黒部信一のブログ

病気の話、ワクチンの話、病気の予防の話など。ワクチンに批判的な立場です。現代医療にも批判的で、他の医師と違った見解です。

アレルギー疾患の説明療法-1

2022-05-06 17:56:59 | アレルギー疾患の精神身体医学

                花粉症の説明療法

  人はなぜ病気になるか

 

1.人は環境に適応できない時に病気になる

◇病気になるのは、人が生活する環境に適応できない時に病気になるのです(病原環境論または適応説)。環境には、自然環境(細菌やウィルス、寄生虫や動植物、花粉などを含む)、社会環境(家族から地球規模までの人間社会)、心理または情緒的環境(社会がもたらすストレス)があります。特に現代では、社会的環境が大きく、家庭、親族、保育所、幼稚園、学校、職場、地域、クラブなどの人をとりまく環境が、心理・情緒的ストレスを産み、それによって抵抗力(免疫)が低下し病気になるのです。

◇判りやすく説明するために、人間を川に例えます。川にはそれぞれ堤や堤防があり、川の水が少なく静かに流れている時は、水はあふれません。この状態が、人間では健康なのです。所が大雨や台風で、川の水が増えてその堤防の弱い所を越えて氾濫し、水があふれ出ます。人間では、水があふれた時に病気になるのです。その堤防の弱点は、その時々によって異なります。その人の弱点は親から受け継いだ遺伝と生まれ育った環境や今までにかかった病気、現在の生活習慣やおかれた生活環境(自然や社会的)によっても作られます。その人の持つ弱点は年齢、性別、性格、考え方によっても異なるので、かかる病気が異なるのです。

◇ヒトゲノム計画により、人の遺伝子がほとんど解明されました。しかし、そこで判ったことは、同じ遺伝子を持っていても、同じ病気になるとは限らないのです。多くの遺伝子は、遺伝子のスイッチが入ると働き出し、スイッチが切れるとその働きを止めるのです。スイッチを入れるのが環境因子であることも判ってきました。遺伝子と環境の相互作用。

 例えば、哺乳類のほとんどは、乳児期には母乳が飲めるが、幼児期になると飲めなくなるのです。それは、幼児期になると母乳を分解する酵素を作り出す遺伝子のスイッチが切れてしまい、母乳が飲めなくなるのです。しかし、人間はなぜ大人になっても牛乳が飲めるのかが謎です。でもすべての人がそうではなく、牛乳が飲めない人がいて、その率は農耕民族に高く、牧畜民族に低いのです。環境に適応して遺伝子が変化してきたと考えられています。牛乳嫌いや牛乳を飲むと下痢をするのは別に特別ではないのです。

例えば、遺伝的に同じはずの一卵性双胎児の一人が喘息になり、もう一人が喘息になる確率は16~25%であり、他のアレルギー疾患では同じと見られていますが、統合失調症はもっとずっと低いのです。アメリカの調査で、アイルランド出身の双子の、一人はアイルランドに残り農業を継ぎ、もう一人はアメリカへ渡って都市労働者になった1000組を比較したら、摂取カロリーはそれ程違わないが、成人病になる確率はアメリカに渡った方が圧倒的に高かったのです。

 遺伝子にスイッチを入れる環境は、自然環境と社会環境です。社会環境の中に、社会によってもたらされる精神心理的、情緒的環境も含まれます。社会は最低3人から構成されますから、家庭も社会的環境です。だから家庭環境によっても変るし、食生活によっても変わります。また、環境によっても遺伝子は変化します。遺伝子と環境とは相互に影響しあって、発現したり、しなかったりし、その結果病気になったり、ならなかったりするのです。遺伝子は1世代で100の変化を蓄積すると言います。遺伝子は環境条件に左右され、ある種の環境でなら、ある形で発現するのです。遺伝子は、環境や発達に左右されない特定性と、環境の変化に適切に対応する能力(可塑性)を持ちます。

 

