原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)が公開した和解事例1651から和解事例1655までを紹介いたします。
1651=会津地方の材木販売会社の営業損害に関するもの
1652=自主的避難等対象区域(郡山市)の精神的損害の増額分に関するもの
1653=旧緊急時避難準備区域(南相馬市原町区)の電気工事会社の営業損害に関するもの
1654=居住制限区域(浪江町)の日常生活阻害慰謝料(増額分)
1655=居住制限区域(浪江町)の日常生活阻害慰謝料(増額分)
和解事例(1651)
会津地方において材木の販売等を業としている申立会社の平成30年7月分から平成31年3月分までの営業損害(逸失利益)について、申立会社の営業状況等に鑑み、原発事故前直近の平成21年7月から平成22年3月までの売上げを基準とするのではなく、平成20年7月から平成21年3月までの売上げを基準とし、また、対象期間の雑収入に計上された額のうち、別事業に係る売上げは対象期間の売上げとして扱わないで算定した額が賠償された事例(ただし、事故後に事業規模を縮小していること等に照らし、原発事故の影響割合を3割とする。)
和解事例(1652)
自主的避難等対象区域(郡山市)から母子のみで短期間の自主的避難を繰り返し行った申立人ら(父母及び子1名)について、避難費用及び生活費増加費用が賠償されたほか、子は発達障害を抱えながらの避難であり、母も子を介護しながら避難を行ったこと等の事情を考慮し、両名合計で3万円の精神的損害(増額分)が賠償された事例。
和解事例(1653)
旧緊急時避難準備区域(南相馬市原町区)に所在し、主に福島県内及び宮城県において電気工事等を行うことを業としていた申立会社について、本店所在地が屋内退避区域に指定されるなどしたことから、福島県内の避難指示等が出されていない地域に平成23年3月に取り急ぎ設置した仮の宿舎と、同宿舎からは工事現場への職員の移動に大きく迂回を要するために交通費が大きく増加することから、福島県内の別の場所に同年4月以降に設置した新たな宿舎について、これらの設置や維持に要した工事費用や賃料等の追加的費用等が賠償された事例(当初の仮の宿舎については原発事故の影響割合を6割と、新たな宿舎については同割合を4割とする。)。
和解事例(1654)
居住制限区域(浪江町)から避難した申立人夫婦の日常生活阻害慰謝料(増額分)について、避難所を多数回移動したこと、申立人夫が心臓疾患を罹患して手術や入院をし、その後眼疾患も罹患したこと、その間申立人妻が申立人夫の介護を行ったこと等を考慮して、平成23年3月分及び同年4月分は、夫婦それぞれについて、避難所生活を理由とした既払金(月額2万円)とは別に追加して月額3万円が、同年5月分から同年7月分までは、申立人夫につき月額8万円、申立人妻につき月額6万円が、同年8月分から平成27年3月分までは、申立人夫につき月額3万円、申立人妻につき月額1万円が、それぞれ賠償された事例。
和解事例(1655)
居住制限区域(浪江町)から避難した申立人ら(祖母、父母、子4名)の日常生活阻害慰謝料(増額分)として、1.避難により申立人祖母とその他の申立人6名との別離が生じたことを考慮し、申立人母に対し、別離が生じた平成23年3月分から申立人父母が避難先で新築住居を購入した平成27年7月分まで月額3万円(ただし、平成23年3月分及び同年4月分については月額3万6000円。)が、2.申立人母が避難先で乳幼児である申立人子のうちの1名の育児をしたことによる負担等を考慮し、申立人母に対し、上記1とは別に、平成23年3月分から同乳幼児が就学する前の月である平成25年3月分まで月額3万円(ただし、平成23年3月分及び4月分については月額3万6000円。)が、3.申立人子のうちの1名が避難期間中に妊娠・出産し、その後も避難生活を継続しながら申立外乳幼児の世話をしたことを考慮し、同申立人に対し、妊娠後の平成24年8月分から平成29年3月分まで月額3万円が、それぞれ賠償された事例。