― 2

2022-09-12 09:15:21 | 地球温暖化

        不機嫌な太陽 ―気候変動のもう一つのシナリオ―  No.2

§3 雲による気候変動

 気候変動を起こす原因は雲の存在にあることの説明。雲量の変動は、宇宙線強度の変化に応じて起こる。その宇宙線の強度は、太陽の磁気遮蔽が強いか弱いかによって変化し、地球上の変化には影響されない。気候変動に最も重要なの種類が何かも特定できている。雲の増加は、地球の北半球を中心とした大部分の寒冷化をもたらし、南極大陸の雪原では温暖化をもたらすことから、雲が実際に気候を左右している。

3章 光輝く地球は冷えている

人工衛星による観測結果は、雲量が宇宙線の増減に応じて増減していることを示している。気候変動に最も影響を及ぼすのは低い雲で、それが地球を寒冷化させる。そのことは、逆にその雲が雪原の南極を温暖化させている事実により確認できる。

1 判っていなかった雲

 気候モデルにおいて

 2004年に米国大気研究センターのトレンバースは、「気候モデルは、雲を正しく扱っていない。・・」と言い、2005年には、それまでの気候モデルが正しくなかったことが明らかになった。1983~2002年の実際の雲の衛星観測と比較し、その違いは数百%にも達した。

 人工衛星での初めての観測

 雲の実態を観測するために、2006年に米仏のカリプソ衛星とNASAのクラウドサット衛星が一緒に飛んで、同じ雲を15分以内ずつ、一方はレーザー光レーダーで、他方はmm波レーダーで磁場観測を3年間続けた。これにより、厚い雲内の異なる各層の識別、小滴の粒径の測定、および雨として落下する小滴かどうかの区別などの多くが解明された。

 将来の気候予測

 この時期に「炭酸ガスの排出による気候の温暖化」問題が始まった。まだ「気候変動における雲の役割」は認められていない。自然の温室効果は主に水蒸気によっており、地球の表面を生物に適する状態にするのに不可欠である。炭酸ガスも同様に作用する。現在の議論は、炭酸ガスが増加し続けると、その温暖化効果はどれだけ大きくなるかである。雲の実際の役割からは、極度の温暖化は起きないだろうと予測される。

2節 雲による熱の出入りの抑制

 気温に及ぼす雲の影響

 雲には冷却効果がある。太陽光は、その雲がなければ雲の下にある地球の表面を温めるが、雲があると、雲に当たった光の半分が宇宙空間に跳ね返される。さらに雲に当たった太陽光の一部は雲の内部に吸収される。  雲は、地球の表面から熱が逃げるのを阻止するので、それ自身が温室効果をもたらす。雲もまた宇宙空間へ赤外線を放射するが、雲の上空は地表より温度が低いので,雲が存在する時の方が熱の損失が少ない。1990年代のNASAの地球放射収支実験では、全地球的な測定で、地球を覆う雲の加温効果と冷却効果の収支は、総合すると雲は強力なクーラーである。薄い雲は例外で、加温効果を持っている。高度の高い上層にある羽毛状巻雲は、-40℃近辺で冷たいので、雲から宇宙へ放射する熱は少なく、地球からの放射を阻止する熱の方がずっと多い。中間の高さの厚い雲は、もっとも効率の高いクーラーである。しかし、それはどの時間帯でも地球の約7%を覆う分しか生じない。低い雲は、そのほぼ4倍(30%弱)の面積を覆い、地球冷却の60%を占める。太陽光を遮ると共にその雲の比較的暖かい上面から高い効率で宇宙空間へ熱を放出するからである。低い雲の中で、広くて平らな毛布状の積層雲は、地球上の約20%を覆い、主に海洋上に生じる重要なクーラーである。 全般的に見れば、雲は入射太陽光の加温効果を8%削減する。雲が無いと地球の平均温度は約10℃上昇し、低い雲が数%増えるだけで地球は寒冷化してしまう。

 雲の分布状況の把握

 雲が空を覆う平均量は、年ごとに変化する。気象衛星により、雲を地球全体の視野で見ることが可能となった。国際衛星雲気候計画は、全世界の民間の気象衛星から入ってくるデータを蓄積した。NASAのゴダード研究所のウイリアム・ロソーの立案で、地球表面を一辺が約250kmの正方形で分割し、月毎のチャートを作成して、モンスーンやエルニーニョと雲の動きをとらえた。それは、地球全体の雲量と太陽のリズムとの間のつながりがあることを示した。

3節 太陽と気候との間の見落とされていたつながり

 宇宙線量と雲量との関係の調査結果

 気象衛星は国によっても異なるので、赤道上空を飛行している米国、欧州、日本の静止衛星によって観測された海洋上の雲の月間記録のみを使用し、宇宙線に関してはコロラド州のクライマックス観測所の中性子の月間平均数を選んだ。両者の変化は著しく一致していた。そのデータは1984~1987年までの間の太陽活動が徐々に静かになると共に、地球に届く宇宙線は増加した。その間に海洋上の雲量は徐々に約3%増加した。1988~1990年までの間の宇宙線は減少し、雲もまた4%減少した。この結果は、宇宙線による雲量の変動が、太陽からの光の強度の変動よりも地球の温度にずっと大きな影響を及ぼしていることを明らかにした。雲量は、宇宙線量の変化に忠実に従い、この相関は並外れて高かった。

4節 炭酸ガスによる温暖化説

 1990年に「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は地球の過熱が目前に迫っているという警告を発表した。20世紀の間に地球の温度が穏やかに上昇したのは、空気中の炭酸ガスの量が人工的に増加している為との考えであった。太陽活動のような自然要因がそれに大きく関与しているという説は歓迎されなかった。1992年にデンマーク代表団は、気候に及ぼす太陽の影響を研究課題に追加すべきと提案したが却下された。1996年デンマークの新聞社が、IPCCの議長にスベンスマルクらの宇宙線と雲の関係についての研究に意見を求めたら、「科学的に信頼できるものではない」と答えた。  スベンスマルクは、デンマークの公的機関は研究費を出さず、その代わりにカールスバーグ財団からの援助を受けられた。彼の発見した気候変動機構により、クヌード・ホフガール記念研究賞とエネルギーE2研究賞の二つの賞を受賞したが報道されなかった。

5節 低い雲に驚くほどの一致

 再調査に用いた新しいデータ

 国際衛星雲気候計画は1983~1994年のデータを発表した。そのデータを再調査した結果、スベンスマルクは2000年までに「太陽活動の変動の影響は、低い雲に最も強く現れる」と報告した。これは高度の異なる3種類の雲が、各地域を覆う面積比率(%)月間平均値の変化を、太陽活動の変化に応じて変化する宇宙線量の月間平均値と比較したものである。

 この調査で得られた結果

 地表から約3000m以下の高度に生じる雲が、宇宙線の増減に最も敏感に応答する。この高度は宇宙線がもっとも少量しか存在しない。既に地球の冷却の60%は、低い雲であることが確認されていた。低い雲が主役であることは、最も重要なものが最もエネルギーの高い宇宙線の強度だからである。なぜなら高エネルギーの宇宙線しか、最も低い高度まで到達できない。 この調査で、1年ごとに平均した低い雲の量と宇宙線の強度との一致度は、92%であった。予想に反して、高度が中間の雲と高度が高い雲は、宇宙線の変動とは無関係に見える。その理由は、宇宙線は高い高度にはいつも大量に存在するが、低い高度の空には宇宙線は少量しか存在せず、その総量が少ないから変動が大きく反映されるのである。

 太平洋とインド洋の2つの領域と、グリーンランドとスカンジナビアとの間の北大西洋の領域は、低い雲と宇宙線とのつながりが最も強いことを示している。 低い雲の上部温度を調べると、熱帯地方を中心として地球を取り巻いたベルト状の領域の雲の変化は、宇宙線の変化に忠実に追従した。この雲の影響は、地球冷却の30%を超えることは確実である。宇宙線が増えた時には、この低い雲の上部温度がより温かくなり、そのために宇宙空間への放熱が増加し、冷却効果が強まるのである。

 低い雲の上部温度についての考察

 どうしてその領域なのか。それは水の小滴が凝縮できるための表面を提供する小さな極微細粒子が、その領域の空気中にはより多く存在するからである。つまり極微細粒子が多いので、そこへ宇宙線が多くなると、小滴は小さいが数が多くなり、凝縮した水の合計量が少ないので、雲は霧状になる。その結果、この雲は地表からの熱を上方へ通過しやすくなり、雲の上部の温度が高くなる。衛星から観察すると、海洋上の雲の少なくとも3分の2はこの奇妙な形態の雲に属している。海上の船の航跡に沿って現れる直線状の雲は、このことを示している。1987年にワシントン大学の研究用航空機が、2隻の船の航跡に沿って形成された雲の中を飛行し、検証した。

6節 太陽活動が活発化した時

 20世紀の気温の変化

 宇宙線強度の平均値は、この100年間に著しく低下した。このことは地球を覆う雲量が減少し、地球は温暖化していることを意味する。 温度の記録は、この20世紀中に地球全体が、徐々に約0.6℃温暖化していることを示している。この温暖化の半分(+0.3℃)は、1945年以前に起こった。この期間には、太陽が活発化の真っ最中で、宇宙線は減少中であった。1960年代と1970年代の初期には、著しい寒冷化の期間に切り替わった。この時は太陽の磁気活動が一時的に弱まり、宇宙線が増加していた。1975年以降は、太陽活動の上昇が再び始まり、宇宙線は再び減少し、そして地球の温暖化が再開した。IPCCが1988年に創設され、炭酸ガスに関して関心が高まったのはこの時期である。

 20世紀の宇宙線の変化

 宇宙線の流入量の系統的測定値は1937年から存在している。1999年にオックスフォードの研究所のロックウッドたちは、それ以前に宇宙線が流入していた量を見つけ出せる方法を見出し、その結果は、惑星間空間では太陽の磁場はこの20世紀の間に2倍以上強くなったという。これにより20世紀全体の磁場の変化と、温度の変化がよく一致していることが示された。それは欧州米国宇宙探査機ユリシースによって、太陽の磁場強度がすべての方向で同じであることを発見した為である。宇宙探査機は1964年以来磁場強度が40%増加したことを直接測定した。ロックウッドは、それ以前の段階でさらに大きく増加し131%に達したと推定し、1901年と比べて1995年の太陽の磁場強度が2.3倍になったという。 1995年以降には磁場が強くなり、それで低い雲の高さまで届く高エネルギーの宇宙線が減少していることを、ペルーのワンカヨ測定器は示した。スベンスマルクたちは、そこから「20世紀の100年間における低い雲の放射性強制力(地球のエネルギー収支の変化)の概算値は、1.4W(ワット)/平米の温暖化である」との結論を出した。この概算値に対する批判の一つは、火山爆発やエルニーニョによるというもので、別の批判は、国際衛星雲気候計画を信用していなかった。IPCCは宇宙線と気候の変動とのつながりを認めなかった。

7節 南極だけは雲で温暖化する

 概説  専門家は、南極と他の大陸とは気温の傾向にずれがあると気がついていた。

 南極を隔離するもの

 風の回転特性が南極を他の地域の気象から隔離していた。風は上から見て右回りに流れ、それが環南極海流を引き起こす。南極はその環南極海流によって、メキシコ湾流や黒潮などの熱帯流から隔離されていた。南極の成層圏にも同様の右回りの風が吹いていた。この成層圏南極渦は、これに対をなす成層圏北極渦よりずっと強く持続性が高い。

 南北の氷床コアー・データの比較

 南極以外は世界の気候変動に従っているというデータが出た。 1999年にコペンハーゲンのボーア研究所のダールージャンセンらは、グリーンランドのGRIP掘削孔と、南極のロードーム掘削孔の中の氷の温度を比較した。埋まっていた氷は、熱の貯蔵性と絶縁性が高いので、その生成当時の局所温度を数千年もの間保存していたので、それを温度測定装置で、氷の各層が形成された時代における温度を測定、記録した。その結果は、過去の6000年間の北と南の温度を比較すると、「南極の気温は、グリーンランドの気温が平年より寒い時には、平年より暖かい傾向にあり、グリーンランドが暖かい時には寒い傾向にある」であった。ダールージャンセンの結果は、最近の小氷期の間、グリーンランドでは著しく寒かったが、南極では比較的暖かかったことを示した。

 南極のもう一つの掘削場所であるサイプルドームでは、ペンシルべニア州立大学のアレイらが特徴的な層を見出した。その層は、それが存在した時代に夏が異常に暑くて氷が溶解していた。その溶解の起きた頻度の変化が、気候の変動を示していた。2000年にそれが発表され、「溶解が最も頻繁に起こった300~450年の間で、溶解を経験した年が8%にも達した。それは、南極ではこの期間の夏の温度が高かったことを示しているのだろう。この150年間は、北半球で温度の低い小氷期と一致している」とした。アレイらはさらに1万年前まで追跡した。そしてサイプルドームの氷床で、約7000年前における2000年間、氷の溶解が全く起こらなかった期間を見つけた。その期間は南極では寒冷であったが、グリーンランドでは異常に温暖だった。グリーンランドでの掘削地から採取した同じ期間の氷は、過去1万年の間で、夏の溶解が最も頻繁に起こった期間であったことを示した。

 北と南の気候変動の境界と時間差

 地球全体の気候は、孤立した南極とそれ以外の世界との間で、不均等に分配されており、その2つの領域は、風と海流により、それぞれの領域の固有の気候変動の傾向を共有していた。オーストラリアとその周辺、南アフリカ、南アメリカを含む地域、つまり南半球の大部分は、気候変動に関して共通性が高いのは、南極ではなく、ユーラシアと北アメリカであった。その境は南緯60度の所にあった。つまり「南極気候の異常」である。南極とそれ以外の世界とでの気候の応答速度は、違ったとしてもそれは数年であると考えられた。

 20世紀における南極気候の異常

 1900年以降の100年間の気温の記録は、全地球と南極の双方とも、全般的に温暖化を示しているが、その途中の段階では一致していない。1920年代と1940年代には、南極で大きく寒冷化し、全地球は温暖化が急上昇した。 それとは反対に、1950年代と1960年代には、南極は劇的に温暖化したが、他の世界は一時的に寒冷化を経験した。1970年以降は、地球の温暖化が再開している間、南極の気温は横ばい状態となる。しかし、南極のハリー湾基地では、気温は著しく低下した。

8 南極気候の異常を起こす要因候補

 南極気候の異常の説明は、炭酸ガスでは説明できない。炭酸ガスは全世界に均一に広がっているからである。オゾン・ホールも同じである。オゾン・ホールの拡大はフロンガスを放出したことによるものではない。なぜなら、それでは有史時代にも先史時代にも起こっている南極気候の異常を説明できない。また天文学的要因、つまりミランコヴィッチ・サイクルの説でも説明がつかない。 それは地球の軌道の変化や姿勢の変化で、南極へ降り注ぐ太陽光の強度は、数千年の間に変化する。これはダールージャンセンの説明には役立つが、南極と北方の気温の違いを説明できない。雲量の変化が、南極気候の異常を直接予測できる唯一の要因である。雲量が減少すると、地球は温暖化し、南極は寒冷化する雲量が増加すると、南極は温暖化し、残りの地球の部分は寒冷化する

 雪原における雲の効果

 南極の雪原は、地球の最も白い部分を作り出している。北極の雪よりも、雲の上面よりも白い。その結果、南極では雲がない時に雪原が太陽から直接吸収するエネルギーよりも、雲がある時にその雲が一旦太陽のエネルギーを吸収し、その熱を雪原に再放射するエネルギーの方が多い。衛星により観測されたこの南極の雲の温暖化効果は、南極点における地上観測により確認された。それは、2003年に「雲は、1年のどの月においても、南極大陸の雪原を温める効果を持っていることが判明した」と発表された。 グリーンランドの氷床でも、雲により暖められることが知られていたし、長年にわたって観測もされていた。衛星による観測からも、雲の減少は局所的に寒冷化させることが示されていた。グリーンランドの氷床は南極ほど白く輝いていない。グリーンランドの気候は、風と海流によって、北大西洋や世界全般の気候と一体化されている。局所的な雲による温暖化効果は、大部分が打ち消されている。

 南極気候の異常についての考察

 雲の少しの増減での気温の変動を、衛星データを使って計算すると、雲量が4%増加した時には、気温は赤道では約1℃低下し、南極では0.5℃上昇する。雲量が4%減少すると赤道では1℃上昇し、南極では0.5℃低下する。 それでは地球の温暖化が雲量の減少によって起きるなら、南極において、1900年頃より2000年頃の方の温度が高くなったのはなぜか。スベンスマルクは、南極は孤立しているが、その大気中の水蒸気が自然に増加したために、温暖化を共有できたという。 地球の大気が暖かくなると、水は蒸発しやすくなる。水蒸気は最も重要な温暖化ガスなので、水蒸気があると宇宙空間へ放出される熱の一部が地表に戻されるので、全般的な温暖化を増幅する。余分の水蒸気は南極上の空気の中にも入ってくるので、その温暖化効果が、雲の減少による寒冷化効果を上回ったのであるという。

 南極気候の異常は、寒冷化と温暖化が交互に起こっている時には保持されるが、世界の一方的な温度上昇時には破綻することとなる。これは2006年に言われた。南極気候の異常は、「雲量の変化が地球の気候変動を起こす」ということを立証している。

 21世紀における南極の寒冷化 英国南極観測隊のハリー観測所は、44年間で初めて2002年に船が海氷にとじこめられた。南極は寒冷化しているのだ。

9節 氷期における南極気候の異常

 過去1万年前に遡っても、20世紀と同じことが起きている。1章で述べた、厳寒のハインリッヒ期と、ずっと暖かいダンスガール・エシュガー期との間で気候がふらつき、気候の交代がより劇的に起こっているが、これらの寒冷期と温暖期による温度変化は北半球のもので、南半球の南極の温度変化とは違っている。 グリーンランドのGIPS2地点の氷床と、南極のバード地点の両方の氷の掘削で得られた試料を比較し、メタンガス濃度の測定で双方の年代が対応していることを確認した上、この氷床の氷そのものに存在する重い酸素原子をカウントして、その古代の温度を測定した。

 2001年にブリンストン大のブルニアーたちは、過去9万年の間にわたって記録された主な温暖期と寒冷期について報告した。「南極では、この9万年の間に千年規模の温暖期が7回起こったが、それらの各開始時期は、グリーンランドでの各温暖期の開始時期よりも、それぞれ1500~3000年だけ先行した。一般的に、南極の温度が徐々に上昇した時は、グリーンランドの温度は低下中か、それとも一定しているかであり、南極の温暖化が終了した時期は、グリーンランドの急激な温暖化が開始した時期と一致しているようだ。」これは海流の変化では説明できない。

 スベンスマルクの説明

 「雲の形成により気候が変動する」という説明として、1つ目は「南極が氷床で覆われているために、雲が通常とは異なる温暖化効果を及ぼす」―氷床の影響。2つ目は、「太陽が『躁』または『うつ』の状態になることにより、宇宙線の量が変化した」―太陽活動の影響。これは雲量の変化つまり、氷期以来の温暖期と寒冷期の双方に太陽が明確に関わっていると説明。3つ目は、「数百万年、数十億年にわたる長期の気候変動も、宇宙線と雲との間の仕組みで説明できる」―宇宙線発生源の影響。

10 20世紀の温暖化の説明 には2つの説がある。

〇一つは、太陽活動の変化によるもの(スベンスマルクの説)

〇もう一つは、大気中の人工の温室効果ガス―特に炭酸ガス―の蓄積によるもの

 この2つの説のうち、どちらでも1900~2000年の間に約0.6℃の温度上昇を説明できる。炭酸ガスによる地球温暖化説は、①炭酸ガスがその気候変動の大部分を起こした主要原因であるという仮説と、②地球は今、温暖化の危機に直面しているという仮説の双方を主張している。

 スベンスマルク説では、1900年以前に起きた古代の気候変動は、現代よりはるかに激しかったが、それも宇宙線の変動によって引き起こされたものであるという。20世紀の温暖化は、太陽の磁場が2倍になり、その結果宇宙線が減ったことがその原因の大部分を占めなければ、他の時代に起こった現在よりも大きな温度変化を説明できないとした。

 20世紀における宇宙線と気温との関係の調査

 1998年には宇宙線強度の全ての体系的な記録と、最も古い時代まで遡れるものが利用できた。ニューメキシコ大学のアールワリアは、宇宙線研究者フォービッシュが建設したメリーランド州とバージニア州の2つの観測所から、1937年までさかのぼる古いデータを回収し、それらをシベリアのヤクーツクにおける同様のデータと組み合わせて、1937~1994年までの一連のデータを作成した。 スベンスマルクは、このアールワリアのデータを用いて、宇宙線の変化を北半球の温度変化と比較した。宇宙線の減少、雲量の減少、温度の上昇を、経年変化のグラフを作り、比較した。その結果、最初の数十年間は小刻みに上下し、1960~1975年の間には、低下し、それからは1990年代の温暖期に向かって一緒に上昇した。

 1980年以降の温暖化の原因

 一部の科学者は、太陽要因説は排除できると説明している。しかし太陽活動と温度変化の実態は、20世紀の期間中の上昇傾向が1980年頃に終了したが、その後の25年間に降下したわけではなく、宇宙線の強度は、太陽活動のサイクル中にリズミカルに変化し続けている。そしてそれと同じ小刻みの温度変化が、大きな温度変化傾向の上に重なっていることが記録されている。太陽が引き続いて気候変動を起こしているというこの証拠は、特に、気球や衛星により測定された海洋の表面と準表面(水深50m)の水温、および海面上の気温においても明白であった。 1985年の温度上昇傾向は、北半球の陸上の表面上の温度で、その勾配は最も急である。しかし、海面下50mでは、あたかも地球温暖化が停止しているかのように、宇宙線の増加と減少に合わせて、水の温度が上昇と下降するだけだった。

◎  二酸化炭素地球温暖化説の難問は2つで、1つは「現在、陸地、海洋、および空気によって温められる速さは、北半球の陸地の表面上の温度の方が、残りの世界よりも速いように見えるのはどうしてか」というもの。もう一つは、「増加中の炭酸ガスや他の人工の温室効果ガスの温暖化効果は、地球の大部分において、予想されているよりずっと少ないように見えるのはどうしてか」ということである。例えば南極では、雲の減少による寒冷化の影響を温室効果ガスは打ち消すことができないし、人工の温室効果ガスにより急激に温暖化していると特定されていた期間の1978~2005年の間に、海氷の領域が8%増加している。