2.病気と戦う仕組み

◇人には病気にならないようにする防御システムが様々に働いています。

①外から人の身体に入ってくる場所すべてに細菌やウイルスなどの微生物が住み込み人と共棲していて、外来の微生物と戦ってくれます。例えば大人の皮膚1平方cmに10万の微生物が住んでいます。だから大人は「とびひ」にならないのです。目、鼻、口、のど、耳、陰部、腸などすべての外界と接する部分には微生物が住んでいます。それが病気にならない理由の一つです。胃には強い酸性の胃液があり、多くの細菌はそこを突破できません。突破しても小腸には1gの腸内容物に三千億から五千億の細菌や微生物が住んでいて外来の微生物を排除してくれます。皮膚や腸に住んでいる種類は家族ごとに微妙に異なりますし、老化によっても変わります。

②体内にはまずリンパ球をはじめ、リンパ組織(扁桃やリンパ節や虫垂)が働いて防御線を張っています。外来の異物を見つけ、戦うのも、抗体を作るのもリンパ球です。インターフェロンやサイトカインというものを作るのもリンパ球です。リンパ球はいろいろな働きをして微生物や異物、がん細胞などと戦ってくれます。その他に多くの身体の働きで、自分の病気を治す力(自然治癒力)があります。がんになっても、少なくとも3万人に一人は自然治癒します。世界でその人たちの3500人の報告も出ています。

 

3.ストレスと病気

◇環境にうまく適応できない時に、防御システムの働きが低下します。だからストレスがあると免疫の働きが低下し、病気になり易くなります。その時に細菌やウイルスが入ってくると病気になるのです。過労も心労もストレス状態の一つです。

 ストレスを起こすのがストレッサーと言い、それによって引き起こされる状態をストレスと言い、ストレスになると身体の色々な働きが乱れて病気になるのです。ストレスはたまるものではなく、状態です。なったらすぐ身体は反応しています。その時病気になるかならないかは、その時の、その人の状態や環境によります。

◇ストレスがあると、身体が反応します。ストレスはたまるものではありません。一度でもストレスです。ストレス対策は、気持ちの持ち方を変えることです。

 嫌なことは「嫌だ」と言いましょう。でもどうしてもそれができない時は、「仕方がない、そういうものだ」とか「まあいいか、しょうがないや」と、いつまでも「いやだ」をひきづらないことです。でも、いじめ、セクハラ、嫌がらせなどは、そうしてはいけません。

◇子どものストレスは、第一に「いやなこと」を我慢することです。だから神経質な子は病気をしやすく、くよくよしない子は病気をしません。自己主張の強い子は病気が少なく、心やさしい子やいやなことを我慢する子が病気をしやすいのです。大人も同じですが。

 子どもは、赤ちゃん時代は親が防御して下さい。赤ちゃんが「いい気持ち」にならないことがストレッサーです。いつもいい気持ちにしてあげて下さい。お腹いっぱいにすること、早めの離乳食、オムツをとりかえること、赤ちゃんが要求しないのに抱いたり触ったりしないこと。赤ちゃんをお人形さんにしないで下さい。おもちゃではありません。

 叱らないで、他のことに関心をそらして、いけないことを止めさせましょう。関心を他のことにすり替えることで、叱らずにすみます。そしてすぐ「いい子ね」とほめましょう。

いつもいい子にしてあげて下さい。親のして欲しい事をしてくれたら、すぐほめましょう。

 人見知りは自我の芽生えで、自我ができるのは3歳ごろ。この頃になると自己主張が強い子は病気が少なくなります。そして小学校入学から思春期まで、病気が少ない時期です。でもおとなしい子、こころが優しい子、いやだと言えない子は病気になります。

 

◇食事を強制したり、制限したりせず、少なくとも3歳までは欲しい時に欲しいだけ食べさせて下さい。少食、偏食は食事の強制から生じますし、甘いもの好きは甘いものを制限することから始まります。子どもに与えたくないものは、一度も与えてはいけません。「少しならいいだろう」は間違いです。もっと欲しくなるものです。嗜好飲料、スポーツ飲料は子どもの飲み物ではありません。また甘い食品、糖分(グリコーゲン)は大脳の発達に必要ですから、子どもの食事の必需品です。子どもは、食事もストレッサーになることがあります。嫌いなものを強制しないで下さい。また牛乳は、前述のように、飲めない子がいますから強制しないで下さい。また牛乳の飲みすぎもいけません。

 

4.病気は身体の変調、不調

◇病気は、外から入り込んだものではなく、自分自身の身体の変調です。変調というのはピアノやギターの調律がはずれた状態で、同じピアノでも良い音が出ない状態です。良い音が出ている時が健康なのです。

