昨日を そして今日をありがとう

Demain il fera jour.
遠回りして歩きましょう 
素敵な景色に遇えるかも・・・

華やかなりし頃を今に ~ 目黒区駒場にて・・・

2010-10-04 | 小さな旅の思い出
  【旧前田侯爵邸:洋館】

閑静な住宅街となっている目黒区駒場も古くは広大な原野で
古代から中世にかけては 良馬を産出する地であったことから駒場と呼ばれるようになったと伝えられています。
目黒という地名も 「目」は馬を表し 「黒」は畔を表していて
馬の牧場の畦道を意味していたからだともいわれているそうです。

有名な落語に「目黒のさんま」というお話がありますが
将軍が鷹狩りにやってくるような場所だったんですね。

目黒区駒場にはそんな原野だったころから残る自然を感じることのできる場所がありました。


             
                                             





  
【駒場公園入り口】

  
【ヒマラヤスギ】
 
日本民藝館を出て振り返ると
うっそうと茂る森が目に入ります。
この一画をぐるりと回りこむと見えてくるのが

駒場公園 です。





この公園は すべて加賀百万石藩主前田家の子孫
前田利為侯爵本邸の敷地でした。




約1万坪の敷地に 地上3階地下1階建ての洋館が
1929年(昭和4年)に竣工されました。
そしてこれを渡り廊下で結んだ2階建て純日本風の
和館とを相次いで竣工させたのでした。
今なお堂々たる姿を残す邸宅は マツ・ケヤキ
イチョウ・シラカシなどうっそうと茂る駒場野の
林をそのまま生かした奥庭や芝生の広場に囲まれています。

使用人も100人以上いたという侯爵邸は
当時東洋一の大邸宅といわれたそうです。 




                                        



【旧前田侯爵邸:洋館~正面より】

                                             



  

【玄関天井】        【玄関ホール】
  
【唐草模様の照明】
建築様式はイギリス・チューダー様式。
(チューダー様式とは 15世紀末から約1世紀続いたイギリスの建築様式。
この名称は、ヘンリー7世からエリザベス1世までイギリスを支配したチューダー朝(1485~1603)に由来する。
イギリス・ゴシック建築の後期の様式。)
  

【応接室】

外壁は当時流行していたスクラッチタイル貼り。
内部には イタリア産の大理石で造られたマントルピースや柱
が設けられ 壁にはフランス製の絹織物が貼られています。

イギリス製の家具が置かれていたそうですが 残念な事に現在は残されていません。

しかしながらすべてデザインの違うシャンデリアやペンダントライトは当時のまま残されており
華やかで優美な当時のようすを偲ぶことができます。

 


  

【階段ホール】





  

【階段下】

訪ねてきた客は ここで暖を取りながら 取り次がれるのを待っていたのでしょうか。

     

【サロン】
洋館でありながら 日本古来の唐草や雛菊模様があしらわれていて和の雰囲気を
仄かに感じることができ5年の歳月をかけて造られた館に対する侯爵の思いを感じることができます。

詳しいことをお知りになりたい方は ↓こちらをどうぞ。

東京都教育庁文化財保護係

                                             


【旧前田公爵邸:和館】

接客用に用いられた書院造の日本建築。
1930年(昭和5年)竣工。
設計は帝室技芸員・佐々木岩次郎。
ロンドン駐在武官であった前田利為が海外からの賓客を接待するために建てたとされ
違い棚や欄間の透し彫など日本建築の粋を集めています。

                                             

  

  


【付け書院】                       【違い棚】

    
【庭】

    

【欄間】                        【壁】



 
和館は侯爵がロンドン駐在武官であったことから 外人客接待用に建てたとも言われています。

黒い漆塗りの書院棚のある床の間や 凝った造りの欄間が設けられています。
風情のある手摺のついた濡れ縁からは 流れのある池や滝を眺められ 
優雅な暮らしぶりをうかがい知ることができます。

洋館に和のテイストを入れた侯爵は 和館でも遊び心を入れていました。
なんと壁が雲形金砂子貼張壁仕様になっていたのだそうです。



華やかな社交の場として活躍したこの屋敷も 第二次大戦中に前田侯爵が亡くなり
終戦とともに占領軍に接収されていました。

その後人手に渡り 昭和42年に東京都が公園として開園したのだそうです。  
  
                                             

気づけば 閉館時間近くになり 人影もまばらな広いお屋敷・・・

ドラマ「華麗なる一族」のロケ地にもなった場所に ひとりいると
ちょっと怖い・・・

なんだか人恋しくなってきて いつの間にか渋谷へと足が向いていました。

「悪魔がきたりて笛を吹く」のロケ地にもなっていたことは
帰ってきて来てから知ったのでした。

帰ってきてからで良かった~~~! 