 炭酸ガスの温室効果

 海洋における準表面(水深50m)の温度変化の程度は、宇宙線と雲に関するスベンスマルク説では当然のことである。ノーウィッチ気候研究部隊のヒューバート・ラムが1977年に書いた意見は、「放射収支上、増加した炭酸ガスが気候に及ぼす影響が、温暖化する方向にあることはほぼ間違いのないことであるが、一般的に受け入れられている推定値よりも、おそらくずっと小さいであろう。」1980年代の末迄、太陽の変動が数世紀にわたる気候変動を引き起こす最も有力な要因として知られていたが、宇宙線との関係は知られていなかった。

 気候変動を起こすと考えられる候補は、①大きな火山の爆発やエルニーニョ温暖化が起こった頻度、②空気中のちりや煙の量の変化、③オゾン、メタン、および他の温室効果ガスの変動、④陸地の用途変更、⑤増加した炭酸ガス全てにより繁茂した植物による陸地の全般的な暗色化、それと炭酸ガスによる温室効果、⑥スベンスマルクの宇宙線と雲と太陽の変動による説、である。

 衛星のデータは、宇宙線と雲の減少により、約0.6℃の温暖化が起こったと推定できた。また南極気候の異常も、雲が担っていることで説明できた。しかし、炭酸ガスの温室効果により引き上げられた温度は、衛星データで検証できなかった。 大気中の炭酸ガスを2倍に増やした時の温室効果を、どう計算しても0.5~5℃の間になり、一致していない。炭酸ガスだけでは温度上昇を説明できない。 スベンスマルクは、「余分の炭酸ガスの効果を、より精密で科学的に評価することが必要である」と考えている。どう計算しても、「21世紀における地球温暖化は、起こったとしても、現在予測されている3~4℃よりははるかに小さいであろう」という。

(注:これは、この書の要約と解説とまとめを、多くは原文の引用ですが、分かりやすくする為に、一部は短くまとめたり、順序を変えたり、書き直したりしています。詳しくは原著をお読み頂きたい。図は後ほど掲載します。  黒部信一) 

 


不機嫌な太陽―気候変動のもう一つのシナリオ―1

2022-09-10 15:33:34 | 地球温暖化

        不機嫌な太陽 ―気候変動のもう一つのシナリオ―  No.1

                                           2008 スべンスマルク&コールダー

§0 この本の概説

 この概説が、著者が書いたこの本のまとめです。

0 概説

 温暖期と寒冷期の繰り返し

気候変動は過去から繰り返し起こっている。過去数千年の間に温暖期と寒冷期が、交互に起こっていることから「宇宙線が気候に関与していそうだ」と考えた。最後の寒冷化の頂点の「小氷期」の後、現在の温暖期になった。この「小氷期」は「マウンダー極小期」と呼ばれる太陽の黒点が異常に少なかった時期、すなわち太陽の磁気活動が弱い時期と一致した。

 地球は、太陽の磁場が宇宙線を跳ね返すことにより守られている。この磁場が弱くなった時に、宇宙線が多く地球に到達する。最後の「氷期」が1万1500年前に終わった後にも、このような小氷期(寒冷期)が9回起こっている。その時に、歴史では冷害による食糧難が起こっている。

気候変動には太陽が大きな役割を果たしている。スべンスマルクは「宇宙線が世界の雲の量に影響を及ぼすことにより、気候を直接左右している」という。

宇宙線について

宇宙線粒子は1秒間に2回ほど、我々のからだ(身体)を通過している。宇宙線は上空へ行くとずっと多くなる。

宇宙線の遮断層は、1)太陽の磁気、2)地球の磁場地磁気)、3)空気(大気)である。これにより、宇宙線は遮られているが、宇宙線の中で最もエネルギーの高い荷電粒子ミューオンという電子は地磁気の影響を受けない。そのため地磁気が減っても、低空でのミューオンは増えず、低い雲が増加せず、寒冷化は起きない。

雲について

気候変動を起こすのは、地球の巨大な領域を覆うであり、特に海洋上のが重要である。地球の全周は約4万kmである。高い雲の一部は温暖化効果をもたらすが、海抜3000m以下の低い雲は地球を寒冷化させる。宇宙線が少ない時は低い雲は少なくなり、地球は温暖化する。20世紀の100年の間に、太陽の磁気遮断層が2倍以上強くなった。それにより宇宙線と雲が減少したことで、地球温暖化が説明できる。雲は宇宙線を介して太陽に左右されるので、太陽が気候変動の主要原因である。炭酸ガスの影響は極めて小さい。

雲の形成実験

大気中に浮遊する「極微細粒子」が存在すると、それが凝集して雲凝縮核ができ、その表面上に水の小滴を作り、水分が凝縮して雲を作る。その極微細粒子は、硫酸と水の数分子からなる小滴である。1996年その極微細粒子が急速に生成されることが発見され、2005年に実験で実証された。それは、「宇宙線が空気中に電子を放出させ、その電子が分子の凝集を促進し、極微細粒子を生成し、それが集まって大きな極微細粒子となり、それが雲を形成する。電子がこれらの仕事をする時に速い速度と高い効率でされている」。

天の川銀河内での太陽系の周回

宇宙線が、爆発した星から放出されて地球に到達し、地球の3つの遮蔽層をくぐりぬけて地球の低空の大気迄到達して雲を作り、気候に影響を及ぼしていたのである。宇宙線の変動によって、地球にいろいろな気候の変化を生じていた。

 地球への宇宙線の流入量は、太陽の状態によって変化するだけでなく、太陽系が天の川銀河のどの位置にいるかによっても変化している。

 太陽は地球を伴って、天の川銀河の中心の周りを周回する軌道に乗って、星の間を通過している。その時に、時々暗黒領域に入ることがある。そこは熱くて明るい爆発性の星が少なく宇宙線が少ないので、地球の気候は温暖になる。この時期を温室相と呼ぶ。

逆に、星の光が明るく宇宙線が強い時には、地球は氷室相(氷河期)に入る。

〇天の川銀河の明るい「渦状腕」を太陽が通過することにより、地球の大きな気候変動が起きることがこれで説明された。地球上に動物が生存した5億年の歴史の間に4つの腕を通過し、温室相から氷室相への切り替えが4回起こっている。

[腕(スパイラル・アーム)とは、銀河系公転運動において『恒星系および星間ガスの渋滞』によるらせん腕型の偏在部分が生じる。ウィキペディアより] (図参照)

〇それでその時にいた恐竜の一部の小さな恐竜が、体温を保持するために羽をはやして、その後、鳥に進化したという。

 スターバースト

 約23億年前と7億年前の2回、「全球凍結」が起こった。これは熱帯までも氷河や氷山であふれ、地球全体が凍結したのである。これは、天の川銀河が他の銀河と軽く接触することにより、天の川銀河でスターバースト(星の誕生や死が頻発したすさまじい状態)が誘発された時期と同じ時期に起こった。宇宙線が極めて多くなり、雲が地球を覆い、世界を暗くしたために、地球全体が凍結したのである。〇これに対して、その度に生物が緊急の適応をして、大きな進化をし、最後の全球凍結期に動物が出現した。

 他方、地球が誕生した初期の頃は太陽も若く、光量も少なく、地球も温暖だった。太陽は宇宙線を払いのける能力が今よりはるかに強かった。〇それで38億年前のグリーンランドの岩石から、最古の生物が発見されている。生物が棲みやすい条件が創り出され、それ以来生物は、常に変化する気候に耐えて適応してきた。生物の歴史は、宇宙線の強烈な時と少ない時との間で、生物圏は拡大と縮小との間を揺れ動いていた。

近くで超新星爆発 (二足歩行の人類の登場)

 最近では過去300万年前からの間に、数個の星団が超新星爆発を続いて起こし、すぐ近くにいた太陽と地球を奇襲し、宇宙線が強くなった。この大異変が、アフリカの乾燥化を引き起こし、それにより石器の製作人間の初舞台(二足歩行の人類の登場)が誘発された可能性がある。(日経サイエンス2022年8月号の「気候が形作った人類進化」参照)

 

§1 雲の形成

 雲はどのように形成されているのか

 概説では、地球の気候変動は宇宙線によって左右されているという。それは、宇宙線によって地球の下層の雲の形成が左右され、下層の雲が増えると大地の寒冷化をもたらし、南極だけは温暖化をもたらす。下層の雲が減ると温暖化し、南極だけは寒冷化するという。 そこでまず雲はどのように形成されるかについて取り組む。本書の順を変えて説明します。(黒部)

4章(原文) 雲の形成を呼び込む原因は何か

雲は、水蒸気が冷えて凝縮した時に形成される。水蒸気は、空気中に浮遊している極微細粒子の表面上に凝縮する。最も重要な極微細粒子は、硫酸の小滴である。硫酸の小滴が形成されるメカニズムは完全には解明されていないが、輪郭が分かり、宇宙線により促進されることが分かった。

1節 霧や雲の過去の形成実験

 エイトケンの雲の研究で、「空気中に漂流する極微細粒子の表面上に、水蒸気が凝縮して小滴となるので、もしも極微細粒子が存在しないなら、地球は雲や霧を作ることができない」という結論を出した。

 ウィルソンの霧箱の研究

 ケンブリッジの物理学者ウィルソンは、容器中の空気を急に膨張させて高い過飽和の状態にすると、水の小滴が僅かに生じることから、この凝縮を促進したのは電荷ではないかと考えてX線照射をした。X線照射は電荷の大軍を生じるからである。実験用の霧箱内にX線を照射すると、小滴の雨で満たされた。さらに、個々の粒子が霧箱内をヒューと飛ぶと、その背後に電荷の軌跡を残し、それにより小滴の飛跡が生じることを見出した。

 スベンスマルクの研究

 スベンスマルクはウイルソンの研究を知らなかった。しかし、地球の大気は巨大な霧箱のように作用し、宇宙線が増加するとそれに応じて、凝縮して雲となる量が増加すると考えた。

 用語について  空気中に浮遊する小さな対象を、エアロゾルまたは粒子と呼ばれるが、粒子では紛らわしいし、粉塵は個体を表すもので、雲凝縮核は主に液体の微細の滴である。それで極微細粒子を用いることとした。

§2  雲の核または種(シード)になる極微細粒子の形成

 固体状の極微細粒子

 粉塵は、乾燥した土地、砂漠や海岸から風が吹き上げて、自然由来の固体状の極微細粒子の大部分を占める。半乾燥地帯や乾燥地帯では、農業がこの粉塵を増やす。これはアジア、アフリカでは常に起きている。同様のものに、雷や火山の噴火や自然発火による森や草原の火災による煤煙もある。人による山焼きや野焼きは先史時代から土地運用の為に行われてきた。南アジアの乾季に木材や石炭の燃焼により「褐色の煙霧」が生じ、アラビア海からベンガル湾に広がっている。

隕石のような宇宙塵、花粉症を誘発する花粉粒子、バクテリアや菌類の胞子も豊富に存在し、かなり高い高度まで上昇する。空気中で際限なく起こる化学反応は、多くの元素や化合物を巻き込み、最後は極微細粒子になる。靄(もや)は、樹木から放出された炭化水素の水蒸気が、日光によりスモッグ状物質に変換されたもので、車の排気ガス中の炭化水素から作られる都市の光化学スモッグと同じである。

 火山爆発に由来する極微細粒子

 火山は、鉱物灰および硫黄ガスを放出する。鉱物灰はすぐ落下するが、硫黄ガスは硫酸の微細な小滴や、他の化学物質の細片に変換される。火山爆発による硫黄の大部分は、高い成層圏に入り、そこからゆっくり降下し、世界中に拡散する。ムンクの「叫び」に描かれている赤色の夕日は、1883年にインドネシアのクラカタウ火山(ジャワ島とスマトラ島の間にある火山島)の爆発によって、遠く離れたノルウェーの大気まで汚染し、引き起こされたものである。1991年にフィリピンのピナツボ火山が爆発した後、地上からのレーザー光線で調べたら、成層圏から戻ってくる散乱光が100倍も増加していた。その後徐々に減少して1996年に正常値に戻った。この火山の爆発で成層圏中に排出された硫黄の量は、約1000万トンと言われた。

 液状極微細粒子

 海洋は、硫黄の生成の巨大な水性火山である。海洋は低い空気中に大量の硫黄を放出する。最初は、硫化ジメチルと呼ばれる化合物[(CH₃)₂S]で、水蒸気として海面上に浮上する。その発生源は、海水の表面を漂流している藻類からなる微細な植物プランクトンで、それを小魚などが捕食して細胞をつぶし、その内容物が微生物に分解されて、硫化ジメチルが排出される。硫化ジメチルの水蒸気は、硫黄に近い悪臭がする。多くの海鳥にとっては、硫化ジメチルの臭いは餌を意味し、朝にその臭いがする方向へ行くと、小魚などが沢山ある所にたどり着くことができる。硫化ジメチルは日光によって空気中で化学反応し、硫酸の微細な小滴に変換されて、その臭いは日中には消失してしまう。 窒素酸化物は、雷の放電の中で作られたり、土中の微生物によって放出されて、化学変化により硝酸の小滴となる。窒素は、多くの生物によりアンモニアとして放出され、アンモニアは硫酸と組みやすく、硫酸アンモニウムの極微細粒子を作る。

2節  雲凝集核の補給の必要性

 極微細粒子の重要度

 水蒸気やガスから作られた超微細粒子は小さ過ぎる。それで水蒸気などから作られた超微細粒子が凝集して100倍くらいになると、理想的な雲凝集核になる。 硫酸の小滴は、雲形成に最も重要である。海上では硫化ジメチルだが、陸上の硫黄の発生源は、人間活動(主に化石燃料の燃焼)により生ずる亜硫酸ガスである。硫黄の産出量は、発展途上国の経済成長により約1億トン/年に近い。それは工業地域に集中し、風下の数千km先まで拡散されるが、世界の大部分は影響を受けない。

 地球の表面の半分以上は大海原で、その上空の雲は、硫化ジメチルから作られた硫酸の小滴により形成される。海洋上の硫黄の総量は、陸上の半分以下かも知れないが、雲凝集核の最大の自然発生源は海洋上にある。 その硫黄のライバルは、海の塩である。暴風雨の波により跳ね上げられた細かい水しぶきに由来する、適当な大きさの塩化ナトリウムの粒子は、雲凝集核の約10%しか供給できないが、硫酸小滴が凝集している期間には、利用しうる水を硫酸の雲凝集核と張り合って奪ってしまう程である。

 

 水である雲の小滴が、積雲(わた雲)の上昇気流により冷たい空気の流域に運ばれると、凍結して雪片やあられ(霰)状の粒となる。また水蒸気が高い高度に運ばれると、液体をとびこして直接氷の結晶になることもある。それが高い位置に形成される巻き雲である。どちらの場合も、多種類の極微細粒子が、氷の核となり、その表面上に水が結晶化する。 氷の基となる氷の核は、放浪している水分子を取り込んでいく。自然には粘土に由来するカオリンの微細片が氷の核になる。それは冷たい雲が氷粒子を作るのを促進し、氷の粒子になると水の小滴よりも落下しやすくなる。通常は雪片もあられの粒子も、地上に着くまでに溶解する。

 雲凝集核

 雲を形成する極微細粒子は、次第に消失してしまう。それは①雨、あられ、または雪により、空気から洗い落とされるか、②最も高い雷雲(積乱雲)中の上昇気流により成層圏内に吹き上げられるか、③重力により地表にゆっくり降下するかである。従って、雲を形成する極微細粒子は連続的に補給しなければならない

 高性能の検出器により数nm(ナノメートル=100万分の1mm)しかない超微細粒子の数を記録することができ、新しい雲凝集核の大群が創造されていることが判った。これを雲凝集核の爆発的生成という。 ヘルシンキ森林研究所のクルマーラらが、この雲凝集核の爆発的生成をずっと監視してきて、それによると、例えば春の日には極微細粒子の数は、夜の間に徐々に減少し、朝の10時に突然上昇しはじめ、真昼までにほぼ10倍まで上昇し、それから数時間は横ばい状態であるが、その間に成長してサイズが大きくなり、日没時から数が減少し始める。 陸上の大気の雲形成領域における1リットルの空気には、数百万個の雲凝集核が含まれている。外洋上でも1リットルに10万個存在する。このため気象学者は極微細粒子は常に大量に存在すると考えて、宇宙線が雲の形成量を変化させていることを考えない。

3節 パナマ沖の低空での超微細粒子群の大量形成

 雲のシードのシード

 雲を形成する今までの理論によると、雲を形成するには硫酸シードが必要であり、それには蒸気の形態をした硫酸分子が高い濃度で存在し、そして個々の硫酸分子は、必要な水分子を数個取り入れて、硫酸分子を1つずつゆっくり集めて小滴となる。 ところがある日、余りにも大量もの極微細粒子が太平洋上で見つかった。そこは人工の大気汚染と混同されないから、雲の形成から消滅までの全過程を研究するのにうってつけだった

 パナマ沖での極微細粒子生成の調査

 1996年のある日、NASAの研究用哨戒機オリオンはガス、水蒸気、および小さな極微細粒子を検出できる計器を取り付けて、パナマの南側の太平洋の海面上を低空飛行し、ハワイ大学のクラークたちは、空気中の硫化ジメチルの化学変化を追跡した。哨戒機が高度160m迄降下し、予想通り硫化ジメチルが大量に存在することが検出された。硫化ジメチルが、水蒸気と太陽の紫外線が関与する反応で、最初は亜硫酸ガスに、次に硫酸の蒸気に変換されることが判った。この硫酸分子の数は、凝集するには少な過ぎた。 ところが午後2時になると、大量の超微細粒子に遭遇し、2分間に1リットル当たりほぼ0から3000万個へと急上昇したが、同時に測定した硫酸分子の数は低いままだった。 この超微細粒子の爆発的発生も、地球の半分以上を占める海洋上での雲凝縮核の主な発生源が、このように短時間に生成することも説明できなかった。

 新しい理論による説明(イオン・シーディング説)

 空気中で帯電した分子、原子、および電子(まとめてイオンという)は、雲凝縮核を形成するためのシードとなっているというイオン関与説は、1960年代からあった。1980年代カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)の大気物理化学者レーズは、硫酸の微細小滴のイオン・シーディングが、実現可能であることを計算していた。そこで1998年に公表されたパナマ沖での発見に飛びついた。このイオン・シーディング説は、宇宙線を雲形成のメカニズムの中に持ち込むことになった。宇宙線はイオンの主な発生源であった。

 飛行機雲の研究

ロサンゼルスのユウ・ファンクンとリチャード・ターコは、飛行機雲を研究した。航空機の航跡の雲凝縮核の形成は、従来の理論よりずっと速く、燃料の燃焼によって生じた荷電した原子や分子が、極微細粒子の生成と成長を助けていることが明らかである。ユウとターコは、2000年には、宇宙線によって生成されたイオンは、雲凝縮核の形成、それを基にした雲の形成を助けることができると認めた。硫酸の蒸気分子は、電荷が存在するとより低い濃度において凝集できるようになる。イオンは、イオンによって生じた初期の極微細粒子を安定化し、さらに凝集してより大きな微細片になる。パナマ沖での超微細粒子群の大量の形成が証明されたのである。

4節 CERNでのカークビーの実験計画

 カークビーの構想

 ジュネーブのCERN(欧州原子核研究機構)の素粒子物理学者カークビーは、スベンスマルクの発見に関心を持ち、宇宙線の増加と雲の増加の因果関係を証明しようとした。実験では、特別な箱の中に大気と雲の条件を再現し、そこにCERNのビームを当て、その影響を測定する計画を立てた。この実験にクラウド(CLOUD=雲)と名づけた。(Cosmic Leading OUtdoor Droplets―宇宙線が通った後の屋外に残された小滴―)

 実施への準備

 CERNの陽子シンクロトロンの実験ホール内で、シンクロトロンの装置が、所定数量に制御された高速粒子を実験用の霧箱に供給し、それを霧箱の周囲に配置した計器が、加速器から出た粒子ビームにより引き起こされた現象を監視し、この霧箱内に形成される液体の小滴は、光の散乱によりその存在が検出される。3Dカメラによる高速度撮影装置で監視した。 そして、宇宙線が雲凝縮核の形成に役割を演じていることを裏付ける結果が出た。この時期にパナマ沖でのデータが公表され、ユウとターコがそれを説明し、それを含めて、この研究チームは2000年4月に提案をまとめ、それはスベンスマルクの考えと一致していた。

 CERNの方針決定の推移

 CERN(欧州原子核研究機構)の内部委員会は、結論を出すことを迷った。2001年に、欧州地球物理学会、欧州物理学会、欧州科学財団らがワークショップを開き50人の専門家で、「イオン、エアロゾル、および雲の間の相互作用」を概観し、「宇宙線によるイオン化が気候に重要な役割を果たしているか」への賛成は半数で、カークビーの研究プロジェクトへは満場一致で支持されたが、別の研究に巨費を投じる決定をしたので3年間研究は凍結され、2005年に再開することができた。

5節 空気箱の地下室への設置

 スベンスマルクのSKY構想

 スベンスマルクはデンマーク国立宇宙センターで、ユウとターコの超微細粒子群の大量発生を説明できる理論を使ってSKY実験を始めた。SKYはデンマーク語の雲である。 宇宙線粒子の中で最も重い電子であるミューオンは、建物も人体も通り抜けて地殻中に消失していくが、その一部が地下室にある大きな実験箱に入り、中をヒューと飛び、窒素分子と酸素分子から電子をたたき出してイオンを生成する。地下での実験は、宇宙線以外の影響を避けるためである。クラウドの実験が凍結されて、SKYの実験が立てられた。

6節 瞬間に起こった極微細粒子の生成

 最初の実験

 デンマーク国立宇宙研究センターのSKY実験装置の中にろ過された空気と微量の亜硫酸ガスとオゾンが入れられ、紫外線が照射された。そこでパナマ沖の太平洋上で発見された自然現象と同様の超微細粒子の発生が再現された。紫外線は硫酸の急速な発生を促進し、少ない分子数で急速に集まって凝集塊になった。形成された極微細粒子群は15分以内に最大数に達した。その数は、1リットル中に2000個で、連続的に計測していたので、累計1リットル中に数千万個となり、太平洋上で計測した数に匹敵する。

 ガンマ(γ)線照射した実験

 次にガンマ(γ)線源を箱内に入れてイオンを増やすと、極微細粒子の大量の生成を誘発した。しかも箱内に入れた直後に大量に検出された。 そこで箱内全体を均一に照射できるガンマ線源で照射した。その結果、空気中に解放された荷電粒子の数が多いほど超微細粒子の生成数も多いことが明確になった。イオン数を増やせば、極微細粒子も増える(イオン密度の平方根に比例する)。このことは、宇宙線数が少ない時の方が、極微細粒子の生成に大きい影響を及ぼすことを意味していた。イオン・シーディングは実際に起こった。