 例えば、かぜでも、外から入ってきたウイルスや細菌と戦って、身体の変調を起こして熱が出たり、咳やのどや身体の痛みやのどが腫れたりしているのです。だから、治ると自然に熱が下がったり、咳や痛みや腫れがとれていくのです。

◇だから病気は、自分自身がなっている変調した「状態」なのです。病気を嫌わないで下さい。病気を嫌うことは、自分の心が、自分自身の病気になっている身体の状態、つまり自分の身体を嫌うことになり、心の奥底(潜在意識の中)で、抗争(葛藤)を起こして、病気が良くなりません。病気を認めて、病気と上手に付き合って下さい。良くなるように自分の身体をなだめて、「良くなる、良くなる、だんだん良くなる」と自己暗示をかけて下さい。きっとあなたの身体の病気はよくなっていくでしょう。子どもは親が暗示をかけて下さい。よく病院に来ると、子どもが元気になるのは、ここに来ると良くなるとの暗示効果です。

 

5.不安は病気のもと

◇また不安になると、病気になったり、病気が悪くなったりします。不安になると「もっと悪くなるのではないか」とか「もっと苦しくなるのではないか」と思ってしまいます。それが自己暗示になって、あなたの身体はだんだん悪くなります。不安だと良くならないのですから、不安を打ち消しましょう。その為に、薬を飲んだり、医師にかかったりするのです。子どもは、お薬を飲ませて、「さあこれで良くなるよ」と言って下さい。それでよくなるのです。薬の効果と暗示の相乗効果です。それで良くならない場合は、それが効かない何かストレスになっていることが、子どもにあるのです。それを探して、なくすようにしましょう。

◇病気に神経質な人ほど、病気になりやすいのです。日本人は昔から病気に神経質です。挨拶の言葉には病気に関連する言葉が多いです。最近のゲノムの研究では、日本人の98%、白人の67%が神経質になる遺伝子配列を持っていると言います。しかし、それが発現されるのは環境によります。だから、くよくよしない人が長生きするのです。長寿の人に「その秘訣は何ですか」と聞くと、大抵「くよくよしないことです」と言います。

不安をかかえてはいけないから、不安なら医者にかかり、不安をなくしましょう。良い医師は、安心をさせてくれます。医者は安心を売る職業ですから、不安を増やすような医師は避けましょう。また、親は子どもを不安にさせるような言葉を話さないようにしましょう。「かぜをひくから」、「注射をされるよ」、「病気が悪くなるよ」などなど。

 子どもを脅かして、言うことをきかせようとしてはいけません。ほめて言うことをきかせましょう。子どもはほめられたいから、親の言うことをきくようになります。大人も同じです。大人同士でも、感謝の気持ちを表す「ありがとう」を言い合いましょう。

 

6.病気と上手に付き合いましょう

◇一病息災になりましょう。

先の川の話に戻って、堤防の一ヶ所から水があふれて、川の水位が下がると、他の場所から水があふれません。それと同様に、一つの病気を持っていることによって、他の病気になる可能性が減ります。これを一病息災と言います。病気とうまく付き合い、なだめすかして、病気と仲良くして下さい。何とかして病気を治すと、また別の病気になる事がありますから。これは慢性の病気の話で、急性の病気は別です。

◇人生を楽しみましょう。たった一度の人生ですから、楽しくなくてはつまりません。楽しい人生を送ることによって、病気は逃げていきます。楽しい事を考え、思い描き、いつも、どこでも、楽しいことを考えながら、勉強したり、仕事をしたりしましょう。楽しくしていれば、病気は良くなります。

 

7.病原環境論

◇病原環境説は、ヒポクラテスに始まると言われています。ヒポクラテスは、病気をその「人」の状態として捉え、病気の原因を、気候の変化と不適正な食事、その他外界の激変にあるとしました。その後、ドイツの病理学者、衛生学者で政治家(進歩党)のウィルヒョウによって再興され、さらにロックフェラー大学環境医学教授デュボスによってヒポクラテスの復権が提唱されました。1970年代の国連環境委員会のアドバイザー委員長をしたデュボスでも、この説を臨床医のあいだに広められなかったのです。パブロフの条件反射を進めて、人はどんな環境に置かれたらどう反応するかの研究に進むべきだったのですが、神経経路の研究へと進み、体の細分化へ研究が進んでしまったのです。デュボスの説を支持しているのは、基礎医学者と精神科医に多いのです。アメリカの精神科医を中心に、精神神経免疫学や、さらに精神神経免疫内分泌学なども提唱され、動物実験もされ実証されていますが、これらはすべて病原環境説に含まれます。 

