大杉榮は1908年に重禁錮2年6ヶ月等という判決を宣告され、同年9月から千葉監獄に入っています。
重禁錮というのは、旧刑法に規定されていたもので、刑期は11日以上5年以下。一定の場所に留置し、定役に服させる点で軽禁錮と異なる。現行刑法の有期懲役に相当するということです(デジタル大辞泉)。
現行刑法では「重禁錮」という刑は存在しないのですが、懲役刑と同様に考えればよいようです。
現行刑法では、「懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。」と規定されています(刑法12条2項)。
この「所定の作業」を刑務作業といいます。
法務省のホームページには、刑務作業の目的について、次のように述べられています。
「刑務作業は,刑法に規定された懲役刑の内容であるとともに,受刑者の矯正及び社会復帰を図るための重要な処遇方策の一つです。受刑者に規則正しい勤労生活を送らせることにより,その心身の健康を維持し,勤労意欲を養成し,共同生活における自己の役割・責任を自覚させ助長するとともに,職業的知識及び技能を付与することにより,円滑な社会復帰を促進することを目的としています。」
大杉榮の時代の刑務作業については、同時期に千葉監獄に入獄していた荒畑寒村が書き残してくれています(「ひとすじの道」)。
・独居囚に課せられるのは房内の坐業で、簡単な道具を用いて麻で下駄の横鼻緒を綯う仕事。
・日中10時間、夜業2時間が平均した作業時間で、一日400から800足程度作る。
・作業賞与は毎月1円50銭〜2円になるのが普通(但し、荒畑達はサボっていただめ10銭未満だった)
1 分別管理
雑役囚と独居囚とは分けて管理されており、独居囚には房内で仕事をさせ、雑役囚とは接点を持たせなかったことが分かります。
これこそ、大杉榮ら政治犯を千葉監獄に入獄させていた理由です。
大杉榮も次のように書き記しています。
「僕らのような伝染病のバチルスは、他の囚人とは一緒に置けないので、独房という小さい室に一人ずつ閉じ込められて置かれるのです。ところが、普通の監獄では独房の数がごく少ないので、皆な当時日本唯一の新式監獄であった独房制度の千葉に送られたのです。」(「入獄案内」)
2 作業時間
作業時間が一日12時間とは今の感覚からは長いですね。今は8時間を超えないものとされています。
「受刑者の作業時間は,矯正指導を行う時間と合算し,原則として,1日につき8時間を超えない範囲内と定められています。」(法務省ホームページ)
3 作業報酬金
当時は作業賞与といわれていたようですが、今は作業報酬金といいます。刑務作業は労働ではないので、受刑者の労務を提供して行った刑務作業に係る収入は、すべて国庫に帰属します。ちなみに、2018年度の刑務所作業収入は約39億円。
一方、作業に就いた受刑者等には、作業報奨金が支給されます。労働の対価でないため、最低賃金の対象外で作業報奨金の1人1月当たりの平均計算額は約4340円だそうです。