7節 雲を作る種(シード)の種は電子である

 新しい生成機構

 極微細粒子からなるクラスター(群れ)は電子が中心となって生成される。1つの酸素分子に1つの電子がくっついて、その酸素分子が水分子を引き付ける強さを持つことができる。その酸素分子の周りに数個の水分子が集まって、1つの水クラスター(群れ)を作る。この水クラスターは、オゾンにより活性化され、それに亜硫酸ガスが加わると硫酸を作り出し、その硫酸を蓄積していく。 電子はクラスターの接着剤であり、消費されずに次々と移っていき、数個の硫酸分子を集めたクラスターができると、そのクラスターはどんなに小さくても安定した状態になる。そのクラスター上の電子は、別の酸素分子に移って水の分子を集め、新しいクラスターを作る。電子は消費されずに触媒として作用する。

 このクラスター生成過程は非常に速く進行する。瞬時に作られた大量の分子クラスターは、紫外線を点灯することで増加した硫酸分子を取り込んで大きくなり、70個の硫酸分子を集めると約3ナノメートル(nm)になり、超微細粒子として認識されるようになる。 これが大気中で起きると、この超微細粒子は成長して、雲の凝集核になり、それがシード(種)の働きをして雲が形成される。雲のシードのシードは電子であった。それも宇宙線によって空気中に解放された電子であった。 2007年にデンマーク国立宇宙センター所長のクリステンセンは、「多くの気候科学者は、宇宙線と雲と気候のつながりは無いと考えていた。SKYの実験により、宇宙線が気候に影響を及ぼす機構が示された。これを根拠に、宇宙線と気候の繋がりを、国際的な研究課題の中に組み込むべきである。」と解説した。

 まとめ  雲に関するスベンスマルクの説は、次のようになる。

 気象衛星の観測により、地球を覆う雲の量が、数年間の間にリズミカルに増えたり減ったりする変化は、太陽の黒点数が減ったり増えたりする変化、つまり、正確には太陽風の影響が減ったり増えたりする変化と一致することが明らかとなった。これは太陽風の変動により、星間空間からやってきて地球に到達する宇宙線の数が、増えたり減ったりするからである。

 このSKY実験により、宇宙線により解放された電子は、硫酸分子同士が凝集するのを促進する触媒的作用をすることが分かった。この硫酸分子が凝集したものが、雲凝縮核の最も重要な供給源である。星から雲雲から気候という一連の説明は完成した。 SKYの実験は、宇宙線強度の変化が、明確に雲量変化をもたらすという低い高度での大気の状況を再現することに成功した。雲はこの世に水をもたらすが、寒冷化をもたらす能力を持っている。

(注:これは、この書の要約と解説とまとめを、多くは原文の引用ですが、一部は短くまとめたり、書き直したりしています。詳しくは原著をお読み頂きたい。図は後ほど掲載します。黒部)


地球温暖化は、宇宙線と雲によるもの―不機嫌な太陽―はじめに

2022-09-10 15:17:59 | 地球温暖化

地球温暖化は、人間活動による炭酸ガスによるものか。それは疑問である。

不機嫌な太陽―気候変動のもう一つのシナリオ―

はじめに

   地球温暖化は、人間活動による炭酸ガスによるものか   ―批判的グループの形成を呼びかける

 

 二酸化炭素(炭酸ガス)地球温暖化説はおかしい。これもコロナウイルスの流行から学んだこと。

私が疑問に思う訳は、一つは、地球は昔から氷期と間氷期を繰り返して来たはずでした。

だからちっぽけな人間が環境を変えることができるのは、核(原爆、原発など)しかないと思っていました。それでも、IPCCという専門家たちが言うのだからと、何も知らずに言われれるままに、地球温暖化はよくないと思い込んでいました。

 でもSGDsは麻薬だという斎藤浩平さんの意見を聞き、なるほどと思いました。新しい社会主義が必要だと思います。なぜなら、マルクスの社会民主党を引き継いできた北欧諸国の政治は、今一番人にやさしい社会ですから。

 そこで「人新世」という言葉を調べ、「人新世とは何か」という書を読みました。

 そこには人文社会科学と自然科学が分断されてきており、それは私が提唱する医学は社会科学であるということと同じことでした。気候学も社会学と分断されていたのです。すべての分野の科学を統合して判断すべなのでした。

 環境問題は、1972年の国連人間環境会議(ストックホルム)以後、環境問題は棚上げされ、リオデジャネイロ会議は開発会議であり、1997年の京都議定書は、国連気候変動枠組み条約の締結国会議でしかなかったのです。人間環境会議はどこへ行ってしまったのでしょうか。

 人間の環境問題は、主に福祉社会を追求する北欧諸国の提起であり、私の今の考えに進んだきっかけのロックフェラー大学の環境医学教授であったルネ・デュボスが議長でした。

 その後は、国連人間環境会議は開かれていません。

 気候変動は炭酸ガスによるものとの説は、突然出てきました。元々先進国は、炭酸ガスを出し続け、ロンドンの黒い霧から、アメリカの沈黙の春、ドイツの黒い森、日本も川崎と四日市の公害、東京も一時は都心部が排気ガスであふれ、光化学スモッグもあったのが、今はようやくそこから抜け出しました。しかし、原爆被害者も、その後の水俣病、カネミ油症などの被害者たちは、一部だけの救済で、多くの被害者は救済から外されています。

 福島第一原発事故も、いまだに原発事故緊急事態宣言が解除されていないのに、避難地区の一部が解除され、住民の復帰を促しています。

 しかし、世界の資本家たちは、第二次世界大戦(日本では15年戦争)で労働者の協力を得る為に譲った利益の分配を取り戻すべく、小さい社会を提唱し、新自由主義として、福祉社会を崩して、資本への利益を増やしていった。その一つが消費税であり、公営企業の民営化

であった。それが分かったのは、斉藤幸平さんの「人新世の資本主義」でした。

それで人新世を勉強しました。そこでアメリカの公衆衛生学者シゲリストや、全共闘時代の東大医学部長白木博次が提唱した、「医学は社会科学である」ということを、「人新世とは何か」では、分断された人文社会科学と自然科学の統合が必要であると、その歴史を明らかにしたのです。私の立ち位置は、そこでは「世界の周縁に追いやられた、ネオヒポクラテス学派」であったのです。確かにルネ・デュボスはヒポクラテスへ帰れと提唱していました。

私は、小児科医師連合の運動から、森永ヒ素ミルク中毒被害者の救援活動や、未熟児網膜症の被害者の救援から始まって、ワクチンの被害者救済、医療事故被害者の救済、そこからチェルノブイリ原発事故の被害者である子どもたちの救援に取り組んでいました。私がしてきた安保闘争などの運動は、私の子どもたちが若者になったら、継承してくれると信じていたら、その世代は氷河期世代で、正規雇用されず、労働組合にも無縁で、若くてもホームレスになってしまう世代でした。それを生み出したのは新自由主義です。それは国鉄民営化から始まったのです。その後の大きなことは郵政の民営化でした。それで新自由主義は大学や公務員まで派遣労働者だらけにして、所得税の累進性を廃止して上限をなくし、法人税も減税し、企業は内部留保をたっぷりとし、経営者たちは高額給与をとっています。

 私は、地球温暖化はよくないと思わされ、しかし、それに対してのSDGsやグリーンニューディールは、まやかしだと思っていました。確かに、消費社会はやめる必要がありました。日本の「もったいない」精神を生かすべきでした。

それもコロナ禍の社会が必然的にその方向へ進んだし、発展途上国の人々や先進国の貧困層がすべて文化的水準な生活を送ることを求めることは必然でした。

 ところが広瀬隆さんが、季刊「季節」で地球温暖化の炭酸ガス説は間違いとの論説を出して気が付きました。そこで広瀬隆さんの論文に出ていた本を読みあさりました。

 「二酸化炭素CO2によって地球が温暖化しているという説は科学的に全く根拠がないデマである」広瀬隆、講演録パンフ

 「地球温暖化説はSF小説だった」広瀬隆、八月書館

 「『地球温暖化』狂騒曲」渡辺正、丸善出版

 「気候変動の真実」S.E.クーニン、日経BP

 「地球46億年気候大変動」横山祐典、講談社ブルーバックス

 「異常気象が変えた人類の歴史」田家康、日経プレミアシリーズ

 「不機嫌な太陽」スベンスマルク/コールダー、恒星社厚生閣

 そこでやっとわかりました。「気候変動の真実」というクーニンの本では、アメリカやイギリスでは、Red グループという、地球温暖化二酸化炭素原因説に批判的なグループが形成されているというのです。日本ではそれがないようです。これから作る必要があると思います。

それで、私が一番説得的だと思った「不機嫌な太陽」を、あまりにも難しいので、私なりに書き直して、ブログに載せることにしました。翻訳もうまくありません。私すら読み続けるのが困難でしたから。順を変え、一部は文を書き直しました。

 宇宙線が雲を作り、雲が地球の温暖化と寒冷化の主因である。その宇宙線の変動は太陽と銀河系とさらに数十の銀河をもつ天空にあるというものです。前半だけでもお読みください。宇宙の話は、その説の裏付けにしか過ぎませんから。ただ、寒冷化が生物の進化や人間の登場を生んだという考えも納得しました。 「不機嫌な太陽」は、9章まであり、一度に載せられないので、少しずつ書き直した順に載せていきます。 


がん性格-――人はなぜがんになるのか

2022-07-31 08:28:57 | がんの話

               がん性格 ( タイプC症候群 )

                人はなぜがんになるのか。ならない人がいるのか。違いはどこか。

         その答えは、こころにあるのです。

   がん性格(タイプC症候群)

 私は常々、がんになるタイプの性格があると考えてきました。それは、私の病原環境論からすると、がんになるのは、遺伝的素因(または遺伝子)とそれを発現させる発癌物質などの自然境と社会環境(それに伴う情緒的環境も)があると考えてきたからです。それを近年発達してきた精神神経免疫学が裏付けをしてくれています。

 今までに、多くの発癌物質や放射線、紫外線などの発がん性が指摘され、見つかってきました。しかし、原爆被爆77年後の現在でも、被爆者の問題は解消されていません。それは生存者がいて、その医療と補償の問題があるからです。

 また私は「チェルノブイリ子ども基金」にかかわり、ウクライナやベラルーシの甲状腺がんや白血病の子どもの支援をしてきました。その中で判ったことは、多くの発病した子どもたちは、家庭や地域社会の環境が恵まれない子どもたちでした。都市から離れた片田舎に住む農民の子や、片親の子どもたちでした。片親になる原因には、もちろん原発の被爆もあり、その為父親が働けないなどの事情も多いようでした。

 以前、小中学校の放射線被曝を減らす運動をしていて、判ったことは、「低線量放射線被曝は、発がんの確率の積み重ねであること。また、発がん性は若いほど高く、55歳を過ぎたら放射線以外の発がん物質による発がん率を上回らなくなること。もちろん被曝の影響も無くなる訳ではありませんが、他の原因と見分けがつかなくなること」でした。

 また、ヒトゲノム計画による遺伝子研究の進歩からも、発がん遺伝子もありますが、発がん抑制遺伝子や、発がん阻止の身体のシステムも人には存在することも判ってきました。

 さらにその後エピジェネティクスという、遺伝子の発現(遺伝子の持っている働きを実現させること)に多くの要因が関与していて、遺伝子があるだけでは必ずしも病気になるとは限らないのです。そこにその人の置かれている、環境やこころが影響しているのです。それは約30年前から、ハーバード大学精神科から始まった「精神神経免疫学」と動物実験から証明されましたが、人間では実験ができないし、研究費がもらえず、世界の片隅に追いやられています。

 昔東大の生物学者が、昆虫の研究で、昆虫には抗生物質様の物質や抗がん作用のある物質を体内で合成しているらしいとの研究結果を発表したことを聞いていました。進化論からすれば、昆虫より進化した動物や人も持っている筈であるとのことでした。

 そこで、疑問がわいてきました。なぜがんになる人と、ならずに生きる人がいるのでしょうか。確かにまだがんになりやすい遺伝子はかなりの数が見つかってきています。

 またアメリカに渡った日系移民の多くは、世代が進むにつれて、アメリカ人の発がん率になっていくし、アメリカ型のがんになっていくことが判っています。現代の日本も、社会のアメリカ化が進むにつれて病気のアメリカ化が進んでいます。

 その原因を、私は社会的環境から来るものと考え、変化してきた社会に対する適応の問題としてとらえています。そこにその人の性格が関与して来ると考えます。

 最新の医学では、なりやすい遺伝子を持っている家系とそうでない家系があることも判ってきています。しかも、同じ遺伝子を持っていても、遺伝子が発現するかどうかは、環境に左右されるようで、現実に遺伝子にスイッチが入るか入らないかで、病気になったりならなかったりすることがあることが判り、その一つの例に性同一性障害の一部があると言われています。病気もいろいろな種類の病気で、スイッチが入るか入らないかで、発病するかしないかが左右されていることも判って来ました。

 今までは、漠然と、我慢強い人ががんになるのではないかと考えていましたが、どこかに違いがないか探していた所、テモショックの本に出ていることを知り、その内容の一部を紹介します。

( )内は私の考えで、他は著者からの引用です。

タイプC症候群

1.怒りを表出しない。過去においても、現在においても、怒りの感情に気づかないことが多い。

2.他のネガティブな感情、すなわち不安、恐れ、悲しみも経験したり、(例え経験しても)表出しない。

3.仕事や人付き合い、家族関係において、忍耐強く、控えめで、協力的で譲歩を厭わない。権威に対して従順である。

4.他人の要求を満たそうと気をつかいすぎ、自分の要求は十分に満たそうとしない。極端に自己犠牲的になることが多い。

(テモショックによるとタイプC症候群は、がんになりやすい性格傾向であると言います。)

(それに対し)

タイプA症候群(ローゼンマンによる)

1.敵対心、競争心、功名心のレベルが高く、病的な程の「性急病」を患っている。緊張性が高く、闘争的なタイプ。

2.闘争心むき出しで、仕事でも人間関係でも常にトップに立とうと猛烈に奮闘している。

3.たいてい不安、敵対心、怒りに満ちている。

4.自己中心的で、絶えず自分の要求とそれを満たすにはどうすればよいかを考えている。

(これが虚血性心疾患つまり心筋梗塞や狭心症などの心臓病になる可能性の高いタイプであると言います。)

タイプB症候群(ローゼンマンによる)

1.心からくつろいでおり、競争的でなく、一度もかんしゃくを起こしたり、敵対したことがない。自分自身とも周りの人々ともうまくやっている。

2.健康的なタイプ

 (これが健康で長生きするタイプであると言います。)

  • 心―からだ―がんのつながりは、はっきりしてきました。

 どのようにストレスに対処するかという一人一人に特徴的な行動は、がんに対する生物学的防御機構に影響を与えうるのです。

 ・患者の行動変容能力

 ・柔軟性

 ・抑圧(抑制とは異なる)

 抑圧における「無感覚」は、ベータ・エンドルフィンという脳内化学物質の増加による可能性があります。(モルヒネに相当する物質)シュワルツ博士は、「抑圧する人の体内では、この鎮痛剤的化学物質のレベルが異常に高く、これがネガティブな感情を麻痺させるだけでなく、免疫系、つまりがんに対する防御機構をも抑制する可能性がある」との結論を出しました。

 

  • 対処行動スケール

タイプA  外在化(自己の内部構造を外界に転嫁する)

      敵対心と競争心でものごとに対処

      自己中心的

      緊張

タイプB  怒りなどの感情を適切に表現する

      自分の要求にも他人の要求にも応えられる

      リラックス

タイプC  内在化(外界の構造を自己の内部に取り込むこと)

      譲歩や、感情の抑圧でものごとに対処

      自己犠牲的

      受動的

  • 感情表現とがん防御機構

感情表現と、腫瘍の成長と防御に関する三つの指標(①腫瘍の厚さ、②がん細胞の細胞分裂の速さ、③腫瘍に侵入したリンパ球の数)との関係

 *感情を表現する患者ほど、腫瘍は薄く、がん細胞の分裂が遅い。

 *感情を表現する患者ほど、腫瘍の基部に侵入しているリンパ球の数が多い。すなわち、がん防御システムが効果的に働いている。

 *対照的に、感情を表現しない患者ほど、腫瘍は分厚く、がん細胞が急速に分裂している。また腫瘍が深い所まで侵入している。

 *感情を表現しない患者ほど、腫瘍の基部に侵入しているリンパ球の数が少ない。すなわち、がん防御システムがあまり効果的に働いていない。

  • 患者の対処スタイル(グリアによる)

1.ファイティング・スピリット――がんの診断を全面的に受け入れ、楽観的な態度をとり、がんの情報を求め、がんと闘おうと決意している。例えば、「がんなんかに負けてたまるものですか。良くなる為なら何でもやるよ・・・」

2.否認――がんの診断を拒否するか、その深刻さを否定したり、軽視したりする。例えば「医者は、用心のため乳房をとっただけよ・・・」

3.禁欲的な受け入れ――診断を受け入れるが、それ以上の情報を求めようとせず、宿命論者的態度をとる。例えば、「がんってことは知っているよ。でも普段通りにしていなくちゃ、私にできることなんてないんだもの・・・」

4.無力感、絶望――診断に打ちのめされ、がんと死のことばかり考えて日常生活にも支障を来たす。例えば「医者もなすすべがないんだ、私はもう終わりだよ・・・」

  5年後の生存率は、1は80%、2は70%、3は37%、4は20%でした。さらに追跡調査の結果、10年後、15年後でも1と2は、3と4の二倍以上の生存率でした。

  • がんの自然退縮があることは判っています。

   それは、オレゴン博士の3500例のデータの集積があると言います。

  • イメージ療法

 健康な免疫系が弱いがん細胞を破壊する様子を思い浮かべるイメージ療法は、従来のがん療法と並行して行えば、有益な手法となり得ます。これが免疫機能の一部に好影響を与えるのは明白です。しかし、がんそのものをくつがえす力があるかどうかについては疑問が残っています。

  • 心身セラピー

 特に、グループセラピーには免疫系を高める効果と延命効果があると言います。いくつかの研究で、ナチュラルキラー細胞の力を強めることができるという証拠が出ています。

  • タイプC変容技法(テモショック)

 セラピーを受けなくても始められるプログラム

1.あなたの要求に気づく。

2.あなたの内なるガイドを見つける。

3.あなたの感情についての考えを再構成する。

4.医者、看護婦、友人、そして家族に対して感情を表現する技術を習得する。

5.医療ケアを管理する。

6.必要な社会的サポートを受ける。

7.正当な権利を確保する。

8.絶望感を乗り越える。

9.ファイティング・スピリットを養う。

  • 乗り越えるべきハードル

愛情とサポートを失わずに、自分の要求を知り、それを主張できることに気づくこと。自分の悪い点を見つけるのではなく、良い点を自分自身で見つけること。

  • がんになっているあなたへの質問

 見舞客の相手をするには疲れすぎてはいませんか?

 検査のスケジュールは、あなたの要求に合わせて変えてくれるでしょうか?

 あなたは医者の説明で納得がいったでしょうか、それともあなたはまだ混乱して不安なままでしょうか?

 体のどこかの部分が痛くて、この痛みを和らげるにはどうしたらよいのでしょうか?

 用意された食事と違うものが欲しいですか?

 あなたの気分を高めてくれる友達は誰ですか?

 あなたは誰に胸の内を打ち明けられますか?

こうした質問への答えが、健康的な対処法の出発点になるでしょう。まず、気づくこと、そして実行することです。

☆ 変容のための内なるガイド

*あなたのガイドは、絶えず「私は今どんなふうに感じるか」と問う内なる声なのです。

*あなたのガイドは、病気に関わる試練の間じゅう、あなたにとって最大の利益になることを求めています。

*あなたのガイドは、本当の自分に背く声を聞くと、いつでも穏やかに疑問を投げかけます。

  「 看護婦にもう一枚毛布を持ってきてもらっては申し訳ない」とか「医者に余り質問するものではない」というような声を聞きつけたなら、ガイドはすぐに乗り出してきます。

 「ちょっと待て。私は今重病人なんだ。そうする権利はあるだろう」と。

*あなたのガイドは、いろいろな声音を持っています。愛情のこもったものや、腹を立てているもの、穏当な物や用心深いもの、そして時には従順なものなどです。

 しかし、それはいつでも最も深い自己の側にしっかり立っています。

☆ 自分の感情に対する考え方を改めること

  抑圧を強化する考え方は、

1.私はいつも勇気を見せなくてはならない。

2.抑うつ、不安、そして怒りは、私をますます不健康にする。

3.医者のすることや出す薬に、疑問を持ってはならない。

4.どんなネガティブな考え方もしてはならない。

5.私は恐怖を克服しなくてはならない。

6.私は家族のため強くあらねばならない。

7.私は自分の痛みのことで、友人に負担をかけてはいけない。

8.私は非の打ちどころのない患者になろう。

9.みんな私によくしてくれるから、文句など言えない。

10.早く良くならなければならない。私の病状がみんなを左右するのだから。

11.もし痛みや悲しみを表現したら、人は私を感傷的なやつだと思うだろう。

 これらの考えを、次の様な肯定的主張に置き換えてみましょう。

「私の病気は重い。私の心も体もできる限りの休息とリラックスを必要としている。 良くなるためには、ほかの何ものにも増して自分の要求に注意を払わなくてはならない。これは自己中心的に見えるかもしれないが、私はずっと与える人間だったわけだし、今は少々甘えることも必要だと感じている。

 回復の可能性をできるだけ高くするためには、自分のことは自分で管理しなくてはならない。いつも勇敢で他人の前で強く振舞おうとすると、元の行動様式に戻ってしまう。その役回りを演じることは疲れることだとわかった。

 回復するだろうと楽観しているが、ネガティブな考えをすべて追い払うことはできない。だから、悲しみ、不機嫌になり、おびえてもいいことにしよう。こうした感情を他人の前でも出せるとほっとする。いつも隠しているのは重荷だった。私は良い「患者」でいたいとは思うが、「非のうちどころのない患者」にはなれない。

 回復するためには、いくらでも時間をかけるつもりである。こういったことは自分へのプレゼントであり、そのおかげで私は自分自身と自分の回復に満足できる。」

  • 自分の気持ちを書くことで、自分の感情を自分自身が客観的に認めることができます。書くことを薦めます。
  • 医者への基本的な質問(フィオーレ博士による)(主治医に聞くことのリスト)

1.先生、私の病気は何ですか?

2.もしがんなら、どんな種類のがんですか?

3.もしがんなら、転移していますか?

4.どのような治療法を勧めますか?

5.代替療法にはどんなものがありますか?(日本では代替療法はありません)

6.何もしないで様子を見るなら、どんなリスクがありますか?

7.この治療法の副作用、リスク、そして効果は何ですか?