 

 

 

    花 粉 症(鼻アレルギー)にはこう対処しよう。

☆花粉症をよく知ることです。

 花粉症がどんな病気か知って、上手に対処しましょう。大げさに騒がれていますが、そんなに騒ぐものではありません。世間や、大学教授や専門医と称する医師たちの思い違いがあります。総理大臣の言葉を鵜呑みにしないのと一緒で、自称専門医という医師の言葉を鵜呑みしないことです。病原環境論はこう考えて対処します。

 

☆こころと身体は、表裏一体、メタルのうら表です。一つに連動しています。こころが落ち込むと身体つまり病気も悪くなります。

 病気は自分のからだの変調(バイオリンの調律がはずれている状態)ですから、病気を嫌わずうまく付き合いましょう。

 病気になっているのはあなたの体です。病気を嫌うことは自分が自分の体を嫌うことになりますから、嫌わず「早くよくなって」となだめて過ごして下さい。そしてなぜなるか、どうしたら上手に病気とつきあってこのシーズンを過ごすかの術を覚えて下さい。病原環境論は、上手な対処法を教えます。それで今までよりずっと楽に過ごせます。

完全に治すには、今の生活、家族関係、職場の人間関係などの、あなたの生き方を変えるしかありません。私は、高校時代から通年性のアレルギー性鼻炎でしたが、開業医になってからは、年一、二回なるだけです。当時からストレスで起きていることを実感していました。こころにダメージを受けるとなるのです。

 

これからは花粉症に負けずに生きていきましょう。

☆花粉症は

花粉症は鼻のアレルギーの病気で、こどもでは10%、大人は30%位の人がなります。気管支喘息、アレルギー性鼻炎(鼻アレルギー)、アトピー性皮膚炎、じんましんにかかったことがあるか、家族にいる人がなりやすいのです。(遺伝的要因ないしは遺伝子をもつ)あなたの家族にいると思います。

 

なぜなるのか、

遺伝的素質(遺伝子)プラス環境因子(自然環境=花粉、社会環境=家庭、社会などの心理的、精神的、感情的ストレス)によって発病します。

遺伝的に同じはずの一卵性の双子の研究で、1人が喘息になった時にもう1人が喘息になる確率は25%(最近は70%もあるという)くらいで、花粉症も同じと考えられています。遺伝子ゲノムの研究では、同じ遺伝子を持っていてもその遺伝子を働かせるのは遺伝子にスイッチを入れることが必要で、スイッチを入れるのが環境要因(多くはストレス)ということが判っています。ある時スイッチが入って発病します。

これは病原環境論を裏付けるものです。遺伝子は、環境によっても変化します。だから日本ではスギ花粉症で、他の国では別の花粉症です。遺伝子が変化することを証明したのがノーベル賞学者利根川進名誉教授です。また人間には一億もの抗体を作る能力があることも証明しました。

 

花粉症

日本では、スギの花粉が風により広い地域に散らばり、交配するのに十分な程の、わずかな量で引き起こされます。今、中年世代を中心に全世代に増えています。

杉のない北海道は白樺です。アメリカでは若者のブタクサ、ヨーロッパでは若者の稲科の牧草が多いです。複数の原因であることもあります。欧米で若者に多いのは、若者の失業率が高いからと考えます。

スギ花粉症は、スギの多い地域より、都市部に圧倒的に多いです。関東では、杉並木で有名な日光市も古河電工の衰退(足尾銅山の閉山)と共に次第に増えていきました。そこから都市部までの間の土地には余り増えていません。

 

アレルギー性鼻炎のうち、

季節的なものを花粉症と言います。スギが主でイネ科や、ブタクサがあります。

花粉のシーズン(代表的なもの)

2~4月はスギ(ゴールデンウィーク前に終わります)、4~5月はひのき、松類、5~7月はイネ科植物、カモガヤ、ハルガヤ、小麦、8~11月は、ブタクサなど。

一年中続くものを通年性アレルギー性鼻炎と言い、本質的には同じで、しばしば複数の原因をもつことがあります。通年性のものには、室内吸入抗原が多く、ハウスダスト、ヒョウヒダニ、コナダニ、ペットのふけ、かび、化学製品、植物製品などがあります。原因がはっきりしないことも少なくありません。