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竣工 1929年(昭和4年)5月
所在地 東京都目黒区駒場4-3-55目黒区立駒場公園内
設計 塚本靖、高橋貞太郎
施工 竹中工務店
構造 鉄筋コンクリート造2階建て、一部3階、地下1階、銅板葺

京王井の頭線駒場東大前駅より徒歩8分。
小田急小田原線東北沢駅より徒歩約13分。

開園時間:午前9時から午後4時30分まで(洋館は土曜・日曜・祝日のみ公開)
休園日:毎週月曜日と年末年始(月曜日が祝日の場合は翌火曜日が休園)
駐車場:なし
料金:入園無料。洋館・和館ともに見学無料。ただし和館にある茶室利用は有料。
詳細は公園事務所に問い合わせのこと。





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最後までお付き合いありがとうございました!
 



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10 Comments

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こんにちわ (小父さん)
2010-10-05 15:46:47
へーっ!!!!!
なにかテレビのクイズ番組みたいなのに、机の上のボタンを叩くのなかったですかね?(笑)

先ずは駒場が原野であったとは!
西那須野でたくさんそんな開拓の話しを聞いたことを思い出しました。
目黒ときたらサンマしか思いつきません(笑)

加賀藩前田家の末裔はその身分、住まいの格が桁違いですね。
明治がはじまる時、こんな裕福な軍団を擁しても薩長の田舎侍(失礼)には勝てなかったんですね!
しかし、華族さんたちは、いち早く西欧文明を取り入れて近代国家建設にとりかかったのは、この邸だけ見てもよくわかります。

これは、個人が持っていたら維持管理に固定資産税、防火対策、植木の手入れとどれをとっても大変ですね。きっと草ぼうぼうで木も生い茂る幽霊屋敷になるでしょう!

pinkyさんのインテリアの説明により、ただ、ぼーっと見ているより何倍も楽しい館内見学ができました。

pinkyさん老後は、ボランティアで案内係をされてはいかがでしょうか。
いやー、よく勉強されていますね、感心します。
返信する
すごーい (ma-na)
2010-10-05 20:11:16
今度、pinkyさんにガイドしてもらって実物を見学したいです。
華麗なる一族のロケ地なんですね。
悪魔が着たりて笛を吹くも・・・?
こういう場所は、沢山人がいないとこわ~いっ!

実際にどんな華麗な暮らしぶりだったのか
タイムマシンがあったら見に行ってみたいです。
返信する
ホント!すごいですね^^ (Rancho)
2010-10-05 23:44:54
pinkyさん こんばんは

和洋 両方落ち付きますね^^

洋館の階段を艶やかなドレスを着て、可憐に駆け上がりたいと思うわたし^^
和館は欄間や壁まで洒落ていますね。
壁はふすま地でしょうか?豪華で美しい^^
目黒は素敵な建物がいっぱいなのですね^^見とれています☆

pinkyさん、
詳しくて楽しい案内をありがとうございます。
知らないことがいっぱいで、興味津々
とても楽しかったです*^^*
返信する
またまたステキな場所♪ (ハイジ)
2010-10-06 00:04:24
pinkyさんの説明を聞きながら、館内を見て回ってる気分です。
洋館だけでなく、海外の客人をもてなすための和館まであるなんて!!!
華族ですから、このくらい当たり前なんでしょうか?

感心したのは、和洋どちらの館も、ギラギラとした派手な豪華さでなく
しっとりと落ち着いた、品の良い豪華さだってことです。

「華麗なる一族」は、テレビも映画も見たことがないんですが
銀行の頭取一族の話ですよね?
お金が有り過ぎるところには、愛憎劇があるんですねぇ。。。

ところで、加賀百万石藩主前田家って、あの天地人にも出てきてた
前田利家の子孫ですか?
和館の写真を見ながら、宇津井健さんの顔がちらちらしてしまったんですが・・・

前回に引き続き、東京のステキな場所を教えていただいて、ありがとうございます♪♪♪
これは、絶対に行かなくっちゃ!
pinkyさんのガイドのお陰で、ものすごく興味が湧きました!!!
返信する
☆コメントをありがとうございました! (pinky)
2010-10-06 00:46:10
小父さんへ

こんばんは。
落語の「目黒のサンマ」も今では目黒のサンマ祭りとして有名になりましたね~。
サンマの不漁で開催が危ぶまれたようですが今年も盛大に 行われたようです。
ちなみに 目黒といってもJRに近い目黒通りで行われたようです。
この洋館の雰囲気に サンマの香りはちょっ徒似合いませんものね。(笑)