8.なぜ手術をするのですか? あるいは、なぜ先に手術をするのですか? また、なぜ化学療法、あるいは放射線療法なのですか?

9.この検査で何が判るのですか? この検査を受けることによるリスクにはどんなものがありますか?

10.この薬の目的は何ですか? 副作用や注意しなくてはいけないことは?

11.セカンド・オピニオンを聞くには、誰を推薦してくれますか?

12.治療を助け、回復を促すのに、私にできることは何ですか?

  • 回復のためのあなた自身の計画

*どの医者と専門家に診てもらうのが良いかを決めること。

*その治療法が一番良くて、あなた個人にもふさわしいセカンド・オピニオンを得ること。

*自分のがんのタイプと段階、そしてよく用いられる治療法について、自分なりに研究して、医者と自分の病気について話し合ったり、決めたりする時に、知識があるようにしておく。

*従来の治療法と並行して利用できる健康へのアプローチには、他にどんなものがあるか調べてみる。食事療法、心理療法、心身セラピーなどがある。(日本では難しい)

*あなたにとって、全体的な健康に必要なものは何かを見定め、それを満たすこと。その為にがん予防食事療法、リラックスするための瞑想、身体的、情緒的健康なためのエクササイズなどを始めることになるかもしれない。(これらも日本では難しい)

  • 医者とのコミュニケーション技術

*あなたが医者に望むこと、そして医者から聞きたいことは何かをはっきりと、率直に言いましょう。その時、「私は・・・したいのです」「私は・・・が必要なのです」という言い方をするとよいです。

*医者を批判するのは避けましょう。医者も普通の人間と同じように、判断よりも感情に反応しやすいからです。本当に良い医者は、言っても良いのですが少数です。

*もし医者が協力的でなかったり、侮辱的だったとしても、無神経だと非難しないようにしましょう。その代わりに、医者のその行為によってあなたがどんな気持ちになったかを話しましょう。例えば「質問が多すぎるとあなたに言われた時、腹が立ちました」とか、「あんな統計を見せられ、怖くなりました」、「話し合いを途中で打ち切られ、傷つきました」というように。「私の言うことにはかまってくれないじゃないですか」というような非難より、感情を言葉にした発言の方が、ずっと聞いてもらいやすいし、理解されやすいです。

*医者の言うことには注意深く耳を傾け、相手の発言と感情も認めましょう。両方向の関係を築いた方がよいのです。

☆ がんの治療の厳しさ

 従来のがん治療の三本柱は、手術、放射線治療、化学療法です。本や主治医から、予想され得る詳しい情報を調べておくとよいです。

☆主人公になりましょう

自分でこの医療ドラマの主人公となれば、それはあなたの精神と免疫系の治癒力に利益をもたらします。そこで、あなたにできることは、例えば、

*主治医があなたの手術について十分な説明をし、あなたの要求に敬意を表していることを確かめます。あなたの要求とは、治療に参加している実感、心の準備、そして主治医をはじめとする医療担当者からのサポートを必要だと感じる気持ちです。

*手術の良い結果を、心に描きましょう。

*手術に対する恐れを、愛する人に表現しましょう。愛する人に手術まで必要なだけそばにいてもらい、意識を回復した時に真っ先に見たい顔を想像します。あなたを一番慰めてくれるのは誰の存在ですか。その人たちに来てもらうように頼んでおきましょう。

*化学療法や放射線療法で心配な点をはっきりさせ、それを口に出しましょう。例えば、もし髪の毛が抜けることを心配しているなら、回復した他の患者にどう対処したか助言してもらうとよいです。そうすれば、こうした人たちの髪の毛が元通りになっていることに気づくでしょう。

 そのことは、あなたもそうなるという、目に見える証拠ともなります。何と言っても彼らは、がんは克服できると言う現実の証拠です。

*痛みへの対処について主治医に聞くこと。そうすれば、心配な心づもりをしたり、実際に感じている痛みに対処しやすくなります。病院にペインクリニックがあるかどうか調べておきましょう。そこではいつも新しい、良い薬が使われている筈です。

また、薬を使わない痛みの対処法として、催眠療法、リラクゼーションなどの行動療法があります。(日本ではありません)

*その病院でグループ・セラピーや個人的なカウンセリングが利用できるかどうかを調べます。精神病的な症状がないとサポートやカウンセリングで得ることはないなどと思わないように。大抵の患者は、グループの場で感情を表現すると楽になります。(これもないです)

*がん治療の副作用や痛みに対処する方法として、瞑想やイメージ療法も考慮に入れよう。例えば、薬が体内で自分のために勇ましく闘っている光景を想い浮かべるといった手法に効果があることは実証されており、コントロール感を高めるのにも役立つ。

☆ 以上ですが、残念ながら、この面では遅れていて、日本では心理療法やグループ・セラピーをしている所は見つかっていません。瞑想やイメージ療法、催眠療法、自己暗示法、リラクゼーション、自律訓練法などは、私も多少心得があり、実際に治療したこともあります。しかし、本人の努力がないとできないことが多く、できる人は少ないです。私はがんの人にしたことはありません。 

 以上は、テモショック「がん性格」の引用と、私の考えを加えて書いたものです。必要なら原文「がん性格」テモショックら、及び「内なる治癒力」、「こころと体の対話―精神免疫学の世界―」をお読み下さい。私が探した範囲では、このくらいしか見つかりませんでした。   

 


食物アレルギー

2022-06-23 16:18:40 | アレルギー疾患の精神身体医学

         食物アレルギー

ストレスからのアレルギー

 

食物アレルギー

 食物アレルギーは、人為的につくられたものであると考えます。飢餓状態の子どもには生じなくて、豊かな国、食べるものが豊富にある国で生ずるからです。

 私は、食物アレルギーは乳幼児の母親または保育者によって生まれると考えています。それは、乳幼児への食事の強制が主因であるようです。

 最近、クルミアレルギーが増えてきたと聞きますが、クルミの入った食品、ケーキなどを母親が好んで食べているのではないでしょうか。それを子どもには与えてはいけません。必須食品ではないですから。

 そして最大の根拠は、説得療法、自己暗示法、催眠療法で治すことができるからです。また、成長と共に自然に治ることもあります。現代医学では、それを説明できません。

 

食物アレルギーを予防するには

 第一は、アレルギーを起こしやすい食べ物を3歳までは与えてはいけないことです。

 親の好みで、食べているものを与えたりします。また無理に食べさせようとします。これらが食べ物アレルギーの原因です。

 皆さんは、嫌いな食品や食べられない物はありませんか。私は、食べられないものはありませんが、好きでないものはあります。それは昔、私の子ども時代に、そればっかり食べさせられて嫌になったり、その後若い時にやはり家の都合で沢山食べさせられたりして、その後に嫌になったものです。蛇の生血とか、マムシなどは食べられませんが、少しなら、一般的な食べ物は何でも食べられます。絶対食べられないものは殆どありません。

 つまり、子どもに食べ物を強制するから好き嫌いが生じるし、無理に食べさせようとすると、アレルギー反応が起きるのです。これが精神神経免疫学です。

 嫌がったら、すぐやめれば、嫌いな物にはなるかも知れませんが、アレルギー反応は起こしません。

 だから子ども時代にあった食べ物アレルギーも、成長と共に、単なる嫌いな物へと変化することが多いものです。

 

よくある食物アレルギー対策

 〇卵アレルギーは、鶏卵の白身によって起きます。特に、加熱していない「生」または「半生」で与えられた時に生じることが多いです。しかも二回目に与えた時に症状が発生することから、一回目で嫌な思いをし、それを体が覚えていて、二回目に拒否反応を起こすと考えられます。

 〇大体、乳幼児に生の蛋白質を与えることがおかしいのです。しかも欲しがらないのに食べさせようとすることに問題があります。

〇乳幼児で多い食物アレルギーの原因の卵と牛乳や乳製品は、元々人間の自然な食べ物ではなかったのです。さらに特に生の蛋白質が原因であることが多く、完全に加熱したものでは少ない。

 〇実際に、混じっていることを知らずに食べると起きないこともあります。

 催眠実験でも、暗示効果が強く出て、入っていると暗示をかけると、実際には入っていなくてもほとんどの人が反応します。

 また、血液検査でも、皮膚のスクラッチテストやパッチテストでも、100% の相関は得られません。そこには心と免疫の関連があるからで、精神神経免疫学では説明できます。

 〇実際に私の診た幼児で、母親から離れて養護施設に入ったら、アレルギーの出る食べ物が沢山あったはずなのに、何でも食べている子どもがいました。

 〇また私が若い時に16年間、国立病院に勤務していましたが、当時はわざわざアレルギーの調査もしなかったし、アレルギー食も作ってはいなかったのです。ただ好き嫌いはありましたが、入院した子どもたちに「嫌いなものは食べなくて良い」としていましたが、外から食べ物をもち込めなかったので、おなかが空くので、その内に嫌いなものでもみんな食べてしまいました。しかし、家に帰るとまた食べなくなったと言います。

 〇子どもの「好き嫌い」を治そうとすることはありません。何でも食べさせようとすることには無理があります。動物は片寄ったものしか食べない種類もいますし、体に不足するものを美味しく感じるようです。プランクトンしか食べない、蟻しか食べない蟻食いなどが典型です。内陸の動物たちは、塩が不足し、岩塩のあるところへ食べに行ったりします。

〇人間でも体に不足するものを美味しく感じるようです。私は栄養学に疑問を持っていましたが、特にアメリカ主導の栄養学、国際基準の必要栄養量にも本当にそうか疑問に思っています。これは昔、神奈川大教授の故中山茂先生の科学史研究会に2年ほど参加していました。その時に教えられたことです。

〇嗜好食品は3歳を過ぎるまでは味を教えてはいけません(与えてはいけません)。

 

☆もっと自然体で生きていきましょう。「栄養があるから」とか「体に良いから」と食べたり飲んだりすることはよしましょう。基本的に必要な食品の中から、欲しがるものを食べさせていれば良いです。 フィリピンの山中で一人、30年間も戦争していた小野田さんが帰国後に語ったことは、「体のことは、体が知っていると思っていたから、何を食べるかは体に聞いてみた。それで30年間病気をしなかったのだと思う。」と言っていました。現代でもそうですが、ストレスがあるとそれが狂ってきますし、思い込みもありますから、100%そうとは言えませんが。

食べたい時に、食べたいだけ与えることが基本です。ある程度の満足感が得られたら、それこそ「腹八分目」でやめましょう。

 

アレルギーを避ける実践的な方法

〇早期の離乳食はアレルギーを作るということは、間違いです。昔のアメリカでの小児科医の実験では、果汁を始めるのは生後2週間では早過ぎて、生後2か月過ぎからとなりました。穀類は生後4カ月からです。

アレルギーの家系では、卵は与えてはいけません。1歳から固ゆでの黄身だけ与えます。成長しても、卵アレルギーの出やすい人は、白身を美味しいとは感じないようです。

牛乳は完全に加熱して冷ましたものを与えます。刺身類やイクラなどの生の食品を3歳までは与えないことです。ヨーグルトやチーズなどは嗜好食品です。ピーナッツは誤嚥すると危険な食品ですから、乳児がいる家では食べないようにしましょう。そばも子どもが食べる食品ではありません。

以上を守れば、小麦アレルギー以外は避けられます。小麦アレルギーも、小麦製品の強制が疑われます。必須食品では、小麦だけですし、乳幼児では食べなくてはいけない食品ではありません。

牛乳は、しばしば乳糖不耐症で飲めない人がいます。哺乳類の多くは、離乳期になると乳糖分解酵素の産生が出来なくなり、母乳が飲めなくなるので離乳します。人間と一部の動物たちでは、母乳を飲み続けたり、牛乳を飲めるようになったりしますが、それは適応と考えられています。しかし、人間でも遺伝子の働きが止まってしまい、乳糖分解酵素が産生できず、乳糖を分解できなくなるので牛乳を飲むとそのまま出て下痢状になる人がいます。世界的に農耕民族に多いと言います。これはアレルギーではありません。

 

☆実際に、食物アレルギーはどのくらいあるのか。

〇厚労省科学研究報告書2005全国調査(国立医薬品食品衛生研 穐山)

 鶏卵40%、牛乳、乳製品18%、小麦9%、いくら5%、落花生4%、えび3%、そば3%、キウイフルーツ2%。

〇2002年4月省令、7品目表示 卵、牛乳、小麦、そば、落花生、えび、かに。

 準ずる18品目 あわび、いか、いくら、オレンジ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、キウイフルーツ、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、桃、山芋、リンゴ、ゼラチン。

 鶏卵の60%OVA 加熱で低下。鶏卵、牛乳(ベータ・ラクトグロブリン)も年齢依存。ベータ・ラクトグロブリンは、牛、羊、ヤギ、犬、豚、鹿、馬、いるかの母乳中にあり。人の胃液に分解されない。

 小麦ー 成人に多い。食物依存性運動誘発性アナフィラキシーで最も頻度が高い。

 落花生ー 米国の煎ることで上昇、中国のゆでる、揚げることで下がる。

 そばー 微量でも危険あり、(アナフィラキシー)、えんどう、大豆と相同性あり。

  • 大豆(豆乳) クルミ、ピーカン、ヘーゼルナッツ、ブラジルナッツ、ごま
  • 果実ー キウイ(口腔アレルギー重篤、多い)、

    バラ科果物 リンゴ、桃、サクランボ、梨、いちご

    カバノキ花粉

○魚介類 魚ー  タラ類、スケトウタラ、コイ、タイセイヨウサケ、まあじ、うなぎ、めばち、まさば  も同じアレルゲン

     甲殻類ー えび、かに、(ブラウンシュリンプ、ブラックタイガー)

     軟体動物、するめいか、いくら(日本特有)、(タラコは相動性があるがみられない)

その他 コキニール色素(雌のエンジムシ)赤色色素の含有成分、はちと相同性あり、

☆アレルギー症状から見た交差反応(宇理須)

 大豆アレルギーに醤油、味噌は安全。

交差反応性

 ピーナッツ 他の豆科 5%  桃   リンゴ、梅、サクランボ、梨、いちご  55%

 牛乳    牛肉 10%   えび  かに、ロブスター75%いか、たこ、貝類20~30%

 小麦    他の穀類 20% 

 魚     他の魚 50%  メロン スイカ、バナナ、アボガド 92%

 牛乳  山羊乳 92%

即時型アレルギーⅠ 60分以内に症状出現、かつ医療機関を受診したもの

  2歳まで60%、3歳までに66%、8歳までに80%(20歳以上で9%)が出現する。5歳以前に出ることが多く、5歳以降は初めて出るという出現率は低下する。

皮膚症状  88.6%

呼吸器症状 26.8% くしゃみ、鼻水、咳、喘鳴、呼吸困難

粘膜症状  23.8% 口唇、眼瞼、球結膜、はれ、かゆみ

 気道粘膜症状、嗄声、犬吠様咳嗽、閉塞感、嚥下困難、胸がつかえる、口腔・咽頭・喉頭の違和感

消化器症状 13.4% 腹痛、嘔気、嘔吐、下痢

ショック症状 10.9% アナフィラキシー

☆即時型アレルギーⅡ(2時間以内) (今井による)

 0歳で30%、1歳で20%、2~6歳で30%発症。

 鶏卵(30%)、乳製品、小麦(以上3種で60%)、甲殻類、果実類、そば各5%、魚類4%、イクラ3%、ピーナッツ、大豆、木の実類が各2%、

6歳までは、鶏卵、乳製品が主。乳児では鶏卵、乳製品、小麦で89%。

7歳以上は甲殻類が第一、次いで果実類、そば、魚類。

1~3歳にイクラが多い。

 

☆食物依存性運動誘発性アナフィラキシー

運動誘発性  アスピリン、NSAIDs(解熱剤)の吸収上昇で 15%が関与、男女比1.5:1、

初発年齢 10~20代

  皮膚症状 全身のじんましん、血管性浮腫、紅斑、 ほぼ全例

  呼吸器症状 咳、喘鳴、呼吸困難         約70%

  ショック症状 血圧低下、意識レベル低下     約50%

 回数 2回以上、70%にアレルギー疾患の既往または有病

  小麦製品60%、エビ、カニ、甲殻類 30%

 種目 サッカーなど球技やランニング、

 食後から運動開始まで120分未満約90%、運動開始後発症まで60分未満80%以上。  80%が昼食後、

☆食物依存性運動誘発アナフィラキシー  (相原による)

 1万2千人に一人、男女比4:1、発症10歳で喘息、花粉症などの有病者。

 小麦製品、エビ、カニなどの甲殻類が大部分、野菜、果物もある。

 食後2時間以内の運動をさける。

じんましん、アナフィラキシー  (海老沢による)

 乳幼児 鶏卵、牛乳、小麦、そば、魚類、大豆、 鶏卵、牛乳、小麦、大豆は治る。

 学童~ 成人 甲殻類(エビ、イカ)、魚類、小麦、果物類、そば、ピーナッツで治りにくい。

3歳頃までに50~60%、6歳までに70~80%が治る。(山口による)

 

仮性アレルゲン(直接の原因ではないが、アレルギーが起きている時に食べると長引く原因になることがある)    (中村、飯倉らによる)

 ヒスタミン なす、ほうれん草、トマト、エノキ茸、鶏肉、牛肉、馬肉、サバ、パン酵母、塩づけニシン、ドライソーセージ、キャベツの酢づけ。

 ヒスチジン チーズ類、鹿肉、ピーナッツ、アボガド。

 チラミン  チーズ類、ニシン塩づけ、パン酵母。

 フェニルチラミン チョコレート、チーズ類。

 セロトニン トマト、キウイ、バナナ、パイナップル。

 ドパミン  豆類、長いも。

 アセチルコリン なす、トマト、たけのこ、さといも、山いも、くわい、松茸、そば、ピーナッツ。

 ノイリン  さんま、冷凍タラ、塩サケ。

 トリメチルアミンオキサイド カレイ、タラ、スズキ、たこ、あさり、はまぐり、カニ、エビ。

 


ウクライナ緊急支援カテリーナチャリティコンサート

2022-06-20 18:02:22 | 未来の福島こど基金

                ウクライナ緊急支援

カテリーナ チャリティーコンサート

   未来の福島こども基金活動報告   2022/7/9

今回、私たちは以前からチェルノブイリ(ベラルーシとウクライナ)の子どもたちを支援していたこともあり、世界の平和を守り、戦争を非難する立場から、 どちらの政府を支援することではなく、被害を受けているウクライナの人々を支援するために、今回チャリティーコンサートを開きます。会場とオンラインの両方で開催します。オンラインでの参加は、登録したら、3日間は見ることができます。遠方の方は是非オンラインで参加をお願いします。

 是非、カテリーナのパンドゥーラと歌声をお聞き下さい。参加費1,500円

会場・オンライン共に Peatixサイトから申し込み

    https:/kateryna.peatix.com

ただし、会場参加の場合には直接主催者への申し込みも受け付けます。

主催 未来の福島こども基金  Tel 090-3539-7611 向井方

会場 新横浜スペースオルタ

         


アレルギー疾患の精神神経免疫医学

2022-06-02 10:15:31 | アレルギー疾患の精神身体医学

                              蕁麻疹(じんましん)

  じんましんは、よく見られる病気ですが、他のアレルギー疾患と共に医者の儲けになる病気です。今は、ほとんどの病気が儲けの対象になっていますが、アレルギー疾患はなぜ起きるかが、本人のせいになっていますから。これも「こころ」から来る病気ですから、治すことができます。しかし、ちょっと薬を飲めばよくなるというものではありません。

       じんましん  (蕁麻疹)

 1.じんましんは、アレルギー性の病気で、気管支喘息、花粉症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などにかかったことがあるか、家族にあることが多い病気である。

  • 2症状と特徴

 自然に治る病気だから、かゆみ以外は治療の必要はないが、かゆみで悩まされる。

 かゆみで始まり、蚊に刺されたようにプクッと盛り上がり、かゆくてかくと次第に大きく広がっていき、アメーバの偽足のようになる。時間がたつとだんだん小さくなるか、または盛り上がりが低くなり、赤味もしだいにうすくなって消えていく。

できても必ず5~6時間で消える。(これが、じんましんの特徴)

 消えてもすぐ隣にできたりして、1日中どこかにできていて長びく場合や、毎日同じ時間に繰り返し出てくることがある。

◎かくとじんましんが出てくる。だからじんましんのできていない皮膚に字や絵を書くと、その通りにはれてくる。(陽性描画症という。)

 

  • 3.治療

 第一は抗ヒスタミン剤と鎮静剤。第二は食事療法。第三はストレス対策。

 急性期には早いと1晩でおさまり、長いと7日間位続きますから、一応おさまる迄は食事療法をして、薬を飲むことを薦める。

 かゆみは、ぬり薬ではとれず、冷やすと少しは楽になりますが(寒冷じんましんの場合はだめ)、薬を飲まないとおさまらない。

 急性期のかゆみには、ボスミン皮下注射が有効で、30分以内に楽になるが、副作用として心臓がドキドキしてしまうので、こどもかそれが気にならない人しかできない。

 食事療法は、すれば 100%効いてじんましんがおさまる訳ではないが、皮膚が過敏になっているので、皮膚を刺激して、じんましんが長引くのをさけるため、アレルギーを起こしやすい食物(卵、牛乳、青身の魚)や今回原因として疑われる食品などを避ける。(食品着色剤、食品添加物も考えられますが・・)

 丸2日間じんましんが出なければ、食事制限はやめてよいし、薬もやめる。

 日光じんましんには日除けスクリーンを使うしかない。

 軟膏は皮膚のかゆい時にぬるのだが、それ程有効ではなく、ぬると気持ちが落ち着くくらいなので、小さいこどもと欲しい人にだけ出します。

 とりあえず薬は5~7日分出しますから、薬がなくなってもじんましんが続く場合は来て下さい。

 2週間以上長引く場合は、食事療法は中止し、抗アレルギー剤を試みる。抗アレルギー剤は2~4週間続けないと効果が期待できないので、長引く場合に使用する。

 6ケ月以上続く慢性の場合には、食事療法を2週間位続けてみる価値はある。

  • 4.原因(アレルゲン)は

☆原因を探し、分かったら食べないこと。

 原因は、飲食物や薬が大部分ですが、食品添加物や、温熱や寒冷などの物理的刺激、吸入抗原、感染、虫刺されからくることもある。

 慢性じんましんの場合は、ストレスや物理的刺激が誘因になることが多く、なかなか原因を見つけることが難しい。

 1)原因を探す為に、食事日記をつけて下さい。

 じんましんができた第1日目の朝から、じんましんに気付くまでの飲んだり、食べたりしたすべての物を、時間毎にメモしておくこと。何日続いても、初めの1日分でよい。

 次にじんましんができた時にまた食事日記をつけ、共通する食物を探す。1回では偶然があり、2回では可能性が強く、3回では確実になる。

 2)いつも食べているものでも出ることがある。

 ◇同じ食物でも、新鮮だと出にくく、鮮度が落ちていると出やすい。

  例-さばによるじんましんは、とって30分以内に食べるとまずできない。

 ◇同じ食物でも、身体の調子が良いとできず、かぜをひいたり精神的に落ち込んだりして、調子の悪い時にできる。

 ◇原因食品を食べてからじんましんが出来るまでに、早いと20分から2時間位で、(早発反応-これが大部分)、遅いと6~8時間(遅発反応)かかる。まれに24時間以上してから出る(遅延反応)ことがありますが、その場合はまず原因は分からない。