○よくあること:血管運動性鼻炎

 アレルギー性鼻炎のある人が、季節を問わず、温度、湿度の変化、ほこり、煙草の煙などの刺激物を吸入すると一時的になるもので、一時間位でおさまります。

 

症状は、

くしゃみ(ひんぱんに、発作的に出る)、鼻水(水様、多量に、とめどなく出てかむのが間に合わない)、鼻づまり鼻のかゆみ目のかゆみ発赤およびのどの痒み耳のかゆみ口呼吸。通常30歳代にあらわれ、中年を過ぎると、年齢と共に軽くなっていきます。最近は小学生にもでるようになりました。

特徴はかゆみで、かゆみを伴うとアレルギー性鼻炎や花粉症と言います。

 

☆対策として、スギ花粉を避けることと言われて来ましたが。

マスク、眼鏡・ゴーグルが勧められますが、アンケート調査では、「あまり改善が見られず」との結果で、期待する程の効果は得られていません。窓をあけず、空気清浄機を使うと大分違うと言います。ひどい症状の人には多少とも軽減効果があるようです。

洗濯物はマスクをして干し、マスクをして花粉をはたいてから取り込むか、室内で干すこと。外出から帰った時には、上着などをはたいてから家に入りましょう。シーズン中はできるだけ外出を避けること。防御が第一です。

次には、鼻水をかまないこと。じっとがまんしていると自然に止まります。しかし、一度でも鼻をすすったり、鼻をかんだりすると、それまでと同じくらい鼻水が出続けます。それにはティッシュペーパーを鼻につめたり、折りたたんで鼻の入り口にあて、マスクをして口で呼吸し、鼻をかんだりすすったりしないようにします。そうすると泉の水が枯れるように鼻水が出なくなります。

☆最大の防御法は、ストレスをなくすことです。でもこれが難しいのです。

 

薬物療法の基本、上手に病気と付き合う方法の一つです。

第一は、抗ヒスタミン剤の飲み薬(かぜの時の鼻水の薬)で、なった時に飲みます。

ねむけ(神経抑制)の少ない「第二世代の抗ヒスタミン剤」(下記)を勧めます。

 俗に「抗アレルギー剤」と言って毎日飲み続けることを勧める医師や薬剤師がいますが、世界的には「なった時に飲み、よくなればやめる」のが普通です。アレルギーが治ることはありませんし体質も変わりません。予防薬ではありません。

 第二世代の抗ヒスタミン剤は、ねむけ(神経抑制)と鎮静作用を減らすために開発されました。まだ鎮静作用が残るのは、ザジテン、リザベン、セルテクト、アゼプチン、アレギサール、ジルテック、アレロック、など。

眠気が少ないのは、アレグラ、アレジオン、クラリチン、タリオン、エバステル、ピラノア、デザレックスなどがあります。世界的にはクラリチンの評価が高いです。

 鼻のかゆみくしゃみ鼻水に効き、鼻づまりは少しよくなるくらいです。目や耳、皮膚のかゆみにも効きます。

副作用は眠気と神経抑制で、できるだけ眠気が出にくい薬を選びます。効かなければ他の薬に変えると、効くことがあります。自分に合った薬を探しておくことです。

*ロイコトリエン拮抗剤(シングレア、キプレス、オノン)を、抗アレルギー剤として処方する医師もいますが、アレルギー性鼻炎には効きません。耳鼻科医の半数は処方しません。気管支喘息にはキプレス、シングレアが有効で、オノンは海外では評価されていません。

 

第二は、予防の薬です。外用薬(点鼻液、点眼液)だけです。

インタール系(インタール、ミタヤクなど)の吸入薬と点眼薬があります。毎日2~4回して、早くて3日くらいから効果が出始めますが、2週間くらい続けていないと効果が出ないこともあります。だから2週間続けて効果判定します。

しかし、75%の人に効果があると言います。効果があれば症状は出ないし、副作用も少ないので良いのですが、毎日続けていないと効果も続きません。大変ですがお勧めです。

第三は、治療薬ですが、医者によっては予防の薬だと言っています。飲み薬と同じ第二世代の抗ヒスタミン剤の点鼻薬と点眼薬(ザジテン、スプデル、リボスチン、アレギサールなど)で、毎日1日2~4回点鼻または点眼し、効果が出たらシーズン中、1日2回を毎日続けます。これも続けていないと効果が続きません。