このあたりも 鉄道が通るようになってから住宅地として発展してきたらしいです。
それまでは野原だったんですね。
信じられませんが 歴史からいえば徳川家康は田舎に左遷されたようなものですから
な~んにもないところだったのでしょう。

それがこんな高級住宅街になってしまったなんて驚きです。
下世話なお話ですがこのあたりの土地は坪300万
あたりでしょうか・・・
一万坪ということは 土地だけで300億!!
無償で提供されたということですから 一般庶民には
想像のつかない世界です。
現在の前田家の方々は 家庭画報などで姿を拝見させていただいていますが
没落してしまわれた華族の方々も少なくない中
今も資産家でいらっしゃるようです。
100人の使用人あってのこのお屋敷でしょう。

それにしても このお屋敷のどの部分を見ても
凝っているのにさりげないデザインには
関心します。

あ~ボランティアガイド♪
いいですね。
しかしながら 自転車操業の自営業者にとって
豊かな老後はないようです。(ため息~)
返信する
☆コメントをありがとうございました! (pinky)
2010-10-06 00:58:11
ma-naさんへ

華麗なる一族ばかりでなく 沢山の栄華やドラマ 雑誌の撮影に使われているようです。

当時の華やかな暮らしぶりを思うと少し寂しい気持ちになりました。

洋館をみて回るのが趣味なので 神戸や横浜はずいぶん見て回りましたが
ここまで大きなお屋敷は初めてです。
東京はまだ未開拓なので これから少しづつ回ってみたいと思っています。

いつかご一緒いたしましょうね~♪
それまでにもっと勉強しておきますっ!


返信する
☆コメントをありがとうございました! (pinky)
2010-10-06 01:12:31
Ranchoさんへ

贅を尽くして造られたと思われるお屋敷ですが
とても上品で素敵な場所でした。

お~!艶やかなドレス姿のRancho様~!
舞踏会にご招待させていただきたいです♪

和館の壁は 以前はふすまのような作りだったようですが
今は布のように見えました。
建具にも四季折々に取り替えられる山水画が描かれていたようです。
Ranchoさんと一緒だったら 色んなお話が聞けそうだと
思いながら見学していたのですよ。
もっと時間があったら
ドアノブやマントルピースの飾りや天井のレリーフや壁紙の柄も写真に撮りたかったです。
またいつか 日の高いうちに寄ってみたいと思います。
返信する
☆コメントをありがとうございました! (pinky)
2010-10-06 01:23:49
ハイジさんへ



そうです!あの前田利家の末裔の方です。
たまたま昨日見ていた家庭画報にも名門のご家族の写真の中にも写っていらっしゃいましたが
やはりとても上品な方々でした。
(因みに宇津井健さんには似てみえませんでした~笑)

設計は東大の先生方ですが 外交武官を務められていて
海外の文化も熟知された方だからこそ
この上品な雰囲気を出すことが出来たのではないかと思います。

建築家でいらっしゃるヨーゼフさんがどんな風に感じられるのか
是非知りたいです。
日本民藝館とこの館はお隣同士です。
次回の東京見学のご予定に如何でしょう!
どうぞご一緒に訪ねてみてくださいね~♪
返信する
こんばんは♪ (shoppgirl)
2010-10-06 23:58:52
pinkyさん、こんばんは。

目黒には朝香宮邸の「庭園美術館」があって
そこには出掛けた事があります。
アールデコ様式のお屋敷らしいです。
BFが建築家の卵で一緒に見に行きました(汗)

前田邸はそれ以上に素敵ですね。

pinkyさんのブログを拝見しなければ一生気付かずいたかも知れません。
解説と一緒に拝見すると実際にこの目で見たくなりました。ありがとうございます。

今度帰省したら行きます。

因みに私の実家の近くには「旧古河庭園」があります。




返信する
☆コメントをありがとうございました! (pinky)
2010-10-07 22:54:22
shoppgirlさんへ

こんばんは~!

「庭園美術館」も好きです!
1度目はひとりで 2度目は元カレと~
いえ息子と行きました(笑)
って・・・え~~~!
そんなイチゴマシュマロみたいな思い出を
告白してくださってありがとうございます~♪
建築家の卵さんは 今頃立派な建築家になられたでしょう。
アールデコのお屋敷って珍しいですよね。

「旧古河庭園」は今頃バラが綺麗でしょうか。
行ってみたい場所のひとつです。
shoppgirlさんのご実家の近くなんですね。
次回の東京めぐりの際には 是非ガイド役でお願いいたしま~す!
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