 ◇また初めて食べた時には出ず、2度目から出るか、繰り返し食べている内に、出きる。

 3)物理的刺激によって起きることもある。

 寒冷、温熱、日光、水性、機械的刺激、ストレス等によるものも少なくない。じんましんが出ている時に、きついジーパンをはいたりすると、その刺激で、出ることがある。

  • 5.慢性じんましん

☆3~6ヵ月以上続くものを、慢性じんましんと云います。慢性タイプのじんましんには、物理的刺激やストレスによって起きるものが多い。じんましんが始まった頃にあった、ストレスを探し、それを無くすことが第一。割に長引くじんましんは、かゆみが、それ程ひどくないので、がまんしているとおさまってしまうことが多い。でも繰り返し出る。かゆくなければ、上手につきあって下さい。必ずその内におさまります。もちろんストレスがなくなれば、じんましんが出なくなる。

 ストレスの原因を見つけるのが大変です。子どもは見つけやすいですが、大人は難しいし、それが夫や妻とか両親とか身内だと、判っても解決しません。

 


アトピー性皮膚炎をこころで治す ー2-

2022-05-26 17:57:39 | アレルギー疾患の精神身体医学

  アトピー性皮膚炎をこころで治す  ー2-

            アトピー性皮膚炎の治療

アトピー性皮膚炎の治療は、

 皮膚の治療と 繰り返して起きる発疹を予防することの二つです。

〇皮膚の治療は

第一は、ステロイド外用薬で治すことです。ステロイドによる、かゆみと炎症の治療です。

 1)外用ステロイド剤の使い方

 2)ぬり薬の使い方

 3)外用薬ごとの使い方

         以下に書きましたので参照してください。

 4)アトピー性皮膚炎の子どものスキンケア

 5)アトピー性皮膚炎の診断

 6)こころで治すアトピー性皮膚炎

          これらは前回述べました。

第二は、かゆみをおさえること。かかないようにすることです。

 それには第二世代の抗ヒスタミン剤、特に世界的には、ロラタジンの有効性が認められています。安全性、非鎮静性もあります。

 その次は、フェキソフェナジン、エピナスチンです。

 7)鼻水とかゆみの治療の話 (前述参照)

 

〇かゆみの原因は、いやなことをがまんしているからです。こころの原因から、かゆくなり、かゆいから書くので湿疹がてきます。

 だからその原因、つまり嫌なことを無くしてあげることが大切です。それがストレス対策です。大人も同じですが、大人のストレスはなかなか無くすことができません。子どもはそれが比較的容易に無くすことができるので、病気を治すことができます。

 

〇次々と発疹が出てくること、つまりかゆみを予防するのが、ストレス対策です。

 乳児のストレス対策は、喘息様気管支炎と同じです。  幼児は、家庭と保育所、幼稚園

  特に3歳からの幼稚園は、すべての子どもに適応できる訳ではなく、ほぼ大部分の子どもが適応できるのは4歳からです。だから3歳からでは適応できない子が出ます。

  また、今までの経験から、

  保育園で、子どもは「這い這い」してからでないと「立って歩いては」いけないと、つかまって立とうとする子どもを押さえつけて這い這いさせられていた子、

プール:顔を水につけるのが嫌、つなみの映像を見てしまったための水の恐怖、剣道:園長が週二回剣道を教えていて、うまくできないで叱られてばかりいる子、それを見ていて可哀想で仕方ない子、どちらも病気になりました。

小学校:友だちのいじめ、教師のいじめ、家庭でのストレス

中学、高校も同じ

 

 1) 外用ステロイド剤の上手な使い方

外用ステロイド剤の副作用をおそれるあまりに、ステロイド剤を使わない傾向が出てきています。では外用ステロイド剤を使わないで治るのだろうか。治ることは治りますが、その条件は一切かかないこと、触らないことです。しかし、かゆいのをがまんできるでしょうか。大人でもがまんできず、かいてしまします。かくと折角治りかけていたのに、また元に戻ってしまいます。ステロイド剤のおかげで、かかないで済むようになると、自分の力で治っていくのでするだから、使わないと治らないことが多く、早いうちに使うと早く治ります。しかも、ステロイド剤ができたおかげで、治るようになった病気も少なくありません。

 例えば、包丁は料理に欠かせない道具ですが、人を殺したり傷をおわせたりする道具でもあります。外用ステロイド剤も同じで、大変よく効く薬だが、使い方を間違えると危険な薬でもあります。使い方を良く知っていれば、それ程恐れることはないが、安心しきってもいけません。そもそも副作用の無い薬はないし、よく効く薬ほど副作用も多い

 大切なことは、第一に、よく薬のことを知って、上手に使う使い方のコツを覚えることです。その為には、第二に、上手な医師にかかって、上手なぬり薬による治療法を教えてもらう。軟膏の使い方や、日頃のスキン・ケアの仕方を詳しく教えてくれます。私もしますが、よくならない時は、良い皮膚科医をご紹介します。少し遠くても、一度かかって見て下さい。違いが判るはずです。

 第三に、皮膚に今できている湿疹や皮膚炎などの症状を治すのは、ぬり薬ではありますが、基本的には自分の力で治っているのです。しかし、根本的に病気を治すことはぬり薬ではできないです。それは、ぬり薬では、次々と湿疹が新しく出来てくるのを止めることはできません。アトピー性皮膚炎に限らず、慢性的に繰り返し起きてくる病気は、ストレスが原因であることが多いと言うのが、私の病原環境論(適応説)という仮説です。ストレス対策は、別に教えます。劇的に効くことがあります。

1.外用ステロイド剤とは、

 副腎皮質ホルモンの外用薬で、その内、皮膚に使うものは、軟膏、クリーム、ローションなどがあります。効き目の強さ(抗炎症作用)に応じて、「最強」、「より強い」、「強」、「中」、「弱」の5段階あります。それぞれ、体の部位で吸収率が異なるし、病気の種類や症状の強さによって、使い分ける。それが上手なのが腕の良い皮膚科医です。医者の誰もが、それができる訳ではないが、しゼの治癒力があるので、治ることが多い。同じ薬でも、使い方で変わることがあることを知っておいて下さい。何にでも効くというものは、むしろ特定のものには効かないようです。

2.外用ステロイド剤の副作用

副腎皮質ホルモンは、外用の方が内服薬に比べたら副作用としてはずっと少ないが、長期間(2週間以上)にわたって、全く同じ場所にぬり続けると、皮膚局所の副作用が出てくる。

☆局所の副作用

多毛と皮膚の委縮(皮膚がうすくなってしまう)――これが第一段階。

ステロイド潮紅(皮膚がうすく、血管がすけてみえる為、皮膚が赤みを帯びる)

毛細血管拡張(血管がういて見える)

ステロイドにきび(顔)

毛のう炎・せつ(皮膚の細菌感染)、皮膚真菌症(かびの感染)

酒さ様皮膚炎(酒を飲んだように赤くなる、にきび様皮疹、潮紅、毛細血管拡張が混在するため。数カ月連用した時に起きてくる。)

3.どう使うか。

1)急性の病気、一時的な病気――かぶれ、ただれ、接触性皮膚炎、軽い湿疹、虫刺されなど。ただし、おむつのあたる部分や首のくびれている所、わきの下はぬらないこと。

 まめに1日3回以上ぬり、早く治すこと。早ければ3~4日で治るが、遅くとも7日くらいならぬっても構わないが、7日たっても治らない時は、必ず見せて下さい。よくならない時には、それ以上続けずに、薬を変えるか、ぬり方や治療方針を変えた方が良い。

 副作用が恐いからと、1日1~2回とか、ぬったりぬらなかったりしていると、なかなか治らず、かえって長期間ぬり続けることになってしまう。

2)慢性の病気、長引く病気――アトピー性皮膚炎、慢性の湿疹、痒疹(かゆい盛り上がった長引く湿疹)

 軽い場合には、急性の場合と同じように、短期間で治して、赤みが完全にとれたら(皮膚炎、湿疹がなくなったら)、保湿剤を使う。少ししかよくならないのに、よくなったと判断する方が少なくありませんので、できれば見せて下さい。(百聞は一見にしかず)

 まめに薬をぬって、早く(できれば7日くらいに)治して、休薬期間を4日以上とると、その間に皮膚が回復して、またぬることができる。

 慢性の病気は、折角ステロイド剤でよくしても、次から次へと当てらしい湿疹が出てくるので、これを止めるには、その原因であるストレスを無くすことが必要である。

 しかし、これがなかなか難しい。これができない為に、薬だけに頼るから副作用が出てくる。

3)内服療法の併用

 特に、夕方から夜にかけてが、かゆく、特に寝ている間に無意識にかいてしまうことが多い。かきむしると血が出る程かいてしまう。夜かくのが止まらない場合は、第二世代の抗ヒスタミン剤(俗に抗アレルギー剤などとも言うが)をかゆみ止めとして飲ませて、かゆみをおさえてあげるしかない。「かくな」というのは無理で、かゆみを止めることで、かかないと、どんどんよくなる。第一世代の抗ヒスタミン剤(鼻水の薬)は、副作用として神経系の抑制作用があり、眠気と集中力の減退で、30%くらいの人に見られ、世界的には、短期間ならよいが、長期には(まんぜんと)使ってはいけないという流れになっている。第二世代の抗ヒスタミン剤(抗アレルギー剤)の中でも、一番神経系の抑制の少ない薬にする方がよいが、人によっては効きが悪いことがある。

                              

     2) ぬり薬の使い方

  1. ぬる前の注意は

   湿疹やカブレの部位をきれいにしてから、やさしくぬってください。泥や食べ物などの汚れを、よく洗い落とすか、ふき取るかしてからぬればよいのです。

  1. 一回にぬる量は

普通の湿疹やカブレには、山盛りにぬる必要はありません。指先や手のひらで、軽く数回こすって表面に残らない程度にぬって下さい。

3.一日に何回ぬればよいですか。

  症状のひどい時には、少量を回数多く(一日最低三回)ぬり、症状が良くなるに従って、ぬる回数を減らします。

 ぬり薬の種類によっては、一日一回ぬれば良い物もあります。

4.強くこすったほうが良く効きますか。

 強くこすると、刺激になりよくありません。薬は軽くぬりこむだけで、よく皮膚に吸収されますので、強くすりこむ必要はありません。

  1. ぬり薬のやめ方は

 自分勝手にやめたりしないで、必ず医師か看護師に相談してからにしてください。自分で治ったと思っても完全に治っておらず、再発することがあります。

 自己責任でやめてもよいですが、できれば他の人にも見てもらってからにして下さい。

6. 薬の置き場所は

 薬は、子どもがいる場合は、子どもの手の届かない所に置くべきです。

 また、よくテレビの上に薬を置く方がいますが、効き目が悪くなるものもありますからやめましょう。

7. お風呂に入ってもよいですか。

 お風呂に入ってもかまいません。湿疹やカブレのある所に、汚れが残っていると悪化します。いつも皮膚をきれいにしましょう。高齢の方は、週一回でもかまいません。

  1. お風呂の後も薬をぬるのですか。

 お風呂の後こそ、是非薬をぬりましょう。こういう時に薬をぬると、傷んだ皮膚の回復を助けることになり、薬の効果も、一層よくなります。

9. 薬用石けんを使ったほうがよいですか。

 湿疹やカブレなどは、バイ菌による皮膚病ではないのですから、殺菌剤の入った薬用石けんを使う必要はありません。

10. パウダーを使っても良いですか。

 パウダーを使う必要はありません。パウダーを使うと、かえって、パウダーが刺激になったり、塊になったりして症状を悪くすることさえあります。今は、パウダー類を皮膚には使わない時代です。日本では今の成育医療研究センターの前身の国立小児病院が最初にできた頃から、使わない方が良いことが判り、初代の山本一哉小児皮膚科医長が提唱しました。 

 

3) 軟 膏 の 使 い 方   ―外用薬ごとの使い方ー

 Ⅰ.ステロイド軟こう類

1.リンデロンV軟膏、フルコートも同じ。5g

 ステロイド軟膏で、5段階の真ん中の強さの軟膏である。

◇ステロイドなので、

 ①炎症(赤く腫れ痛い)をおさえ、かゆみをやわらげ、症状を治す力が強い。

 ②細菌、かび(真菌)、ウィルスなどの栄養になるので、細菌性のものやかび、ウィルスによるものには使うと悪化する。

 ③2週間以上の長期間連用すると、副作用(皮膚の萎縮、紅潮、毛深くなるなど)が出る。続けて使う場合は、まめにぬって早く治し、多少のびてもよいが、できるだけ7日以内(最大14日)におさえる。4日休薬すれば又使える。ただし、皮膚の同じ場所にぬり続けることであり、違う場所ならばよい。

◇適応:主に体や手足の湿疹、痒い湿疹、皮膚炎(かぶれ)、手の湿疹、赤くなった所や、赤い湿疹によく効く。顔には使ってはいけないが、使う場合は短期間にする。

◇使ってはいけないもの:うみをもったり、化膿した所。とびひ。イボ、水イボ。傷やけが、潰瘍、深いやけど。水虫(白癬)。鼻の穴、口や唇、目、お尻の穴など粘膜にはつけてはいけない。耳やうなじなど髪の毛のつく所も避ける。皮膚のいろいろな傷にもつけてはいけない。但し、例外があるので、医師の指示による場合を除く。

2.リンデロンVG軟膏ベトノバールG軟膏。5g

リンデロンV軟膏(ステロイド)にゲンタマイシン軟膏(抗生物質)を混ぜたもの。

◇副作用はリンデロンV軟膏と同じ。

◇特徴は、ステロイドだけだと困る化膿しやすい場所や粘膜に使えること。化膿しかかった所も、その状況によって使えること(無条件ではないので、注意が必要)。また一時的には、リンデロンV軟膏と同じに使うこともできる。

◇適応:虫刺され(但し、かきこわした傷の場所をさける)。唇、お尻の穴の周辺部、おちんちんや外陰部など粘膜の腫れ、鼻の周辺(中は一時的だけ)。

 ひっかいた小さいかき傷でも、化膿していない時や乾いている時は使える。

湿疹の中で、化膿しやすい場所にあるもの(耳の周囲、うなじ、髪の毛の中の湿疹)。日焼け。

◇使ってはいけないもの:うみをもったり、化膿した所。イボ、水イボ。傷やけが、やけど(状態により一部の治りかけのものに使うことがある)。水虫(白癬)。鼻の穴の中(例外あり)、お尻の穴(外側の皮膚は使ってよい)。

3.ロコイド軟膏、キンダベート、アルメタも同じ。5g、10g 

 リンデロンV軟膏よりも1ランク弱いステロイド軟膏で、主に顔の湿疹に使う。体の湿疹でも軽く弱いものには効くが、少し炎症が強いと効果が少ない。

 しばしば非ステロイドのコンベック軟膏などと混ぜて、さらにうすくして使う。副作用と、使ってはいけないものは、リンデロンV軟膏に同じ。

4.ネリゾナ軟膏。フルメタ、マイザー、トプシム、テクスメテンなど。

 二番目に強いステロイド軟膏。強いから、皮膚の同じ場所への塗り続けることは、2週間で止めること。よく効くからかゆみも止まるが、副作用も強いことを忘れずに使うこと。適応や使ってはいけないものは、リンデロンと同じ。

☆ステロイド外用剤の経皮浸透、経皮吸収率

 前腕内側を1.0として、

 頬 13.0、 前頸部6.0、腋窩(脇の下)3.6、陰部(特に陰嚢)42.0

 頭皮 4、 背中 2~3、前腕外側 1.5、  

 手掌 0.83、足首0.42 足底0.14

 だから、顔や首、脇の下、外陰部には弱いロコイド軟膏などのステロイドを使う。

☆皮膚病変の種類や、頭髪部などの場所にはローションを使うなど、軟膏、クリーム、ゲル、ローションを使い分ける必要がある。

 軟膏はすべての皮膚症状に適応します。それで私は軟膏を使います。

☆ステロイド軟膏の強さ

1 弱い    プレドニゾロン、テラ・コートリル、オイラックスH、強力レスタミンコーチゾン、クロマイP、

2 中等度   ロコイド、キンダベート、アルメタ、リドメックス、レダコート、デカドロン、

3 強力    リンデロンV、フルコート、ベトネベート、メサデルム、デルモゾール

4 かなり強力(次強) トプシム、リンデロンDP、アンテベート、ネリゾナ、マイザー、フルメタ、テクスメテン、バンデル、

5 最強   デルモベート、ダイアコート、ジフラール、

☆ぬり薬の使い方-2

1) 軟膏、クリーム、ローション、ゲルなどの使い分け方

○軟膏はどの状態の皮膚にも使えます。のばしやすいことと、少量で使いやすいこともあり、私は好んで軟膏を使っています。

○クリーム、ゲル、ローションなどは使用する皮膚の患部の状態により、使い分ける必要があります。皮膚科専門医は知っていると思いますが、内科医、内科・小児科医などは知らない医師の方が多いです。

2) 混ぜた混合軟膏を使うか、単独の軟膏を重ねてぬるか。

○混合軟膏は、残った時に他の用途に使えないこともあり、私は使いません。

混合したら、ステロイドの強さが落ちるからという医師もいますが、変わりがないという医師もいます。いらない場合にも使ってしまうので、単独の軟膏の方が使いやすいです。

○私は重ね塗りを勧めます。ステロイドを先にぬり、他の薬をその上から重ねて塗ることが多いですが、違う場合もあります。

○皮膚科専門医では、単独で重ね塗りする医師と、混合してしまう医師とに分かれています。混合軟膏に関しては使用する場所や用途に注意して下さい。限られますから。

                          

 Ⅱ 他の軟膏の使い方         

5.抗生物質軟膏

 いくつかありますが、私は副作用、皮膚の細菌への効果などを考えて、ゲンタマイシン軟膏を好んで使っています。皮膚の細菌にはこれで十分です。それ以上は小児皮膚科専門医に任せます。

ゲンタマイシン軟膏10g、ゲンタシン軟膏など

 抗生物質の軟膏。特に皮膚につく細菌によく効く抗生物質である。それで化膿している場所や、化膿しやすい場所に使う。特に、他の抗生物質に比べて、傷の肉芽のあがりがよい。最近は傷の湿潤療法と言って、消毒はせず、水でよく洗い、キズパワーパッドを貼る方法もある。この場合には、ぬってはいけない。

それで膿が出るようなら受診する。

◇適応:すべての傷、けが、やけど。潰瘍、うみや浸出液のでている場所、にきび(もっとよい別の抗生物質軟膏がある)。口唇、口の角、鼻の穴の中、お尻の穴、おちんちんの先(亀頭)、女の子の陰部(膣の入り口)にもぬれる。

 水痘の、かきこわして傷があるものや粘膜にできたもの、周りが赤く化膿した所にも使う。

 帯状疱疹(ヘルペス)に化膿止めとして使う時は、うすくぬり、べたべたぬらない。ひび、あかぎれ、手の湿疹などのひび割れ、

◇使っていけないもの:特にないが、適応以外のものには効かない。

◇傷には、きれいによく水で洗ってから、つける。消毒するよりきれいに洗うことが大切。菌を殺すより洗い流す方がよい。傷の専門は、形成外科、皮膚科。

☆ほかの抗生剤含有軟膏など

 感染が疑われる皮膚の状態に使います。子どもと高齢者では、皮膚の細菌の種類が年齢や環境によって変化しますから、違います。子どもには、ゲンタマイシン軟膏を薦めます。

 △エリスロマイシン軟膏   △アクロマイシン軟膏    テラマイシン軟膏    △フラジオマイシン軟膏     △クロロマイセチン軟膏

☆ニューキノロン系軟膏   アクアチム軟膏 10g

☆スルファジアジン銀を含む軟膏      ゲーベンクリーム 50g、100g、

6.アズノール軟膏20g

 乾燥し、かさかさした所に使う。唇がかさかさした時に使うとつるつるしてくる。皮膚に使ってもつるつるしてくる。湿疹にぬってもよいが、効果は少ない。

 湿潤した褥瘡や擦過傷にも使う。覆い隠す効果があり、膿をすいこんでくれる。

 褥瘡によく使われています。

7.亜鉛華単軟膏(チンク軟膏)、サトウザルベ軟膏

 主におむつかぶれに使う。赤ちゃんの首のくびれや脇の下などのじくじくし易い所にも使う。ぬらした布でふいてから、ぬる。少し厚くてもよい。おむつを取り替えるたびにぬる。股などの擦れる所にも使うとよい。

 副作用は少なく、ぬり続けてもよい。重ねてぬることもある。また、ステロイド軟こうをぬった上に重ねてぬり、ステロイドを保護することもある。

8.マイコスポールクリーム 10g、ラミシールクリーム10g、

真菌(カビ)用のクリーム。強いので、使用は1日1回うすくぬる。おむつかぶれのひどい時に起きるカンジダ症や、足や体の水虫(白癬)に使う。おむつかぶれの場合も一日一回ぬり、その上から亜鉛華軟膏をうわぬりする。ぬった時以外は、おむつを替えるたびにぬらしたガーゼかタオルでふいてから、亜鉛華軟膏をつける。

9.ケナログ口腔用軟膏 3g、5g

 ステロイド軟膏なので、できている場所だけに、飲食前にぬると、口内炎の場所をおおって痛みがやわらぐ。長期には使わない。

口内炎は自然に7日くらいで治りますが、痛くて食べられない時に、おおってしみないように、食べる直前にぬる。できるだけ使わない方がよいが、その時だけ使うようにすると副作用が少ない。たまに使うと悪化することがある。それは、ステロイドだから、細菌やかびの栄養になり、繁殖することがあるから。                         

10.レスタミンコーワクリーム

 ジフェンヒドラミンという抗ヒスタミン剤の軟膏で、1日数回、毎日連用してもよいです。かゆみを抑えることが主な働きですが、ステロイドには及びません。副作用としては、まれにかぶれることがあります。顔にもぬることができます。