 

第四は、即効性の一時期な改善薬(ステロイド薬

ステロイドの鼻へのスプレー(点鼻液)と点眼液。

1)どうしても以上の薬で、鼻水がひどく止まらない時に、ステロイドの点鼻液(フルチカゾン、アルデシン、リノコート[ベクロメタゾン]、ナゾネックス)を併用します。点鼻液は、かえって刺激になり、くしゃみが出て使えないこともあります。

 これを単独で使用する時は、初期には各鼻孔に1回ずつのスプレー噴霧を1日2回し、3~4日後に症状が改善したら減量して、1日1回の維持療法とします。

副作用は、結核菌をもっている人(昔結核をやった人やツベルクリン反応強陽性の人)の結核の発病と、1日中頻繁に使うと血液中に吸収され、長く使っていると副腎抑制を起こします。

2)眼のかゆみには、ステロイドの目薬(フルオロメトロン)で、かゆくなった時に使い、おさまったらやめます。うすい0.02%と濃い0.1%があります。また、ひどい人は、他の薬と一時的に併用します。長期に連用することは、勧めません。軽い人には、使いやすいです。即効性がありますが、副作用は緑内障を悪化させることと、コンタクトレンズのかびをふやすので、使えません。一時的に使うには、問題ありません。

〇薬がない時は、水で目を洗うことです。冷たくしてもかゆみが楽になります。

 

☆自分にあった薬を探すこと。上手に病気とつきあって、シーズンを乗り切ること。

☆ はな水をかまないこと。かまない方が止まります。ティッシュペーパーを鼻につめたり、折りたたんで鼻にあて、マスクをして口で呼吸し、鼻水をかんだりすすったりしないようにします。そうすると、泉の水がかれる様にしだいに出なくなります。でも、一度でもかんだり、すすったりすると、それまで出たのと同じだけ鼻水が出続けます。

 

最大の原因は、ストレスで、いやなことをがまんすることです。いやなことは避け、どうしても仕方がないことは、「しょうがないな」とか、「まあいいか」と、くよくよ考えないようにすること。仕事上のことは、生活のためだから仕方がないと考え、楽しい事を考えて、のびのびと暮らすこと。楽しいことがあると、アレルギーは軽くなるし、去っていくこともあります。高齢者が軽くなるのは、定年退職することや、子どもたちが独立してストレスが少なくなるからです。かし、別のストレスが出てきて、別の病気になることがあります。

 

☆一病息災で、一つの病気になっていると、がんや心臓病や脳梗塞などの他の病気になる確率が低くなります。花粉症で死ぬことはありませんから、うっとうしいがラッキーです。もっともストレスの多い人は、いくつも病気をかかえますから、その場合は仕方がありません。

  • してはいけないもの

 ステロイドの注射(筋肉注射)、ステロイドの飲み薬(代表的なものはセレスタミン)の長期使用(成人で14日までは可)と子どもへの使用。子どもの成長を抑制し、感染を起こしやすいです。

 ステロイドは外用で使うのが安全で副作用が少ないので、お勧めします。

 鼻の粘膜を焼くことは、長期にわたっての副作用や安全性が確立されていません。

☆その他

免疫療法

舌下免疫療法は、通院治療期間が長く、効果発現までの期間が不明であり、有効性の判定に差があります。また、ごくまれに致死的な副作用もあります。

同様の喘息への減感作療法は、ブタクサや草花では部分的には改善しますが、スギでは確認されていません。昔喘息の患者さんに行なっていましたが、長い期間かけて感受性をやわらげても、喘息そのものは治らず、検査したら別の原因が陽性になりました。

結局労多くして功少なしでした。それで私はやめました。 

 

          鼻水とかゆみの薬の話

 

抗ヒスタミン薬の話

抗ヒスタミン薬は、かぜ薬の中に含まれる鼻水の薬として広く使われています。また、アレルギー性鼻炎の時の鼻水を止める薬として、またじんましんやアトピー性皮膚炎のかゆみを止める薬としても使われています。

