文政11年5月上旬・色川三中「家事志」
土浦市史史料『家事志 色川三中日記』第二巻をもとに、気になった一部の大意を現代語にしたものです。
文政11年5月1日(朔)(1828年)
・御宗門大改めがあった。一人10文、十四人で140文かかった。
・風邪で体調を崩していた与兵衛はだいぶ回復。日向医師が小柴胡湯を処方したのが良かったか。与兵衛の女房はお歯黒をして、湯に浴するまで回復した。
#色川三中 #家事志
(コメント)
・宗門改めはよく聞きますが、この記事では、「大改め」と書かれています。費用がかかるのも初耳です。調査する手間暇、宗門人別帳の作成や管理に費用がかかるでしょうから、どこかがコスト負担しなければなりませんよね。14人分を支払ったというのは、三中の家族のほかに奉公人が入っているからです。奉公人は主人の人別に入ります。
・与兵衛夫婦の体調はようやく良くなってきました。子どもの突然死、その後の出産、妻が重病、与兵衛自身も体調を崩す、とこの間大変なことばかりでしたが、様々な人の助けにより、体調も安定してきました。
文政11年5月2日(1828年)
雨
#色川三中 #家事志
(コメント)
今日の記事は天気だけ。雨。旧暦の五月は梅雨の季節。
文政11年5月3日(1828年)晴
勅使河原勘兵衛様が亡くなられて三十五日。本日、こわめしをお遣わしになられた。
#色川三中 #家事志
(コメント)
勅使河原氏は3月下旬にお亡くなりになり、三中は「この方には大変世話になった。ご厚恩は忘れてはいけない。」と日記に書いていました(3月29日条)。今日は三十五日。この地域ではこわめしを配る習慣があったようです。
文政11年3月29日(1828年)
— 断感ろーれんす (@tk23956) March 28, 2023
昨日、勅使河原勘兵衛殿死去。この方には大変世話になった。ご厚恩は忘れてはいけない。本日、従業員の徳兵衛を手伝いのために遣わした。#色川三中 #家事志
文政11年5月4日(1828年)雨
先祖の墓に菖蒲をお供え。我が家では昔からの習慣だが、しなくなった家もあるそう。一体どういうつもりか。我が家では、この習慣は守る。そう家内にも伝えた。
#色川三中 #家事志
(コメント)
お墓に菖蒲をお供えする習慣があったようです。三中はこの習慣を守るのが当然と考えていますが、周囲では守られなくなっているようです。
文政11年5月5日(1828年)
曇、夕方から雨
妻のせいは妊娠六ヶ月。今日、実家のある谷田部(つくば市)に行った。母は行かないように言ったが、妻は聞かなかった。妻には薬を持っていかせた。
#色川三中 #家事志
(コメント)
妻の妊娠について初めての記事。妻がこの時期に帰省するか否かで、姑と嫁の意見の違いが生じています。三中の賛否は書いてありませんが、「薬を持って行かせた」とあり、三中は妻の意見を尊重したのでしょう。
文政11年5月6日(1828年)雨
昼前に橋本権七殿、木下殿が来られ、入樋の件について話す。虫掛村は五両以上は拠出しないとのこと。私からは先例をご説明した。
#色川三中 #家事志
(コメント)
入樋の費用分担は金額も大きいことから、なかなか議論が収束しません。虫掛村(土浦市)はこれまでと同様5両以上の負担は拒否。このままでは、三中が所属する土浦町の高持百姓の負担が重くなるため、三中も昔の例を踏まえて、有利になるように交渉をしています。
文政11年5月7日(1828年)曇
所有していた大町(土浦市)の屋敷を売ることとなった。今日正式に合意。書付を作成するように要請された。
#色川三中 #家事志
(コメント)
色川家の遊休資産である大町(土浦市)の屋敷を売却するという記事。三中の薬種商の経営は順調ですが、債務は多額であり、遊休資産は売却して、債務の返済に充てるのが定石です。
文政11年5月8日(1828年)
大雨で田地の押水おびただし。今年の春から雨が多く、苗代が腐ってしまったものも多い。田植えは最近ようやく始まった。
#色川三中 #家事志
(コメント)
今年の春から多雨であり、苗代が腐ったり、田に水が溢れてしまっているという不具合が出ています。そのため、田植えも最近ようやく始まりました。旧暦5月上旬(現代の暦なら6月)では田植えとしては遅いとの認識です。
文政11年5月9日(1828年)
朝から隣主人と、入樋の費用分担の件で土浦藩の役人への願書の案文を考える。昼には願書案を完成させた。
#色川三中 #家事志
(コメント)
入樋の費用分担の件。先日(5月6日)の話し合いの結果、土浦の高持百姓には不利な状況を認識したのでしょう。土浦藩の役人充てに願書を作成することとなりました。仲間と知恵を絞って、半日かけて願書案を作成しています。
文政11年5月10日(1828年)
入樋一件について願書案を昨日作成。土浦藩の懇意の役人に内々に見てもらった。明日夜に町内の高持百姓の会合で願書を決議する予定。
#色川三中 #家事志
(コメント)
入樋の費用分担の件。願書案を土浦藩の知り合いに内々に見てもらう根回しをし、高持百姓の会議で決定しようと、物事を進めています。