◇かゆい所ならどこへでも使えます。ステロイド程の効果はありませんが、かゆみ止めであり、副作用も少ない。

  じんましん、手足口病、リンゴ病などのかゆみや、赤くないがかゆい所に使います。

11.尿素軟膏

  ウレパールクリーム20g、50g、ローション、ケラチナミンコーワ軟膏25g、50g、パスタロンソフト軟膏、同クリーム、ローション、

 角質化治療剤。尿素は天然の保湿因子です。角質化した(硬くなった)皮膚を柔らかくしてくれる角層柔軟化作用と水分保持作用があります。保湿剤で、水分を保ち柔らかさを保つ。角質融解剤でもあり、保湿剤でもあります。傷やひび割れにつけるとしみて痛い。湿疹には効かない。バリア機能はありません。

◇適応:乾燥してガサガサした所や、硬くなった所。角化症。毎日つけていると、つるつるしてくる。膝頭、肘の外側、かかとなどにぬるとツルツルしてきます。

12.ヘパリン類似物質含有 25g

   ヒルドイドソフト軟膏、クリーム、ローション

水分と結合して保湿効果を発揮します。水分保持作用が主です。バリア機能や角層柔軟化作用はあまりない。保湿作用と軽い湿疹や乾燥してかゆい所に効果があります。赤くなった所やかゆみ止めの効果はうすいです。ステロイドではありません。続けてぬることができます。普通は一日1~2回うすく伸ばすようにぬり、すりこまないこと。ヘパリン類似物質が入っていますが、その効能は定かではありません。

一時女性たちに人気があった薬で、顔にも使えます。手足は軟膏かクリームがよく、冬の乾燥が強い時には、ローションではすぐ乾いてしまいますから、軟膏がお薦めです。

13.ユベラ軟膏

 ビタミンEとAの入った軟膏。ビタミンの効果は疑わしいが、基剤の軟膏がよいので、保湿剤として使う。水分保持作用がある。湿疹やかゆみには効かない。あくまで乾燥を防ぎ、乾燥のためにかゆくなることを予防する薬。顔にも使えるし、ハンドクリームとしても使える。バリア機能、角質柔軟化作用は少ない。

 うすくのばして使う。ぬった後、表面に白さが残らない程度にうすく軽くのばす。

 副作用は、まれに、ぬると赤くなる(ビタミンAの副作用)人があり、なったら止める。他にはなく、何年ぬり続けてもよい。

 ビタミンEが入っているので、ひび、あかぎれ(進行性指掌角皮症)やしもやけ(凍瘡)に使う薬です。この場合は、少しこすってすりこみます。

14.ワセリン

   プロペト (白色ワセリン)、サンホワイトなど

油性の保湿剤。皮膚の表面に油膜を作ることにより、水分の蒸発を防ぐ効果があります。できるだけうすく、スクリーンをはるようにうすくのばして塗ります。べとべとしやすいから。ぬった後、皮膚の表面が少し光る程度(車のワックスがけの要領)がよい。

 副作用はほとんどないが、衣服につくとごわごわしてくる。何年ぬり続けてもよい。一日一回お風呂あがりがよい。湿っている皮膚をうすくおおうようにスクリーン状に塗る。乾燥を防ぐための薬。角質柔軟化作用が主で、バリア機能や水分保持作用はそこそこ。

15.アンダーム軟膏コンべック軟膏、10g

 非ステロイド消炎外用剤です。

 消炎鎮痛剤の軟膏で、ステロイドでないので1日数回、1か月以上連用できます。副作用はまれに、かぶれることがありますから、赤くなったり、悪化したらやめて下さい。顔にもつけることができます。軽い湿疹に使いますが、ステロイド軟膏とまぜて薄める為に使うこともあります。最近は見かけません。

16.痛み止めぬり薬

〇ゲル、軟膏、クリーム類

  ボルタレンゲル25g、50g。インドメタシンゲル、クリーム25g、50g。 インテバン軟膏10g、25g。フェルビナク軟膏25g、50g

〇スティック型   スミルスチック、セルタッチ

◇使い方

 痛み止めのぬり薬。ゲルと言ってクリーム状の薬で、1日2~3回ぬると痛みがやわらぐ。欧米では、貼り薬(湿布)より、ぬり薬が使われている。うすく伸ばして使います。すりこまないこと。べたべたつけないこと。

入浴前に使ってはいけません。しみて痛みますから。入浴後や入浴に関係ない時に使います。

◇副作用はかぶれ。また血液疾患やアスピリン喘息のある人は使用禁止。

          

                    


アトピー性皮膚炎をこころで治す

2022-05-26 10:27:17 | アレルギー疾患の精神身体医学

     アトピー性皮膚炎をこころで治す

私は長年アレルギーの原因はストレスを始めとするこころにあると考えて治療し、特にアトピー性皮膚炎は、原因を除くとステロイドを使いますが、副作用の出る限界の2週間から、原因にもよりますが、2か月以内には治せています。もちろん2週間たったら4日間くらいの休薬期間をおきます。ステロイドの使い方については、後述します。

 それで「月刊保団連」雑誌1996年7月号に取り上げて頂き、それを見た記者により「朝日新聞」1996年8月4日の「こらむ」欄に取り上げていただきました。それで長年アトピー性皮膚炎で悩んでいた子どもたちが数人来られ、いずれも2週間で治りました。その子たちはうまく原因が無くせるか、中学生の場合には私の教えた通りに心の持ち方を変えることができたのです。その男子中学生は、初診の2週間後に「自分で治した」と言って診察室に入ってきました。その通りです。自分でこころの持ち方を変えることができたのです。それで皮膚症状はすっかり治っていました。でもそれができないと良くなったり悪くなったりします。乳幼児や学童前半では、姉や兄とか、祖母や叔母さんたちが原因だとなかなか説得できず、治りません。成長して思春期になり、自分で自分のこころを変えることができるようになると、克服できるようになり、治ります。

 その後、日本消費者連盟の「消費者リポート」1997年2月7日号にも「アトピー性皮膚炎をこころで治す」という記事を書かせて頂きました。しかし、子どもが親の言うことを聞かなくなるとの投書があり、記事の継続はできませんでした。

 確かに、私の子育て法は病気にならないのですが、子どもが自立して飛んで行ってしまいます。欧米では、子どもを自立するように育てます。例えばフランスでは3歳になると、一部屋与えるように政府が政策を取っています。子どもには自分のお城が必要なのです。でも日本は違います。親の言うことを聞かせようとします。日本と韓国に発達障害(自閉症スペクトラム障害)の子どもが世界で最も多いことも、それと関係があると考えています。

   ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 を こ こ ろ で 治 す

◇アトピー性皮膚炎とはなにか アトピー性皮膚炎は花粉症と共に文明病などと言われ、近年非常に増えていますが、それと共に、乳幼児の湿疹を見るとすぐにアトピー性皮膚炎と診断する医師も少なくありません。アトピー性皮膚炎に使う軟膏や飲み薬や検査が、保険点数が高いからです。96年4月より導入された3歳未満の乳幼児の保険点数の定額制だとかえって損ですが、従来通りの出来高払い制をとると利益が多くなります。 そこで、まず診断が正しいか、日本皮膚科学会の定義・診断基準(1994)を見てみましょう。

 (私が治すというのは、早いと2週間遅くても2か月です。ただし、原因が無くならないと長引きます。それに加えて、アトピービジネスが蔓延しています。漢方でも食事療法でも短期間で治ればよいです。1年かかるのはとんでもないです。放っておけば、子どもは成長と共に環境が変わりますから、それで治ることもあります。大人は難しいです。私の方法でも、自分の気持ちの持ち方を変えられない人は難しく、その為に催眠療法を使うこともあります。)

 

◇アトピー性皮膚炎の定義は、「アトピー性皮膚炎は、憎悪・寛解を繰り返す、瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」 アトピー素因とは①気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎の家族歴または既往歴があるか、または②IgE抗体を産生しやすい素因があること。

 

◇アトピー性皮膚炎の診断基準、

1.瘙痒、

2.特徴的皮疹と分布、

①皮疹は湿疹病変 ◆急性病変は紅斑、湿潤性紅斑、丘疹、漿液性丘疹、鱗屑、痂皮。◆慢性病変は湿潤性紅斑・苔癬化病変、痒疹、鱗屑、痂皮。

②分布 ◆左右対側性で好発部位は前額、眼囲、口囲・口唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部、体幹。◆参考となる年齢による特徴は1)乳児期:頭、顔に始まり、しばしば体幹、四肢に下降。2)幼小児期:頸部、四肢屈曲部。3)思春期・成人期:上半身(顔、頸、胸、背)に皮疹が強い傾向。

3.慢性・反復性の経過(しばしば新旧の皮疹が混在する): 乳児では2か月以上、その他では6か月以上を慢性とする。

 

◇上記1、2、3の項目を満たすものを、アトピー性皮膚炎と診断する。そのほかは急性あるいは慢性の湿疹とし、経過を参考にして診断する。以下略。

 これで、簡単に言えるものではないことが判るでしょう。

 

なぜアトピー性皮膚炎になるの?

 「人はなぜ病気になるのか」というと、人間が環境に適応できない時に、遺伝的にもって生まれた身体の弱点(遺伝的素因)に病気が出てきます。だから、アトピー素因をもち、かつ皮膚に弱点のある人が、環境に適応できない時に、アトピー性皮膚炎になります。環境には、自然環境も人工的な環境も、社会環境もあります。ダニも食事も環境の1つですが、社会環境に適応できない時は、俗にいうストレス状態になった時です。これらの複数の原因が競合して病気が成立するのです。これを病原環境説といいますが、基礎医学者や精神科医に支持者が多いが臨床医にはまれです。

 分かりやすく人を川に例えて説明すれば、川の流れの両側に堤防があり、堤防に何か所かの弱点があっても、水量が少なければ水はあふれません。所が台風がきたり、大雨が続いた時に水量が増えて堤防の限界を超えると、堤防の弱い所から水があふれます。人間では水があふれた時が病気で、あふれない時が健康なのです。堤防の弱点が、人間では遺伝的素因であり(アトピー性皮膚炎では、アトピー素因と皮膚)、また人が環境に適応できない時に水が増えると考えます。

私の治療法

◇以上述べた様に、病気はいくつかの要因が競合して起きるから、その1つを無くせば病気は治っていくし、予防できます。 現代医学は身体的症状や遺伝的素因に固執していますが、私はこころの要因に着目して、そこを治すことによって、つまり川の水を減らすことによって、アトピー性皮膚炎を治すことに成功しました。つまりストレス対策によって、次から次へと出て来る皮疹の発生を抑えることができました。もちろん、難治性の子どももいます。その原因としては、子どものもって生まれた気質と、生後培われた性格と、家庭環境や社会環境によって決まってきます。基本は、いやなことはしないし、させないことと、どうしても仕方のないことは「まあいいや」とくよくよしないようにさせることです。

◇現在できているアトピー性皮膚炎の皮膚症状の治療の基本は軟膏療法で、中でもステロイド軟膏は最も有用で重要な薬です。 これを上手に使うことを患者や家族に覚えてもらい、患者の生活環境を改善し、上手なスキンケアをし、痒みを抑えることが大切です。軟膏療法だけで痒みがおさまらない時は、抗ヒスタミン剤などの飲み薬を寝る前に併用すると効果があることも多く、問題はいかに痒みをコントロールできるかにかかっています。

 ステロイド軟膏恐怖症の人も少なくないが、今できている皮膚症状を治すには、ステロイド軟膏は有力な味方です。ステロイド軟膏は、例えて言えば包丁の様なもので、包丁はお料理に欠かせない道具ですが、日本では殺人ための有力な道具でもあります。ステロイド軟膏が問題なのではなく、その使い方が問題なのです。副作用を知り、上手な使い方を心得ることで副作用を減らしていくことがポイントです。

 

どうすればいいの

 

環境の改善

 食事制限で治るのは2~3%と見られ、基本的には食事制限は不要です。乳児の場合は、アトピー性皮膚炎があれば、1歳迄卵は与えず、1歳過ぎたら卵黄だけ硬ゆでで与えることと、牛乳は沸騰させてから飲ませるように勧めています。

 衣服は、冬は乾燥を防ぐために、長袖長ズボン着用を薦めます。住宅環境は、清潔にするのはよいが、神経質にならず、夏の高温多湿や汗を防ぐクーラーの使用や、冬の乾燥と強すぎる暖房をさけるように薦めます。 入浴時の石鹸による脱脂や垢すりは避け、特にナイロンタオルやボディブラシはいけません。

 

ストレス対策

a乳児-いい気持ちに

 赤ちゃんをいつも「いい気持ち」にしてあげると母親の愛情を感じるし、病気をしません。 赤ちゃんに「気持ちがよくない」状態があることが原因ですから、その原因を見つけてなくすと病気は治ります。赤ちゃんが何かをいやがっているが、泣くほどいやではないことがあるのです。

 その原因の第一は、周囲の人が抱いたり触ったりしていることが一番多い。間違ったスキンシップ論が横行しているために、赤ちゃんを触ると良いと思っている母親が多い。しかし人は、のべつ触られるのは嫌なものです。男が女性を触るのと一緒だよ、と説明すると母親は判かってくれます。生後2~3か月の赤ちゃんは、それだけで治ることも多い。

でも、二世代以上の大家族や、第2子以後の子どもの場合には、祖父母に赤ちゃんに触るなと言っても聞き入れてくれないし、上の子に言っても聞き入れてくれないから難しくなります。第2子以後の場合は、上の子が赤ちゃんを生きているおもちゃにしてしまい、退屈すると赤ちゃんの所へ行って、可愛がってあげると称して、頭や手やからだを触るのです。赤ちゃんは泣くほど嫌ではないから泣かないが、目をへの字にして「いやだな」という顔をしています。これをやめさせるのが、なかなか難しい。上の子を叱ると赤ちゃんに仕返しをするから、叱ってはいけません。叱らずに、上の子が興味をもちそうな他のことをやらせて、赤ちゃんから離すのです。赤ちゃんから離れたら、それとなくほめておく。それができなければおんぶしたり、高いベビーベッドに入れたりして、手が届かなくします。

 予防の方がやさしく、子どもに赤ちゃんを1度でも触らせないことです。そのために女の子にはベビー人形を与え、その子の赤ちゃんを作ってあげます。 男の子は、とにかく赤ちゃんに触ってはいけないと教え、家族もできるだけ触らないようにするしかありません。

 

b幼児-イヤを言わせる

 保育所や幼稚園に行く様になると、さらに大変です。保母さんや友達との関係が入って来るからです。保育所や幼稚園で何か嫌なことがあった時に、がまんをさせてはいけません。いやなことは「いや」と言わせ、どうしても言えない時は、「しょうがないや。まあいいか。」と思うようにさせることです。

 お昼寝がいやな子、給食が食べられない子、プールが嫌いな子、どろんこ遊びが嫌な子、楽器が嫌いな子といろいろです。

 

c小・中学生-イジメに注意

 第一にいじめを見逃してはいけません。次に勉強嫌いや、塾、ピアノなどの習いごと、スイミングやサッカーなどのスポーツがあります。やりたいと言って始めたから最後までやりなさいと言う親が多いが、嫌になったら何時でもやめましょう。家庭での不和が原因の子もありました。いずれにせよ、体質的な要素プラス環境(多くはストレス)で起き、環境(ストレス)を変えることで治ることを判って頂ければ幸いです。  黒部信一

 

 

 これは日本消費者連盟発行の「消費者リポート」1997年5月17日号に載せていただいたものです。

 そうしたらある薬剤師から反論がありました。「心で治すなら、ステロイド剤を使わずに治してほしいです。私はステロイド剤を使わずに食事療法で治しています」と。

 ステロイド剤を上手に使って、短期間に治すことが良いと思います。最短で2週間で治してきました。それはこころの効果です。赤ちゃんは周りの大人を説得することです。ある中学生は、私の話を聞いて2週間後に「自分で治した」とやってきました。すっかり治っていて、私の話した通りに自分の気持ちの持ち方を変えたのです。それでステロイドも不要になったのです。食事療法とか漢方とかで治すと言いますが、半年や一年が普通ですが、私の方法だと、早ければ2週間、少し遅いと1か月ないし2か月で治ります。

 また食事が原因なのは2~3%というのは、皮膚科医も小児科学会でも言われていることです。

   ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 に つ い て 

  • 1.アトピーとは何か

 アトピーとは、アレルギ-性の病気の中で、家族的に多い時にいう。

 アトピー的背景のあるものは--気管支喘息、アレルギ-性鼻炎(花粉症)、アレルギ-性結膜炎(眼瞼炎)、アトピ-性皮膚炎、じんましん。

 アトピー性皮膚炎を起こすのは、遺伝子プラス環境要因で、私は病原環境論または適応説。誤解を招くが判りやすく言えばストレス説。だから、先進国に多く、発展途上国に少ないが、発展途上国も社会経済が発展すると増えていく。(別稿の「アトピー性皮膚炎をなおすこころ」、「人はなぜ病気になるのか」もお読み下さい。)

  • 2.アトピ-性皮膚炎の治療

 1)合併症の予防

 合併症--かきこわして化膿したり、幼児ではとびひになったりする(ブドウ球菌、β溶連菌、単純ヘルペス)、まぶたが黒ずむ(色素沈着)、円錐角膜、白内障(成人)

 2)治療のこつは、かゆみをおさえてやること

 かゆい--ひっかく--かくから悪くなる--悪くなるから尚更かゆい-の悪循環をとめること

 特に風呂あがりや、寝て暖まるとかゆくなる。寝ている間に無意識のうち にかいている。その為には

 1.かゆみやひっかく引き金になる物をさける(食餌、接触する物や環境要因)爪を切る。お風呂に入った時、暖まらない様にする(熱い風呂を避ける)。

 2.食事

 かゆみを悪くするものは避ける-余り制限しすぎると栄養不良になる。皮膚のかゆみを誘いやすい食べ物は--山いも、くわい、たけのこ、さといも、まつたけ、なす、さんま、たら、塩さけ、かれい、そば、ほうれん草。 鮮度が落ちるとイカ、タコ、エビ、カニ、アサリ、ハマグリ、スズキ

 3.環境のコントロ-ル(室内)--

 部屋が高温、高湿にならないようにする-除湿器、エアコン、暖房-

 温暖な気候と適当な湿度が最も良い--

 日光と海水は大半の患児に良い効果がある。汗はかゆみを誘い悪化するのですぐに濡れたタオルで拭くか、シャワー

  をあびる

 4.接触する物で皮膚を刺激するものを避ける

 犬や猫、小鳥、ペット類の毛(飼わない方がよい-特に家の中で)敷物、毛布(カバーをする)、寝具(枕、掛け布など)ぬいぐるみの人形、クッション、じゅうたんなどを除去。乳児は毛の敷物の上をはってはいけない。

 5.乾燥を防ぐように着衣する。上着は羊毛を避け、木綿が良い。毛や合成繊維や金属製品(ネックレスなど)が肌に触るとかゆくなる。

 

 3)薬物療法--ひっかくことを制御できなければ病気を克服できない

 1.ユベラ軟膏、ウレパール軟膏、白色ワセリン--保湿剤

  皮膚につけるオイルやクリ-ムの目的は、皮膚の中に水分を封じ込めることで皮膚のかゆみを防ぐ--かゆくなる前につけるのがコツ

 2.ステロイド軟膏---副作用--多毛になる、皮膚萎縮

  皮膚のかゆみをおさえ炎症を治す。1日3回つける(朝、夕方、風呂上がりまたは寝る時)。それ以外でもかゆくなったらすぐつける。つけて30分がまんすれば(冷たいタオルか氷をビニールにいれて冷やす)かゆみがおさまる。

  副作用を防ぐにはこまめにつけて早く治して(2週間以内)、4日以上休薬期間をつくること。ステロイド軟こうの使い方の詳細は、別紙をご覧下さい。

 3.かゆみをぬり薬だけでコントロールするのは難しい時は、飲み薬を併用するとうまくいく。1日1回(寝る時)または2回(朝も)飲む。抗ヒスタミン剤(第一世代と第二世代)と鎮静剤の内服(特にレスタミン、アタラックス、ピレチアが効果が大)。抗ヒスタミン剤による眠気は続けていると減少するが、ひどければ量を減らす(半分にする)か、第二世代の薬で眠気の少ないものに替える。かゆくてがまんできないときは、氷で冷やすこと。

 最近は、多くの皮膚科や小児科で抗アレルギー剤(実は第二世代の抗ヒスタミン剤)を出すが、アレルギーを治す効果はなく、かゆみをおさえる効果がある。

 4.感染には抗生剤を飲む。

 4)予防

 気管支喘息やアトピ-性皮膚炎のある家族に生まれた乳児には、母乳をすすめ、離乳食のうち特に卵、大豆、魚などを避ける。卵は1才迄は与えないで、1才から硬ゆでで黄身だけ。白身は2才以後。牛乳については確立されていないが、効果が見られることもあるので、できるだけ開始を遅らせ、生牛乳は避け、一度ふっとうさせる。

 アトピー性皮膚炎のできている子は1~2週牛乳をやめてよくなるかを見るのも一つの方法です。

 アトピー性皮膚炎と食事の関係は、一部に認められる様ですが、卵と牛乳以外は証明されていないし、大多数は関係がないです。よくならないのに2週間以上食事制限を続けてはいけません。そのために栄養バランスがくずれる子どもが増えています。

 

  • かゆいのを我慢しろというのは無理。かゆみを抑えるこつを心得ること

 

    アトピー性皮膚炎の子どものスキンケア

 

◇1.入浴は毎日させていますか。

 子どもは大人と違って、夏はもとより冬であろうと、皮膚が汗や、汚れにまみれていますから、それをそのままにしておくことが、皮膚の病気すべてにとって悪いので、毎日お風呂に入るか、シャワーをあびるようにする方が子どもの皮膚には良いのです。

 

◇2.入浴の時に石鹸を使っていますか。

 石鹸は何を使っていますか。こする道具は何を使っていますか。

 効率よく汚れを洗い流すためには石鹸を使うのが一般的でしょう。最近の皮膚科の学会の報告では、アトピー性皮膚炎の子どもに石鹸を使用しても悪化させることはないと言います。石鹸はできれば低刺激性石鹸が良いのですが、高価なので、普通の石鹸でも、使って見て悪くならなければ差し支えないようです。

 石鹸の問題は、むしろ、石鹸を使って洗う道具と、入浴後のスキンケアにあるといいます。合成繊維の洗い布や、垢こすり、たわしなどでこするのは、子どもにはよくないし、大人でも湿疹や皮膚炎などができている場合は、かえって悪化させるのです。やわらかいタオルかガーゼに石鹸をつけて、軽く汚れを洗い流すのが良いのです。最近は、手でこするのが一番です。物でこすると、目に見えない傷がつく可能性があります。傷がつくと、外部からの侵入に負けてしまいます。