その薬が、今世界で問題になっています。日本でも2007年頃から学会では取り上げられていますが、まだ一般には知られていません。

 抗ヒスタミン薬の用途

 鼻炎(かぜやアレルギー性の)の時の鼻水(水様性のもの)を止める。

 皮膚のかゆみを止める。じんましん、アトピー性皮膚炎、皮膚の湿疹やかゆみ、鼻や耳やのどのかゆみなど。

 間違って使われている場合として、第二世代の抗ヒスタミン薬が俗に抗アレルギー薬と称されていた時期があったため、すべてのアレルギーに効くかのように思われて、医師が気管支喘息や食物アレルギー(かゆみのない場合)に使うことがありますが効果はありません。

 薬の有効性や安全性に関する正しい知識が医師の間に浸透していないので、しばしば不適切な使用により本来得られるべき利益を患者が得られていないばかりか、副作用の不利益を受けている可能性が高いとアレルギーの専門医は言っています。

代表的な副作用は「眠気」ですが、「眠気が強いほど効果が強い」とか、「眠くなるのは効いている証拠」というのが誤った認識をしている医師の代表的な説明であり、そう認識している人も少なくないのです。

 最強の眠気の強い薬(ピレチア)は、睡眠導入剤や麻酔時の前投薬として使われているくらいです。しかし、この使い方はアレルギー専門医に言わせると、睡眠構築への影響や翌日に中枢抑制作用が残ることなどを考えると適切な使い方ではないと言います。

 ここでは、体内でのヒスタミンがアレルギー物質に対して反応して働いているのですが、それは省略します。しかし、決して無駄な働きではなく、体が異物に対する対応の反応の一つなのですが、体に症状を生じて労働生産性や勉学能率などの行為(パフォーマンス)や、日常の生活を維持しにくくなります。

 それで、適切な抗ヒスタミン薬の使用により、それを改善しようとするものです。上手な薬の選択と使用法により、症状を改善し、中枢神経系の働きを障害しないことが望ましいのです。

ヒスタミンの働きと抗ヒスタミン薬の作用は

・全身の粘膜下組織や上皮にいるマスト細胞(異物や病原体に反応する大型の白血球の仲間のような細胞)がヒスタミンを放出します。ヒスタミンが鼻水を出したり、アレルギー症状を起こします。

・アレルギー症状の出ている場所では、ヒスタミンは症状を起こす原因です。それでそのヒスタミンの作用を止める必要があります。

・脳内にあるヒスタミンは、パーフォーマンスの維持の中心的な働きをするために、これを抑えてはいけません。

・だから、治療する時は、脳内でのヒスタミンの働きを維持しながら、症状を抑えることが必要です。

 

抗ヒスタミン薬は、開発の時期と、開発の目的(昔はヒスタミンの脳内での働きが判っていなかった)によって、第一世代と第二世代があります。第二世代の方が中枢神経系への移行が少ないことと、局所でのヒスタミンへの作用がより効果があることが優位と言えます。

 

治療としては、

・症状改善効果

・中枢神経系の抑制作用

・治療が長期にわたる場合には、労働生産性や勉学の能率などのパーフォーマンスへの影響を考慮する必要があります。

1.症状改善効果、つまり局所におけるヒスタミンの抑制の効果

 第二世代の方が、科学的根拠があります。

 症状つまり鼻水、くしゃみ、鼻づまり、かゆみなどは、薬剤間に臨床的な症状改善効果に差があることの科学的根拠はないという研究があり、効果が得られない場合には、薬の変更ではなく、薬の増量を検討すべきであるとしています。

2.中枢神経系の抑制作用、つまり脳内におけるヒスタミンの抑制作用

 中枢神経の抑制作用は、眠気とインペアード・パーフォーマンス(気づきにくい能力ダウン)の二つです。眠気は自覚できるのですが、インペアード・パーフォーマンスは自覚症状がないことが特徴です。しかも、眠気とインペアード・パーフォーマンスが必ずしも相関せず、眠気がなくてもインペアード・パーフォーマンスが発現されている場合があります。

 脳内のヒスタミンの抑制作用は、 第一世代では50~90%であり、第二世代では0~30%です。だから特に必要性がない場合には、第二世代の使用が勧められています。

 しかも、第二世代の薬の中でも鎮静作用やインペアード・パーフォーマンスの差があります。用量をふやすとインペアード・パーフォーマンスが増すものと増さないものがありますから、その確認をしておくことも必要です。ただし、普通のかぜの時には保険適用がないため、アレルギー性鼻炎の病名をつけます。