 

◇3.入浴後のスキンケア

 第一は、お風呂から出たらすぐすることは、外用剤(ぬり薬)を十分に正しくつけることです。

 第二は、お風呂から出たらほてりをさますことです。むしろ余り熱いお湯には入れない方がよく、ほてっていなければすぐパジャマを着ても汗をかかずにすみます。少しぬるめがよく、入った時に子どもが、熱くではなく、気持ちよく感じる温度がよい。

 「湯冷めをしてはいけない」という、こどもにとっては悪い『常識』を、小児科医すら平気で口にするのには困ってしまいます。その為、入浴後早く寝かせる傾向が広く行われています。身体が暖まった状態でふとんの中に入ると、痒みがひどくなることと汗をかくことで、いずれもアトピー性皮膚炎を悪化させる原因になります。また汗が冷えると寒くなり、鼻水が出たりしてこれもよくありません。

いずれにせよ暖かいと、かゆくなり、その為に寝てからかいていることが多いです。

 

◇4.海水浴はアトピー性皮膚炎によい。

 海水浴をわざわざすることもありません。楽しければ、して下さい。でも、日焼け防止をして下さい。

 海水浴はアトピー性皮膚炎によいということは、大分知られてきましたが、最近白人では10才以下では紫外線を浴びる量を減らす方向にあるようですので、色の白い方は余り紫外線を浴び過ぎない方が安全です。40年余り前に、東北大の皮膚科教授が、

日本でも子どもに紫外線対策を教えなければいけない時代になったということで、私も「紫外線の話」を書きました。紫外線に対する強さは皮膚の色により、黒色、褐色、黄色、白色、白色(ケルト系)の順に弱くなっていきます。日焼けしてしみやそばかす、

しわのできる家系は、できるだけ日焼けしないようにしてください。

 日焼けは、しみ、そばかすを作るだけでなく、発癌を促進し、皮膚の老化を早めますから、早くしわがふえます。

 

◇5.毎日洗髪してよいですか。

 毎日シャンプーを使って洗髪をしていて、悪くなることはないようです。むしろ頭に湿疹がはなはだしい人は頭を洗う回数が少なく、洗う時に何も使わないことが多いと云われています。

 頭を清潔にしたら、薬も落ちている訳ですから、洗髪後に頭髪をタオルで水分をふいてから、ドライアーを使わずに乾かして、外用剤(ぬり薬)をつけておくのが良いのです。

 

◇6.石鹸で顔を洗っていますか。

 自分で顔が洗える年齢では、どのように洗っているか、その回数はどうか確認して下さい。水をちょっとつけるだけですませるこどもが多いのです。少なくとも、入浴時には、石鹸を使って十分に洗顔させて下さい。

 乳児では、生後2ヵ月位までは皮脂腺機能が亢進しているので特に念入りに洗顔して下さい。目は涙の流れに沿って、目の外側から内側に向ってふきとるようにする。

 口の周りは食物などにより汚れるので、毎食直後に、水かぬるま湯でしぼった軟らかいガーゼかタオルでふきとり、直後に薬をぬって下さい。

 

◇7.耳切れがあるか。

 耳切れはアトピー性皮膚炎のこどもに多いですが、これがあったからといってアトピー性皮膚炎とは言えません。むしろ手入れをしていない為に切れてくるので、スキンケアをしていない症状の一つと言えます。

 毎日、朝と夜の顔を洗う時に、一緒にふいて下さい。

 首の後(項部)と前頚部のしわの部分の手入れをしていますか。

 前頚部のしわの部分は深くくびれている為に、赤くなったり、ただれていたりしていることが多いものです。

 頭髪がただれや化膿の原因になっていることも多く、耳に髪の毛がかからないようにするのが良いです。髪の毛は、汚れやすく、そこから化膿する原因になりかねません。

 

◇8.身体や脇の下をかゆがりますか。

 1才過ぎる頃から肌が乾燥し、乾燥する冬や、汗をかいて高温多湿になると痒くなり、かきむしり悪化します。特に肩、脇の下、側胸部、ひじの内側、膝の裏側が著しい傾向があります。入浴後に保湿剤をぬるだけでも効果があることが多く、湿疹ができていれば、かゆみを取るために外用剤が必要です。肌着はランニング型よりTシャツ型の方が痒い場所を覆っているのでよい。

 

◇9.水泳はしてよいか。

 水泳はして構いませんが、水泳後必ずすぐスキンケアをして薬をぬっていればよいです。ぬらなくて、はだが乾いて、痒くなってかくと悪くなります。水泳後は必ず薬をつけるようにしましょう。これがなかなか難しいです。

 水泳をすると良いと言うのはうそで、わざわざさせることはありません。

 

◇10. おねしょをしますか。もししているのなら、朝どうしていますか。

 おねしょをしているのに、乾いているからとぬらしたタオルでふかないでそのまま下着を着せてしまうと悪化します。必ずきれいにぬらしたタオルでふいて下さい。

 男の子は、おしっこをする時におちんちんをふって尿を切るようにすることが必要で、していないと陰嚢に湿疹ができやすいです。

 またお風呂に入った時には包皮(おちんちんの皮)をむいて洗うようにして下さい。

もちろん、女の子もおしっこが出る部分や膣の入り口周辺をお風呂に入ったら洗いましょう。昔、処女膜などと言ったのは、汚れたままでいて、炎症を起こし、それが治る過程でくっついてしまったからではないでしょうか。

 

◇11. 肘や手首は薬を何回つけていますか。

 手の湿疹が治り難いのがこの病気の特徴です。お子さんが毎日の生活の中で手をどのように使っているか、そして手をぬらしたり、汚れたりした時に、どうしているかによって大きく左右されます。

幼児が土いじりや砂遊びをするのは当たり前で、これを禁止しない方がよい。むしろ、湿疹が悪化しなければ、手入れがうまくいっていると考えた方が良い。その為には、土いじりをする前に、保湿剤や軟膏などをぬって、皮膚を保護し、汚れたら落とし、幼稚園や保育園から帰ってきた時に、しっかり汚れを落として、やはり保湿剤などをぬっておきましょう。

 手のスキンケアの基本は、汚れたら洗い、指の間まできれいにふき、その都度必要なぬり薬をつけることにあります。手を洗っても、ぬらしたままにしておかないことが、ポイントです。こどもの手が汚れたら洗い、よくふいて、薬をつけることを、まめにできるかどうかが鍵です。そこで保育園や幼稚園にいる時や祖母に預けている時にそれができるかどうかも大切ですが、他人に頼むことだから余り無理せず、悪くならなければ良い位を目標にしておくと、達成しやすい。

 爪はまめに切り、汚れていたり、土が入っていないようにしておくことも忘れずにして下さい。

 

◇12. 足の湿疹は、どのように手入れをしていますか。

 そけい部(ふともものつけ根)、膝のうら、足首などがひどくなりやすい場所です。また足背や足のうら、足の指(特にうら側)にも、手と同じような湿疹ができますが、しばしば見逃されています。足の指の間に砂がついている幼児も少なくなく、足のうらが土で真黒な子もよくいますが、足もズック靴も汚れたら洗っておかないと、なかなかよくなりません。

 

◇13. アトピー性皮膚炎は治るか

 アトピー性皮膚炎は、もともと乾性の皮膚の人がなりやすく、肌を上手になだめすかして、思春期になるのを待つのです。思春期には皮脂が多くなり、皮膚がちょうどよく湿潤してくるので、治ることが多いようです。だからにきびは少ない様です。

 

◇14.アトピー性皮膚炎の人や、その傾向をもった人は、40歳代半ばを過ぎると肌が冬乾燥しすくなり、保湿剤を使って乾燥を防ぐことが必要になります。更に、高齢になると、皮膚を保護する皮脂が出なくなり、老人性掻痒症とか、乾皮症、皮脂欠乏症などと言われ、木枯らしが吹く頃から、春一番が吹くころまで、保湿剤が必要になります。しかし、これは親の守備範囲ではありません。

 

       ア ト ピ ー 性 皮 膚 炎 の 話  補遺

1.アトピー性皮膚炎が「治る」とは、皮膚の湿疹が全くなくなるか、あってもほとんど気にならない程度にわずかになり、保湿剤だけでおさまることである。乳児では早ければ1週間以内に治る。ところがすぐ再発して、2~3か月前後から、治らずに1年以上かかる場合もある。

 現在できている皮膚の湿疹などの症状は、ステロイド剤を中心とした軟膏療法で治る。普通は3~7日くらいで治る。所が、次から次へと新しい湿疹ができてくるので、治らない。次々とできるのを食い止める方法が、「こころで治す」すなわちストレス対策である。 乳児のアトピー性皮膚炎の場合、一番うまくいくのは第1子の場合で、早ければ1週間、遅くとも4週間くらいで皮膚の湿疹がなくなり、きれいになる。ところが、祖父母に原因がある場合や、第2子以下の場合が難しく、時間がかかる。

 嫌なことは「いやだ」と言わせるようにし、どうしても言えないことや止められない子とは、「まあいいや。しょうがないね。」とか「いいじゃないか」とくよくよしないように誘導する。子どもが「いやだな。いやだな。」と思い続けていると、うまくいかない。

2.私も食事制限は、卵と牛乳だけしています。

 食事アレルギーで一番多いのは卵(特に卵白)、二番目が牛乳、次が大豆である。乳児の卵アレルギーは約5%あり、成長と共に減少し、成人では1%以下である。それで、すべての乳児に生後6か月までは卵を与えず、6か月過ぎたら硬ゆでで黄身だけ与え、卵の白身は1歳過ぎてから与える。

 アトピー素因のある乳児は、1歳までは卵を与えず、1歳過ぎてから硬ゆでで黄身だけ与え、卵の白身は3歳頃まで与えない。その間、卵が沢山含まれている食品はさけたほうがよいが、少量ならかまわない。しかし生の卵が含まれているものは必ずさける。

 牛乳アレルギーは1%以下なので、アレルギーがあれば牛乳をさける。一般には、牛乳は生後6か月過ぎてから、わかして(沸騰させて)さまして与える。

 納豆や刺身などの生の蛋白質は、1歳まではさける。

3.食事アレルギーは、食べると症状が出て、食べなければ症状が出ない。早いと2時間以内に出るが、遅いと8時間くらいしてから出る。ごくまれに24時間以上してから出ることもある。だから、原因と疑われる食品を2週間完全に止めていて,症状がなくならなければ原因とは言い難い。卵アレルギーも牛乳アレルギーも、止めれば3日くらいできれいになるのが普通である。

 アトピー性皮膚炎のアレルゲン(アレルギーの原因)を調べた報告では、食物が陽性に出る率が近年増えていて、最近の数字では6%から20%まであった。報告者で異なり、皮膚科医の方が低く、小児科医の方が高い。しかし、食事療法で治るかどうかとは別のようである。それで私は、前述の卵と牛乳の制限を除けば、2週間以上の食事制限(明らかに疑われる場合で、まれ)はしていない。皮膚科医の多くも、食事制限は不必要だという。

4.地球環境の汚染との関係

 「地球環境の汚染によって、いろいろな病気が増えた。その1つがアトピー性皮膚炎である。」という意見も一考に値するが、そのまま肯定もできない。それは、環境汚染による健康被害は、染色体や遺伝子への傷害(発がん性、催奇形性)、神経毒性、肝障害、腎障害、代謝障害、消化管の出血・潰瘍、肺障害など全身におよび、人間の各臓器が侵されるが、抗生物質のアレルギーと衣類の有害物質による接触性皮膚炎は判っているが、アトピー性皮膚炎を起こしているという証拠はまだない。 人間は、地球環境と相互に影響を及ぼしあってきているので、人間が地球を変えると、それによって人間も変化していく。環境が変わると、人間はそれに適応しようとして変化し、それで遺伝子も変化していく。(ノーベル賞の利根川進博士が証明した。) 適応できない人が病気になる。地球環境の汚染は、病気の1つの要因であり、次々と人間が作り出しているものである。

5.こころで治す。

 アトピー性皮膚炎のアレルギーの原因がダニや食物であっても、社会環境の対策によって、つまりこころの対策によって、競合する原因の1つをなくして、病気を治そうとするものである。アトピー性皮膚炎は、遺伝的素因としては、①アトピー素因がある、②皮膚に弱点がある、の2つが考えられる。

 環境としては、①自然環境--広くは、地球環境の汚染(土壌、水、大気、海、食品)特に、住宅環境、衣服、食物など  ②社会環境--家庭、保育所、幼稚園、学校、職場、地域など。   

 人のこころを変えることは難しく、環境を変える方が早い。子どもは、こころの持ち方を変えやすい。子どもの環境は、大人に比べたら変えやすい。

6.私が書いた文を読んで「母親が悪い」とか「女性に責任を押しつける」と感じた人かいたようだが、母親も実は被害者なのである。私は、開業して内科も診るようになったら、病気の子どもは、母親も病んでいた。だから、現代社会のゆがみやストレスが、母親を通じて子どもに及ぶと考えている。現代日本人の悪い習慣や風習、間違った考えが病気を生んでいる。一人一人の母親に責任があるのではない。女性や社会的弱者に優しい北欧諸国は、アレルギー性疾患が少ない。アメリカの内科医は、人種の違いと言うが、私は社会の仕組みの違いだと言う。現代日本の社会と文化を変えることが病気を治し、予防する早道であるが、それが難しく、待っていられないから、一人ずつ治そうとすると、母親が責められている気持ちになるのである。父親も子育てに参加すると楽しいが、社会的援護がないと難しい。それよりも、現代医療が間違っていることに最大の原因と責任がある。

 

 

 


気管支喘息の精神神経免疫学

2022-05-13 10:57:09 | アレルギー疾患の精神身体医学

      子どもの気管支喘息

    子どもの気管支喘息 

 

           子どもの気管支喘息           

私の方法で、気管支喘息の発作が出ないようにすることができます。治るとは言えませんが、それは気管支喘息の遺伝子を持っている人が、何らかのストレスによって発作が出るので、ストレスを無くせば、発作を起こさなくできます。

私は、日本の専門医とは違い、世界の流れに従っています。小児喘息という病名は、一部の人が使いますが、大人と同じ気管支喘息です。特別な病気がある訳ではありません。

  • 1.気管支喘息とは-

喘息(ぜんそく)と言えば気管支喘息を云います。アレルギー性疾患に関して、日本の小児科医の間に意見の違いがあり統一されていず、いろいろな意見があります。「小児喘息」という病名は思い違いです。大人の気管支喘息の多くは子ども時代の発病ですから、みな「気管支喘息」です。その医師が知らないだけです。

関西は鍛練療法で、関東は体質改善療法ですが、体質は変わりません。いずれも世界の流れを無視しています。私は世界の流れにプラスして、病気の原因は環境にあるという環境病因論で、今までこの方法でうまく治して来ました。一度試して見てください。

環境を変えれば発作を起こさなくなります。昔から空気に良い所へ行くと良いと言われましたが、それよりも家庭内や幼稚園、学校を変えることや、育て方を変えることで変わります。土地を変えると親の対応も変わるのではないでしょうか。大切なのは、子どもをのびのび育てることです。ドイツのシュタイナーやフランスのモンテッソーリ、さらにお釈迦様の孫悟空への態度も同じです。叱らないことです。その方法は、いろいろあります。

こどもを医者に任せずに、病気をよく知ることが大切です。

喘息の死亡率は、1年に2万人に1人以下。死亡の原因は医師又は両親の「重症度の判定」の失敗によると言いますが、心療内科医は発作がひどくなった為に、患者が「呼吸が止まっちゃう」、「死んでしまう」と不安からパニックになって、自分で「死ぬ」と暗示をかけて自分から死んでいくと言います。だから吸入で少し楽にして、親が「ほら吸入したから大丈夫だよ」と言い、子どもを安心させるとパニックになりません。その為乳児を除き、年齢が低い程死亡率が低く、年齢が高くなるに従って突然死が増えてきます。大人になると、医師でないと「大丈夫」という暗示効果が効かないようです。

  • 2.症状

ヒュ-ヒュ-ゼ-ゼ-いう「喘鳴(ぜいめい)」と咳をし、息が苦しいと肩呼吸をし、ひどいと発作性の呼吸困難を起こすのが特徴です。すっと楽に吸えて、息をはく時に

ヒュヒュして苦しいのです。診断基準はなく、私は臨床的に診断します。

 喘息は気道(気管支の粘膜)の慢性の炎症が起き、二次的に種々の刺激に気管支が過敏に反応して気道が狭くなり、そこへ粘稠な痰がからむ病気です。  

アレルギーは二次的なので、炎症をおさえるステロイド(特に吸入)を使うことが多くなっています。

かぜ、タバコの煙、過労、ストレスなどが、誘発したり悪化させたりします。

最近「咳喘息」という診断が増えてきましたが、この診断基準はなく、言わば診断のごみ箱、つまり診断のつかない長く続く咳をそう診断しているのです。喘息であれば、ヒューヒューする喘鳴や呼気性呼吸困難(息を吐く時に苦しい)があり、気管支拡張剤の吸入によっておさまることが多いものです。でも必ずしもそうではありません。

私は、心因性の咳を疑っていますが、それを証明するのが大変なので、対症療法をしています。数人は明らかに心因性の咳でした。原因を無くしたら止まったからです。

これに対しては喘息のような薬による発作予防が効きません。

 ◎特徴①症状が周期的に出現すること。特徴②夜間の発作

 発作は午前2時から4時頃の、深夜、夜明け前がひどく、日の出と共におさまっていきます。日中おさまってもまた夜中に起きます。1日の中で良くなったり、悪くなったりするので、夜ひどいが昼間良くなったと見てはいけません。夜なら一昨日の夜と昨日の夜、昼なら昨日の昼と今日の昼と、同じ時間帯で比較して判断して下さい。

 軽い時は、起床直後に咳や発作が始まることがあるし、寝ている時や起床直後だけ出る咳とか、朝や日中に子どもは「苦しい」とか、「ゼーゼーする」とは言わず、「(胸が)気持が悪い」と云うことが多いです。その時子どもの背中に耳をあてて、ヒュヒュしているか音を聞いて見て下さい。この時に携帯用吸入器を使います。

 ひどいと苦しくなり、鼻をピクピクさせたり、肩で呼吸をしたり、のどの下の陥没が目立ち、横になって寝ているより身体をおこしていた方が楽(起座呼吸)になります。

ひどくなると息を長く止めていられなくなるために、食事が食べられなくなり、口もきかなくなり、水も飲めなくなります。

更にひどくなると、顔色が蒼白になり、口唇が紫色(チアノ-ゼ)になります。携帯用の吸入器で苦しさが止まらなければ、突然死もあるから、すぐ小児科医のいる病院へ行って下さい。親が不安にならなければ、そうなりません。あわてたり騒がないこと。

〇発作が起きた時に、何か嫌なことを我慢してはいないか、ストレスになっているものを探して、それをなくすことが発作をおさめ、続く発作の予防になります。

◎特徴③季節的変動

 発作や咳は、春秋の季節の変り目や梅雨時、台風の季節に多いです。気候の変化に弱いです。だから気象予報特に台風の予報ができます。

☆こどもでは3歳前後に発病することが多い。こどもでは男:女=2:1。

 主に乳児期にアトピー性皮膚炎になった子が多く、次に喘息様気管支炎の子がなることが多いですが、突然なる子もいます。

 気管支喘息の過半数は10歳以前に発病し、残りは40歳までに発病しますが、まれに50歳を過ぎてからも発病します。30歳以後は、男女比は1:1。

きっかけの精神的要因として、こどもでは親子関係(特に母親)と兄弟関係が多く、母親の関心の強い子に出やすいと言われてきました。しかし、最近はむしろ保育者(祖父母に預ける、託児所、保育所、幼稚園)や学校の先生や友達関係によることが多い。発作が多い時は、いじめに注意。本人は言いません。友達の母親から聞くなどするしかありません。

 

☆こどもの気管支喘息は治るか?

 年齢と共に(特に思春期になると)精神的にも成長して自立し、それまでのストレスが、ストレスでなくなると、喘息から抜けられますが(その代わりに親の言うことをきかなくなる)、大人になってまた別のストレスがあると、喘息が出ることがあります。

  • 3.気管支喘息の治療方針

目標は (1)日常生活は普通。家庭で、学校で、地域社会で、スポーツやレクリエーションに参加できる。 (2) サルタノール吸入の必要性がなく、週1回以下の使用で済む。 (3)気道過敏性が改善(運動や冷気の吸入による症状の誘発がない)。(4)1年以上発作がない。

気管支喘息の治療

☆喘息のコントロールは段階的にしていきます。まずは発作の予防です。それには・・

 私は病気の原因を、遺伝子プラス環境要因と考えます。同じ遺伝子を持っていても喘息を起こすとは限りません。しかし、遺伝子は親から受け継いだので逃れられません。

 両親、祖父母、兄弟など身内に、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症などのアレルギー性疾患のある子に起きます。

 アレルギーの検査はそれを調べるだけです。しかし、何も出ないこともありますし、検査して陽性でも、発病していないこともあります。つまり、遺伝子を受け継いでも病気は受け継がないので、環境を変えれば発病しません。それで発病しないことはまれではありません。

 それで第一は、その環境対策特にストレス対策です。

☆予防の第一はストレス対策

 これで発作を起こすのを止めます。

 喘息の子どもに共通する性格傾向は、普段は元気がよく、悪く言えば少しわがままなところがあり、他人をかきわけて前へ出ようとするタイプが多いが、こころやさしくて、「いやだ」と言っているように見えるが、いやなのにいやだと言えずに、がまんしてしまい、その時ゼーゼー始まる。中には、相手のこころを読んで、自分からがまんしていることもあります。

 乳幼児期の発病は、母親や兄弟などの家庭内に原因があることが多いですが、幼稚園や保育所に原因があることも最近は増えています。

一人っ子や第1子では、母親または他の家族による干渉で、赤ちゃんが要求しないのに、抱いたり触ったり、ほっぺをつついたり、キスしたり、中にはなめたりしています。

赤ちゃんを、親や上の子、祖母のおもちゃにしないで下さい。

第2子以下では、上の子による干渉によることが多いようです。本人はイヤとは云わず、気付きにくいです。がまんするとヒューヒューしてきます。上の子は、可愛がると言って、触ったりします。触られる方は嫌なのですが、嫌とは言いません。「いやだな」という目つきをしますが、泣きません。それで気がつかないのです。

上の子にいびられたりかまわれたりした時に、少し大きくなると上の子に向っていきますが、結局は負けたり我慢したりします。そうすると夜寝てから夢に見てくやしがり、夜中に発作が起きたりします。

大切なことは、どんなことでも、「イヤだな」と思って我慢しないで、はっきり「イヤダ」と言うか、又は、「仕方ない。まあいいや。そういうものだ。しょうがないね。」とくよくよしない。「がまんしなさい」とか「あきらめなさい」と言ってはいけません。「しょうがないよね」が一番です。

今まで私が見てきた原因は、

 保育所でのハイハイの強制。保育所や幼稚園での給食の強制、剣道、プール、水に顔をつける、器楽、どろんこ遊びなどがあります。すべての子が、いやがる訳ではなく、喜ぶ子もいますから気がつきにくいです。中には、幼稚園児で園長先生の剣道の時間に自分はよいが、できなくていつも怒られている子がいて、それを見ていると可哀想で発作が起きる子がいました。その日を休むと発作は起きません。

小学生では、塾や公文、習い事、ピアノ、バレエ、バイオリン、習字、そろばん、野球やサッカー、柔道、空手などがいやなこともあります。「自分でやりたいと言って始めたことだから、最後までやりなさい」と言うのは、やめましょう。嫌になったらいつでもやめることです。そうしたらまたやりたくなることもありますが、無理にやらせると、一生しなくなります。

また、いじめが原因なのに1年以上気が付かなかった例もあります。いじめ対策をしたら起きなくなりました。この子が一番長引いた例です。嫌なことをやめれば、喘息も良くなります。

ストレス対策で発作や咳が出なくなれば、他の対策の必要はありません。それだけで治った子もいます。とにかく、子どもだって一人の人間(ただし発達途上の)だから、のびのびと育てることが一番です。悪いことをしない限り、好きにさせるとよい。そうすれば自然に喘息は治ります。

 

  • 4.薬物療法①-発作時の治療-

気管支喘息に関する国際会議が指針とする治療法。日本の主流派と異なります。

世界的には吸入優先。なぜなら、直接気管支に作用するので、副作用が少ないから。

しかし、大量に吸入すると全身にも作用します。飲み薬は一旦血液中に吸収されて全身に回り、気管支に届きます。

  1. サルタノール・インヘラー( 気管支神経刺激剤サルブタモールで携帯用定量吸入器)

の吸入 。発作時のべネトリンのネブライザー吸入と同じ気管支拡張薬。発作時に一時的に使用します。同じ系統の薬では一番心臓への作用の少ない薬。メプチンエアーも同系だが少し強いです。(これは発作時の薬)

 軽いうちに吸入します。少しヒューヒューしたり、胸が気持ち悪くなったり、咳こみが始まった時に、すぐ吸入します。これでおさまったら、おしまいです。1回に1吸入。効かない時は、30分たったらもう1回してもよいです。1日に2回まで。おさまらない時は、薬を飲みます。

4歳以上ならできる子もいますが、小学生にならないと難しい子もいます。使いすぎると副作用が出るので、おさまらない時は病院へ行き、ネブライザーの吸入をしてもらってください。

 なお、サルタノール吸入が出来ない場合は、2週間を限度としてネブライザー吸入器の携帯用を、今後(今はまだありません)貸し出す予定です。それ以上続く時は購入して頂きます。これで夜の救急受診が減ります

サルタノール吸入だけでコントロールできていれば、他の薬の必要はないのです。

気管支神経(β)刺激剤の吸入液

第一選択薬はサルブタモール(ベネトリン、サルノール)

第二選択は プロカテロール(メプチンエアー10μg、キッズエアー5μg)

理由: β作動薬の心臓毒性は(サルブタモールを1として)

テルブタリン(ブリカニール)    0.5   

サルブタモール(サルタノールベネトリン)1    吸入器あり、妊娠中可

ツロブテロール(ホクナリン、ベラチン)3.3

プロカテロール(メプチン)      83   吸入器あり、使うならここ迄。

ここからは使わないほうが良いもの(心臓への毒性が強いもの)

クレンブテロール(スピロペント)   500

サルメテロール(セレベント、配合はアドエア)300~600  吸入器あり

ビランテロール(配合はレルベア)       200~3000  吸入器あり

ホルモテロール(アトック、配合はシムビコート) 1400   吸入器あり

フェノテロール(ベロテック)        2000  エロゾルあり

 イソプレナリン(プロタノールL、アスプール液、配合はストメリンD)9000超 エアロゾルあり、これはイソブレテレノールです。

  1. 追加してインタール吸入を毎日吸入します(予防の薬)。妊娠中可。

サルタノール吸入を毎週4回以上使用する場合は、発作予防の吸入をします。発作には効かないので、サルタノールと併用です。

 インタール(クロモグリク酸)吸入は1日2~4回、最初回数多く、効果(発作が出ない)が出て来たら減らしていきます。通常2~4週続けないと効果が出て来ません。75%に有効で、6週間使って効果がなければ中止し、次の吸入薬を使います。

 

  1. 吸入ステロイド剤

インタール吸入で効果不十分ならば、吸入ステロイド剤を使います。→予防の薬で毎日使います。吸入後うがいをして口の中の薬を洗い流します。通常1回1吸入で、1日に朝晩2回吸入します。

副作用はカンジダ症、発声障害で、必ずうがいすること。

第一選択は、キュバール(ベクロメタゾン)エアゾール50、100、

第二選択は、プデソニド(パルミコート)ドライパウダー、妊娠中可、

できれば使いたくないのは、フルタイドエアゾール、フルタイドロタディスクです。半減期が長いので、頻回の使用で血中濃度が高くなると、ステロイドの副作用が出ます。

〇吸入ステロイド

ステロイドの力価、           血中濃度の半減期、作用時間、

ベクロメタゾン(キュバール)        2.8    中

プデソニド  (パルミコート)       2      短

フルチカゾンP(フルタイド、アドエア)  14.4    超長

フルチカゾンF(レルベア)        24~33   超超長

 

〇β2気管支刺激剤+ステロイド剤を合わせた吸入剤は、アドエア、レルベア、シムビコートです。子どもには不要です。

  1. 以上で効果不十分の場合→→以下の5.6.のいずれか、または併用します。
  2. β2 気管支神経刺激剤(気管支拡張剤)、内服薬

〇短時間作用型=ブリカニール、ベネトリン。

1日3回飲む。飲み薬は効果が出るまでに30分程度かかります。

〇長時間作用型=ツロブテロール(ホクナリン、べラチン)、メプチンなど。

1日2回内服。気管支を拡げて、痰を出やすくします。

 いずれも、副作用として、手のふるえや心臓がドキドキすることがある。

→なったら止めること。副作用が出た時に、薬が早く切れるので短時間作用型を勧めます。ツロブテロール(ホクナリン)テープは1日1回夜胸にはります。入浴後がよい。入浴時まで1日はります。効果が出るまでに2~3時間かかるので、即効する吸入を勧めます。

 

  1. ロイコトリエン受容体拮抗剤―モンテルカスト(キプレス、シングレア)は有効(オノンは欧米では評価されていません)。 これを持続内服します。肝障害、血管浮腫などの副作用が大きいので、最後の選択肢です。催奇形性があり妊娠中は不可。
  2. 上記のいずれでも効果不十分の場合

 経口ステロイド剤(プレドニゾロン、プレドニン)の追加使用、ステロイド剤の注射などですが、重症化したら入院してすることが安全です。

 

8.テオフィリン除放剤内服。(テオドール、テオスロー)長時間作用型気管支拡張剤。日本では使われていますが、世界的には原則として使いません。入院して血中濃度を

測定して使う薬です。多すぎると中毒を起こし、少ないと効果が無いからです。使わな

いで下さい。副作用は頭痛や吐き気、重症化するとけいれんや不整脈が出ます。

 

9.抗アレルギー剤

 ザジテン(ケトチフェン)、アゼプチン、セルテクト、アレジオンなど。

保険では気管支喘息に適応となっていますが、有効性の証明はありません。世界的には

使われていません。

特徴④咳や発作がおさまらなければ、治療の薬や方法を変える。「効かないからもう一回吸入するとか、もう一回薬を飲む」ことはしないこと。効かない時は治療方法を変えないと良くなりません。

 軽い時は水を飲む。深呼吸をする。おさまらない時はサルタノール吸入をします。次に咳止め薬、気管支拡張剤。ボスミン皮下注射。ステロイド内服と注射。等々と効かなければ治療法を変えていく。ネオフィリン注はやめましょう。

副作用:効く薬には副作用がある。薬の量は、年齢、体重、重症度、時間などで量を決定します。自分で調節して、失敗すると、心不全から死に到ることがありますから、自己調節してはいけません。

  • 5.発病の予防

 アレルギー性疾患のある家系では、母乳をすすめます。でも、母乳が出なくても心配ありません。ミルクで充分です。アメリカ小児科学会では、母親の食事を制限しても意味がないと言います。それは母乳に出るのは、食べた物の10万分の1以下ですから。

子どもの食事制限は意味があります。卵は1歳まで与えないこと。牛乳(ミルク)アレルギーの場合は、豆乳にします。離乳食を遅らせても効果はありません。

それ以外は、食事にこだわらないこと。ただし、生のたんぱく質を1歳まではさけましょう。(喘息に関係ありませんが、蜂蜜も1歳までは与えてはいけません)

 牛乳は6ヶ月過ぎたら(ミルクアレルギーのない場合)わかして(沸騰させて)さまして与えます。乳幼児では生の牛乳は避けて下さい。アレルギーの問題と、加熱処理されていない牛乳は腸で出血するので、大量に飲むと貧血になります。学童や大人も出血しますが、肉などを食べていれば問題ないと言います。実際に大腸がん検診ではしばしば牛乳を飲んでいる人が便潜血陽性になります。

 ゲノムの研究で判ったことは、ほとんどの哺乳類は幼児期になると母乳を分解する乳糖分解酵素を産生する遺伝子の働きが止まって、母乳を消化吸収できなくなり、飲めなくなり、離乳するのです。

しかし、人間と犬や猫では、母乳や牛乳を飲める人が多いです。それは山羊や牛を飼っていて、適応したと考えられています。でも農耕民族を中心に牛乳を飲むと下痢する人が多いのです。牛乳は飲まなくてもよいのです。

☆運動は喘息によいか?

鍛錬療法―身体を鍛えることでこころを鍛えると言います。

 運動、スポーツは何をしてもよいが、水泳以外は運動誘発性喘息があります。でも運動をしなくても治ります。

運動誘発喘息の起きる仕組みは不明ですが、多分に精神的なものと考えます。なれると減ってきます。運動して息が切れるのを、発作と錯覚するのではないでしょうか。

喘息の時に、運動を制限することはなく、子どもの意志に任せればよい。

 特に、発作が起きた時に、親があわてず騒がず、不安にならず、病気に負けてしまわずに、「喘息なんて飛んでいけ」とがんばるこころを育てることが大切。どんなことでも嫌がるのを無理にしいてはだめ。いかにその気にさせるかが大切。

 

  • 6.アレルゲン(アレルギーの原因、抗原)は調べた方がよいか?

 アレルギーの病気は検査で判るものでは無く、症状で診断します。他の医師はすぐ検査をしましょうと言いますが、検査では診断できず、確かめるものに過ぎません。

 〇気管支喘息の場合、三大アレルゲンは、

ハウスダスト(主に粉ダニ、ヒョウヒダニ)(70%)、真菌(かび)(10%)、花粉(10%)で90%を占める。次はペット。

☆吸入性―ハウスダスト、ホルムアルデヒド、窒素酸化物、浮遊粒子状物質。

花粉―2~4月―杉、4~5月―ひのき、松類(黒松、赤松)、5~8月―いね、カモガヤなどイネ科植物、5~6月―小麦、8~10月―ブタクサ、

真菌(かび)―アルテルナリア、アスペルギルス、ぺニシリウム、カンジダなど。

その他―動物の毛や皮屑(犬、猫、小鳥、うさぎ、ハムスターなど)、昆虫。

☆食餌性―そばが有名。

☆薬品類―特にアスピリンや解熱鎮痛剤、サルファ剤。

☆検査で出ないこともあるし、検査で出ても発作を起こすとは限らない。

 

  • 7.環境整備は、

 ストレス対策で治らない時にすることです。それをした結果、思わないことがストレスになっていたこともあります。

 家庭環境のコントロ-ル―エアコン使用、ほこりやケバがたたないようにする。毛布はカバーをする。ペットは飼わない-犬、猫、鳥、ハムスター等。-ペットの皮屑が誘発します。空気清浄機もある程度は有効です。

 一般的な刺激物を避ける--タバコや花火、蚊取り線香の煙、強い臭い(ペンキ、消毒剤、家具)、冷たい飲み物や吸込む空気の急激な温度、湿度の変化を避けるなど。

 特に、タバコを吸う父親が多かった時代は、正月に発作を起こす子が多かったでした。

 今は、実家に帰ると発作を起こす子が増えていませんか。たばこか祖父母たちの過度の可愛がりです。

 

〇メディカル・トリビューン2006年8月31日号より

「家族生活のストレスが小児喘息の憎悪因子に」

・険悪な家族関係や不安定な家庭環境が悪影響を及ぼす。

・乳児期の喘鳴と親がストレスを経験した時期との関連を実証した研究がある。

・小児期の喘息が育児の困難な家庭で好発することを実証した研究もいくつかある。

・親や保護者が高レベルのストレスを経験し、育児が困難である家庭では、小児が喘息を発症するリスクが最も高いことも実証した研究もある。

・喘息児が地域社会で暴力に遭遇すると症状の憎悪が引き起こされることを明かにした研究もある。

・小児ではストレスが喘息の憎悪を引き起こすことを実証した研究7件もある。

 例えば、喘息児ではストレスの多い出来事を経験すると、発作リスクがほぼ倍増することを明かにした研究。小児では急性および慢性のストレス増大が、その後の2週間の喘息発作リスクを3倍に増大させることを実証した研究など。

〇思春期の若者たちには、

  1. 発作の原因や誘因に気づかさせることが第一である。
  2. それに対しての気持ちの持ち方を変えさせる。決して「いやだな」とか「発作が起きるのが恐い」と思わせずに、「起きても大丈夫」と思うようにさせる。
  3. その為にも治療法をよく説明し、理解させるる
  4. また、補発作の原因や誘因となる生活スタイルを変えるようにさせる。
  5. そして最後に、心理的要因が取れない場合には、説得療法と共に、他者催眠法から、自己暗示法へ導き、自分で自己暗示をかけて発作が起きないようにする。

 25歳までは、自分の気持ちの持ち方を変えることができるから、効果的である。

〇喘息の話

日本では主に明治時代以後に始り、高度経済成長以後急増、特に近年に増加。狭い地域に人口が増えるとなりやすい。都市に多く、農漁山村に少ない。一般的には先進国に多く、発展途上国に少ないが、発展途上国でも増えている。

 喘息の疾病率;アメリカでは人口の5%(こども7~19%)、日本では都市では5%以上、農村でも増え、川崎や四日市では8%以上。スカンジナヴィア地方では特に低い、イヌイットや黒人、アメリカ先住民(居留地)に少ない。

 例1;アメリカ先住民(居留地)。――アメリカ先住民は昔、居留地に囲い込まれた頃、気管支喘息はみられなかったとの記録があるという。所が居留地は岩山や砂漠、草原などの生産性の低い土地で、人口が増えてくると生活が出来なくなり、都市へ流入し、その中から喘息になる人がでてきたのです。今、都市では白人と同じ割合で喘息になり、また居留地でも喘息が出てきています。

例2;横浜喘息(明治時代の外国人)。――明治時代に横浜に来た欧米人たちは、主に貿易商と外交官たちだったが、その病気の一つに喘息があり、横浜に来てから病気になって、仕事にならず、帰国していく途中、船が横浜港から遠ざかると共に、喘息の発作は軽くなり、おさまったという。これを横浜喘息と呼んだ。

例3;アメリカ黒人の気管支喘息――アメリカの軍隊の中での調査で判ったことは、昔は若い黒人兵には気管支喘息が無く、その後だんだん出てきて、増えているといいます。昔、日本の徴兵検査では、喘息はだめで徴兵されませんでした。

例4;現在はアメリカの若者のブタクサ花粉症が増えています。

 現在、日本の大人のスギ花粉症とアメリカの若者のブタクサ花粉症、それにヨーロッパのイネ科の牧草の花粉症が増えています。日本は中高年層にスギ花粉症が増え、失業率や労働条件が関係しているものと考えられます。日本でも若い人の花粉症が増えています。欧米では、若者の失業率が高いこともひとつの要因ではないでしょうか。

  • 5.アレルゲン(抗原)・・・過敏になる原因

 三大アレルゲンはハウスダスト(室内塵)、真菌(カビ)、花粉で計90%。

吸入性―室内塵(ハウスダスト)で、コナダニ、ヒョウヒダニなどを含む。

 花粉―スギ、ひのき、ブタクサ、イネ科植物、松類、白樺など。

 真菌(かび)― アルテルナリア、アスペルギルス、ペニシリウム、カンジダ。

 その他―動物の毛や皮屑(ふけ類)(犬、猫、鶏、小鳥、うさぎなど)、昆虫、木材の木粉(杉、ラワン、松、輸入材など)、薬品類、細菌類、絹、真綿、ソバ、ソバガラ、除虫菊、

食餌性――食餌アレルギー、蕁麻疹、(こどもだけは喘息もあります)

 動物性―鶏卵の卵白とその加工品(乳児の5%にある)、牛乳と乳製品、青身魚類(サバ、カツオ、サケ、アジ、マグロ、)甲殻類(カニ、エビ、)イクラ、イカ、タコ、肉類(牛、豚、鶏)

 植物性-豆類(大豆、ピ-ナッツ)、木の実類(クルミ)、小麦そば、果実類(キウイ、マンゴ)米、チョコレ-ト、里いも、じゃがいも、さつまいも、ごぼう、いちご、オ-トミ-ル、

 薬品類(内服)――サルファ剤、解熱鎮痛剤(アスピリンなど)、抗生物質(ペニシリンほか)、かぜ薬(総合感冒薬)には解熱鎮痛剤が入っています。

 職業性――カキ、ホヤ、木材粉、羊毛、羽毛、茶の花粉、パン粉、薬品散剤。

 感染性――細菌、ウィルスなど

 仮性アレルゲン(誘発因子をもつもの)――ナス、ホウレン草。タケノコ、マツタケ、きのこ類、長いも、山芋、サンマ、カレイ、タラ。鮮度が落ちたスズキ、アサリ、ハマグリ。

▽花粉の季節

 2~4月スギ 4~5月-ひのき、松類 5~8月-イネ、カモガヤ、ハルガヤなどの稲科植物 5~6月-コムギ 8~11月-ブタクサ 9~10月-よもぎ、アキノキリンソウ。

  • 6.気管支喘息や花粉症を誘発したり、悪くする要因

 ①呼吸器系感染(かぜ、気管支炎)--細菌、ウィルス

 ②自律神経系の乱れ--迷走神経反射――ストレスから来る

 ③ホルモン系の影響(特に女性の月経前後)

 ④運動誘発性喘息(水泳だけは無い)、なぜ発病するのか判っていません。

 ⑤環境誘発因子――煙(煙草、花火、蚊取線香)。光化学スモッグ、排気ガス。ク-ラ-の風。雨、台風。カビ、ハウスダスト、ダニ、ペットの毛やふけ、花粉。

  • 7.アレルギーは変化します

 アレルギーの病気が、変わったり(アレルギーマーチと呼んだり、一つが出ている時は他のアレルギーは出ない)、アレルギーの原因が変わったりします。

 例1;以前国立病院で、喘息外来をやり、気管支喘息の治療に減感作療法をしていました。その時、その治療で、あるアレルゲンに過敏にならなくなったのに、喘息発作がおさまらないので、再びアレルゲンの検査をした所、原因が変わって、他のアレルゲンに過敏になっていたのです。

 例2;昔、インターン時代に、アルバイトで、ある病院の夜間外来と当直に行っていた時、寿司屋の板前さんが蕁麻疹になって、よく治療に来ていました。その人は青身魚で出たので、洋食屋に転職しました。所が今度は肉や牛乳で蕁麻疹が出るようになったといいます。

 例3;国立病院時代にも、前の診療所でも、ある抗生物質にアレルギーが出る人に、アレルギーの起こる仕組みと背景を説明し、起きたらすぐ飲むようにステロイドホルモン剤を渡して、使ってもらったら、アレルギーが起こらず、ステロイドを使わずに済みました。その説明を信頼してくれなければ、またアレルギーが起きたかもしれませんが、幸い起きず、それで病気を治療できました。

 例4;元九大心療内科教授の池見酉次郎先生のうるしかぶれの研究では、ゴルフ場職員で実験した所、催眠状態でうるしかぶれの人の腕に水をぬり、「うるしをぬった」というとかぶれ、うるしをぬって「水をぬった」というとかぶれない人が多かった。特にうるしかぶれでひどい目にあった人に、その傾向が強かったといいます。もちろん例外はありました。また、うるしの木のそばへ行くとかぶれるという人に、他の木の枝の間にうるしの枝を混ぜて、それを知らせずにその下をとうらせたら、誰もかぶれなかったといいます。

 例5;19世紀アメリカの内科医マッケンジーは「造花のばらを使ったいわゆる『バラ花粉症』の発病」の逸話があります。32歳の女性で、15年間5~9月の激しいアレルギー性鼻炎と夏の終わり頃に起きる喘息発作に悩まされていました。17項目の刺激(恐怖や過労、興奮、夜風にあたるなど)が発作の引き金になりました。特に干し草やバラの臭いに敏感でした。この患者に、治療がよくなりかけた時に、本物とそっくりの造花のバラを幕の後ろから出して、手に持って彼女の前に腰かけた。5分もしないうちに彼女は完全な鼻アレルギーを起こしたのです。『実はこのバラは造花なんです』というと、彼女はひどく驚いて、自分で確かめた。激しいくしゃみをしながら帰り、二、三日してまた来院した時に今度は本物のバラの花を出し、匂いをかぎ、花粉を吸い込んでもらったが、症状はでなかったといいます。心理的要因が関与していることを示しています。

  • 8.アレルギーはコントロールできる。

 嫌なことは、「いや」と言い、嫌なのにどうしてもしなくてはならない時は、「生活のため」と考えて、「仕方が無い」、「そんなものだ」、「まあいいか」と思うようにしよう。くよくよせずに、楽しいことを考えて、仕事や生活をしていると、アレルギー性の病気から逃れるか、かかっても軽く済むことが多い。ストレス対策が、アレルギーを軽減します。

  • 9.現代は、アレルギーの遺伝子にスイッチを入れる環境にあふれています。

 だから、アレルギーの人が増えているのです。しかも、何も考えないで、赤ちゃんや子どもに、勝手に大人の食べ物を食べさせてしまい、アレルギーを起こして慌てている親が少なくありません。赤ちゃんや乳幼児のストレスも考えましょう。赤ちゃんを自分のものと考えず、社会の子どもと考えて、のびのびさせよう。