 ・脳の働きを活性化しているヒスタミン刺激を抗ヒスタミン薬で抑えることが、中枢神経の抑制作用を起こします。

 ・中枢神経の抑制作用は、眠気を起こすこととパーフォーマンスの障害(集中力、判断力、作業能率の低下)を生じます。

 ・インペアード・パーフォーマンス(気づきにくい能力ダウン)は、気が付かないうちに患者の日常生活の質や、パーフォーマンスに大きな影響を及ぼすので、注意が必要です。

 これは、訳しにくいため、薬剤師や医師へのアンケートでこの訳に決まりました。

 ・中枢神経の抑制作用の程度は抗ヒスタミン薬によって違いがあるために、前記の障害を起こしにくい薬を選択すべきです。

3.治療効果をパーフォーマンスで評価することの重要性

 薬の有効性や安全性だけでなく、長期に使用される薬は、社会的、経済的な影響を考えなければなりません。ですから、脳の働きを正常に維持しつつ、症状を改善することが求められています。添付文書に自動車運転の注意書きが「有り」と「無し」では、「無し」の方が明らかにパーフォーマンスの改善が示されたと言います。

○ 特に小児に関しては、

脳内ヒスタミン神経系における機能は、

・覚醒の増加と徐波睡眠の減少  ・けいれんの抑制    ・学習と記憶の増強

・自発運動の増加        ・摂食行動の抑制    ・痛みの受容の増強

・ストレスによる過興奮の抑制   などがあります。

ですから、脳内ヒスタミン神経系の抑制があると、眠くなり、食欲も増え、けいれんを誘発する可能性もあります。小児の作業記憶が急速に発達する10歳頃までの時期に、脳内ヒスタミン神経系の抑制作用の強い薬を長期間飲ませると脳の発達に悪影響を及ぼすと可能性があると言います。

 それでアメリカのFDA(食品薬品管理局)は2008年の勧告で、6歳以下の年少児への抗ヒスタミン薬を含んだ市販のかぜ薬の使用を控えるようになり、自主回収されるようになったと言います。イギリスでも6歳未満の使用をしないように勧告されています。

 私も数年前に検討し、小児への投与として、ペリアクチンの4~5日以内の短期間であれば、鼻水のひどい時に使用することは差支えないと結論しました。でも、できるだけ、第二世代の抗ヒスタミン薬特にフェキソフェナジン(アレグラ)かエピナスチン(アレジオン)の使用が望ましいようです。

 

注意すべきこと

成人に対してよくかぜ薬として処方される薬について、(小児にもよく使われています)

・PL顆粒1g(1回分)には、眠気と中枢神経の抑制作用が強い抗ヒスタミン剤のプロメタジン10mg相当が入っていて、ピレチア5mg(抗ヒスタミン薬)の2錠分で、麻酔前投薬や睡眠剤として使われている薬です。絶対に飲まないで下さい。でも、かぜ薬として常用されています。

・ボララミン(クロルフェニラミン)は2mg一錠で、ウイスキー90mL(シングル3杯)を飲んだ時と同じインペアード・パーフォーマンスを起こすと言います。

 レスタミン(ジフェンヒドラミン)30mgでも、それに近い作用があります。

これらの薬は、多くの医師がそのことを知らずに処方しています。知らないから処方するので、多分知ったら処方しなくなると思います。インターネットで「PL顆粒」と検索して下さい。そのことが書かれています。

・第二世代の抗ヒスタミン薬でも、ザジテン、セルテクトが鎮静作用つまり眠気と中枢神経の抑制作用が強いと言います。

 新薬についてのデータは入手していませんので省略します。  

下記の表以外の薬については、調査中ですが以下があります。

鎮静性   ペリアクチン、クレマスチン(フルミノール)、アタラックス、タベジール、

軽度鎮静性 エメダスチン(ダレン、レミカット)、レボセチリジン(ザイザル)、

非鎮静性  ロラタジン10mg(クラリチン)、べポタスチン(タリオン)、デザレックス5mg(デスロラタジン)、ビラノア20mg(ビラスチン)、ルパタジンフマル酸10mg(ルパフィン)

 

 

                    

 

 


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